ストーリーの中心となるメツを演じるのは、本公演への参加は『ピカイチ!』『超ピカイチ!』以来の参加となる、「w-inds.」の千葉涼平。その小柄な体からは想像出来ないほど迫力のあるブレイクダンスを見せたかと思えば、憂いを帯びた表情がメツの切ない胸の内を語る。作品に芯を与える存在の彼が、梅棒メンバーから全幅の信頼を寄せられているのも納得だ。
一方、梅棒初参加となるのは鳥越裕貴。2.5次元から小劇場までお手のものの鳥越だが、梅棒の舞台でもそのダンスセンス、演技力は健在。さらに彼の愛らしい人間性が、作品自体にも温かみを加えていた。加入から3年ですっかり梅棒の中心的メンバーとなったのは、多和田任益。長身を生かしたダイナミックな動きと、指先にまで神経を行き届かせる繊細さ。
表情、そして体全体を使い、この複雑な役どころを体現してみせた。
また元「東京ゲゲゲイ」のMIKUに、“バブリーダンス”の生みの親であるakaneや、宝塚歌劇団出身の音くり寿。“鉄棒エアダンス”を開拓した上西隆史に、ポールダンサーとしても第一線で活躍するIGなど、誰ひとりとしてキャストの個性が被らないのも梅棒の魅力。しかもそれだけの個性が集いながらも、悪目立ちすることなく、最高の化学変化となっているのは、4回のカーテンコールとスタンディングオベーションが物語っていた。
取材・文:野上瑠美子