ボクシングがテーマのオペラ誕生! METライブビューイング『チャンピオン』
伝統的な名作オペラを上演する一方、現代作曲家による新作オペラを世に送り出すという革新的な試みによって、新たなオペラの未来を創造する。ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場(MET)の価値と輝きの理由はこの2点において圧倒的な実績を上げ続けていることによるだろう。
その試みは今シーズンも例外ではない。ヴェルディの『椿姫』やワーグナーの『ローエングリン』に、R.シュトラウスの『椿姫』、そしてモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』『魔笛』といったオペラ史上に輝く超人気作品と共にプログラミングされているのが、世界初演となるケヴィン・ブッツの『めぐりあう時間たち』と現役バリバリのジャズ界のスター、テレンス・ブランチャードの『チャンピオン』なのだから興味深い。
その『チャンピオン』のMETライブビューイング上演が目前だ。昨シーズン大きな話題を呼んだ『ファイアー・シャット・アップ・イン・マイ・ボーンズ』において、オペラ作曲家としての実力を証明したテレンス・ブランチャードの、オペラ第1作となる今作『チャンピオン』のテーマは何とボクシング。その内容は、対戦相手にゲイであることをからかわれ、試合で相手を殺してしまった実在の黒人ボクサーの苦悩と葛藤が描かれているというから斬新だ。