密度高く楽しさが詰まった『気づかいルーシー』再再演
撮影:岡千里
5年ぶり、3度目の上演となる『気づかいルーシー』が幕を開けた。松尾スズキの絵本を原作に誕生した、子どもから大人まで楽しめる音楽劇は、どんな進化を遂げているのか。脚本・演出・出演のノゾエ征爾(劇団はえぎわ)が、待望の再再演を語った。
今回の上演にあたってはまず、「ワクワクして臨むためにも、演者自身がちょっと焦るくらいの負荷をプラスしたい」と考えたノゾエ。楽器を鳴らしたり、前は動きのなかったところで動いたり、役者はやることが増えた。
もちろん、ただ増やそうとしたわけではなく、「やればやるほど、まだ奥があったなというところが見つかる。それくらい松尾さんの絵本には、一見くだらないけど(笑)本質的なことが描かれていて、果てしないんです」。
だから、例えば歌詞が増えた歌もある。
芝居にも動きにも音楽にも、よりいろいろな要素が散りばめられて、どこを楽しんでも良しの懐の深い劇になっている。
それぞれを悲しませまいと気づかうことで、どんどん複雑に、面白いことになっていくこのお話。その中心にいるルーシーを演じる岸井ゆきのについては、「無邪気さの純度が上がっていて、そこに細やかな表現の力が加わっているので、人としての輪郭がくっきりとしてきた」