脚本・演出の鈴木が“出版不況、格差、人は見た目が9割問題、メディアの危機、高齢者婚活、東京と地方、年齢詐称疑惑、舛添さん、センテンススプリング問題、ダメージジーンズ問題”と紹介しているように時事ネタも多く、今の時代の縮図のような状況が多く描かれている。だがそれらをただ茶化して笑わせるのではなく、まず鈴木の温かな目線があり、梨子役の岩橋道子をはじめ役者たちの芝居が魅力的に描き出す。だから観客は何も考えずに思い切り笑えるし、晴れやかな気分になれる。リラックスして自由な空気で楽しめるムードも舞台から漂ってくるものだろう。
演劇好きやラッパ屋ファンはもちろんだが、演劇ビギナーも楽しめる作品。特に仕事をしている人なら、職場のうるさい上司やイマイチ理解できない部下、さらにはあまり関わり合いのない取引先の人まで、なんだか愛おしく見えてきそうだ。物語には清々しい大団円が待っている。そんな大団円の末に生まれた、梨子の“人生の筋書き探し”の行方はぜひ劇場で確かめてほしい。
ラッパ屋第42回公演『筋書ナシコ』は、6月26日(日)まで、東京・紀伊國屋ホールにて。チケットは発売中。
取材・文:中川實穗