くらし情報『戦後70年の夏に問う、「いのち」の物語』

戦後70年の夏に問う、「いのち」の物語

、被爆者である自分は愛する人を幸せにできないと思い込む夏子の心の葛藤…。戦争や大量殺戮の悲劇は、つまるところ人間一人ひとりの等身大の悲劇として発現するからこそ悲劇なのだということに、あらためて気づく。

そんなシリアスな社会的なテーマの一方で、方言はもちろん、長崎のわらべ歌やご当地自慢、はたまた長崎を舞台にしたプッチーニのオペラ「蝶々夫人」の一節が登場するなど、地方色豊かなエンタテインメント性が盛り込まれているのも楽しい。

作曲者の錦かよ子は愛知芸大で石井歓に師事。すでに数曲のオペラを発表するなど、拠点の三重県を中心に他分野で活動している。「いのち」は聴きやすい調的な響きを軸にした音楽で、けっして難解な現代作品ではない。第2幕の原爆投下シーンでも過度に激しく厳しい表現は用いず、そのぶん、聴く側の耳とイマジネーションで脳内に「リアル」を創る余地を与えてくれる。

出演は長崎県オペラ協会所属の歌手を中心とする、初演時とほぼ同じメンバー。
2管編成の管弦楽はOMURA室内合奏団。さらに同協会の合唱団と児童合唱団、かとうフィーリングアートバレエと、長崎勢による「引っ越し公演」だ。全3幕。2回の休憩を含めた上映時間は約2時間30分。

文:宮本明

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