名作『カラーパープル』がミュージカルに! 心の奥底の想いが歌とメロディになって放たれる!
映画の冒頭、教会で華やかなミュージカルシーンが描かれるが、セリーは笑顔もなく、歌うことも踊ることもしない。彼女は自分の中にある感情を表に出せない、笑わない、言いたいことを言えない”声のない人間”として登場する。
そんな彼女が細い声で歌うのは、誰よりも信頼する妹といる時だ。快活で、どんな状況も“自分の気持ちの持ち方ひとつ”だと信じる妹の歌声に導かれるようにセリーは少しずつ笑顔を取り戻し、喜びや冒険心が小さな歌声になって表現される。
映画が始まってわずか数分。本作はミュージカルナンバーを見事に配置して主人公がどんな人物なのか、どんな心の状態なのか、誰といるときに心が安らぐのかをセリフを使わずに観客の心にダイレクトに伝えてしまう。ミュージカルシーンは単なる“盛り上げどころ”や“歌唱&ダンス”ではない。言葉では説明し尽くせない感情、人間関係、心の奥底に眠る想いが歌声になる、メロディになって放たれる。
無理に言葉にするならば、本作の歌と踊りは“ソウル”の塊だ。『カラーパープル』では、そんなセリーにさまざまな出来事が起こり、彼女の人生は流転していく。そして、彼女の心の変化を反映するようにミュージカルシーンもさまざまな姿に変化していく。