世界の映画館vol.34〜アジアの旅〜 中国・成都、筆談で映画チケットを買う
と英語で言っても通じない。「白飯」と書いて追加注文するのだ。日本人は漢字に慣れ親しんでいるのでまだ何とかなるが、これは欧米人にとっては辛い。それがこの街で外国人を見かけない大きな理由の一つなのかもしれない。
日本にない漢字を使った映画のタイトルをメモ帳にそのまま書き写し、その横に「6:10」と映画の始まる時間を書いて窓口で出す。指定席のようだが、どこでもいい。しかし、受付の女性は丁寧に僕に中国語で問いかけている。
「どこの席がいい?」
とでも言っているのだろうが、「前」と「後」の中国語の発音さえ僕にはわからないのだ。
これも筆談で「前」などと書けばいいのだが、そうすると更に次の質問がやってきそうな気がする。直接、パソコンの座席表示画面に触れることができればいいが、刑務所の面会室のようなガラス越しの受付ではそれもできない。
「どこでもいい。ど・こ・で・も・い・い」
あくまで筆談ではなく、日本語で言い、何とかチケットを手に入れた。
200名程度の劇場内では無料映画が始まっていた。チベット民族に関する政府が製作したドキュメンタリー映画のようである。成都と言えばラサに近いので、きっとチベット民族に対する意識も高い地域だと思う。