撮影:源賀津己
赤堀雅秋の書き下ろし舞台『パラダイス』が、2年前の中止を乗り越えついに上演決定。そこで演出も務める赤堀に、現在の胸の内を語ってもらった。
正体不明の感染症の脅威に、世の中が言い知れぬ不安に包まれていた2年前。赤堀は当時をこう振り返る。「劇作家の仕事って、今の世の中をどう感じ、どう表出するか、だと思うんです。ただ当時はとても混乱してしまって。語弊はありますが、東日本大震災の時と同じような感覚というか。こんな状況の中、自分はなにを描き、なにを世の中に提示すべきなのか。
正直まだわからないですし、今、とても重い気持ち(苦笑)。ただなにを核として描くべきか、ちょっとでも自分の中で掴むことが出来たら、前へ進んでいけそうな気がします」
とはいえ赤堀は、コロナ禍以降すでに2作の新作舞台を発表している。「確かに『白昼夢』も『ケダモノ』も、自分の中ではそれなりに納得出来るものが書けたという思いはあります。それがなんなのかよくはわかりませんが、根源的なところでは変わっていないのかなと。人間はどうあるべきかとか、豊かさってなんなのかとか、すごく単純な言い方をすれば幸福のあり方とか。そういうことを改めて考える機会にはなっていますし、なにを描くべきかってことに関しては、コロナ禍以前よりも進化はしているつもりです」