現代に蘇る復讐とやり直しの物語。木ノ下歌舞伎『義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー』
観る者は今を生きる人々と同じ感覚で登場人物のやりとりを受け取る。その中にさし挟まれる古典らしい着物姿、歌舞伎ならではの節回しが際立ち、描かれたテーマの大きさをいつの間にか肌で感じることとなる。
歌舞伎を新しい形で伝えるという難しい演技に挑むのは、2016年の上演時と同じメンバーの佐藤誠、大川潤子、立蔵葉子、夏目慎也、武谷公雄、佐山和泉、山本雅幸、大石将弘、さらに今回初参加となる三島景太(SPAC)という、いずれ劣らぬいずれ劣らぬ小劇場界の手練れたちが揃っている。
主宰の木ノ下は、再演にあたっても毎回新たに作品にあたり、補綴を繰り返す。そもそも、「渡海屋・大物浦」はシンプルな1対1の復讐ではなく、源氏が勝って平氏が敗けるという大きな歴史をやり直そうという企みであり、知盛は平家全体を背負って義経へと襲いかかる。 コロナという未曾有の敵に遭遇し、2020年という年を喪ったままのような私たちは、いま知盛の「やり直し」を観てどう感じるだろうか。
文:釣木文恵
木ノ下歌舞伎『義経千本桜-渡海屋・大物浦-』
作:竹田出雲 / 三好松洛 / 並木千柳
監修・補綴:木ノ下裕一
演出:多田淳之介
出演:佐藤誠 / 大川潤子 / 立蔵葉子
夏目慎也 / 武谷公雄 / 佐山和泉 / 山本雅幸
三島景太 / 大石将弘
【東京公演】
2021年2月26日(金)