くらし情報『在日ファンクが生むグルーヴのもと、古川雄輝ら躍動『室温~夜の音楽~』上演中』

在日ファンクが生むグルーヴのもと、古川雄輝ら躍動『室温~夜の音楽~』上演中

被害者の家族や周囲の人々に対して強く出られないという立場上、感情を剥き出しにするシーンは少ないが、表情や間といった台本上セリフに起こされない“オフ芝居”に注目したい。

キオリを演じる平野も、単なる被害者の姉にとどまらない存在感を見せつける。キオリは何かと海老沢家に立ち寄る下平に金銭を求め、「東京へ行く」と嘘をついて母親に会うなどひと筋縄ではいかないキャラクター。間宮を冷たくあしらう声色、媚態の一歩手前で下平を籠絡する視線など出色の表現力で劇世界に貢献していた。なお持ち前の歌声はカーテンコールで耳にすることができるだろう。

事前の取材会で河原が言及したように、サオリの死は東京・埼玉で発生した実在の「女子高生コンクリート詰め殺人事件」(1988~89年)がモチーフとなっている。事件の痛ましい描写をはじめ、得体の知れないキャラクターが生み出す薄気味悪さ・違和感が全編に潜む一方で、時折挟まれる在日ファンクの生演奏パフォーマンスが作品にサイケデリックな“陽”の雰囲気を持ち込む。グルーヴ感に満ちた彼らの既存曲や本作に書き下ろしたナンバーが不条理な空気をいかに転化させるか──。
バンドと役人物を行き交い、劇中でコミックリリーフ的な役割を果たす浜野の躍動にも注目だ。

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