今しかできない若さと表現 舞台『BLINK』上演中
基本的にジョナとソフィの独白によって展開する、“不思議”な舞台。自身の環境を物語る台詞が中心で、脚本を読むだけでは飽きてしまいそうなものだが、荒井の演出によって、作品は立体的に仕上がっていた。複数台のOHP(オーバーヘッドプロジェクターの略。昔、小学校の授業などで使った投影機のことだ)を活用して、台詞に関連する写真などを写し、インスタレーション空間をリアルタイムで作り出したほか、俳優たちを走らせたり、転換させたり、舞台の隅々まで動かす設計。実験的でどこか儚さもあって、非常に面白い演出だった。
俳優たちも健闘した。フレッシュな面々が体当たりで作品に挑んだ様子が見て取れた。技巧的ではないかもしれないが、それがいい。
今しかできない若さと表現がそこには確かにあって、『BLINK』という作品を絶妙なバランスで成立させたと思う。それぞれのペアで色が全く違うという。2ペアを見比べるのも面白いだろう。
なお、本公演では観劇の敷居を下げたいと、チケット1枚で2名の来場を可能としている。これを機に観劇をしてみてはいかがだろう。上演時間は、途中休憩なしの約85分。公演は7月3日(日)まで。
取材・文:五月女菜穂