ドーンは本当のことを話すのがあなたの責任だと説明するがーー。
非常に濃密な会話劇。この日の稽古は、まず冒頭のシーンであるウィリアムとジェフの2人だけのシーンを繰り返した。膨大なセリフはすでに俳優たちの頭に入っていて、今は細かいニュアンスあるいは全体の流れの調整をしている段階。桑原の演出は、基本的に俳優たちのプランを信頼していると思うが、気になったことは細かく指摘する印象を持った。たった4人の登場人物たちが織りなす芝居ゆえ、丁寧につくりあげているのだろう。
登場人物たちそれぞれが悩んだり迷ったりしつつ発言し、その発言が思わぬ方向に人を動かしてしまったり、自分の正義や価値観が他人には通じなかったり......。マンションのロビーという空間で繰り広げられる人間模様が描かれているが、それは人種やジェンダー、階層などさまざまに絡み合う差別の実情と、それに抗い、葛藤する人々の姿でもある。
自己承認欲求がSNSであふれ出す現代で、さまざまな角度から考えられ、また身近に感じる戯曲。どんな仕上がりになるのか、開幕を待とう。
公演は5月22日(日)まで。
取材・文:五月女菜穂