「喜劇は悲劇、悲劇は喜劇」ー演劇ジャーナリスト・大島幸久が観た『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』
狂ったように叫び、床を這いずり回り、倒れ込む。犯人探しのため、マスクを着けて客席通路まで乗り出した独り言。金、イコール全てを失った男の哀れな姿、狂気の主人公。
そして最終景である。盗まれた宝箱が戻り、まるで幼い子供のように抱き締める。最後はひとり、後ろ向きで舞台奥へと、ゆっくり歩みを進めた。金しか頼むものはない孤独な老人。底の方の悲しみを出した憂愁味だ。
はるか昔、354年前に初演された作品である。ところで、金持ちほど財産を増やし、貧乏人は小金を使うのは古今東西、不変のようだ。あ~あ、人間という生き物は……。(11月24日初見)
<公演情報>
『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』
2022年11月23日(水・祝)~2022年12月11日(日)
会場:東京芸術劇場 プレイハウス
2022年12月15日(木)
会場:宮城・えずこホール(仙南芸術文化センター)大ホール
2023年1月6日(金)~9日(月・祝)
会場:大阪・森ノ宮ピロティホール
2023年1月14日(土)
会場:高知・高知県立県民文化ホールオレンジホール
プロフィール
大島幸久(おおしま・ゆきひさ)
東京都生まれ。団塊の世代。