シナトラの未発表音源も使用! 『カム・フライ・アウェイ』は何がすごいか
男女の機微を描いた『Luck be a Lady』『Fly Me to the Moon』などの歌の世界が、各場面の様子と絶妙にマッチする。
世界的振付家であるトワイラ・サープが本作を発表したのは、2009年のこと。彼女は以前にも、ビリー・ジョエルの楽曲を使った『Movin’ Out』(2002)、ボブ・ディランをフィーチャーした『The Times They Are A-Changin’』(2006)を手がけている。先のふたりはシンガー・ソングライターであり、楽曲の世界観に一貫性があるが、歌手専業のシナトラは事情が違う。音楽に造詣の深いサープがそれでもなおシナトラにこだわった訳はどこにあるのか、話を訊いた。
「シナトラは、リズム感やフレージングが素晴らしいし、詞のドラマ性を見事に表現した人。彼が歌うと、ポップソングがアリアのように劇的に聞こえるんです。作詞作曲が彼でなくても、そこにはいつもシナトラの主張があり、意志があり、真意があります。
この舞台では、そんな彼が生前に録音した1000曲以上の中から、最高のパフォーマンスを選び、未発表音源も使用しています。たとえば、『Stardust』はオーケストラと一緒に録音されたものだったのですが、それに手を入れてア・カペラに加工したんです。