© yamasan - stock.adobe.com
仕事や育児に追われていると、つい子どもをきつく叱ってしまったり、周りと比較して自分の子育てに自信を持てなくなったり…。もしかすると、その原因は
ママ自身の“自己肯定感”が低いからかもしれません。
子どもの自己肯定感の大切さはあちこちで耳にする機会がありますが、ママ自身が自分の自己肯定感にまで思いをめぐらせる機会は、あまりないのではないでしょうか。
今回は日本財団が推進する「子ども第三の居場所」(*)プロジェクトを通して、子どもたちの自己肯定感の育みに取り組んでいる
本山勝寛さんにインタビュー。プライベートでは
5児のパパでもある本山さんに、
家庭でできる子どもの自己肯定感の高め方をうかがいました。
日本財団 子どもサポートチームチームリーダー 本山勝寛さん
“地域の子どもたちのもうひとつの家”となる場所を目指す「子ども第三の居場所」の運営を統括。5児の父親で、これまで育児休業を4回取得。東京大学工学部システム創成学科知能社会システムコース卒業、ハーバード教育大学院国際教育政策修士課程修了。独自の子育て論、教育論が話題で『16 倍速勉強法』(光文社)や『自力でできる子になる好奇心を伸ばす子育て』 (大和書房)など著書も多数。
*子ども第三の居場所とは…
さまざまな困難に直面する子どもたちが安心して過ごせる環境で、自己肯定感、人や社会と関わる力、生活習慣、学習習慣など、将来の自立に向けて生き抜く力を育む放課後の居場所。学習支援や生活習慣支援のほか、キャンプ・音楽・プログラミング等の教室を通して、自己肯定感やコミュニケーション力など非認知能力を育むことにも力を入れています。
■子育てに自信がないのは自己肯定感が低いから?
仕事に子育てに忙しい日々。余裕がなくて、イライラして、子どもにきつく当たってしまって、なんだか自己嫌悪…。そんなネガティブなループの裏には、もしかすると「ママ自身の自己肯定感の低さ」があるかもしれないと本山さんは話します。
© Yuu - stock.adobe.com
「親自身の自己肯定感が低いと、子どもをありのままに受け止めてあげられなかったり、他の子と比較して子どもの良さよりも子どもができないことを気にしてしまったり…。その結果、子どもにきつくあたってしまう、強く叱ってしまう、ということもあると思います」
自己肯定感とは
「生まれてきてよかった」「生きていていいんだ」と自分の価値や存在をポジティブにとらえられる感情のこと。これがあると、自分が関わることや自分がやることに対して前向きな気持ちになれるといいます。
「自己肯定感は、おもに幼少期から青少年期に育まれます。その期間に、親や周囲の人たちから愛され、存在そのものを受け止めてもらって、『生まれてよかったんだ』と感じる機会がたくさんあったどうか。
また直接的ではありませんが両親の夫婦関係や家庭全体の雰囲気も関わってきます」
“自己肯定感”という言葉が注目されてきたのは、比較的最近の話です。昔はきびしい親も多く、成長の過程で自己肯定感がうまく培われてこなかったママもいるでしょう。
「今の子どもたちの自己肯定感がなかなか高まらないのは、自己肯定感の低い親に育てられているから、という面もあるのだと思います」
自己肯定感を育むには家庭環境が重要となるようです。
■自己肯定感が低いのは、親がまじめすぎるから!?
自己肯定感が高いと、どんなメリットがあるのでしょうか。本山さんによれば、
「幸福感が高まり、人生全般にいい影響をもたらす」そう。
「なにごとにもポジティブで前向きになれるので、失敗を恐れず新しいことに挑戦でき、好奇心をもって世界を広げていけます。自分を『このままでいい』と肯定できるので、人間関係においても相手のことを尊重でき、良好な関係を築きやすくなります」
© milatas - stock.adobe.com
しかし残念ながら、日本の若者は、海外にくらべて自己肯定感が低め。13~29歳を対象にした内閣府の意識調査(2018年度「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」)では、「自分に満足しているか」という問いに対して、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツなどが軒並み8割を超えるなか、
日本は45%以下で調査対象国のなかでは最下位でした。
「子どもたちの自己肯定感が低いことは、『子ども第三の居場所』に通う子どもたちと接するなかでも感じることが多いですね。具体的には『どうせ自分はダメ』『やったことがないからできない』という発言が多くなる。お友だちや大人に対して
攻撃的な態度をとってしまう。さらには
自分自身を傷つけるような言葉を発してしまう子もいます」
日本の若者の自己肯定感が低い理由のひとつには、
まじめな国民性もあるようです。
「とくに親がまじめすぎるところはあると思います。加えて、何かひとつが飛びぬけてできるより、すべてが平均的にできていることをよしとする平均主義も影響しているかもしれません。日本社会全体として、個性や強みを見出して伸ばしてあげる力が弱いように思います」
©健二 中村 - stock.adobe.com
そこでぜひ意識してほしいのが、
子どもをよく観察して、好きなことや得意なもの、個性を見つけて、それをほめて伸ばす機会をつくること。たとえば、子どもが車を好きそうだと思ったら、ミニカーをそろえたり、リアルな車を見に行く機会をつくったり、そこで得た車の知識をほめてあげたり…というふうにするとよいそうです。
「小さくても成功体験を積むと、自己肯定感に加えて、どんなこともやればできると思える自己効力感も培われていきます。『子ども第三の居場所』でも毎日チャレンジタイムという時間を設け、音楽やプログラミングなどを通して成功体験を積める機会をつくっています」