2022年6月8日 10:00
ミュージカル『スワンキング』通し稽古レポート ~新たなオリジナルミュージカルの扉が開く~
偉大な作曲家・リストの娘で夫を持つ身でありながら、ワーグナーのもとへ走って彼を支え、次第にプロデュースすらしていくコージマ(梅田彩佳)、敬愛するワーグナーに妻を奪われ苦悩する指揮者のビューロー(渡辺大輔)、その優しさゆえに心がむしばまれていくルートヴィヒ二世の弟・オットー(今江大地)、宰相として冷静な視点を持ち国王を支えるルッツ(牧田哲也)。
さらに『スワンキング』にはミュージカルラバーに馴染み深い人物も登場する。その筆頭が夢咲ねね演じるエリザベート(シシィ)だ。じつはシシィ、史実でもルートヴィヒ二世にとっては姉のような存在で、この作品では特に冒頭とラストで重要な役割を果たす。シシィの妹・ソフィや母・ルドヴィカも作中に存在するので、ミュージカル『エリザベート』と同時代の物語という視点でも楽しめそうである。
日本のオリジナルミュージカルのアキレス腱が音楽ともいわれるが、本作『スワンキング』においてそのロジックは通用しない。これまでおもに三谷幸喜と組み『ショーガール』や『日本の歴史』といった作品を成功させてきた荻野清子の楽曲は壮大かつ繊細で、一瞬のうちに私たちを19世紀のバイエルンへと連れ去ってくれる。