ワル的な強さが必要? うつ状態の改善に役立つ“レジリエンス”の高め方
●“悪(ワル)”ばかりが高いレジリエンスを持っているというのもちょっと……
こうして斎藤環先生の著書やT医師のお話から考えてくると、“悪(ワル)”ばかりが高いレジリエンスを持っているというのもちょっと、どうしたものか……という思いになってしまいます。
たしかに、親が何度も家業をつぶしその夜逃げに付き合ってきたような子や、勉強もスポーツも芸術も得意ではないため徒党を組んで“ヤンキー”をしていた少年少女たちが、下手なインテリなどよりたくましく地域社会でネットワークを作り、人によっては地域の活動を通して地方議員や場合によっては国政に進出するほどの出世を果たすといった例は多く、いくらでも実例を挙げることができます。
もちろん、そういった人たちが“悪”だというのではなく、ワル的な強さを持っている という意味においてです。
T医師が挙げたようなレジリエンス因子を、ごく普通の庶民の一人ひとりが今より少しでも高めることができれば、長引くうつ状態に悩む人はきっと減少することでしょう。
そのためにはT医師が言うように「専門医の指導を受ける」か、あるいはまた「時が流れ環境が変わっても自分を支持してくれる愛すべき対象をもつ」ことが有効なのではないかと筆者は考えるのですが、いかがでしょうか。
【参考文献】
・『人間にとって健康とは何か』斎藤環・著
●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)