不十分な状態での細胞の初期化はがん化につながる - 京大など
一方で、7日間Doxを与え、さらにDoxを抜いて7日後に観察したところ、腎臓を初め各種臓器で腫瘍の形成が見られたが、こちらは奇形腫とは異なる、腫瘍を形成していたのである(画像1・2)。
今回の方法で作り出された腫瘍細胞が調べられた結果、小児腎臓がんである「腎芽腫」とよく似た性質を示していたという。これは、今回作り出したマウスが、腎芽腫のモデル系として有効なツールであることを示している。また、「エピゲノム」の状態(DNAのメチル化度合い)も調べられ、その結果、元の腎臓の状態を保持しつつも、部分的に多能性幹細胞(iPS/ES細胞)と似たパターンになっていることが明らかとなった(画像3・4)。
一般的にがんの形成は遺伝子の変異が蓄積することで生じると知られている。今回作り出した腎臓の腫瘍の細胞は腎芽腫にとてもよく似た性質を示していたが、遺伝子の変異は見つからなかったという。この細胞からiPS細胞を作り、腫瘍由来の細胞を含む「キメラマウス」が作られたが、そのマウスの体内では腫瘍由来の細胞も正常の腎臓を形成していることが確認された。これは、今回の腫瘍の形成には遺伝子の変異が決定的な要因ではなかったことを示しているとする(画像5・6)。