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「うちの子はMFに向いている」など親が子どものポジションに口出し。様々なポジションをさせる重要性をどう説けばいい?

サカイク
親がわが子のポジションに口出ししてくる。「うちの子は足が速いのでFW向きだと思います」「ボールコントロールが得意な方なのでMFが適正では」など親がさせたいポジションを指定。

低学年ではポジションを固定しなくていいと思うが、保護者達にどう説明すればいい?というお悩み。わが子のポジションを指定してくる親御さん、どうやら最近増えてきているようです。

今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、ポジション固定しない方がいい理由とお勧めの練習メニューを教えます。
(取材・文島沢優子)

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「うちの子はMFに向いている」など親が子どものポジションに口出し。様々なポジションをさせる重要性をどう説けばいい?

(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

<<飛び込んで交わされたり、バランスを崩して転ぶ1対1の守備を身につけさせるにはどうしたらいい?

<お父さんコーチからのご質問>

池上さん、こんにちは。私はわが子(小6)のチームで指導している保護者コーチです。


といっても、人数が足りなくて低学年(U-8)を見るのを手伝っている程度で、ちゃんとライセンスを持っているコーチが何人もいるので指導内容はその方たちが方針を決めています。

相談したいのはポジションのことです。子どもの頃はいろんなポジションをさせた方が良いと聞きますが、保護者がわが子にさせたいポジションがあるのか口を出してくることがあります。(私がコーチ陣の中では若い方なので言いやすいのだと思います)

「うちは足が速いのでFWが合っていると思います」「ボールコントロールが得意なので...(要は『MFが適正だと思う』という主張)」など、多くは前目のポジションをさせたがります。

先日、野球の新庄剛志監督も選手たちにいろんなポジションを体験させて、相手のことを理解させるトレーニングをしているとニュースで拝見し、様々なポジションを経験することはチームで連携するうえで大事なことなのかなと思いました。

低学年ではまだポジションは固定する必要がないと思いますが、保護者に理解いただけるようにするにはどうすればいいか悩んでいます。

池上さんはこれまでどのように対応(または説明)してきたか、教えていただけますと幸いです。

<池上さんのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。


親御さんはわが子に成長してもらいたいと願っていますが、指導者も当然ではありますが自分の教え子を伸ばしたいと思っています。目標の着地点は同じなのに、向かうプロセスがちょっと違うようです。それを踏まえ、このポジション問題については指導者から親御さんに説明する必要がありそうです。

■同じポジションを続けた方が上手くなる、と思っている理由


「フォワードならずっとフォワードと、低学年から高学年までずっと同じポジションをやったほうがサッカーが上手くなる」

例えば、そのように多くの保護者は考えています。そのほうが手っ取り早いと思っているようです。親御さんだけでなく、指導者においても長い間そう考えられてきました。

「ひとつのことを長くやればやるほどうまくなる」

スポーツでも、習い事でも、似た教育観が根付いていました。

ところが、サッカーではさまざまなポジションを経験したほうが、どこが自分に合ったポジションなのかがわかる。
そうやって積み上げてきたものが有効に働くと、今は考えられています。

私は北海道から沖縄まで全国各地の少年サッカーコーチの方と交流がありますが、近年は「小学生の間はいろんなポジションをやらせる」とおっしゃる方が断然増えています。

■成長すると「ポジションの適正」が変化する


小学生のうちにポジションを限定しないほうがいい理由は、中学生になって第二次性徴期に入ると体格などが大きく変化するからです。

身長がぐんと伸びる子、伸びない子の差が出てきます。体格が変わるので、小学生の時に足が速かった子があまり目立たなくなったり、そうでもなかった子が図抜けて速くなったりします。つまり、個々が持つ「ポジションの適性」が変化します。

これらのことを踏まえると、小学生の間にポジションを決めるのは非常に危険だと言えます。私がJリーグ2クラブで育成に携わった10数年間だけでも、ジュニアユースやユースの選手をよく見ると、個々の適性がポジションと合っていないケースは少なくありませんでした。


■「うちの子は○○のポジションでプレーしてほしい」という親の望みが重圧になる


これは子ども自身の希望があるのかもしれません。であれば、子どもたちの希望を聞きすぎてしまうのも問題かと思います。しかしながら、その背景には相談者さんが訴えている保護者の存在がありそうです。

親御さんの「うちの子は前めのポジションでプレーしてほしい」という望みが、子どもの重石になっていることも少なくないはずです。この親子の希望に加え、子どもの成長より勝利を優先しがちな指導者のエゴも作用します。

こうなってしまうと、子どもの将来のためになりません。サッカーをずっと続けてもらうためにも、サッカーのすべてのポジションを理解している、体験したことのある子どもに上のカテゴリーにあがってきてほしい。このようなことを、親御さんにも理解してもらうことが大事です。


■保護者にも学んでいただくこと。ともに学びあうことが大事


日本のサッカーでは、保護者の啓もうやきちんとした学びの場が設けられていません。仕組みがないので、各チームの指導者が伝えていくことが重要になります。そのためにも、指導者は勉強しなくてはなりません。「学ぶことをやめたら指導者ではない」の言葉は、どのスポーツでも言われていることです。

今はインターネットで世界中からあらゆる情報を入手することができます。ネットの記事や書籍などでも、最新の育成方法が紹介されています。そういったものをコーチの方が保護者や他の指導者に伝え、ともに学び合うことが大事です。

ご相談者様は幸い、「低学年ではまだポジションは固定する必要がないと思う」と理解してもらっているようです。
理解していますが、保護者に理解いただけるようにするにはどうすればいいか悩んでいます。

また、相談者は北海道日本ハムファイターズの新庄監督のことを例に挙げられていますが、この練習はプロ選手に向けたもので「他のポジションの選手の気持ちを知る」という目的のようです。

少年サッカーでさまざまポジションをプレーすることの目的はそこではないので、上述したように違う事例をもって伝えましょう。

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■さまざまなポジションを経験できる練習メニュー

「うちの子はMFに向いている」など親が子どものポジションに口出し。様々なポジションをさせる重要性をどう説けばいい?

(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)
さまざまなポジションを経験できるメニューと言えば、ドイツの小学校低学年の子どもたちが行う「フニーニョ」という3対3のミニゲームがあります。ゴールは左右に2つずつ。4つあります。小さな簡易ゴールやコーンにバーをのせた小さなもので十分です。


相手に攻撃されて守備に戻る際もゴールが2つあるため、3人で力を合わせて守らなくてはなりません。全員に守る習慣が植え付けられます。一方で、相手からボールを奪った瞬間、さあどこから攻撃したらいいか。最もいいポジションにいる味方にパスを出す判断をしなくてはならないので、そこで試合を組み立てる中盤の経験ができます。そうやって、シュートまで持ち込むプレーを3人全員が経験できます。

ドイツサッカー協会は、フニーニョをやっていくとフォワード、中盤、バックとすべてのポジションを全部経験できることを、実際にデータを取って検証しています。そのエビデンスに基づいて、協会はこのメニューを推奨しているのです。

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「うちの子はMFに向いている」など親が子どものポジションに口出し。様々なポジションをさせる重要性をどう説けばいい?


池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。

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