2021年8月3日 17:59
「全員がレギュラー」EURO2020で53年ぶりの栄冠をもたらしたイタリア代表マンチーニ監督の「言葉の力」
小学生年代では、「全員出場させる」という方針を掲げているチームも増えつつありますが、まだまだ高学年になるとレギュラーと控えを分けるチームも少なくありません。
ましてや中学や高校、プロの世界などでは上手い選手がレギュラーとして毎回スタメンで出場し続けるのが当たり前と思っている親御さん・指導者は多いでしょう。実際に高いレベルのチームで「全員がレギュラー」と打ち出しているチームは見当たりません。
しかし、今年6月から7月にかけて開催されたEURO2020(※新型コロナウィルスの影響で1年延期)で優勝したイタリア代表が「全員レギュラー」を実現して話題になりました。国際大会に出場する強国の代表チームでどうして全員レギュラーを実現できたのか。マンチーニ監督の言葉を紐解きます。
(構成・文:熊崎敬)
■「全員がレギュラー」
実に13大会ぶりとなるヨーロッパ制覇を成し遂げたイタリア。7試合に及ぶ過酷なトーナメントの中での、マンチーニ監督の次のコメントが話題となりました。
「全員がレギュラーだ」
これは1-0で勝った、ウェールズとのグループステージ3戦目の直後に飛び出した言葉です。
すでにトルコ、スイスを破っていたイタリアは、この試合の前に決勝トーナメント進出を決めていました。そのため指揮官は、キャプテンのCBボヌッチ、GKドンナルンマ、MFジョルジーニョの3人を残して、スタメンを大幅に変更。そのことについて訊かれ、マンチーニ監督はこう答えました。
「今日、我々が示したのは、全員がレギュラーということ。だれもが勝利への欲求を表現し、やるべきことを果たした。我々には特定のレギュラーはおらず、そのときピッチに立つ11人がいるだけだ」
■誰が出てもチーム力が落ちなかったからこその言葉
「このフレーズは勝利監督の常套句ですね」
そう語るのは、名手バッジョに魅了され、イタリアに移住して23年、"カルチョ"に深く精通するジャーナリスト宮崎隆司さん。
「代表監督だけではなく、少年チームの監督もよく口にしますよ。
そう言うことでチームの結束が高まりますから」
日本なら、しばしば耳にする「全員野球」や2019年ラグビー・ワールドカップで流行した「ワンチーム」が、これと同じ文脈でしょう。言うまでもなく、どんなチームにもレギュラーとサブのヒエラルキーがあり、それはマンチーニのイタリアも例外ではありません。