幼児からの英語教育は必要なし!? 黒川伊保子さんが提案する「しあわせ脳」の伸ばしかた
私自身は、息子に、数や文字を教えることも躊躇しました。小学校の教室で、彼は「数」に出逢いました。ある日、「ママ、7と8って、足すと15になるんだよ。知ってた!? おいら、笑いが止まらなくてさ(くくく)」というので、「どうして? 」と尋ねたら(あまりに楽しそうだったので、つられて笑いながら)、「だって、7と8って、半端な数じゃん。しかも半端さの色合いが違うでしょ。なのに、足しちゃうときりがいい数字になっちゃうなんて(ははは)」と爆笑してました。
数を知らないまま小学校に入ったのに、息子はそのまま理系の教科を愛し抜き、大学では物理学を専攻しています。なにより大事なのは好奇心を萎えさせないこと。
好奇心さえあれば、グローバルな世界に飛び込んでいくことだってできると、私は信じています。
さて、脳の神経回路は、「心を動かすこと」によって発達します。つまり、脳は喜怒哀楽の情緒の波の中で、育まれていくものなんです。最適な室温の中で、365日ずっとニコニコして美味しいお料理を出して…なんて、何もストレスがない生活を送っていたら脳もぼんやりしてしまう。
そう考えると、働くお母さんであることは、かえってアドバンテージじゃないかしら。保育園で朝、母親と別れて寂しくて、でも夕方また会って嬉しくて。
そんな刺激によって、脳の神経回路も発達していくんですから。
一日家にいるお母さんも子供にムカついたら叱ればいい。
もし自分が悪いと反省したら、「私が悪かったね」とあやまればいいんです。それで、「女の人は理不尽に叱るんだな」ということが分かれば、将来奥さんが怒ったときも、まあそんなもんだと思える。つまり、モテる男にもなれちゃうかも。
つまり、世の中にあるものは、何だって脳の刺激だってこと。お部屋だって、いつも完璧に片づけてあるよりも、ときにはおもちゃで散らかっているほうがいいんです。
箪笥から出ている洋服とか、そのへんに落ちてるティッシュの箱とかが脳を刺激することもある。お母さんが意図的に差し出す知育積み木よりも、そういう偶発性のイベントは、脳にいい。ものごとはおおらかに考えましょ。
家事は完璧、いつも叱らないハッピーママで、英才教育もばっちり…なんて、脳科学上は、ちょっと恐ろしいってことなんだから。
黒川 伊保子さんプロフィール:
(くろかわ いほこ)奈良女子大学理学部物理学科卒業。株式会社「感性リサーチ」代表取締役。人工知能の研究に携わったのち、脳と言葉の研究を始める。語感と人間の意識の関係を発見し、独自のマーケティング論が各企業からの注目を浴びる。ユーモアを織り込んだ的確なコメントや、女性ならではの柔らかな感性、言い回しに雑誌やラジオほか、テレビでも引っ張りだこ。朝日ワイドスクランブル火曜日レギュラーとしても活躍。最新刊、「キレる女 懲りない男-男と女の脳科学」(ちくま書房)も好評。
(取材・文:安田 光絵)
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