19世紀、フランスの作家デュマの実体験をもとに書かれた『椿姫』は、パリの裏社交界という特殊な世界を題材に採りながら、オペラや映画化もされ、幾度となく舞台化されてきた恋愛小説。多くのパトロンを持つ高級娼婦マルグリットが、若く純朴な青年アルマンと出会い、何もかも捨てて愛に生きようとするも、彼のために身を引くというストーリーだ。
「最初に『椿姫』上演を松竹に頼まれ(1968年)、三島(由紀夫)さんに脚本を依頼した時“君みたいな太々しい人に肺病で死ぬ役なんて似合わないよ”と断られたの(笑)。でも、いざ上演したら多くの方に“『椿姫』が単なるメロドラマにならず、これほど感動するとは等々”と言っていただけました」。
今回も、「美輪版」と付いているだけあって、ストーリーの細かい部分を補強。と同時に、膨大な知識と審美眼をもとに、美輪自身が演出、美術、衣裳、音楽も担当、原作の時代や世界観を一層強く感じられる仕様に仕立てられている。
「視覚でも聴覚でも、作品の世界を感じていただきたい。実は嗅覚にもこだわって、プロデューサーにお願いして開演前の客席に、伽羅系のお香を炊いていただいているんですよ」。
五感すべてで“美輪さまの愛”を感じられそうだ。