1142名から選ばれた入選作を展示 『FACE展 2022』開催中
展示の最初を飾るのは、今回の“グランプリ”受賞作品である新藤杏子の『Farewell』。このタイトルには“長い別れ”との意味があるという。鏡をうっとり見つめていた5歳の息子の姿に、湖に映る自身の姿に見惚れるあまり、衰弱死したナルキッソスの影を見た新藤。彼女は「自己をみつめて、今までの価値観に別れを告げ、新しく思考を変化させて再生していかなければならないことがめまぐるしく起こっているように思えます。それは私たち自身がまるで、ナルキッソスのようではないか、と取り留めもなく考えを巡らせたことからこの作品を制作するに至りました」と、本作に寄せる想いを語っている。
また今回はグランプリのほかに“優秀賞”3点、“読売新聞社賞”1点、“審査員特別賞”4点が選ばれている。その中で特に筆者の目を引いたのは、石神雄介の『星を見た日』。寒空の下、身を寄せ合うふたりは、ただ静かに暗闇に走る流れ星を見つめている。
冬の夜の一瞬を捉えながら、本作の画面を満たしているのは、何とも言えない温かみ。これは本作以外にも言えることだが、色選び、色使いが光る作品が多いのも、本展を味わう大きな楽しみのひとつだと言えるだろう。