ほぼ全編を歌のみで綴るミュージカルはそれまでの宝塚作品にはなく、とにかく音楽の量に驚いた、とは初演の雪組公演出演者が口を揃えて言うところ。花總も「初演の時は無我夢中で大変でした。難しい曲ばかりでしたし。でもこの作品はタダモノではない、というのはやりながら感じていましたし、初日のお客さまの拍手はものすごかった」と当時を振り返る。日本人にこれほど受け入れられたのは「共感できるところが多い。それに音楽が胸に響くし、身体に残るんですよね」と分析。
とはいえ、東宝版と宝塚版では様々な点が異なっている。オーストリア皇后エリザベートと、彼女に魅せられたトート(死)の愛憎劇という主軸は変わらないが、なんといってもエリザベートを主人公にした東宝版と、トートを主人公にした宝塚版、というのは大きな違いだ。
「東宝版を観てこんなにもエリザベートという役の大きさが違うんだ、というのは驚きでした」。ただ、役のオファーがあった時、「悩むことはなかった」という。「今この時期にこの役にチャレンジできるということは、私にとってもすごく良い機会。もちろん責任重大ですが、もう一度エリザベートと向き合えること、新たに作品に取り組めること、ふたつの期待感を抱いています」。