東大、簡単で省エネな医薬品合成法を開発 - 香料・農薬などへも応用可能
東京大学(東大)は4月16日、フロー精密合成という新しい手法によって医薬品有効成分であるロリプラムを高収率、高選択収率で合成することに成功したと発表した。
同成果は東大大学院理学系研究科の小林修 教授らの研究グループによるもので、4月16日付け(現地時間)の英科学誌「Nature」に掲載された。
医薬品原薬・化成品・農薬などの化学製品は、その99%以上がバッチ反応法という手法で合成されている。同手法は複雑な構造の化合物を作製できる一方、各段階で中間体の単離・精製操作を繰り返すため、余分なエネルギーが必要となり、廃棄物も大量に排出されるという課題があった。より省エネルギーで無駄の少ない流通法という手法もあるが、こちらは合成が難しく、アンモニアなど簡単な気体の合成に利用されるにとどまっていた。
小林教授らは流通法によって高収率、高選択収率を実現する合成手法を「フロー精密合成」と提唱し、その実現のために触媒や合成手法の開発を進め、さらに、個々の反応を組合せて、多段階流通システムを構築し、構造的に複雑な化合物を合成することを目指して研究を行ってきた。
今回の研究では、新たに開発した触媒を充填した4本のカラムに、市販の原料を順次通すだけで高純度のロリプラムを得ることに成功。