暴言で子どもの脳が萎縮する? サッカーにも学力にも悪影響しかない理由
■海馬が萎縮すると起こること
なお、海馬の萎縮は1度の暴言で起こるというよりは、慢性的にストレスにさらされていると次第に萎縮していく......というイメージが正解です。
それにより起こる怖いことは、例えば以下のことが考えられます。どちらもそうなってほしくないことですね。
・覚えることが苦手になり、学業成績が下がる
・サッカーで新しい技術を覚えることが難しくなる
■海馬の隣にある「扁桃体」にも影響が
脳の中で海馬がある部分の隣には、「扁桃体」という部分もあります。海馬と密接な関係があり、海馬の萎縮により扁桃体が過活動してしまうという相関性があります。
そうなると、不安が高まる傾向にあることがわかっています。
本来であれば扁桃体が得た不安を海馬が沈めてくれる関係性でもあるのですが、海馬が萎縮して働きが鈍くなるとそれができなくなることが原因です。
不安は誰しもが持つ感情ですが、鎮めるものがないとどんどん膨らんでいく傾向にあるため、海馬の役割は大切なのです。
■「サッカーが嫌いになる」→上達しないという負のループに
ここまでは、脳科学的に暴言をはじめとする慢性的なストレスが子どもの脳に与える事象について解説していただきました。
それらをふまえ、瀧先生がサッカー少年少女に懸念する暴言の影響は「サッカーが嫌いになる」ことだと話します。
サッカーをプレーするには技術はもちろん頭もかなり使うので、覚えられない、イライラする、不安になる、そしていつも怒られる......。
これらが常に起こっていたら楽しくサッカーなんてできません。ストレスを受けることはその原因を避けたいと思うようになるという脳の仕組みも影響があり、結果的に「嫌だ」と思うようになります。
「運動も勉強も、楽しむことはとても大切です。ストレスによってネガティブな影響を大きく受けてしまうと楽しくなくなる。その結果、サッカーのさまざまなスキルの向上を妨げてしまいます。記憶と感情が密接に関わっているからこそ、"好きこそものの上手なれ"とは脳科学的にもはっきりとYESと言える」そうです。
■指導者の暴言やハラスメントに対して、親ができること
暴言などによるストレスが子どもの脳に与える影響は思ったより大きいものです。
とはいえ、指導者の暴言を指摘したり止めさせることは、現実的にはその関係性によるところが大きいでしょう。