ノワール ケイ ニノミヤ 2021年春夏コレクション - ポジティヴなエネルギーは幻想と交わり…
なるほどリボンは甘く可憐な装飾モチーフであるが、きゅっと結びつけることで身体を抑え込むこともできるのだ。スリーブ部分を消去し、腕を外に露わにすることも叶わぬドレスは、締め付けられたようなトップスから裾にかけて不穏にAラインを描くとともに、豊かに咲き誇るリボンやラッフルでもって、顔までも埋め尽くしている。
また、網目状のニットは柔らかな表情を生み出すものの、どこか果物を包むネットのようにして身体を覆わんとしている。他方で、ふわりと風に揺れるようなオーガンザは淡いピンク色に染まり、気分は明るげだ。ピンクの色合いや数多とあしらわれたリボンはたしかに甘く明るい雰囲気を漂わせるものの、ウェア一面を覆い尽くすその執拗さは、ほとんど祈りのそれに近くも感じられる。
幻想的な明るさ
拘束と装飾というリボンが有する両義性が、コレクションを陰鬱さから明るさへと反転させる要石として作用しているようにも思われる。この“明るさ”。今季のコレクションでは、パリと変わらない姿勢を貫きながらもポジティヴなエネルギーを表現したかったとデザイナーの二宮啓は語る。
いわゆるガーリーとでもいえるような、たっぷりのフリルやリボンが甘く揺らめくピンクのジャケットやドレスは、ほとんどオプティミスティックとまでいえる明るさの幻想的な表れだろう。