“俳優・大倉忠義”の魅力はどこにある? 行定勲監督が語る
多くは語らない、わかりやすくは表現しない。しかし、劇中の多くの人物が恭一に惹かれていく。
「彼の持ち合わせているリズムのようなものかもしれないですけど、彼には良い意味での“暗さ”みたいなものがあるんですよ。底知れぬ闇のような、それが本当は闇なのかすらわからないような……そういう部分が大倉の色気に見えたりもするんですよね。それに対峙する成田凌は、その暗さだったり闇に入っていっては何があるのかわからないまま振り回されている部分があって、そこは原作(本作は水城せとなのコミックが原作)とは少し違うところかもしれません。恭一は振り回される役なんだけど、ふたりの演技を決定づけているのは大倉忠義だと思う」
恭一は一体、何を考えているのか? 彼は誰を、なにを大切しているのか? 観客もそれを探りながら映画を観ていき、やがてその変化や心のうちを、彼のちょっとした表情の変化や仕草、視線から感じられるようになるはずだ。「大倉忠義はすごく良い意味で人間が“わかりにくい”んです。演じる上で造形する人間も、やろうと思えば、もっとわかりやすくできるとは思うんですよ。
もっと狼狽したり、もっと逡巡したり……脚本にそう書かれていたら、俳優はオーバーにやりがちですよね。