そのため、実際には見ることのできないミイラ内部の構造や、病理の痕跡も発見できるようになった。本展ではCTスキャン画像をもとにした高精度の映像も見ることができ、6体のミイラの中には動脈硬化やがん、虫歯の痕跡があったものも。死後にミイラ化されるのはいわゆる上流階級の人々で、その裕福な暮らしぶりから今の私たちと変わらない現代病に侵されていたと考えられる。
また、今回の見どころはミイラ本体を通し、ミイラに込められた当時の人々の死生観や信仰心、食や美的感覚などの生活面にも触れられることだろう。数々の展示品は、「食」「健康」「音楽」「家族」などのテーマに沿って並ぶ。乾燥させた内臓を収める「カノポス壺」といったミイラ作りのための器や道具、死者を守る動物型の護符、食べ物や美しい装飾具など、眺めていると時間を忘れてしまうほど。
展示のラストには、本展の日本側監修を務めた河合望・金沢大学教授のチームが発掘した「サッカラ遺跡」のダイナミックな実寸代模型が控えている。遺跡は「カタコンベ」と呼ばれる地下の集団墓地で、その入口と内部を詳細に具現化。
通常入ることができない発掘中の様子をうかがい知ることができる、貴重な日本独自の展示に。