小沢道成の才気みなぎるひとり芝居『鶴かもしれない2020』が開幕
本作の下敷きとなっているのは、昔話の『鶴の恩返し』。命を救ってくれた男のために、自分の羽をむしってまで美しい機(はた)を織り上げた鶴の物語と、現代の東京で出会った若い男女のすれ違いをオーバーラップさせながら、物語が進んでいく。3台のラジカセを使った独特の演出スタイルや、いくつものギミックが仕掛けられた舞台美術など、見どころはさまざまだが、最大の魅力は切れ味鋭い小沢のセリフ術。
愛する男に喜んでほしい。ただそれだけなのに、不器用な女はつい方法を間違えてしまう。女がとった行動は確かにアンモラルかもしれない。だけど、そんなふうにしか愛を表現できない気持ちは、きっと多くの人が共感できるはず。いびつで、過剰で、痛々しい女の愛し方と、それに戸惑う男の本音を炙り出す小沢の生々しいセリフは、大なり小なり修羅場を経験してきた大人たちにはまるで自分に浴びせかけられているようで、つい耳を塞ぎたくなりながらも、どうしようもなく哀れでまっすぐな女に心がシンクロしてしまう。
どれだけ年を重ねても、愛し方だけは上手くならない。そんな愛することが下手で不器用なすべての人たちに観てほしい会心の1本だ。
文:横川良明
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