プチ富裕層は要注意!? 高所得者ほど老後破産に陥りやすいワケ
と言う吉本博昭先生
次にご紹介するのは、“内観療法”という心理療法の第一人者でもある、医師で精神科アイ・クリニック(富山市)を開院する吉本博昭先生の見解です。
現役時代に収入が比較的多かった人たちを、一転して“老後破産”へと追い込んでいく原因として最も大きなものが「病気」と「介護」であることは藤田孝典さんも指摘していますが、吉本医師は内観療法研究の機関誌『やすら樹』に寄稿した『医療と内観~知足(ちそく)~』という文章の中で、以下のような主旨のことを述べておられます。
『知足(ちそく)という思想は中国の哲学者・老子が書いた「老子道徳経」に出てくるもので、「足るを知る者は富む」すなわち「今あるものの中に積極的に喜びを見出す生き方ができている者は幸いだ」という考え方である。
老子の思想と数多くの共通点を持つ中国仏教の禅宗にも同様の概念があり、京都の龍安寺にある蹲踞(つくばい)に記された「吾唯足知(われ、ただ、たることをしる)」という言葉も老子の理念と同じ意味である。
自分は精神科の医師として、「この患者さんは知足という考え方を持ってさえいれば病気にならなかったのではないか」と思うことがとても多い』
そして吉川先生は、
『境界性パーソナリティー障害とまでいえなくても、他人の生活水準より低いことを必要以上に恐れたり世間体を過剰に気にしていたらお金などいくらあっても足りないし、心身の健康という意味でもきわめて不安定な状態と言わざるをえない』
といった主旨の結論づけをされているのです。
●老後破産に陥ってしまった元プチ富裕層の人たちによく見られる傾向とは
それでは、保坂隆医師や吉本博昭医師らが異口同音に述べる“知足の心”という概念を念頭に置きながら、藤田孝典さんら社会福祉の専門家の人たちが共通して指摘する、“老後破産に陥ってしまった元プチ富裕層の人たちによく見られる傾向”についてまとめてみましょう。
筆者がみる限り、ざっと次のような点を挙げることができます。
●(1)持ち家にこだわるがゆえに身動きがとれなくなってしまった
現役時代の収入に比較的恵まれている大企業のサラリーマンの場合、住宅ローンが難なく組めるがゆえに、ややもすると分不相応な持ち家や分譲マンションにこだわる傾向があります。
同僚に対する見栄もあったでしょう。
ところがこれが意外とくせもので、自分や家族が思いがけず大病を患ったり介護を要するようになったりしたときに、ローンがあるがために身動きがとれず 、賃貸住宅で暮らす人のように安い家賃の住居に柔軟に移ることができずに破たんしてしまう。