一方で、柚希扮するブロードウェイに憧れる少女がスターになっていく姿を描いた場面は、様々な作品のナンバーをコラージュし、名曲の新たな魅力を引き出している。名シーンを並べるだけではない粋な構成は、さすがブロードウェイ仕込みだ。
柚希はそのほか、『くたばれ!ヤンキース』のナンバーで、トニー・ヤズベック扮するジョーを誘惑する女性・ローラを黒の下着姿で演じるシーンも。魅惑的な中にコミカルさもあり、キュートな場面に客席も大喜びだ。ブロードウェイのスターたちの中にいても、伸びやかなダンスとセクシーな歌声は目立ち、なによりも華やか。彼女のパフォーマーとしての才能を改めて感じた。
『屋根の上のヴァイオリン弾き』『エビータ』『蜘蛛女のキス』『スウィーニー・トッド』…と、日本でもおなじみの楽曲が続き、あの作品も、この作品も巨匠の作品だったか…と、その豪華さにめまいを感じながら観ていくと、最後は新曲『ウェイト・ティル・ユー・シー・ワッツ・ネクスト』。「道の向こうに何があるのか、次に何が起こるのかを待とう」「やってみよう」「前を見よう」という明るいナンバーで締めくくられる。
ハロルドの人生の軌跡を辿りながら、観ているこちら側の背中も押されるような素敵なミュージカル・ショーだ。