30周年を迎えた「ナイロン100℃」の記念公演第1弾
それだけに村岡は、「すごく感慨深いですし、聖地スズナリでの上演ということで、“燃え”と“萌え”の両方でワクワクしています」と声を弾ませる。
本公演としては前作『イモンドの勝負』同様、KERAの書き下ろし。だがその作風は一転、ホラーになるそう。「そう」と断定しないのは、その行く先はKERAのみぞ知るところゆえ。松永と村岡曰く「時代設定としては大正、もしくは昭和の初期ぐらい。基本的には不条理劇だが、『イモンド~』のように笑いに特化したものではなく、シリアス路線。このふたりの役どころはある屋敷で働く女中の姉妹」。稽古と執筆を同時進行するKERAの創作法を知り尽くしたふたりは、稽古しながら次第に現れてくる作品世界を前に、その予測不能な状況すら楽しんでいるようだ。
松永と村岡という巧者ふたりががっつり絡む役どころは、実は『カメラ≠万年筆』以降、そう多くはない。それだけに姉妹ふたりを中心にした新作、しかも聖地スズナリでの上演。さらにスズナリでの東京公演後、ナイロンとしては25年ぶりの大阪・近鉄アート館での上演を予定。ベテラン劇団による贅沢な劇空間を近距離で体感出来る貴重な機会、見逃すにはあまりに惜しい。
取材・文:野上瑠美子