白騎士、見参 - 中国の新型ロケット「長征六号」が切り開く未来 (4) そして人類は2つの火星行きロケットを手に入れる
本件に関しては、新しい情報があり次第、またお伝えしたい。
過酸化水素とケロシンを使っていると仮定した場合、この組み合わせは触媒を介することで、混ぜ合わせるだけで自然に着火する性質(自己着火性)をもっている。そのため点火装置が不要になり、エンジンの軽量化、低コスト化が図れるほか、確実に点火することができるという利点がある。またエンジンの点火と停止を繰り返すことも比較的簡単にできるため、微調整によって軌道への投入精度を上げたり、複数の小型衛星をそれぞれ異なる軌道に投入したりといった、高い柔軟性、汎用性を実現することができる。
この自己着火性は、従来の長征ロケットで使われていた、四酸化二窒素と非対称ジメチルヒドラジンの組み合わせにもあるが、この組み合わせは推進剤自身にも、また燃焼ガスにも高い毒性がある。だが、過酸化水素とケロシンであれば、自己着火性はそのままに、環境や人体にやさしいロケットにすることができる。
この過酸化水素とケロシンという組み合わせは、過去に英国の「ブラック・アロウ」ロケットぐらいでしか実用化されたことはない。また過酸化水素は反応性が強いため、取り扱いも難しい。
中国にとっては、従来の長征ロケットと同じヒドラジン系の推進剤を使い続けるほうが、多くの面で都合が良かったはずだが、あえて過酸化水素を選択したとしたら、そこには環境や人体への配慮と、新しい技術を積極的に取り入れる貪欲さがあると見て良いだろう。