岸谷五朗が関西弁で主演に挑む、鄭義信版『ヴェニスの商人』
ドキドキです」と喜びながらも、「3人で苦楽を共にした」崔監督を11月に亡くし「なおさら、この作品を成功させなければという強い意志になりました」。
通常は終始悪役のシャイロックだが、今作は目線が違う。「当時のイギリスのユダヤ人への差別と迫害の中を、シャイロックがどう乗り越えていったか。その開き直りと人生に対する憤りがエナジーにつながっている。脚本を読んで、なんてかわいそうな親子なんだろうと。その時代時代にある常識の怖さなど、ただの『ヴェニスの商人』にはない多面的なおもしろさがあって、ウィシンさんらしい、ウィシンさんじゃないと書けない作品だと思います」と魅力を語る。さらに「関西弁にすることで、シェイクスピアが近所のおっちゃんに見えてくるという親近感が作品全体の魅力になり、何倍もおもしろくなっています」。
その関西弁は、2003年のNHK連続テレビ小説『てるてる家族』で関西弁のイントネーションを音符にして覚えた特訓が生きた。
「シャイロックは悪徳高利貸しなので、言葉が非常に乱暴。ドラマのお父さん役にはなかった関西弁の悪い言葉がいっぱい出てくるのも楽しいですね」。この2年間、自作の大阪公演が中止を余儀なくされてきた岸谷。