勝ちにこだわりすぎる「一番病」。他者との比較で自己肯定感は育たない
運動会があれば、順位ではなく、一生懸命走っている姿に目を向けてあげてください。最下位だったとしても、去年より今年のほうが速くなっているはずです。
その子自身を基準にすれば、どんな子でも絶対に伸びています。ほかの子と比べるのではなく、その子自身の過去と比べて伸びたところを評価するようにすると、確かに成長している子どもの実像が見えてきます。
(引用元:高濱正伸・西郡文啓著 (2018年),『ちゃんと失敗する子の育て方』,総合法令出版.)
常に成長過程である子どもにとっては、いかなる勝負事も、「結果がすべて」では決してないのです。
小笠原氏によると、子どもが勝負に負けてしまった場合は「一生懸命走ったからいいんだよ!次はもっと腕を振ってみよう」というように、がんばった過程をほめたあとに、さらに次に勝てる秘訣を教えるのが有効だといいます。
昨日までの自分に勝とうと頑張ることが「自己肯定感」につながる
高学年になっても勝ちにこだわるようであれば、勝負の世界のステージを上げてやるとよいそう。そこで、高度な勝負の世界では「相手に勝つ」ことより「自分自身に勝つ」ことが大切であることがわかれば、もう“子ども卒業”です。
他者との比較で自分が優れていれば、分かりやすく自分を肯定できますが、もっと優れている子を目の前にすれば簡単に崩れてしまいます。
揺るぎのない「自己肯定感」をつくるのは、昨日の自分よりも良くなっているという実感です。
「自分はできないことでもがんばって、できるようになってきた。だからまたできないことがあってもなんとかなるだろう」
本物の「自己肯定感」を持つ子はそう考えるようになります。
(引用元:同上)
あのイチローの引退会見でも、「あくまで“はかり”は自分の中にある」「少しずつの積み重ねでしか自分を超えていけない」という言葉がありました。順位や勝ち負けはあくまでもモチベーションを高めるための手段であり、乗り越えていくべきものは自分自身である、ということを親も子も肝に銘じて、小さなゲームから大きな試合まで、「本当の勝ち」を目指して奮闘していけるといいですね。
文/酒井絢子
(参考)
大阪市教育センター|相談事例3.勝ち負けにこだわる子どもへの対応
ベネッセ 教育情報サイト|負けず嫌いで何にでも優劣をつけたがる娘[教えて!親野先生]
ベネッセ 教育情報サイト|「勝ち」