くらし情報『勘九郎・七之助8年ぶりの明治座公演上演中! 「明治座 十一月花形歌舞伎」昼の部『一本刀土俵入』観劇レポート』

勘九郎・七之助8年ぶりの明治座公演上演中! 「明治座 十一月花形歌舞伎」昼の部『一本刀土俵入』観劇レポート

茂兵衛は生まれ故郷の上州訛り。お蔦の使う言葉も取手か八尾のそれなのか、江戸弁ではないようだ。お蔦からすれば最初は気まぐれな同情だったかもしれない。だが次第にふたりの間に、故郷からはじき出された者にしかわからない生きることの苦みが通い合ったように見えた。茂兵衛が行ってしまってからも、お蔦はひとり窓辺に腰かけ冷酒をあおっている。三味線を爪弾きおわら節を口ずさむ後ろ姿に、やるせない寂しさが滲んだ。

勘九郎・七之助8年ぶりの明治座公演上演中! 「明治座 十一月花形歌舞伎」昼の部『一本刀土俵入』観劇レポート

「明治座 十一月花形歌舞伎」『一本刀土俵入』より、中村七之助(C)松竹
この時の茂兵衛はひたすらに純朴な、世間を知らない取り的だった。しかし十年後の茂兵衛は別人のよう。
我孫子にほど近い七里の渡し場に、すっきりと様子の変わった茂兵衛が現れる。花道を出てきただけでただ者ではない空気を放つ。スッと姿勢も良く目線鋭く、上州訛りもすっかり消えた渡世人だった。

大工や船頭にはあくまでも礼儀正しくふるまうが、浪一里儀十の子分・掘下根吉たちを相手のやりとりは、明らかに堅気のそれではない一つひとつの言葉がその場の空気を一気に塗り替えてしまう。
「次第によっちゃ勘弁する。次第によっちゃあ勘弁ならねえ。というのは改めて言うまでもねえことだが、ブ職同士のことだからな。

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