2021年8月3日 17:59
「全員がレギュラー」EURO2020で53年ぶりの栄冠をもたらしたイタリア代表マンチーニ監督の「言葉の力」
ですが、宮崎さんはこう付け加えます。
「今大会のイタリアはレギュラーとサブの差が小さく、誰が出てもチーム力は落ちなかった。その意味で、マンチーニの言う"全員がレギュラー"という言葉は単なる常套句ではなかったと思います」
■W杯予選敗退の失意がユーロに向けての一体感や熱気を生んだ
宮崎さんによると、53年ぶりのヨーロッパ制覇は3年前の悪夢を抜きにしては考えられないといいます。言うまでもない、ワールドカップ予選敗退のことです。
「4度の世界一を誇るイタリア人にとって、"アッズーリ"のいないワールドカップなんてありえない。それが現実のものとなり、人々は失意のどん底に突き落とされました。ドイツ人やフランス人に嘲笑され、プライドを傷つけられていたこともあり、ユーロに向けて自然と国中に一体感や熱気が生まれたのです」
監督がマンチーニ氏だったことも、もちろん大きい。
「ワールドカップを逃したときの代表監督は、当時すでに70歳だったヴェントゥーラ。
現役時代の実績もなければ、指導者としてもビッグクラブでの経験は皆無に等しい。戦術は古く、求心力もない。そんな監督のもとで最悪の事態が起き、あとを託されたのがマンチーニだった。マンチーニは一見、優男風に見えますが胆力やカリスマ性があり、現役時代もバッジョに次ぐ実力者として尊敬されていました。そんなマンチーニだったからこそ、イタリアは復興できた言っても過言ではないと思います」
■絶対的エースがいないからこそ、総合力で戦う
監督が代わったといっても、今大会のイタリアは決してタレントに恵まれていたわけではありません。
「こいつがなんとかしてくれる」というエースがいないため、総合力が問われることになりました。実際に延長戦、90分、延長PK戦、延長PK戦と決勝トーナメントの厳しい戦いを勝ち上がることができたのは、マンチーニがスタメンと5人の交代枠(延長戦は6人)を上手く使いまわし、チームの力を最大限に引き出したからです。
7試合すべてでスタメンを飾ったのは、前述したドンナルンマ、ボヌッチ、ジョルジーニョの3人だけ。
マンチーニは登録26人中、23人を代わる代わるピッチに送り出しました。宮崎さんによると、4-3-3のいたるところにマンチーニ流の創意工夫が見られたといいます。
「前線で違いを生み出すのは、左サイドの10番インシーニェ。彼の突破力を生かすために、マンチーニは左SBスピナッツォーラに献身的なサポートを要求し、スピナも驚異的な運動量で応えました。