大竹しのぶがエリート医師を熱演。『ザ・ドクター』開幕
と口にする。カトリック教徒かユダヤ教徒か、白人か黒人か、男か女か。彼女はあくまで“医師”であり、その仕事を全うしただけ。だが果たしてそうなのか――。本作が興味深いのは、これらの問題を前半から中盤では、登場人物たち(その多くは医師)の会話からあぶり出していくことだ。さらに舞台は、閉ざされた医療施設から開かれたディベート番組の収録現場へ。そこで見えてくるものとは……。ぜひ劇場で目撃して欲しい。
この作品の核となるのは、やはりルースの存在だ。トップクラスの医療施設の所長にして医師、というある意味で画一化してしまいそうな人物を、ここまで多面的に、生きた人間として演じられるのは、大竹をおいてほかにいないだろう。さらに言えば、ルースの強さと弱さを表現したかのような、服部基の照明の力も大きい。そんな大竹や橋本さとしといったベテラン陣の中でもひけをとらず、若手の俳優陣がそろって良いのが頼もしい。同じチームの医師であるコプリー役の宮崎秋人、若手医師(役名そのままだ)役の那須凛、ルースの小さな友人サミ役の天野はな。栗山の演出のもと、確実に成長した姿を見せてくれており、そういったところにも注目してほしい。
取材・文:野上瑠美子
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