命に関わるケースも!? 認知症の高齢者に「向精神薬」がよくないワケ
【ママからのご相談】
40代女性です。2児のママで認知症が進行しつつある義理の父親と同居しています。
先日、テレビのニュース番組で、「認知症の高齢者の徘徊(はいかい)のような症状に悩む家族の求めに応じてそのような症状を抑えるために向精神薬が処方されることがあるが、基本的には向精神薬は使用するべきではない」といった内容を専門家が話していました。
でも、わが家のおじいちゃんの徘徊はひどく、向精神薬を使って休んでてもらわないと、いきなり子ども部屋に入って子どもたちを困らせるようなレベルなのです。
介護する側の者に言わせていただけるなら、「きれいごとばかり言ってほしくない」という気持ちが正直あるのですが、間違っていますでしょうか。
●A. 向精神薬の乱用に注意し、バランスをみて在宅介護の時間を減らしましょう。
こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。
ご相談ありがとうございます。
筆者の両親はすでに亡くなっていますが、ご相談者様のお気持ちは、わかります。
筆者の父親の晩年は認知症で、母親の晩年は大腿骨頸部骨折による寝たきりに起因した全身の内科的・外科的症状で、苦しみました。
「認知症の高齢者にとっての向精神薬の副作用の問題」 はとても重要ですので、都内で内科・神経内科クリニックを開業する医師のお話も交えながらご説明いたします。
●BPSDへの向精神薬投与がなぜよくないのか
『認知症には記憶障害や理解の低下といった中核症状と、徘徊や攻撃的行動・人格変化などの周辺症状とがあり、この周辺症状のことをBPSD と呼んでいます。
BPSDが現れると介護者にかかる負担が大きくなるため主治医は家族の求めに応じて向精神薬を処方するケースがどうしても多くなりがちです。
そのため、症状が収まっても今度は“過鎮静”と呼ばれるぼーっとした状態になるリスクが生じ、寝たきり や食事を飲み込む機能の低下 といった命にかかわる問題へのきっかけになってしまう場合が多いのです』(60代男性/都内内科神経内科クリニック院長・医師)
BPSDへの向精神薬の投与がなぜよくないのか、医師の説明はとても分かりやすいですね。
医師の説明では、多くの場合、向精神薬を減らしたりやめたりすることで過鎮静の症状は改善し、リハビリによって再び自分の口で食べることができるようになる患者さんも多いとのことです。