精神科は必要ナシ? 子どもの引きこもりで鬱になった親のベストな処方箋
●引きこもりが増加したのは、若者たちが労働のコスパの悪さに気づいたから
さて、橋岡先生はニートやSNEPといった引きこもりの患者さんが現代のわが国に増えた原因について、
『幼少の頃から消費者の意識を持った子どもたちが労働することのコスパ(コストパフォーマンス)の悪さに気づいたこと。
生まれつき何でも手にしている富裕層の子が特に努力をしなくても富や名声を得られる事実を横目で見ながら、一般庶民の子は努力したところで必ずしも報われるわけではないことを知り、働かないという最もコスパの高い生き方を選んだこと』
とする哲学者の内田樹さんの仮説を高く評価されています。
しかし、最近の内田さんは、“むしろ優秀な若者が、いまだに競争至上主義のような空気の漂う就活の現場に気持ち悪さを感じ 、あえて就活をせずに里山暮らしや社会起業家の道へと向かいつつある傾向”を指摘しています。
そしてなおかつ、“以前だったら引きこもることにコスパのよさを感じていた若い人たちが、以前よりやや能動的な競争しない生き方を選ぶようになってきている”としています。
その意味では、わが国における社会的引きこもりの増加の問題は、筆者が過去のコラムで述べたような主旨に反して精神科医の力を借りずとも改善の方向に是正されている という内容の発言を、内田さんが折に触れてされていることを付け加えておきましょう。
現実に、2016年9月7日に内閣府から公表された調査結果では、“引きこもる人”の数そのものは前回の2010年の調査結果に比べて減っていることが確認できます。
内田さんの指摘の正しさを、ある意味で証明しているといえるのかもしれません。
もっとも、数は減っても“引きこもる人の高齢化と長期化”の問題が、今回の調査で新たに浮き彫りになってはいますが。
●鬱に陥っている親御さんはまずは漢方を試してみては?
おしまいに今一度、引きこもるお子さんの将来を案じて不眠や鬱に陥っている親御さんたちに向けて一言申し上げたいと思います。
それは、橋岡医師によれば親御さんの方は“慢性疲労症候群という体の病気 ”の状態なので、いたずらに精神科を訪ねて向精神薬や睡眠薬の処方を受けることはおすすめできないかもしれないということです。橋岡診療所のような東洋医学も取り入れた内科の医療機関で、漢方薬による治療を試してみるのもいいのではないでしょうか。