ミュージカル『春のめざめ』開幕、抑圧の中で芽吹く性の行方
大人たちの性に対するタブー意識が彼を襲った瞬間に始まるロックナンバー「Totally Fucked」で感情を爆発させると、その咆哮に周りの少年少女たちはヘッドバンギングを交えたハードな合唱で応える。
そんな石川メルヒと対照的な人物像を造形していたのが、モーリッツ役の瀧澤翼(円神)だ。事前のインタビュー取材で、石川がWESTに対して「身長が高く声の低いキャストが多く大人びた統一感がある分、若さを出せないか試行錯誤している」と述べていた通り、伸びしろを感じさせる「The Bitch of Living」の歌い出しや幼さを印象づける演技で存在感を残していた。
落伍者や社会規範から逸脱した人物を許さず徹底的に追い詰める19世紀ドイツの風潮は、SNSなどで渦中の人物を執拗に非難する現代の日本と通じるネガティブな普遍性があるだろう。その中で少年少女たちの“性”はどのように覚醒し、春を迎えるのか。ラストに訪れる夏に、彼らは「The Song of Purple Summer」をどんな表情で歌唱するのか──。5人編成バンドの生演奏が後押しする劇世界を、キャストの息遣いが間近に感じられる100席ほどの濃密な空間で体感してみては。