狩野派の襖絵や浮世絵、工芸まで儒教思想を映し出した美術作品を紹介『儒教のかたち こころの鑑』サントリー美術館で
なかでも特に興味深いのは、「勧戒画(かんかいが)」と呼ばれる絵画群だ。「善を勧め、悪を戒める」という意味の勧戒画は、儒教思想をもとに中国で成立した画題を描いたもので、例えば親孝行などの優れた行いをした24人の中国古代の人物を描く「二十四孝図」などの画題が知られる。同展では、為政者と関係の深い狩野派をはじめとする絵師が制作した大画面の豪華な障子絵や襖絵などが登場する。
重要文化財名古屋城本丸御殿上洛殿襖絵帝鑑図露台惜費狩野探幽四枚四面寛 永11年(1634)名古屋城総合事務所【展示期間:12/25〜1/26】
もうひとつ興味深いのは、江戸時代の展開だ。儒教における優れた君主の出現を象徴する鳳凰(ほうおう)図など、幕府の中枢で活躍した狩野派の絵師による華麗な絵画や優れた工芸作品が紹介される一方で、儒教が民衆に浸透したことで登場した浮世絵や読本、そして歌舞伎に関わる作品も並ぶ。展覧会ちらしにも記された「美を温(たづ)ねて新しきを知る」の語は、孔子の『論語』にある「温故知新(ふるきをたづねて新しきを知る)」にちなむもの。日本美術の名品を通じ、改めて心の理想となるものに思いを馳せたい。
<開催概要>
『儒教のかたちこころの鑑ー日本美術に見る儒教ー』
会期:2024年11月27日(水)