ドイツ各地の歌劇場でアシスタントとして研鑽を積むという、典型的なドイツのオペラ指揮者らしいキャリアを重ね、34歳でフライブルク歌劇場の音楽監督として開花。1970年代後半からは、世界の主要歌劇場で彼が招かれていない劇場がないと言えるほど旺盛に活躍していた。ところが45歳でフランス放送フィルハーモニーの音楽監督に就任した頃からオペラ指揮の活動を縮小し、今度はシンフォニー指揮者としての名声を高めてきた。
過度な感情移入を排した、緻密で正確な解釈で高い評価を得ているヤノフスキ。といっても面白味のない音楽作りとは正反対で、理詰めで読み込んだ楽譜を丁寧に解きほぐし、作品本来の構造をくっきりと浮かび上がらせて感動を形作る、確かな手腕を持っている人だ。その手腕が、堅牢な楽曲構造そのものが魅力のドイツ音楽で本領を発揮するのは言うまでもない。だから、ドイツ音楽の王道プログラムを携えてやってくる彼らの来日公演は大注目。古典的な渋い輝きをたたえたブラームスの交響曲、そして「ドイツ音楽ここに極まれり」というようなブルックナーの交響曲第8番。
「正統」という言葉の意味を噛み締めながら楽しみたい。
文・宮本明
◆マレク・ヤノフスキ指揮ベルリン放送交響楽団
2015/3/15(日)