StudyHackerこどもまなび☆ラボがお届けする新着記事一覧 (23/27)
子どもに「書き出しを工夫したい!」と思わせようこの世に「書き出し」が重要でない作文はひとつもありません。書き出しで読む人の興味を引くことができれば、読む人は「これはおもしろそうだ!」と、前のめりになって、その続きをしっかり読んでくれるかもしれません。一方で、書き出しで興味をひくことができなければ、「これはつまらなそうだ」「どれも似たような作文だ」と、読む人は続きを読み流してしまうかもしれません。書き出しの差は“微差”ではなく“大差”なのです。【平凡な書き出しの例】お題:遠足平凡な書き出し:きのうは○○にえんそくに行きました。お題:お母さん平凡な書き出し:わたしのお母さんは、とてもやさしいです。お題:好きな食べ物平凡な書き出し:わたしの好きなたべものは、カレーライスです。お題:学校平凡な書き出し:ぼくの学校は○○小学校といいます。お題:読書感想文平凡な書き出し:わたしは『〇〇』という本を読みました。おそらく、子どもに向かって「書き出しは平凡にならないようにね」と“書き出しの重要性”を説いたところで、ピンとこない子がほとんどでしょう。それどころか、「難しい」「よくわからない」「面倒くさい」と、書き出しを工夫することを、嫌がる子もいるかもしれません。では、どうすれば、子どもに「書き出しの重要性」を実感してもらうことができるでしょうか?いちばんいいのは、個性的な書き出しにたくさん触れさせることです。童話、小説、エッセイ、他の子どもの作文……どんな種類の文章でも構いません。親が「個性的だな」「おもしろいな」「続きを読みたくなった」という書き出しを見つけたら、「この文章の書き出し、おもしろいよ!」と子どもに見せてあげてください。子ども自身が「おもしろい」「いいね」「楽しそう」と思えば、その子は、似たような「書き出し」を書いてみたいと思うでしょう。大事なことは、子どもに強いるのではなく、子ども自身が自然と「書き出しに工夫をしてみたい」と思えるよう、親がさり気なくナビゲートしてあげることです。もちろん、これから紹介する12個の「書き出しパターン」を子どもに見せてあげるのも効果的。子どもが、「書き出しにもいろいろあるんだね」「楽しい書き出しだね」「こんなふうに書いてもいいんだ!」と思ってくれたら最高です。子どもの意識が「書き出しを工夫しないといけない」から「書き出しを工夫したい」へと変わるはずです。作文の「書き出し」に使えるパターン12選では、さっそく「書き出し」のパターンを紹介していきます。【1】「自分の声」から入る「やばい!」先生がガラっとドアをあけたしゅんかん、ぼくたちはさけんでいた。「うっ、これは、うまい!」こんなにおいしいラーメンをたべたのは、うまれて初めてです。【2】「他人の声」から入る「こら、ユウタ!はやくおきなさい!」いつものようにママが大声をあげている。「よくがんばったね」コーチのその言葉で、ぼくはうれしくなりました。【3】音から入るピュー、ピュー。あまりの風のつよさに、ぼくは泣きそうになりました。ガッチャーン!花びんがわれたしゅんかん、ぼくのからだからヘンな汗がふきだした。【4】「自分の意見」から入る友だちの悪口だけは、ぜったいに言わない。わたしはそう決めています。ぼくは勉強がきらいだ。でも、それでいいと思っています。【5】「疑問」から入る「たすうけつ」で決めたことって、本当に正しいのだろうか?前から思っていたぎもんです。子どもはどうしてお酒をのんではいけないのかな?ぼくはふしぎに思った。【6】「たとえ」から入る赤オニが来た!と思ったら、おこって顔をまっ赤にしたママでした。まるで、雪をかぶった富士山のようでした。ぼくのお茶わんにつがれた大もりごはんのことです。【7】「くり返し」から入る食べた、食べた、食べまくった。きのうは、ひさしぶりにやき肉を食べました。いたい、いたい、いたい。キズ口にしょうどくやくをぬられるときが、イヤでイヤでたまりません。【8】「気づき&発見」から入るついに、朝ねぼうしない方法をはっけんしました!逆あがりのコツがわかったぞ!【9】「物語」っぽく入るそれは、ねつがさがった日の夜のことでした。としょかんで、むちゅうになって本をよんでいたときのことでした。【10】「告白」から入るじつは、いままでママとパパにかくしていたことがあります。きょうは、ぼくの本当の気もちを書きたいと思います。【11】「悩み」から入るぼくはあまり足がはやくありません。わたしは、かん字をおぼえるのが、ものすごく苦手です。【12】「会話」から入る「バナナっておいしいよね?」「えー、ぼくはきらいだ」「じゃあ、なんのくだものが好き?」「うーん、トマト!」そこで、みんなが大わらいした。文章の「書き出し」には、さまざまなパターンがあります。親子でそれぞれ気に入ったパターンを発表したり、平凡な「書き出し」と何が違うのか、一緒に話し合ったりしてもいいでしょう。あるいは、紹介したパターン以外に、どういう「書き出し」がおもしろそうか、出し合ってみるのもいいですね。もちろん、はじめはマネから入ってOKです。好きなパターンを利用して、子どもに「書き出し」を書かせてみましょう。くれぐれも「マネしないで、自分で考えなさい!」などと野暮なことは言わないように。作文に限りませんが、マネから入ることは技術習得のセオリーです。大いにマネさせましょう。「書き出し」を制する者は「作文」を制す?「書き出し」は読む人の興味を引くだけでなく、書き手自身にも大きな影響を及ぼすものです。「きのう、えんそくに行きました」よりも「ジャッポーン! 気がついたときには、わたしは池におちていました」でスタートする文章のほうが、作文を書く子ども自身も楽しいはずです。頭に映像が浮かぶため、続きのエピソードが書きやすくなります。説明的な文章からスタートすると、そのあとも説明的な文章になりがちです。一方で、イメージが浮かぶ場面からスタートすると、そのあとの文章もドラマチックになりやすくなります。気がつけば、オンリー・ワンな作文に仕上がっていることも珍しくありません。先ほどご紹介した12個のパターンも、読んだ瞬間にイメージが浮かびやすいものを優先して選びました。10歳未満の子どもにとって大切なのは、「説明力」よりも「体験の描写力」です。自身の体験を引き合いに、自分の感性や考えを自由に表現することができるようになると、その子の作文能力は、どんどん伸びていくでしょう。「書き出し」は単に「作文の冒頭」ではありません。作文全体のトーンやその後の展開を左右する重要なパーツです。古今東西、名のある作家たちも、そのほとんどが「書き出し」の名手です。「『書き出し上手』は『作文上手』」といっても過言ではないのです。
2019年01月23日お子さんに「月はいくつあるの?」と聞かれたことはないでしょうか。丸い月、半分の月、バナナのような月、夜空の月、朝や昼に見る月、オレンジの月、黄色い月、白い月——月が見せるさまざまな表情に気づき、子どもが「なぜ?どうして?」と思ったら、その興味を学びにつなげましょう。夜空を見上げて一緒に月や星を観察したり図鑑などの本や博物館で調べたり……子どもの「もっと知りたい」を家庭でサポートする方法について紹介します。子どもの4人に3人は月や星を見るのが好き夜空に浮かび上がる大きな満月、ピンと張りつめた冬の空に輝く星たちに興味をもつ子どもは多いようです。ベネッセ教育情報サイトが小学生の保護者を対象として2014年9月に実施したオンラインアンケートによると、「お子さまは月や星を見るのが好きですか?どのように?」と尋ねた結果、「とても好き(6.7%)」と「まあ好き(58.4%)」となりました。合わせて約75%、実に4人に3人の小学生が月や星を見るのが好きだということが判明したのです。「とても好き」「まあ好き」と答えた人に理由を聞くと、●理科の宿題で空を見てから好きになりました●保育園の時にプラネタリウムに行って好きになりました●山奥のキャンプに行った時、満天の星空を見て感動したようです●寝る前に部屋から空を眺めることが増えました●月の向きが変わったとか、満月がきれいだなどと話します(引用元:ベネッセ教育情報サイト|オンライン投票【小】【小学生】お子さまは月や星を見るのが好きですか?どのように?)などが挙がったほか、スーパームーンについてのニュースが興味をもつきっかけになったり、天体望遠鏡をほしがるようになったりするお子さんもいるようです。子どもたちにとって、夜空の月や星は位置や形が変わる不思議な存在であり、もっとよく知りたいと思う対象だといえるでしょう。月や星に興味をもったら、親は「ハマる」環境を整えるこの「もっとよく知りたいと夢中で取り組む経験」、つまり「ハマり体験」は、子どもの学習に対する姿勢を育みます。では、なぜハマり体験が学力と結びつくのでしょう。東北大学加齢医学研究所・瀧靖之教授は著書『東大脳の育て方』の中で、好奇心から物事を突き詰めることで、やる気物質ドーパミンが放出され、脳のいろいろな部分の体積が大きくなると言っています。また東大医学部卒の男性は小学生のころにハマった虫取り体験について、「わからないことを自分で調べる理科系の考えがしみついた」と話していました。もし子どもが、月の満ち欠けや動きに違いがあることに気づいて不思議に感じていたら「もっと知りたい」を引き出すために、こんなアプローチをしてみてはいかがでしょうか。〇今晩の月はこんな形で、一昨日の形と違うよね。明後日はどんな形になっていると思う?〇月は朝や昼にも見えることがあるんだよ。何でだろう?〇雨や曇りの日って、月はどこにいるんだろう?もしかすると、子どもは月の「見える形」や「見える時間」が変わっていくことを何となく気づいていて、「違う形になるんだよ」「僕も朝、月が見えるのは知っているよ」「月は空にあるけど見えないんだよ」などと答える子もいるでしょう。そこでもう一歩、「何でだと思う?」と聞くことで知的好奇心をくすぐると、「なぜ?どうして?」という学びにつながるきっかけを与えられます。この分からないことや疑問に対して自分からすすんで取り組もうとする意欲は、学校の授業での調べ学習など「主体的な学び」の力を育みます。子どもの「なぜ?」をサポート「なぜ?どうして?」から始まる子どもの知的好奇心や探求心を満たす方法はさまざまです。冒頭のアンケート回答のように、プラネタリウムへ連れていった経験が宇宙への興味につながるケースもあります。お子さんが月や星に興味関心をもったら、次のような方法で学ぶ力をサポートしてはいかがでしょうか。■図鑑や本を見ながら親子で調べる小学館、講談社、学研などが子ども向けにシリーズで出版している図鑑には、目を見張る精緻なイラストはもちろん、迫力あるCGの映像が見られるDVDや3D体験できるデジタルコンテンツが付録としてついているものも多くなりました。こうした図鑑や本を親子で見てコミュニケーションを取りながら調べることで、気づきや発見を共有して楽しみながら学ぶことができます。■プラネタリウムを楽しむ日本プラネタリウム協議会(JPA)によると、全国には153館のプラネタリウムがあるそうです。常設のプラネタリウム以外にも国内各地でイベントや天体観測も企画されているので、検索して子どもが興味を示したものに出かけてみましょう。また、市販の家庭向けのプラネタリウムを購入してホームプラタリウムを楽しみながら天体について学ぶこともできます。■科学館や博物館へ連れていく常設のプラネタリウム施設がある科学館や博物館であれば、月の満ち欠けや自転公転、天体模型などでより詳しく学ぶこともできます。自治体が運営する施設は、在住もしくは通学している子どもの料金は無料または割引になるなど優遇されていることも多いので活用したいものです。■家の庭やベランダから天体観測図鑑やプラネタリウムなどで調べたら、実際に庭やベランダに出て親子で天体観測してみましょう。近年は、スーパームーンや流星群など天体に関する報道を詳しい解説とともにテレビや新聞で目にすることも多くなりました。このようなタイミングを上手に使うと、子どもは実際に見た月や星について園や学校でお友だちや先生へ話したくなり、これが自分の意見を自分の言葉で相手に伝えるトレーニングにもなります。■大自然の中でキャンプ周囲が真っ暗な大自然の中で、宇宙のスケールを感じて数えきれないほどの星が降り注いでくるような体験をするなら家族キャンプがおすすめです。都会では見られないわずかな輝きの星も見られ、これは星に限らず「普段は見えていなくても、そこにはちゃんと存在している」という感覚を養うこともできます。月や星への興味は小学校4年生の理科につながるこうした経験は学校の授業を先取り学習することにもなります。現在、月や星の特徴や動きについては、小学校4年生の理科で取り扱っています。月や星を観察し,月の位置と星の明るさや色及び位置を調べ,月や星の特徴や動きについての考えをもつことができるようにする。ア月は日によって形が変わって見え,1日のうちでも時刻によって位置が変わること。イ空には,明るさや色の違う星があること。ウ星の集まりは,1日のうちでも時刻によって,並び方は変わらないが,位置が変わること。(引用元:文部科学省|小学校理科の観察,実験の手引き第4学年B(4)月と星)すでに先取りで身につけた月や星についての知識や経験は、学習単元の中で改めて体系立てて定着させることができます。逆に、学校で学習した内容について上記のような方法を取り入れて、子どもの理解をより深めることもできます。***また、月や星について知る上では、星座をモチーフにした戦隊シリーズのテレビ番組や少年向けの格闘マンガ、または星占いやギリシャ神話なども、「楽しみながら天体について知る」大切な教材のひとつです。「遊んでばかりいないで勉強しなさい!」と言う前に、遊びの中に学びがあるかもしれないという視点で子どもが夢中になっているものを見つめ直してみるのもいいかもしれません。(参考)Study Hackerこどもまなび☆ラボ|知的好奇心がぐんぐん伸びる!東大生の多くが経験している「ハマり体験」とはベネッセ教育情報サイト|一度見たら忘れられない小学生は月や星を見るのが好きベネッセ教育情報サイト|オンライン投票【小】【小学生】お子さまは月や星を見るのが好きですか?どのように?JPA(日本プラネタリウム協議会)|全国プラネタリウム一覧Walker+|プラネタリウム・天体観測イベント文部科学省|小学校理科の観察,実験の手引き第4学年B(4)月と星
2019年01月22日頭の知能指数を表す「IQ」とは別に、心の知能指数を表す「EQ」という言葉があることをご存知でしょうか?昨今、子どものEQを伸ばすことはIQをアップさせること以上に重要だとされており、そのためのツールのひとつとして日記が挙げられています。今回は、EQの意味やEQを伸ばすことで得られる能力について、そしてなぜ日記をつけることでEQが伸びるのかについて解説していきます。心の知能指数 EQとは?EQは心の知能指数、すなわち「生きる力」をどれくらい持っているかを表しています。EQが高いほど、自分の気持ちをコントロールする力や、相手の気持ちを理解する力を持っているといえるでしょう。人間は、自分が置かれている状況や精神的な影響によって、考えや発言が変わることがありますが、EQが高ければ感情をコントロールしたり、相手の気持ちを考えたりするのをスムーズにこなせます。そのため、EQが高い人はコミュニケーション能力が高く、またポジティブな環境を作り出せるのです。逆にEQが低いと、自己中心的な振る舞いをしてしまったり、他人のミスを許せなくなったりします。自分の気持ちが抑えられず、友達の気持ちも理解できないので、ケンカやトラブルを引き起こしたり、集団生活になじめなかったりすることもあるでしょう。一方、頭の知能指数であるIQは、平均値を100として115~130程度であれば高いとされ、85以下ですと低いとされます。また、70以下の場合は日常生活に支障が出てくる可能性も。ただし、テストで100点を取るなど一般的に成績が良いとされている場合でもIQが高いとは限らず、あくまでもひとつの目安となります。かつてはIQが高い=優秀であるという認識が強かったものの、IQが高い人は特定の分野では優れていてもコミュニケーション能力や協調性に欠けている、自分が興味のあること以外には積極的に取り組めないという指摘も出てきました。さらに、人々の生き方が多様化している現代では、他者への共感性や理解力が求められる傾向が高まっているため、EQはIQ以上に生きていく上で欠かせないものとして重視されるようになったのです。とはいえ、EQが示している「感情のコントロール能力や人の気持ちを考える力」は、本来誰にでも備わっている力です。そのため、EQが高いということは「自分の中のEQをしっかりと発揮できている」ということ。逆にEQが低いということは「まだ自分の中のEQをうまく発揮できていないだけ」という見方もできます。EQは工夫次第で伸ばしていくことが可能なのです。EQをはぐくむための効果的な日記のつけ方子どものEQをはぐくむための方法としては以下の方法があります。■落ち着ける空間で、絵本の読み聞かせや音楽鑑賞をする■勉強や読書などは、まず親がお手本となって行う■普段の生活の中で、より愛情を持って接することを意識する■日々の出来事を日記として綴るこの中でもおすすめなのが、日記をつけることです。EQを高めるためには、自分の中にある喜びや楽しさといったポジティブな感情だけでなく、怒りや悲しみといったネガティブな感情とも冷静に向き合う必要があります。ネガティブな感情をうまく発散できなかったり、心に溜め込む癖がついてしまったりすると、ある日突然感情が爆発する可能性もあり、精神面に悪影響を及ぼしてしまうためです。日記にできる限り素直な感情を書き出し、その内容について客観的に向き合うことは感情をコントロールする訓練になるので、EQの向上に非常に効果的ですよ。また、日記には「今日は○○をして、△△だと思った」などと漠然とした内容を綴るのではなく「なぜそう思ったのか」という理由も忘れずに加えることが大切。より具体的な内容にすることで、自分の感情と冷静に向き合うことができるようになります。親子で作る、EQを高めるための日記やり方をご紹介しましょう。まず親が子どもの感情を引き出すための質問をし、その答えを日記にしていきます。質問内容は以下の通りです。まだ日記が書けない年齢の子どもや、文章を書くのが苦手な子どもの場合は、まずは親がサポートしてあげましょう。①その日の出来事回答例「友達の○○ちゃんとお店屋さんごっこをした」②それをしてどう思ったか回答例「楽しかった、明日も遊びたいと思った」最初は①②の内容のみ、2行程度でいいので日記として書く習慣を作りましょう。②に答えることに慣れたら、少し踏み込んだ質問をしていきます。③そんな自分をどう思うか回答例「また遊べるように、○○ちゃんを誘いたい」④これからどんな自分になりたいか回答例「○○ちゃんと仲良しな自分でいたい」ある程度、日記を書き溜めることができたら、親子で「こんなことがあったね」「この時はこう言ってたけど、いまはどう思う?」と、ぜひ振り返ってみてください。こうした振り返りもまた、自分を客観視することや自分が置かれている環境を冷静に分析することにつながります。***子どもがさまざまな経験をして成長していく過程では、精神面に大きく左右されることもあります。しかし、EQをはぐくむことで感情との付き合い方がうまくなり、子ども自身が生きやすくなることにもつながります。毎日の隙間時間を利用して親子で日記をつけ、子どものEQを伸ばしましょう。文/田口るい(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|時代はIQからEQへ……。心の知能指数「EQ」って何?ダニエル・ゴールマン著,土屋京子訳(1998),『EQ こころの知能指数』,講談社.みんなのお金ドットコム|EQとは?心の知能指数?EQが高い人・低い人の特徴や高める方法!
2019年01月21日「プログラム学習」というものを知っていますか?2020年度から小学校で始まる「プログラミング教育」とは別物です。この「プログラム学習」とは、現在は大学などで幅広く利用されている「eラーニング」や子ども向けタブレット教材などの基盤になったもの。心理学の理論を応用した、専用の機械を使う学習方法です。難しそう……と思われるかもしれませんが、プログラム学習の概要を知っておくと、家庭における子どもの教育に応用できたり、タブレット教材ならではの学習効果を理解しやすくなったりします。そこで今回は、プログラム学習についてわかりやすくご紹介しましょう。スキナーのプログラム学習とはプログラム学習(programmed instruction)を提唱したバラス・フレデリック・スキナー(1904~1990)は、米国の心理学者。人間や動物の感情よりも行動に着目して実験・観察を行う「行動分析学」の祖として知られています。スキナーの成果として特に有名なのが「オペラント条件づけ(operant conditioning)」です。これは簡単にいうと、人間・動物が特定の行動をとるように条件を与えること。たとえば、箱に入れたネズミに、箱のなかのレバーを押してほしいとします。その場合、まずネズミが偶然レバーを押したとき、ネズミにとって「報酬(reward)」となるエサを与えます。これを、行動を「強化(reinforcing)」するといいます。そして、ネズミがまたレバーを押した際にはエサを与えます。繰り返すと、ネズミは積極的にレバーを押すようになるのです。このようなプロセスはオペラント条件づけと呼ばれます。ご存知のように、犬や馬の調教に使われている手法ですね。そして、オペラント条件づけを人間の教育に応用したのがプログラム学習です。プログラム学習には、「ティーチングマシン(teaching machine)」という専用のデバイスが使われます。ティーチングマシンは学習者に対し、説明および説明を理解したか確認する設問を次々に提示します。学習者が解答すると、正解・不正解がすぐに知らされ、次の問題に移行します。これを繰り返すうち、最終的に当初の学習目標を達成できるようになるのです。ゲーム機やPCの普及した現代、多くの人がこのような形式のクイズゲームや教材に触れたことがあるのではないでしょうか?プログラム学習における5つの原理スキナーのプログラム学習には、5つの「原理(principle)」があると考えられています。スキナー自身の言葉とともにご紹介しましょう。学習者が積極的である学校における一斉授業の多くは、教師がしゃべり、生徒が聞くという形式です。皆さんも経験があると思いますが、このやり方では、先生の話をぼーっと聞き流すことも可能。生徒が何も学習しないまま授業が終わる、ということもありえます。しかし、プログラム学習で用いられるティーチングマシンは、常に学習者自身が動かす必要があります。問題が出題され、学習者が「解答」という行為をしてはじめて次に進むのです。そのためプログラム学習においては、常に学習者の積極性が必要とされています。プログラムと生徒のあいだでは常にやり取りが発生する。講義や教科書、一般的な視聴覚教材と違い、ティーチングマシンは持続的な行動を引き起こす。生徒は絶えず集中し、やることを抱えている。(引用元:Burrhus Frederic Skinner (1968), The Technology of Teaching, New York, Appleton-Century-Crofts.)学習者に即時のフィードバックを与える学校の宿題やテストは、子どもが問題を解いてから正解・不正解がわかるまで、およそ数日のブランクがありますよね。答え合わせ・採点が終わり結果がわかったときにはもう、問題を解くときに自分が何を考えていたかなど忘れていることが多いのではないでしょうか。しかし、プログラム学習においては、学習者が問題に答えた直後に正誤が判明します。時間をおいてからまとめて結果を通知されるよりも、1問答えるごとにフィードバックをもらえるほうが、より強い印象を受けるはず。ティーチングマシンは家庭教師のごとく、正しい返答をするたびに生徒を強化する。このような即座のフィードバックを利用し、生徒の行動を最大限効果的に形成するだけでなく、一般人が「生徒の興味関心を保つ」と表現するような方法で、行動を維持するのだ。(引用元:同上)ゆるやかに難易度が上がるプログラム学習において、教材の作り方は非常に重要です。皆さんも想像できるように、簡単な問題ばかりやっても難しい問題ばかりやっても、効果的な学習にはなりません。また、それまでは順調に問題をクリアしていたのに、ある時点から急激に難しくなって先に進めなくなったら、学習者は意欲を失ってしまうでしょう。そうならないよう、プログラム学習の教材の難易度は、ほんの少しずつ上げる必要があります。それぞれのステップを難なくこなしていくうちに、いつのまにか目標を達成しているというわけです。生徒は複雑な行動を修得するにあたって、慎重に設計された、多くの場合は相当に長い一連のステップを経なければならない。それぞれのステップは、生徒が必ず理解できるくらい小さく、かつ行動の充分な修得にいくらか近づくものでなければならない。ティーチングマシンは、これらのステップが慎重に規定された順番で提供されるようにしなければならない。(引用元:同上)学習者に合ったペースで学べるスキナーはプログラム学習を提唱するにあたって、教室に生徒を集めて講義する従来型の教え方を批判しました。現在の学校制度も同じですが、大勢を一度に教えようとすると、指導側はどうしても平均的な理解度の人に合わせがち。そうなると、理解のスピードが遅めの人には難しすぎてついていけず、理解が速い人には簡単で退屈です。しかし、プログラム学習においては学習者がそれぞれのペースで学びを進めるので、あらゆるタイプの人に対応できるのです。優れた家庭教師のように、ティーチングマシンは生徒が次の段階に進む前に、教えた要点をひとつひとつ完璧に理解することを要求してくる。一方、講義や教科書、それに類する機械は、生徒が理解したかどうかを確認せずに進行してしまい、生徒をたやすく置き去りにしてしまう。(引用元:同上)ティーチングマシンの成功を説明するにあたっては、それぞれの生徒が自分のペースで自由に進められるという事実も重要だ。教育的な目的から、生徒たちを一つのクラスにまとめて収容することは、おそらく教育における非能率性の最大要因である。複数の生徒を一度に指導しようとすれば、速い学習者も遅い学習者も害することになる。優秀な生徒の窮状はこれまで認識されてきたが、遅い学習者はさらに悲惨な結果をこうむっているのだ。当人の自然なスピードを超えて進行することへのプレッシャーの効果は累積する。最初のレッスンを完全にマスターしていない生徒は、次のレッスンもマスターしにくいものだ。(引用元:Burrhus Frederic Skinner (1999), Cumulative Record: Definitive Edition, Xanedu Pub.)学習者によって検証されるプログラム学習の教材が優れているかどうか決めるのは、作成者ではなく学習者です。そして、学習者がプログラム学習をどのように行ったかのデータを通じて、教材は改良されていきます。たとえば、複数の学習者たちが教材の同じ部分でつまづくのであれば、そのレッスンにおける解説が不充分だということです。教材の解説を手厚くしたりといった対応をとることで、プログラム学習の教材はより効果的なものへとアップデートされるのです。優れたプログラムは芸術でありつづけるべきか、それとも科学技術となるべきか。最終的に決定するのは生徒であると知ることは安心材料となる。ティーチングマシンによる学習が持つ予期せぬアドバンテージは、プログラム作成者へのフィードバックであることがわかった。(引用元:Burrhus Frederic Skinner (1968), The Technology of Teaching, New York, Appleton-Century-Crofts.)プログラム学習の例では実際、プログラム学習の教材はどのように「プログラム」されているのでしょうか?以下はスキナーが提示した、小学生に「manufacture(製造する)」という動詞のつづりを覚えさせるための設問です。1.manufactureとは、作る(make)ことや建てる(build)ことを意味します。Chair factories manufacture chairs.(椅子工場は椅子を製造する。)単語をここに写してください。□□□□□□□□□□□2.この単語の一部は、factoryという単語の一部と似ています。どちらの部分も、makeやbuildを意味する古い言葉に由来します。manu□□□□ure3.この単語の一部は、manual(手動の)という単語の一部と似ています。どちらの部分も、hand(手)を意味する古い言葉に由来します。かつて、多くのものは手で作られていました。□□□□facture4.どちらの空欄にも同じ文字が入ります。m□nuf□cture5.どちらの空欄にも同じ文字が入ります。man□fact□re6.Chair factories □□□□□□□□□□□ chairs.(引用元:同上)このように丁寧な解説と設問があれば、manufactureという単語を初めて知った人でも、つづりを覚えられそうですね。ひとつひとつのステップは非常に簡単ですが、こなしているうち、最後には目的を達成できるのです。プログラム学習の優れた点さて、スキナーのプログラム学習を知ったところで、私たちはそれをどう現在に応用できるのでしょう?注目してほしいのが、上で挙げた5つの特徴。これらはプログラム学習だけでなく、一般的な勉強においても知っておいてほしいことばかりです。あらためて振り返ってみましょう。インプットとアウトプットを交互に行うプログラム学習においては、学習者の積極性が必要とされます。教材をぼーっと見たり聞いたりしているだけでは学習は進まないのです。上で挙げた例のように、プログラム学習ではインプットとアウトプットを交互に行います。これは非常に学習効果のある方法。ただ教科書を読んだり授業を聞いたりしているだけでは、インプットに偏りすぎ。インプットしたことを記憶として定着させるには、アウトプットが不可欠なのです。勉強というものは、単純化するとインプットとアウトプットの繰り返しです。新しい知識を頭に入れて、それを問題を解くという形式でアウトプットする。この流れがスムーズに行えれば、たいていの問題は解くことができるはずなのです。(引用元:StudyHacker|効率的勉強法 —— これだけは知っておきたい5つの基本。)脳には出力依存性というものがあるので、「インプットしよう、記憶しよう」とするだけでは情報はなかなか入っていきません。逆に、「情報を使おう」「表現しよう」とすれば入っていきやすくなる。記憶するために「情報を使う」ことは、「アウトプットする」ことですよね。これが重要になるのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|記憶力の要は「記憶の仕方」にあり。親が知っておくべき「記憶の脳科学」)即時のフィードバックが受けられるプログラム学習においては、学習者が問題に答えた直後、正解・不正解がわかります。この「即時フィードバック」は、学習者の能力を引き出すのに非常に重要です。「フロー理論」を提唱したことで有名な心理学者、ミハイ・チクセントミハイ教授(クレアモント大学院大学)によれば、人間は特定の条件が整うと「フロー」もしくは「ゾーン」という極度に集中した状態に入ることができます。そうなると、その状況を心から楽しいと思い、集中しても疲労を感じず、優れたパフォーマンスを発揮することができるのです。その「フロー」になるために必要な条件のひとつが「明確なフィードバックが即座に得られる」状態です。自分の行動に対する反応がすぐに返ってこないようでは、「フロー」は生まれません。たとえば、学校の宿題を自宅でやり、翌日の授業で答え合わせをする。学校でテストを受け、数日後もしくは1週間後に答案が返却される。このような状態では、行動とフィードバックのあいだにタイムラグがありすぎるため、「フロー」は生じません。しかし、プログラム学習ならば「フロー」発生の条件を整えることができるのです。子どもが自宅で勉強する際も、できるだけ速いペースでフィードバックが受けられるようにしましょう。たとえば、1ページ分の問題を解いたらすぐに答え合わせをさせる、もしくはしてあげる。タブレットなどのデジタル教材で勉強するのも、即時フィードバックという意味では効果があります。勉強でわかりやすいフィードバックと言えば点数でしょう。テストや練習問題の正誤で自分の取り組みの成果を確認することができます。しかし、テストのための勉強はするけれど、参考書の章の終わりなどにある練習問題をおろそかにしていませんか?この練習問題は、理解の確認はもちろん、勉強の成果を自分で実感し次の集中につなげるために必要なものです。(中略)テストや練習問題は狭い範囲ごとに細かく行うことが大事です。章の途中などで、区切りが難しいときは、その日やった問題をもう一度やり直すだけでも効果を実感できるはずです。(引用元:StudyHacker|「勉強に集中」のコツは、身近な “ゲーム” に隠れていた!?『集中力アップ』3つのきほん)スモールステップ学習法プログラム学習において、出題される課題はほんのわずかずつ難易度が上がっていきます。「急に難しくなって分からなくなった」という断絶が起こらないよう、注意して設計されているのです。このような学習法は「スモールステップ」と呼ばれています。最初から高い目標を掲げるのではなく、目標を細分化することで、“小さな成功” が得やすくなります。この成功体験を少しずつ積み重ねることで、最終目標に近づいていけるのです。(引用元:StudyHacker|「何をやっても続かない人」が陥っている “3つの大いなる誤解”)そして「スモールステップ」は、上述した「フロー」状態をもたらす必要条件にも関係しています。なぜなら、「フロー」になるには、向き合っている課題の難易度が適切でなければいけないから。余裕でこなせるくらい簡単でもいけないし、達成不可能なほど難しくてもいけないのです。少しずつ難易度が上がっていくプログラム学習ならば、「フロー」になりやすい条件が整っているといえるでしょう。最もフロー状態に入るためには、取り組む課題が簡単すぎても、難し過ぎてもいけません。適切な難易度は、自分の能力を少し超える、「背伸びすれば何とか達成できる」程度の難易度だと言われています。ですので、取り組む課題の難易度を、ちょうどいいレベルになるようきちんと設定することが大切です。(引用元:StudyHacker|フロー状態で勉強が効果的?コツは “ちょっと高め” の目標設定)自分のペースで学ぶ自分のペースで学ぶということは、プログラム学習だけでなく、学ぶという行為全般において大切なことです。物事に関する説明を読んだり聞いたりして理解できる速度は人によって違うものですし、学ぶジャンルによっても異なるでしょう。個人個人のペースに配慮しない一斉授業では、「全然わからなかった……もう嫌だ」「簡単すぎて退屈。授業に出る意味がない」というストレスを生みかねません。自分のペースで学べるプログラム学習は、そのような問題を解決してくれます。海外のオルタナティブ教育として知られる「イエナプラン」や「ドルトンプラン」では、生徒が自分で計画を立てて科目の自習を進めることが重視されています。日本でも、学校の一斉授業についていけない子どもを1対1の個別指導塾に通わせる親は珍しくありません。一斉授業の弊害を危惧している人は多いのですね。子どもに合った教材を選ぶ何かを自習するとき、目的に応じた教材が必須です。そして教材を選ぶときに考慮するべきなのは、「ベストセラーだから」「著名人が書いたから」ということではなく、それが学ぶ人に合っているかどうか。当たり前といえば当たり前ですが、意外と忘れてしまうこともあるのではないでしょうか。たとえば教材に書かれていることが難しすぎてわからないと感じても、「理解できないのは自分が勉強不足だから。もっとよく読まなければ」と思うのではないでしょうか?それで解決する場合もあるかもしれませんが、実はその教材自体がそもそも説明不足だったり、学習者に合っていなかったりするかもしれません。「すごくわかりやすい!これならスムーズに学習できる」と確信できる別の教材を選び直したほうが、学習の目的を達成しやすいのではないでしょうか。お子さんの勉強を応援するのであれば、お子さんの理解度やペースに適した教材を吟味して選んであげましょう。最初はどの本や参考書を選べばいいか分からず、とりあえずネットで評判がいいものを探してみるかもしれません。しかし、どんなに評判がよくても、名著といわれていても、必ずしも自分にとっていい本とは限らないといいます。何を選べばいいか分からないとき、柳川氏(※)の場合はまず信頼できる人に紹介してもらうそう。しかし、それでも自分に合う本と出会うためには試行錯誤が必要とのこと。自分が理解しやすいパターンと、その本の説明や論旨の展開がかみ合っていないと、内容が頭に入ってこないからです。自分の学びスタイルの確定にもつながるので、数ページ読んでやめてしまう本があっても気にせず、合う本が見つかるまで試行錯誤を繰り返しましょう。そのほうが、結果的には効率がよくなるはずです。(※東京大学大学院経済学研究科教授・柳川範之氏)(引用元:StudyHacker|東大教授とハーバード合格者が教える「最高の独学法」)***ともすれば、古典的な知識だと思われてしまうプログラム学習。しかしその理論には、効果的な学びに欠かせない要素が詰まっていたのです。明日から使えそうなものはありましたか?(参考)Burrhus Frederic Skinner (1968), The Technology of Teaching, New York, Appleton-Century-Crofts.Burrhus Frederic Skinner (1999), Cumulative Record: Definitive Edition, Xanedu Pub.eLearning Industry|Instructional Design Models and Theories: Programmed Instruction Educational ModeleLearning Industry|Cognitive Flow And Online Learning: 4 Steps For Putting Your Learners In The Zone脳科学辞典|オペラント条件づけコトバンク|プログラム学習The B. F. Skinner Foundation|DifinitionSimply Psychology|Skinner – Operant ConditioningStudyHacker|効率的勉強法 —— これだけは知っておきたい5つの基本。StudyHacker|「勉強に集中」のコツは、身近な “ゲーム” に隠れていた!?『集中力アップ』3つのきほんStudyHacker|「何をやっても続かない人」が陥っている “3つの大いなる誤解”StudyHacker|フロー状態で勉強が効果的?コツは “ちょっと高め” の目標設定StudyHacker|東大教授とハーバード合格者が教える「最高の独学法」StudyHackerこどもまなび☆ラボ|記憶力の要は「記憶の仕方」にあり。親が知っておくべき「記憶の脳科学」StudyHackerこどもまなび☆ラボ|尾木ママ絶賛!“日本教育の3周先を行く“オランダの「イエナプラン教育」StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ドルトンプランの学校が日本にもできるってホント?知っておくべき3つの基本
2019年01月21日なにかと忙しい朝……。ついつい朝食づくりは手抜きになってしまいがちです。ただ、オリジナルの育脳レシピ開発で子どもを持つ親御さんのファンも多い管理栄養士・小山浩子さんは、「子どもの脳は朝食で決まる」と語ります。時間が限られるなか、どんな朝食を用意すれば子どもを賢く育てられるのでしょうか。そのための秘訣を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)朝起きたときには「脳のガソリン」は空っぽの状態健康のためには「朝食が重要だ」という話はほとんどの人が聞いたことがあるはずです。そして、「脳のため」という観点からすれば、その重要性はさらに高まります。なぜなら、朝は脳を動かすガソリンが空っぽの状態になっているからです。朝食を食べさせずに子どもを学校に送り出してしまうと、給食までの午前中の授業では、子どもはガソリンが切れた自動車と同じ状態にあるということ。そんな状態でしっかり勉強をすることなんて、できるわけもないのです。その脳のガソリンにあたるのはブドウ糖で、主に炭水化物が分解されてできるものです。ブドウ糖は、グリコーゲンというものになって肝臓にためられるのですが、じつはこの貯蓄量がすごく限られています。最大限にためたとしても、12時間後には空っぽになる量しかためられません。夜の7時に夕食を食べたとして、12時間後の朝7時には完全に空っぽです。つまり、ご飯やパン、麺類などの炭水化物は、朝食に必須のものだというわけです。でも、ただ食べればいいというものではありません。炭水化物を一気に大量に摂ると、血糖値が急上昇しインスリンが分泌されます。すると、子どもが2時間目の授業を受ける頃には低血糖気味となり、眠気を催すことになってしまうのです(インタビュー第2回参照)。そのため、ブドウ糖をゆっくりと脳に送る作用があるカリウムや食物繊維を一緒に摂取できる食事を心がけましょう。また、玄米や胚芽米、全粒粉のパンなど、もともと食物繊維など血糖値の急激な上昇を妨げる成分が豊富な炭水化物食品を選ぶのもいいですね。最近のシリアルは手抜き朝食などではないまた、脳を働かせる神経伝達物質の材料となるレシチン、脳の材料となるDHA・EPAは、炭水化物とともに、「育脳」のための3大栄養素と言えます。レシチンは主に卵や大豆製品、DHAとEPAは魚に含まれるもの。これらの3つを必ず朝食で摂る習慣をつける、これがとても重要です。子どもの昼食は給食ということが多いでしょうから、親御さんがコントロールできるものではありません。もちろん、夕食で摂取してもいいのですが、朝食とちがってメニューが変動的ですから、脳のための栄養素を摂ることも入れ込んでしまうと献立を考える難易度が上がってしまいます。であれば、朝食を「育脳のためのもの」と決めてしまうのがおすすめですね。とはいえ、難しく考える必要はありません。シリアルに牛乳をかけて、エゴマ油ときな粉をかけてあげるだけでも十分。これには、炭水化物にカリウム、食物繊維、レシチンが含まれていますし、エゴマ油は体内でDHAやEPAと同じ働きをしてくれます。シリアルというと「手抜き朝食の代表格」のように思っている人もいるでしょう。でも、最近のシリアルはとっても優秀です。パッケージの栄養成分表示を見て、必要な栄養素が入っているかを確認してみてください。なかには、炭水化物や食物繊維はもちろん、3大栄養素以外にも脳に有効なビタミンB群や亜鉛などを含むものもありますよ。脳細胞の働きを邪魔する塩分に要注意!それより、手抜き朝食といえば、ふりかけご飯だけというものはやめたほうがいいですね。おそらく共働き家庭などで親御さんも忙しいのでしょう。ご飯さえ炊いておけば、家族それぞれが好きなふりかけをかけて食べてくれる。それが毎日の朝食だという家庭が意外に多いようなのです。もちろん、ふりかけにも含まれる栄養素を強化したものもありますが、多くの製品は塩分が強過ぎる傾向にあります。塩分は脳のなかの血流を悪くしてしまうもの。つまり、脳細胞の働きを邪魔してしまうものなのです。ただでさえ、日本人は塩分が強い食事を好みます。幼い頃から塩辛いものばかり食べていると、子どもは「これが美味しいんだ」と思ってしまいます。そして、そういう食事を続ければ、当然、将来的に大きな病気を引き起こすことにもなる。子どもの腎臓は小さいので、たくさんの塩分を処理することができません。脳のためだけでなく、子どもの健康を保つために食事の塩分量には気をつけてあげてほしいですね。黄色アイテムと噛むことが目を覚まさせるそれから、食事の内容以外の部分でいえば、よく噛むことも大切です。朝食だけに重要なことではありませんが、特に朝食ではしっかり噛むことを子どもに教えてあげてください。朝に目が覚めたときには、脳はまだ寝ぼけている状態です。噛むという行為が脳を目覚めさせてくれるうえ、脳の神経細胞の発達も促してくれるのです。また、ランチョンマットやマグカップなど、朝食に使うアイテムにいくつか黄色いものをチョイスすることもおすすめです。これには、朝日を見ることと同じ効果があります。黄色を目にすることが、しっかりと脳を目覚めさせるのです。逆に、紫や濃紺は脳を休ませてしまいますから要注意。ちょっとした工夫でできることですから、子どもの脳をスタンバイ状態にして学校に送り出してあげてください。最後にお伝えしたいのは、とにかく愛情を持って料理をしてあげてほしいということ。料理には、脳や体に有効な栄養素といった知識も必要ではありますが、子どもにとってはなによりも母親の愛情を感じられることが最重要です。親に愛されて育ったかどうかで、大人になったときの笑顔ひとつもちがってきます。賢い子どもに育てたいというのは親として当然の願いでしょうけれど、まずは料理を通じてしっかり愛情を注ぎ、人の気持ちを感じられる健全な人間に育ててあげることを意識してほしいと思っています。『かしこい子どもに育つ! 「育脳離乳食」:脳をはぐくむ食事は0歳から』小山浩子 著/小学館(2018)『こどもの脳は、「朝ごはん」で決まる!』小山浩子 著/小学館(2015)■ 管理栄養士・小山浩子さん インタビュー一覧第1回:子どもの脳は“親の愛情”と“食事”で育つ!「育脳」に効く食材の選びかた第2回:“パン&〇〇”で最高の朝食になる!脳が育つ食べ合わせ「5つの黄金ルール」第3回:“美味しい”か“美味しくない”か。結果がすぐにわかる料理は、子どもがPDCAを学ぶのに最適第4回:「お米さえ食べさせておけば大丈夫」が危険な理由。手抜きでも脳に効く朝ごはんとは【プロフィール】小山浩子(こやま・ひろこ)1971年9月5日生まれ、愛知県出身。料理家、管理栄養士、フードコーディネーター。大手食品メーカー勤務を経て2003年にフリーに。料理教室の講師やコーディネート、メニュー開発、健康番組への出演など幅広く活動する。料理家としてのキャリアは20年以上。これまで指導した生徒は5万人以上に及ぶ。著書『目からウロコのおいしい減塩「乳和食」』(社会保険出版社)で、2014年グルマン世界料理本大賞イノベイティブ部門世界第2位を受賞。健康とつくりやすさに配慮したオリジナルレシピにファンが多い。2015年には日本高血圧協会理事に就任。また、日本ではじめて育脳をコンセプトにした離乳食を監修()。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年01月20日あと1年後の2020年、いよいよ教育改革がスタートします。変化の激しい社会で活躍できる人材育成を目指して、戦後最大規模の教育改革が行われるのです。今後、子どもたちが学校生活や社会生活を送るうえで重要視されてくるのが「自主性」。そんな未来に向かって、子どもたちだけではなく、親の私たちも少し “意識改革” をしてみませんか。なぜ「自主性」が必要?2020年の教育改革。その大きな柱のひとつは、“アクティブラーニング” と呼ばれる「主体的・対話的で深い学び」です。これは、「生徒自身が主体的・能動的に参加する授業・学習」を意味しています。これまでは、先生による一方通行の授業がメインに行われ、「学んだことをきちんと理解しているか」の評価が大きなウエイトを占めていました。しかし、今後はそうではなくなります。知能や技能を習得するだけではなく、それを元に「自分で考え、表現し、判断し、実際の社会で役立てる」ことが求められてくるのです。今後、子どもたちにとって「自主性」「主体的行動」がとても重要な課題になってきます。「自主性」とは、そもそも「自分がやりたいことを見つけ、判断し、行動を起こすこと」。確かに、それを実践している子どもを想像すると、それだけでいきいきと輝いて見えますよね。余計な手出し、口出しをせず、じっと見守るでは、一体どうしたら「自主性」のある子に育つのでしょうか。明治大学文学部教授で、これまで100冊もの教育・心理関係の本を執筆した諸富祥彦さん、哲学者・心理学者で、大ベストセラー『嫌われる勇気』の共著者である岸見一郎さんが薦める方法をご紹介していきましょう。例えば、子どもがお店で何かを選んでいるとします。子どもがなかなか決められないでいるとき、つい「これにしたらいいんじゃない?」などと、親の都合で選ばせたりすることはありませんか?ほかにも、遊ぶおもちゃや着る洋服など、子どもの意見を聞く前に自分の考えで決めてしまうことはないでしょうか。子どものために、と余計な先回りをしてあれこれ手を差し伸べること(=過干渉育児)は、子どもの自主性ややる気を奪ってしまうのだそう。「じっと子どもがやっていることを見守って、子どもが失敗しようが何をしようが自由に遊ばせるのが大事」と諸富さんは言います。ただ、ひとつ注意点が。“見守る” ときに、「スマホをいじりながら」はNGだそう。「“見守る”とは裏を返せば、“いつでも出て行けるように用意をしておく”ことでもあります。スマホばかり見ていたら、子どもが危ない場面に遭遇したときに、ぱっと俊敏に動くことはできないはずです」(岸見さん)。「“過干渉”と“無関心”は違います。子どもは1人で遊んでいるように見えても、時々親が自分のことを見てくれているか確認しています。親が自分のことを見守ってくれていると感じると、安心してまた自分の世界に戻っていけるのです」(諸富さん)見放すのではなく、見守る育児。簡単なようで、意外と難しいことかもしれません。つい手出し口出ししたくなるときも、時間がかかってじれったい場面も、ぐっとこらえて “見守り” に徹してみましょう。そうすれば、きっとお子さんの自主性は自然と育まれていくはずです。子どもの自主性を重んじながら注意する方法「自主性を重んじて、じっと見守る」といっても、ゲームばかりして勉強しない子どもを見守るわけにもいきませんよね。ほかにも、「部屋を片付けない」「朝なかなか起きない」などの問題があるでしょう。「~~しなさい!」と頭ごなしに叱るのは簡単ですが、子どもはその通りには動いてはくれないもの。親の意見を一方的に押し付けることなく、自主性を重んじながら注意する方法、声かけをご紹介しましょう。■意見を伝える前に「前置き」をする「最近のあなたの様子を見ていると勉強をしていないようだけれども、勉強について一度話し合いをしてみない?」などと「前置き」を入れながら、まずひと声かけるのが有効。この声かけをすることで「子どもの課題」が「親と子どもの共同の課題」となるのです。もし親がこのあとになにかしらの意見を伝えたとしても、子どもの課題や問題に「土足」で踏み込むことにはならないでしょう。■子どもに相談をする「お母さん、仕事に遅刻するわけにはいかないから、あなたが毎朝寝坊しないようにしてくれたら嬉しいんだけど、一体どうすればいいかしらね。何かいい考えはある?」など、子どもに積極的に相談するのも◎。子どもは親から対等な存在と認められたと感じ、解決策を一生懸命考えて提案してくれるのだそう。自分で考えた解決策ならば、子ども自身が納得しているため、実行に移しやすいということですね。■「偉いね」ではなく、「ありがとう」を問題が解決した場合に必ず伝えたいのが「ありがとう」という言葉。つい、「偉いね」と言ってしまいそうになりますが、子どもを対等な存在として、協力してくれたことに感謝し、ありがとうと伝えるのが適切だそう。子どものほうも、『親の役に立てた』という自信につながります。■丁寧な言葉使い、「NO」と言える余地を残す子どもに対して、なるべく丁寧な言葉使いをすることも大切です。お願いする場合も、「~~してくれませんか」「~~してくれたら嬉しいんだけど」というように子どもが「NO」と言える余地を残しましょう。こうやって見ると、私たち親の心がけや根気が必要な内容ばかりですね。でも、ここは可愛い我が子の明るい将来のためにぐっと耐えて頑張りましょう!自分で“選ぶ”大切さ「自主性」を育むうえで切っても切り離せないのが「自己選択力」。昨今注目を浴びる、モンテッソーリ教育でも重要視されている能力で、諸富さんも「自己選択こそが人生なのです」と言っています。ズバリ、自己選択力を高めるポイントは、極力自分で選択させること。例えば、シャツ、ズボン、スカートなど洋服を決める際は、「今日はどっちにする?」と2択にしてあげると良いそう。ただ、5歳以下の子どもの場合、3つ以上の選択肢から選ぶのは難しいので気をつけます。また、大人が選択肢をまったく挙げず、「どうするの?」と問うのも小学生以下の子どもには難しいので避けましょう。タイガー・ウッズやイチローといった超一流アスリートたちも、ゴルフや野球を親からやるように指示されたことはなかったそう。「ゴルフが好き」「野球が好き」という根っこがあり、さらに「自分で選択した」という始まりがあるからこそ、さらなる高い境地を目指してこられたのかもしれませんね。文/鈴木里映(参考)日経DUAL|過干渉育児の恐ろしい弊害子育ては根気が一番ベネッセ 教育情報サイト|2020年大学入試改革で教育が変わる!学研キッズネット|子どもの自主性についてアドラー流で考える藤崎達宏(2017),『モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す!』,三笠書房
2019年01月19日「賢い子どもに育てたい」と、子どもが幼い頃からさまざまな習い事に通わせている親御さんも多いでしょう。でも、「自宅でできる『育脳法』があるのに」と少し残念がるのは、オリジナルの育脳レシピ開発で子どもを持つ親御さんのファンも多い管理栄養士・小山浩子さん。その育脳法とは、なんと「料理」なのだそう。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)料理にはPDCAサイクルのすべてが含まれている子どもをより賢く育てたいと思えば、子どもであってもPDCAサイクルをまわせるような人間にしていく必要があります。なぜかというと、結局、勉強ができる子どもというのは、自分で勉強の計画を立て、実行し、自分の問題点を見つけ、それを改善してくことができる人間だからです。まわりの優秀な子どもを観察して、どういう勉強法がもっとも無駄がなく効果的なのかということを導ける観察眼も必要とされるものでしょう。もちろん、こういった能力は大人になれば仕事などその他のことにも応用できるもの。人間としての成長を大きく助けてくれるものです。子どもにPDCAサイクルをまわさせるというと、驚く人も多いはずです。でも、じつは5歳くらいまでの間に大人の脳の9割ができあがるとされています。つまり、5歳児の脳は、その能力でいえば大人の脳とそれほど変わらないということ。もちろん、知識や経験は圧倒的に足りませんから、子どもがPDCAサイクルをまわせるようになるには、大人がそのやり方を教えてあげる必要があります。そして、そのやり方を教えるために最適なものが、「料理」なのです。なぜかというと、料理にはPDCAサイクルのすべてが含まれるからです。レシピという計画書があり、実際に調理をして、美味しくできたのかを確認して、失敗すれば改善点を探す。まさに、PDCAサイクルそのものですよね。それに、お母さんの料理の仕方を観察して、うまく取り入れるということもできます。料理は脳を育てるためのメリットだらけ!また、料理には他にも「育脳」に適した点がたくさんあります。まずは、「指」をいっぱい使うこと。脳の発達には指を動かすことが効果的だという話は耳にしたことがある人も多いでしょう。料理は、どんなプロセスも指を使うものばかりです。また、「五感」のすべてを使う点でも料理は育脳に効果的です。料理をするには、指でさまざまな道具や食材に触れることはもちろん、音の変化で火の通り具合をたしかめたり、匂いを嗅いだり、美しく盛り付けようと視覚を働かせる必要がある。そして最後は美味しい料理をしっかり味わう。料理をして食すという過程で、五感のすべてを使い、脳をたくさん刺激することができるのです。さらには、「結果」がすぐにわかるということも料理のメリットです。小さい子どもの場合、はっきりした結果がすぐにわからないと、なかなか次へのやる気にはつながっていきません。じつは、こういう脳に対するメリットを持った行為は、ありそうでなかなかないもの。お絵描きも育脳にはいいとされますが、明白な結果が見えるかというと、ちょっとちがいますよね。子どものお絵描きコンクールで受賞などすれば話は変わりますが、それも受賞発表までには時間が必要です。それに、アートの世界ですからその評価は見る人によってまったくちがってきます。その点、料理の結果は美味しいかどうか。子どもであっても、美味しいものは美味しい、美味しくないものは美味しくないときちんと判断できます。それが、「次はもっと美味しくしたい」「今度こそ頑張る!」というやる気につながるのです。母親との料理体験は子どもの一生の宝もの料理に育脳効果があることを知ってか知らずか、子どもに料理の手伝いをさせているという親御さんは少なくないでしょう。ただ、そのやり方には問題があるというケースが多いようですね。カレーをつくるにも、米をとがせたり、ジャガイモやニンジンの皮むきだけをやらせたりしていないでしょうか。それは、ただ親の指示に従ってやる作業、つまり、下働きです。残念ながらそれでは脳はまったく育ちません。そうではなくて、皮をむいた材料を切る、炒める、味つけをする、味をみるといった、レストランでいえば料理長がやるようなメインのプロセスを子どもにやらせてあげてください。そのときは、一切、指示を出してはいけません。責任を子どもに持たせるのです。そうしてできた料理を家族みんなで食べる。たとえばニンジンが硬かったとしましょう。そうすると、子どもは「次はもう少し小さく切ってみよう」「煮込む時間を長くしてみよう」と自分で考えるようになる。なぜかというと、そのプロセスを子ども自身がおこなったからです。そうして、子どもは徐々にPDCAサイクルのまわし方を身につけていくのです。そして、美味しく料理ができたのならうんと褒めてあげてください。そうすれば、子どもは自信を持ち、料理以外のことにも意欲的に取り組める人間になっていくはずです。できれば、10歳頃までの間にこういう料理の経験をたくさんさせてあげてほしいですね。10歳を過ぎると、子どもの行動範囲や興味の範囲は大きく広がります。でも、それ以前の子どもにとっては、お母さんがこの世界のすべて。大好きなお母さんから教わったり、褒められたりしたことは、子どもの一生の宝ものになるのですからね。『かしこい子どもに育つ! 「育脳離乳食」:脳をはぐくむ食事は0歳から』小山浩子 著/小学館(2018)『こどもの脳は、「朝ごはん」で決まる!』小山浩子 著/小学館(2015)■ 管理栄養士・小山浩子さん インタビュー一覧第1回:子どもの脳は“親の愛情”と“食事”で育つ!「育脳」に効く食材の選びかた第2回:“パン&〇〇”で最高の朝食になる!脳が育つ食べ合わせ「5つの黄金ルール」第3回:“美味しい”か“美味しくない”か。結果がすぐにわかる料理は、子どもがPDCAを学ぶのに最適第4回:「お米さえ食べさせておけば大丈夫」が危険な理由。手抜きでも脳に効く朝ごはんとは(※近日公開)【プロフィール】小山浩子(こやま・ひろこ)1971年9月5日生まれ、愛知県出身。料理家、管理栄養士、フードコーディネーター。大手食品メーカー勤務を経て2003年にフリーに。料理教室の講師やコーディネート、メニュー開発、健康番組への出演など幅広く活動する。料理家としてのキャリアは20年以上。これまで指導した生徒は5万人以上に及ぶ。著書『目からウロコのおいしい減塩「乳和食」』(社会保険出版社)で、2014年グルマン世界料理本大賞イノベイティブ部門世界第2位を受賞。健康とつくりやすさに配慮したオリジナルレシピにファンが多い。2015年には日本高血圧協会理事に就任。また、日本ではじめて育脳をコンセプトにした離乳食を監修()。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年01月19日論理的思考力は、英語でのプレゼンや英作文だけでなく、どんな教科においても重要な力です。将来、お子さんが仕事をするときにも、高い論理力を持ち合わせていれば、様々な分野で活躍できることでしょう。幼いうちから育てておきたい能力の一つである「論理的思考力」。実は、英語でのプレゼンテーションの仕方を学ぶことで、訓練することができます。なぜなら、英語でのプレゼンテーションでは、論理展開が非常に重視されているから。前回に引き続き、プレゼンテーションの仕方、中でも論の展開の仕方をご紹介しましょう。1. 定義し、例を示す「例えば」プレゼンテーションでは、「鍵となる概念」がよく導入されます。「正義」や「平和」、「人間の尊厳」などがその例です。こういう概念は、定義しなければ、話の内容が曖昧になってしまいます。そこで、定義付けをする必要があるのです。「ここでは『この言葉はこのような意味で用いる』」というのが、定義です。・……をこのように定義します。I’ll define “…” this way.しかし、定義だけでは、なかなか実感を持ちづらいものですね。そこで、実際の例を示すといいでしょう。・例えば……For example, ….「平和とは、例えば……な状態」と具体的にイメージできるように話すことで、自分が本当に届けたいメッセージを聴衆に的確に伝えられるでしょう。2. グラフや表を見せる「調査結果によると」説得力を持たせるために重要なのは、証拠を示すこと。ここで活躍するのが、データです。グラフや図、表などを見せるときは、こんなフレーズが使えます。・……を見てみましょう。Let’s have a look at….データから何がいえるかを示す表現はこちら。・我々の調査結果では……。Our findings show….・この数字は……を示している。The figure indicates….信頼できるデータをもとに話を展開することで、「なるほど!」と納得してもらいやすくなるでしょう。3. 因果関係を示し、予測する「その結果として」データをもとに、自分なりの考察を加えることで、あなただけのプレゼンテーションができるようになります。考察をするときに大切なのが、因果関係を説明すること。【結果→原因】の順で話すときは、次のような表現が便利です。・AがBによって引き起こされているA was caused by BA resulted from B【原因→結果】の順で話すときはこうなります。・BがAを引き起こすB leads to AB causes Aまず原因について話した後に、こんな一言を加えてもいいですね。・その結果として……As a result, ….このような考察をふまえ、将来の予測をたてることもあるでしょう。・……を予測しています。We expect(predict / forecast)….因果関係を明確にしたり、将来の予測をたてることは、プレゼンテーションだけでなく、記述式のテストをはじめとして、様々な分野で大切になります。ぜひ幼少期から鍛えておきたいポイントです。4. 言い直す「つまり」何か大切なことを話した後、聴衆に伝わりにくいかな、と感じたときは、言い直しをするといいでしょう。・言い換えると……。In other words,….・つまり、……。That is,….別の言葉に言い換えることで、よりわかりやすく表現することができるはずです。5. 話しながら要点を示す「私が言いたいのは」日常会話だと、いろいろな話をした後に「つまり、私が言いたいのは……」といった表現をすることがありますね。話が混乱してきたときは、論点を明確にすることが必要になります。これは、プレゼンテーションでも同じです。・私が言っているのは……。What I’m saying is….・要点は……。The point is….このような表現を使いこなせるようになると、話にメリハリをつけることができて効果的です。6. 話題を変える「……に移りましょう」プレゼンテーションでは、1つのテーマについて、複数の観点から話すものですね。でも、いきなり話題を変えると、唐突に聞こえてしまいます。そこで、このような慣用表現を知っていると便利です。・……に移りましょう。Let’s move on to….・……に戻りましょう。Let’s go back to….次の話題に移ることもあれば、前の話題に戻ることもありますね。そんなとき、一言加えてからトピックを変えると、自然な形で話を進めることができるでしょう。7. 要約し、結論を述べる「まとめると」プレゼンテーションの最後に、今までの話を要約し、結論を述べ、そして締めくくる必要があります。要約するときは、今までの話の中におけるポイントのみを、改めて伝えるといいでしょう。・まとめるとTo sum upTo wrap up結論を述べるときは、文字通り「最後の一言」を伝えます。・結論としてTo conclude締めくくりでは、感謝の意を表すと同時に、通常は質疑応答に入るシグナルを送ります。・ありがとうございました。Thank you.・質問はありますか?Do you have any questions?定義付けに例示、データに基づいた因果関係の解明、将来の予測、そして要点の整理……。どれも、論理的に話を展開するために、とても大切なことばかりです。これらを意識して英語のプレゼンテーションを準備する経験を重ねることで、論理的思考力を訓練できるはずです。ぜひ、お子さんと挑戦してみてくださいね。
2019年01月18日3〜5歳くらいは「なぜなぜ期」とも言われるように、子ども自身に疑問が溢れ出てくる時期。空はなぜ青いのか、悲しくなるとどうして涙が出るのか、ダンゴムシが丸くなるのはなぜか……。大人が簡単には答えられないような質問を、次から次へと投げかけてくる子も多いはず。また、そんな「質問攻撃」にやれやれ、と疲れを感じてしまう親御さんもいることでしょう。しかし、この質問こそが多方面への好奇心の表れであり、順調に知能が発達している証拠なんだそう。半分は親との受け答えを楽しんでいるだけとも捉えられますが、実はこの“なぜなぜ期”、子どもが“勉強好き”“理科好き”に育つチャンスなのです。「これなあに?」から「なぜ?どうして?」へ「これなあに?」に対して「◯◯だよ」と答えるだけでよかった2〜3歳の頃に比べ、3〜4歳になると質問も多様化。ことばと文字が頭の中で一致し、覚えたことばを上手に使えるようになる時期だからこそ、探究心が溢れ出てくるようです。子どもというのは元来、強い探究心を持っています。これは人間がまだ野生動物だった頃の名残なのです。野生動物は生まれた瞬間に、過酷な自然環境の中に急に投げ出されます。その瞬間に周囲から様々な情報を入手して分析し行動しなければ、たちまち天敵の餌食になってしまいます。そのため動物には、先天的に強い探究心が備わっているのです。幼い子どもが何にでも興味を示し、「なぜ?」「なに?」と訊いてくるのはそのためです。それを上手に育んでいけば、あとは勝手に「理科が得意の子」に育っていきます。(引用元:All About|理科のできる子に育てる低学年からの学習法)いろいろな科目の中でも、答えを導き出すにあたり、数値を使って計算したり、いろいろな作業をしたりしないといけない問題が多いのが理科。ひょんな「なぜ?」をきっかけに、答えを見つけ出すための姿勢が身についていけば、理科がきっと楽しいものと感じられるようになるはずです。子どもの好奇心を肯定し同じ目線に立つでは、「なぜ?」と聞かれたらどう答えるのがベストなのでしょうか。子どものためには、なんでもすぐに答えられるのが立派な大人、という認識は捨ててしまいましょう。すぐ答えが与えられることが習慣になっていると、子どもは「ママに聞けばなんでも答えがわかる」と頼り切ってしまい、自分で考える力が伸びないのだそうです。(引用元:曽田照子(2013) ,『ママ、言わないで!子どもが自信を失う言葉66』,学研パブリッシング.)子どもから科学的な質問をされたとき、知的探究心を伸ばすポイントをまとめてみました。【1.質問を肯定する】まず「よくそこに気づいたね!」と疑問に思ったこと自体を肯定してあげましょう。ただし調子を合わせて形式的にそう言っても、子どもには見抜かれてしまいます。「どうして寒いと体が震えるの?」と聞かれたら、たとえ当たり前だ、そういうものだ、と思っていても、本気で考えてみるのです。大人が何気なく理解しているつもりになっていることも実はよくわかっていなかったりするもので、たしかに不思議がいっぱいです。【2.すぐに答えず、一緒に疑問を持つ】質問にすぐ答えられてしまった子どもは、考えることの面白さを実感することができません。また、答がすぐに導き出せない問題は投げ出してしまう、根気のない子に育ってしまう可能性も否定できません。もしも答えがわかっていたとしても「どうしてなんだろうね」と寄り添い、自ら答えを探し始めるように促してあげましょう。【3.わからなかったらネットや図鑑に頼ってOK】親たるもの、なんでも答えられなくては!と威厳を保とうとする必要はありません。知ったかぶりは最もNG。親の役割は、知識を与えることではなく勉強の仕方や調べ方を伝えること。ネットや図鑑の力を借りながら、子どもが理解できるよう、かみくだいて説明してあげましょう。するといずれ、子ども自らが疑問解決のために勉強する姿勢が見られるはずです。なぜ?に対する「NGワード」「NG行動」逆に、質問に対してNGなのは、以下のような受け答え。いずれもせっかくの好奇心・探究心を、根元からスッパリ切り落としてしまうような残念な答え方です。×「そんなこと知らなくていいのよ。」×「そういうものなの!」×「そんなの◯◯に決まってるじゃない」このほかにも「またあとでね」とその場をやり過ごした場合は、実際にあとになっても何もしないでいると子どももがっかり。信頼を失いかねません。もちろん、手が空いてから改めてこどもの質問に向き合うのであればOKです。また、子どもの質問は無邪気なものでつい笑ってしまいたくなることもありますが、一笑に付すのもNG。子どもは大人が思っている以上にナイーブ。一度笑われてしまうと恥ずかしさや恐怖心を覚え、質問できなくなってしまう場合もあります。幼い子の場合は、質問自体がうまく説明できず、何を言っているのかわかりにくい時も。そんなときは「なにがききたいのかわからないよ」と切り捨てるのではなく、やさしく寄り添って質問内容を引き出してあげましょう。実際の観察や体験を通して説明を本や図鑑で調べるのももちろんよいですが、「百聞は一見に如かず」。勉強の楽しさを知っている子は、机の上以外のあらゆる場所から学びのチャンスを得ています。本来、何かを学ぶことは心をウキウキさせ、楽しいものです。「勉強」感覚が希薄な幼児期にこそ、その「楽しさ」を体感させることが大切なのです。(引用元:祖川泰治(2015) ,『IQがみるみる伸びる0歳から6歳までの遊び方・育て方』,廣済堂出版.)わからないなら机に向かって調べましょう!ばかりではなく、体感することで理解につながれば、親も子も学びの楽しさを実感できるはず。「なぜ?」をきっかけにして、近所の図書館や川や公園へ出かけたり。また、答えを見つけられそうな動物園や博物館、キャンプや登山などを週末に計画すれば、親子一緒にワクワクできますね。***子どもの疑問に寄り添いたいのはやまやまだけれども、毎日忙しくそんなに余裕はない、という親御さんも多いことでしょう。ならば、ときには「◯年生になったら学校で教えてもらえるよ」と未来へ希望をもたせてみたり、「お母さんもわからないから、◯◯くんが大きくなったら勉強して教えてくれる?」とお願いしてみたり。夏休みの自由研究のテーマにしよう、と提案し、疑問を忘れないようにメモしておくのもいいですね。その時はわからなくても、ほかのことを勉強していくうちに知識と知識が結びつき、「なんだ、そういうことか!」と心から納得できる時が来ることもあるはずです。親が真摯に向き合うべきなのは、質問自体ではなく、こどもの“好奇心”の方。「なぜ?」は勉強の楽しさを知るワクワクの芽。大事に育てていけるといいですね。文/酒井絢子(参考)ベネッセ教育情報サイト|「なんで?」と言われても、「間違っているから違う」としか言えません[中学受験]AERA dot.|「9歳のころがカギ」 自分の子どもを「理系」にする方法gooニュース|子どもの 「なぜなぜ攻撃」に、正確な知識で答えるのはNG!?All About|カンタン! 子どもの知的好奇心を引き出す方法All About|理科のできる子に育てる低学年からの学習法All About|これからの教育キーワードは「没頭力」汐見稔幸・高濱正伸対談祖川泰治(2015) ,『IQがみるみる伸びる0歳から6歳までの遊び方・育て方』,廣済堂出版.キャシー・ウォラード(2012) ,『なぜ?どうして?身のまわりの疑問、まるわかり大事典』,飛鳥新社.立石美津子(2014) ,『1人でできる子が育つ「テキトー母さん」のすすめ』,日本実業出版社.曽田照子(2013) ,『ママ、言わないで!子どもが自信を失う言葉66』,学研パブリッシング.
2019年01月17日脳の発達を促し、しっかり働かせるための栄養素を知れば、あとはそれらを食事で摂取するだけ。それで十分だと思ってしまいますが、じつは「それでは不十分」なのだそう。そう語るのは、オリジナルの「育脳」レシピ開発で子どもを持つ親御さんのファンも多い管理栄養士・小山浩子さん。小山さんによると、それぞれの栄養素が最大限に力を発揮するための「食べ合わせ」こそがもっとも重要なのだそうです。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)ブドウ糖を持続的に脳に送るカリウム・食物繊維健康な脳をつくりしっかり働かせるには、脳に必要な栄養素がしっかり力を発揮することが大切です。まず、わたしが提唱している、脳に効く食べ合わせルールを紹介しておきましょう。【脳に効く食べ合わせ「5つの黄金ルール」】1:炭水化物×カリウム・食物繊維2:レシチン×ビタミンC3:DHA・EPA×ビタミンE4:ビタミンB12×クエン酸5:ビタミンB群×亜鉛×色素成分このうち、脳に絶対に欠かせない炭水化物、レシチン、DHA・EPA(インタビュー第1回参照)が含まれる1番から3番までのものが特に重要なものです。では、一つひとつ解説していきましょう。まずは1番目の「炭水化物×カリウム・食物繊維」。炭水化物(ブドウ糖)は脳を動かすガソリンの役目を果たします。ダイエットの敵だとして避けられることも多い炭水化物ですが、脳をしっかり動かすためには欠かせないもの。ご飯やパン、麺類など、なんでもいいので特に朝食できちんと子どもに食べさせるようにしてください。ただ、注意してほしいことがひとつ。炭水化物ばかりを大量に摂取すると、血糖値が急激に上昇してしまいます。すると、インスリンが分泌され、子どもが学校に行って2時間目の授業の時間くらいには低血糖状態に……。眠気を誘って集中力が削がれてしまうことにもなってしまいます。これでは授業をきちんと受けられませんよね。それを避けるため、炭水化物と一緒にカリウムや食物繊維を摂取しましょう。これらを含むのは、野菜や果物、ヨーグルトです。カリウムと食物繊維の働きにより、脳にガソリンであるブドウ糖をゆっくりと持続的に送ることができるのです。少しの工夫が重要栄養素の働きを助ける2番目の「レシチン×ビタミンC」は、脳の神経伝達物質をつくるレシチンとおすすめの食べ合わせです。レシチンは卵や大豆製品に含まれる栄養素。ただ、このレシチンはそんなに吸収率がいい栄養素ではありません。なぜなら、汗や尿と一緒に流れ出やすいものだからです。その流出を抑え、吸収を助けるのがビタミンC。もちろん、大豆にもビタミンCは含まれていますが、他の野菜や果物でさらに効果を高めようというわけです。たとえば、お豆腐を食べるにしても、プチトマトなどの野菜を添えるような工夫をおすすめしますね。続いては3番目「DHA・EPA×ビタミンE」。ここでの主役はDHAとEPA。これは脳をつくる材料となる栄養素です。これらは油ですから、空気に触れただけで酸化がはじまり、体内に入ってからも酸化は進みます。酸化してしまうと、DHAとEPAは十分な働きをしてくれません。この酸化を抑えるのが、ビタミンEなのです。含まれるのはブロッコリーやサニーレタス、カボチャなど、いわゆる緑黄色野菜です。ビタミンEには、DHAとEPAの酸化を抑えることだけでなく、脳に持続的にDHAとEPAを送る働きもあります。また、緑黄色野菜を取るのが手間だというなら、オリーブオイルを使ってもOK。オリーブオイルも豊富にビタミンEを含むものですからね。調理に使う他、調理後の魚にかけるだけでも十分です。ふたつの補助的ルールで完璧「育脳」食に「5つの黄金ルール」のうち、3番目までは「3本柱」とも呼ぶべき重要なものなので、できれば毎日の食事に取り入れてほしいですね。そして、残る4番目、5番目は補助的なものとなります。余裕があるようなら、これらも踏まえてもらえれば脳にとって完璧といえる食事になりますよ。4番目は「ビタミンB12×クエン酸」。ビタミンB12は「血液のビタミン」とも呼ばれ、血液の状態を良くする働きがあります。血流が良くなければ、炭水化物にしても、レシチン、DHA、EPAにしても、脳にしっかりと届けることができませんから、ビタミン12の働きも大切なものなのです。ビタミンB12は豆製品にも入っていますが、豚肉やレバーなどに含まれる動物性のものがその働きが強く、特におすすめです。そして、その吸収を高めるのがクエン酸。レモン汁やお酢などを豚肉やレバーと一緒に食べる工夫をしてみてください。最後は「ビタミンB群×亜鉛×色素成分」です。これらは脳全体の活性化を図る栄養素。この食べ合わせは代謝を高める働きがあるので、炭水化物など、摂取した栄養素の働きの即効性が上がるのです。ビタミンB群を取るには、胚芽米や玄米がいいですね。あるいは、シリアルにもビタミンB群が強化されたものがありますので、そういう商品を使うのも手です。亜鉛はワカメやヒジキ、カキなど海産物に多く含まれます。手軽に摂取するためにわたしがおすすめしているのがアサリの水煮缶。カレーやクラムチャウダーに入れるなど、使い勝手がいいですよ。最後の色素成分は、トマトのリコピン、ナスのナスニンなど、緑黄色野菜が持っているものです。おすすめ「育脳朝食メニュー」最後に、わたしがおすすめする「育脳朝食メニュー」を少しだけ紹介しましょう。(画像提供:小学館)【育脳朝食メニュー】材料(4人分)■シリアルフルーツグラノーラ 200gミックスナッツ 30gバナナ 2本プルーン 4粒豆乳 600ml(つくり方)① 器にシリアル、プルーン、バナナを入れて豆乳をかけ、刻んだミックスナッツをかける。■もみもみソーセージ豚ひき肉 200gハーブソルト 小さじ2こしょう 少量牛乳 60mlオリーブオイル 小さじ2チャック付きビニール袋 1枚(つくり方)① チャック付きビニール袋に豚ひき肉を入れ、ハーブソルトとこしょうを混ぜて牛乳を加えてよくもみながら混ぜ合わせる(前日に仕込みをしておく)。② フライパンにオリーブオイルを熱し、①の袋の先を2cm切り、約6cmの長さで絞り出す。③ 表面を焼いてフライパンのふたをし、なかまで加熱する。④ お皿に盛り、お好みでケチャップと粒マスタードを添える。(画像提供:小学館)■カボチャのツナサラダ(常備菜)カボチャ(冷凍品) 400gタマネギ 1/4個※みじん切りツナ缶 小1缶(80g)マヨネーズ 大さじ4こしょう 少量(つくり方)① カボチャは凍ったまま耐熱容器に入れて電子レンジに7~8分かける。② 熱いうちに、タマネギとツナを混ぜてこしょうをかけ、マヨネーズであえる。※サンドイッチのフィリングにしても美味しい。(画像提供:小学館)■グレープフルーツグレープフルーツ 1個(つくり方)① グレープフルーツを8等分のくし型に切り、切り込みを入れておく。シリアルに含まれる食物繊維によって血糖値を安定させ、集中力をアップさせます。また、プルーン、バナナ、牛乳の食べ合わせにより脳に栄養がスムーズに送られ、神経細胞の動きも活発になり、脳全体が活性化。さらに、豚肉のビタミンB12で記憶力がアップ。カボチャのビタミンEでDHAの酸化を抑え、グレープフルーツのビタミンCで豆乳のレシチンの吸収を助けるというメニューです。『かしこい子どもに育つ! 「育脳離乳食」:脳をはぐくむ食事は0歳から』小山浩子 著/小学館(2018)『こどもの脳は、「朝ごはん」で決まる!』小山浩子 著/小学館(2015)■ 管理栄養士・小山浩子さん インタビュー一覧第1回:子どもの脳は“親の愛情”と“食事”で育つ!「育脳」に効く食材の選びかた第2回:“パン&〇〇”で最高の朝食になる!脳が育つ食べ合わせ「5つの黄金ルール」第3回:“美味しい”か“美味しくない”か。結果がすぐにわかる料理は、子どもがPDCAを学ぶのに最適(※近日公開)第4回:「お米さえ食べさせておけば大丈夫」が危険な理由。手抜きでも脳に効く朝ごはんとは(※近日公開)【プロフィール】小山浩子(こやま・ひろこ)1971年9月5日生まれ、愛知県出身。料理家、管理栄養士、フードコーディネーター。大手食品メーカー勤務を経て2003年にフリーに。料理教室の講師やコーディネート、メニュー開発、健康番組への出演など幅広く活動する。料理家としてのキャリアは20年以上。これまで指導した生徒は5万人以上に及ぶ。著書『目からウロコのおいしい減塩「乳和食」』(社会保険出版社)で、2014年グルマン世界料理本大賞イノベイティブ部門世界第2位を受賞。健康とつくりやすさに配慮したオリジナルレシピにファンが多い。2015年には日本高血圧協会理事に就任。また、日本ではじめて育脳をコンセプトにした離乳食を監修()。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年01月17日筋肉をつくるにはタンパク質、骨をつくるにはカルシウムが必要という具合に、食事と体の関係に関しては多くの人が少なからず知識を持っているはずです。でも、いい脳をつくるために必要な栄養素、食事といったら……?詳しく知っているという人は、そう多くはないでしょう。そこでお話を聞いたのは、オリジナルの「育脳」レシピ開発で子どもを持つ親御さんのファンも多い管理栄養士・小山浩子さん。脳に欠かせない栄養素を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)脳を「つくる」材料となる栄養素子どもの頭が良くなるかどうかは、遺伝の影響が大きいと考えている人も多いでしょう。もちろん、頭の良し悪しには遺伝も大いに影響を与えます。ただ、その影響がはっきり表れはじめるのは、13歳くらいから。それまでは、赤ちゃんの頃からの脳への刺激や本人の好奇心といった外的要因、それから「食事」が大きな影響を与えます。食べものによって体がつくられることは、多くの人がイメージするものでしょう。でも、脳も体の一部ですから、当然、食事による影響を大きく受けます。子どもをかしこく育てたいのなら、食事にきちんと気を配る必要があるのです。脳のなかではいろいろな栄養素がチームとなって働いています。そこでまず意識してほしいのは、脳を「つくる」栄養素、「働かせる」栄養素、「動かす」栄養素をしっかり摂るということです。脳を「つくる」栄養素を紹介するにあたって、ひとつ質問をしましょう。脳はなにでできていると思いますか?じつは、脳の6割は脂肪でできているのです。そして、いい脳をつくる材料が、有名なDHA、それからEPAという油状物質。特にDHAは脳にとっての最重要栄養素と言えます。DHAをきちんと摂取しないと、脳の発達障害を起こしてしまうことも……。DHAの摂取量が十分な子どもとそうでない子どもでは、脳の神経回路の発達の度合いはい大きくちがいます。ただ、これは後からでも取り戻せるものです。オックスフォード大学の実験では、3カ月間、DHAを投与された子どもは、脳の神経回路がしっかりと改善されました。親の愛情が子どもの脳の発達を促すこのDHA、EPAの特徴として、体のなかでつくることができないことが挙げられます。つまり、食べものからきちんと摂取する必要があるということ。青魚に多く含まれることが知られていますね。ただ、意外にも、サバやイワシなどの青魚より多くのDHAを含むのがマグロのトロの部分。でも、お値段も高いですし……毎日のように食卓に出すのは難しいですよね。日常的に食べられるものとしては、サバの水煮缶や魚肉ソーセージ、それからツナ缶をおすすめしています。もちろん、魚が大好きなお子さんになら、ときには奮発してマグロのトロを食べさせてあげてください。その際、「頭が良くなるからね」と言ってあげましょう。子どもは100人いたら100人が「頭が良くなりたい」と思っています。そして、大好きなお母さんが自分の応援をしてくれていると感じるだけで、子どもは「頑張ろう」と思うもの。その気持ちが、脳の発達も促すのです。お子さんが魚嫌いという場合も安心してください。じつは、アマニ油とエゴマ油が、体内でDHAやEPAと同じ働きをするということがわかってきたのです。これらをドレッシング代わりに使うだけで、魚を食べるのと同じくらいの効果を発揮してくれます。脳を「働かせる」「動かす」栄養素IQが高い子どもの脳には、脳を「働かせる」アセチルコリンという神経伝達物質が多いという特徴があります。じつは、このアセチルコリンは、生まれたときには誰もがいっぱい持っているもの。神様は本当に平等に人間をつくっているんですね。ただ、その量は5歳くらいまでの間に徐々に減っていくのです。つまり、アセチルコリンをなるべく減らさないようにキープできた子どもがかしこくなる。5歳くらいまでの間に将来の脳の土壌ができるというわけですね。それだけ、幼い頃の食事が脳の発達には重要だということを意味します。このアセチルコリンの材料となるのが、卵や大豆に含まれるレシチンという栄養素。卵は1日に1個は子どもに食べさせてほしい。また、豆が苦手だという子どもには、きな粉をうまく使うことをおすすめします。朝食なら、「きな粉トースト」なんていいですよね。きな粉とはちみつと練乳を混ぜると、自家製のきな粉ジャムになります。これをトーストに塗るだけ。すごく手軽ですよ!それから、脳を「動かす」ガソリンとも言えるのが炭水化物です。脳が消費するエネルギーは、体全体の消費量のなんと20%に達します。低炭水化物ダイエットがはやっていますが、脳のためには、ご飯やパン、麺類をしっかり食べさせることが必要です。牛乳は体にも脳にも効く完全栄養食品そして、脳にいい食事のカバー役として欠かせないのが「牛乳」です。ここで、牛乳の偉大なパワーを紹介しましょう。これは、ここまで紹介したDHA、EPA、レシチン、炭水化物以外に脳が必要とする栄養素、そしてそれらを含む主な食べものです。【牛乳は万能育脳食材】ここで挙げた栄養素の多くを含むのが牛乳なのです。牛乳というと完全栄養食品とも呼ばれ、健康な体をつくるために欠かせないものですよね。学校給食でも何十年にもわたって出されてきました。その理由を裏付けるように、脳にとっても牛乳は完全栄養食品になっているのです。『かしこい子どもに育つ! 「育脳離乳食」:脳をはぐくむ食事は0歳から』小山浩子 著/小学館(2018)『こどもの脳は、「朝ごはん」で決まる!』小山浩子 著/小学館(2015)■ 管理栄養士・小山浩子さん インタビュー一覧第1回:子どもの脳は“親の愛情”と“食事”で育つ!「育脳」に効く食材の選びかた第2回:“パン&〇〇”で最高の朝食になる!脳が育つ食べ合わせ「5つの黄金ルール」(※近日公開)第3回:“美味しい”か“美味しくない”か。結果がすぐにわかる料理は、子どもがPDCAを学ぶのに最適(※近日公開)第4回:「お米さえ食べさせておけば大丈夫」が危険な理由。手抜きでも脳に効く朝ごはんとは(※近日公開)【プロフィール】小山浩子(こやま・ひろこ)1971年9月5日生まれ、愛知県出身。料理家、管理栄養士、フードコーディネーター。大手食品メーカー勤務を経て2003年にフリーに。料理教室の講師やコーディネート、メニュー開発、健康番組への出演など幅広く活動する。料理家としてのキャリアは20年以上。これまで指導した生徒は5万人以上に及ぶ。著書『目からウロコのおいしい減塩「乳和食」』(社会保険出版社)で、2014年グルマン世界料理本大賞イノベイティブ部門世界第2位を受賞。健康とつくりやすさに配慮したオリジナルレシピにファンが多い。2015年には日本高血圧協会理事に就任。また、日本ではじめて育脳をコンセプトにした離乳食を監修()。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年01月16日「遊び」というと大人にとっては悪いこととも思われるものですが、子どもを健やかに育てるためにはとても重要なもの。そして、子どもがしっかり遊べるように、遊びを大事にする大人を増やそうと活動しているのが、2010年に設立された「一般社団法人TOKYO PLAY」。その代表理事・嶋村仁志さんは、当然ながら「遊びの達人」。子どものときにどんな遊びを経験しておくべきなのか、その遊びへの親の関わり方も含めて教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)冒頭写真提供:嶋村仁志子どもを遊び場の「つくり手」にしてあげる遊びが子どもにもたらす効果を最大限に引き出すために、どういう遊びをさせればいいかということも親御さんたちは気になるところでしょう。でも、そもそも遊びは子どもが主体的におこなうものです。であれば、子ども自身の発想や想像力に委ね、自由にやらせるべきものです。つまり、「どういう遊びをさせればいいか」というのは、ちょっとナンセンスな疑問とも言えるかもしれません。ですが、大人がちょっとしたきっかけを与えることはできます。子どもが楽しく感じる、ドキドキする要素というものがあるのです。家庭では難しいものですが、例を挙げましょう。わたしも関わっている川崎市子ども夢パークの滑り台は38度という角度にしています。これは一般的な滑り台に比べて、ちょっと急な角度です。わたしの考えでは、滑り台にはドラマを生む角度というものがあるんです(笑)。その角度は、登れなくはないけど、普通に登ろうとしても簡単には登れない角度。失敗した子どもは、今度は後ろのほうから助走して挑戦する。あるいは、滑り台の上にいる子どもに引っ張り上げてもらおうとする。そういう角度が子どもにとって面白い。しかも、川崎市子ども夢パークの場合は、「つくるプロセス」も子どもたちと一緒に進めました。遊具をつくる作業をしていると、近所の子どもたちが「なにやってるの?」と見に来ます。「一緒にやろうか!」と、子どもたちと手づくりしました。そういう過程を経ていますから、子どもたちはただのサービスの受け手ではなく、遊び場自体のつくり手でもあるわけです。そんな遊び場が、子どもたちにとって面白くないわけがないですよね。こんな大掛かりなものではなくても、子どもと一緒に遊び場をつくってみればいい。そういうことなら、家庭でもできるものかもしれません。写真提供:嶋村仁志子どもが体験すべき「小さな危険」と「小さないたずら」また、「どういう遊びをさせればいいか」ということなら、幼いうちから「小さな危険」を伴う遊びをきちんと体験しておくことも大切。なぜなら、そうすることで実感を持って危険を知り、成長した後により大きな危険を招かないようになるからです(インタビュー第2回参照)。わたしが代表理事を務めるTOKYO PLAYでは、一般の人たちへのアンケートで「10歳までに経験しておきたい危険なこと」を集めました。栄えある第1位は「高いところ」。木登りや塀昇り、階段からジャンプといったことですね。それから、アイロンやライターを使う、たき火といった「火を使う」こと。また、包丁やナイフを使う、鉛筆を削るといった「刃物を使う」ということもランクインしました。わたしの子どもも、2歳のときに包丁で手を切ってしまったことがあります。2歳児に刃物を使わせるというと、「早過ぎるのでは?」と思う人もいるでしょう。でも、早いからいい。2歳児なら、2歳児の力なりの怪我しかしないのです。これが、中高生になって大人同様の力を持ってからはじめて刃物を使ったとしたら……それこそ危険ではありませんか。また、小さな危険の体験と通じるものとして、「小さないたずら」も経験しておいてほしい。大人としては大手を振っておすすめするわけにもいきませんが、いわゆるピンポンダッシュのようなものです(苦笑)。そういったいたずらに対し、他人がどう反応するのか。面白いと思うのか、あるいは怒られるのか……。その反応を感じるなかで、子どもは「しゃれでは済まされないこと」を体感的に知るようになる。いってみれば、一度は振り切ったいたずらをやってめちゃくちゃに怒られるという経験をしたほうがいいのです。それを5歳でやるか、中高生になってやるかで社会へ与える影響も、自分が受ける罰もちがってきます。幼い頃に「しゃれでは済まされないこと」を知った人間ならば、いたずらと称して誰もが眉をひそめるようなことをやったうえ、それを得意げにSNSにアップして非難されるようなことにはならないのです。子どもの興味関心の「ツボ」を感じるその他、子どもが体験しておくべきこととして、自分が「やりたい」「好きだ」と思うことをいちばん身近な大人に受け止めてもらう体験というものもある。つまりこれは、大人側が取る姿勢が重要ということになります。子どもって、「見て見て!」とよく言いますよね。それをいちばん身近で大切な大人に見てもらって「すごいね!」なんて言われることが、どれだけその子の力になるか。間違いなく、その子は自分に自信を持ち、自己肯定感を高めることができます。逆になにかに失敗して落ち込んだり、怒られてしょげてしまったりしているときも同様です。その気持ちを受け止めてもらうことで感じる安心感が、次なる力を生んでいく。立ち直り、「また挑戦しよう」という気持ちにさせてくれるのです。そういう意味では、遊びは子どもが主体的におこなうものとはいえ、子どもの遊びへの大人の関わり方はとても重要なものということになる。親御さんは、第一に、子どもが「なにをしたいのか」ということに気づくことが重要です。子どもには、それぞれに興味関心の「ツボ」があります。普通は親が子どもをどう育てるかというふうに考えるものですが、子どもは子どもなりに「自分がどう育ちたいか」ということがわかっているのです。そういったことが、子どもの遊びのなかに見えてくる。目の前のものでなにをしたいか、どうしたいのかというところに表現されるのです。たとえば、長靴をはいて水たまりでバチャバチャと延々と遊んでいる子どもがいたとしましょう。その子は、自分の行動によって目の前のものが変化することに面白さを感じています。もしかしたらその行動は、自分の手で目の前のものを変化させて作品をつくり出すアートといった方向への興味関心の表れなのかもしれません。そういう目線を持って、世間でいいとされている教育を闇雲に与えるのではなく、その子のツボの延長線上にあるものを用意してあげれば、子どもの世界が一気に広がることもあるでしょう。子どものツボを感じられるようになれば、子育てがもっともっと楽しくなってくるはずです。『子どもの放課後にかかわる人のQ&A50 子どもの力になるプレイワーク実践』嶋村仁志 他 著/学文社(2017)■ TOKYO PLAY代表理事・嶋村仁志さん インタビュー一覧第1回:遊具なし、プログラムなし。異例だらけの“ガラクタ遊び”が欧州で大人気の理由第2回:大切にしたい遊びの“リスク”。子どものチャレンジを支える遊びのルールとは?第3回:子どもの工作が“失敗作”でも、親はアドバイスしてはいけない第4回:中高生では遅い。子どもが体験すべき「小さな危険」と「小さないたずら」【プロフィール】嶋村仁志(しまむら・ひとし)1968年8月6日生まれ、東京都出身。子ども時代は野球と自転車と缶けりざんまいの日々を送る。英国・リーズ・メトロポリタン大学社会健康学部プレイワーク学科高等教育課程修了。1996年に羽根木プレーパークの常駐プレーリーダー職に就いて以降、プレイワーカーとして川崎市子ども夢パーク、プレーパークむさしのなど各地の冒険遊び場のスタッフを歴任。その後フリーランスとなり、国内外の冒険遊び場づくりをサポートしながら、研修や講演会をおこなう。2010年、「すべての子どもが豊かに遊べる東京」をコンセプトにTOKYO PLAYを設立。2005年から2011年までIPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)東アジア・太平洋地域副代表を務め、現在はTOKYO PLAY代表理事、日本冒険遊び場づくり協会理事、大妻女子大学非常勤講師。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年01月15日2020年度に大きく変わる「大学入試共通テスト」では、知識の詰め込みだけではなく、思考力や判断力が問われるようになります。このような力を養うためには、机の前での「The 勉強」では身につきません。実は、日常生活の中の新しい経験や楽しい体験こそ、思考力や判断力が自然と身につけられるチャンスなのです。そこで今回は、その具体的な方法をご紹介します。日常や非日常の体験の中でこそ記憶に残る!子どもの考える力は、無限の可能性を秘めていると言われています。しかし、小さな子どもの思考力を引き出すには、親の手助けが必要です。なかでも日常生活と勉強をリンクさせる方法が、もっとも有効なようです。意識的に、日常生活に学校で学んだことを応用させることで、学習内容をより定着させることもでき、さらに思考力や判断力、さらには応用力も養うことができるのです。そこで実践したいのが、買い物やスケジュール管理、お出かけの計画などの経験や体験。大人にとっては当たり前のことでも、子どもにとっては初体験のことばかり。初体験というのは、子どもにとってすべてが学びであり、その経験から大切なことをどんどん吸収していきます。子どもは自分の体験で得た知識はそう簡単には忘れません。理科・社会は私たちの生活と関わる教科なので、日常生活の中でも様々な体験ができますが、いつもと違う場所でいつもと違う体験をするほうがより記憶に残ります(引用元:日経DUAL|中学受験にも生きる!冬のおでかけ学習【社会編】)子ども主体で考え、判断させる実例集それでは、実際にどんな方法があるのか実例をご紹介します。子どもの年齢や、学校で習っている学習内容に合わせて、どんなことに挑戦できるかをご両親が判断してみてください。■決まった金額内で買い物をする足し算や引き算、掛け算などを学校で勉強し始めたら、子どもに買い物を頼んでみましょう。慣れるまでは一緒に買い物に出かけて、後ろから見守ってあげるのでもいいですね。500円や1000円など、あらかじめ予算を決めておいて、その予算を越えないように買い物をするよう伝えます。余ったお金でお菓子を買っていいよとご褒美をあげれば、足し算と引き算を使って、いくらのお菓子が買えるのかを一生懸命計算するでしょう。ほかにも、一緒に買い物へ行って会計をする時に、お釣りの小銭が少なくなるように考えさせると、思考力が身につきます。小さなお子さんであれば、100円を渡して駄菓子を自分で計算させながら買うのもいいですね。<この体験で身につく力>思考力判断力計算力■お出かけの目的地や交通手段を考える親子でのお出かけは、子どもにとって新しい経験がいっぱい。いつもは親が決めてしまう休日のお出かけ先を、たまには子どもに決めさせてみましょう。子ども主導で計画を立て、家族で出かけてみることもよい経験です。ガイドブックやインターネットを見ながら、目的地を決めましょう。そのときに、日帰りでも行ける場所なのかを地図で確認しながら決めるといいですね。地図を学習している時期であれば、学習内で勉強した地名などを絡ませて、行き先を決めるのもおすすめです。行き先を決めたら、そこまでの交通機関を一緒に考えてみましょう。地図上で目的地を見ながら、電車で行きやすい場所なのか、駅からは徒歩なのかバスなのか、車で行く方が便利なのか、ご両親がアドバイスしながら経路を考えてみます。このような経験を通じて、子どもは自ら考える力や、交通手段などを比較して決定する判断力を養うことができます。また、実際にその場所に行ってみると、計画通りにいかないことも出てくるでしょう。その時に、どうして上手くいかなかったのか、どうすれば上手くできるのかをもう一度考えてみると、そこで応用力も育まれます。そして、地図を見ながら目的地までも、ぜひ子ども主体で動いてみましょう。親にとっても新しい発見があり、親子で新鮮な体験になるはずです。<この体験で身につく力>思考力判断力応用力地図を読む力■お出かけ先でのスケジュール管理時計が読めるようになったら、日常的な声掛けで、「○時に家を出るけど、あと何分ぐらいある?」などと、クイズ感覚で問いかけてみることで日常生活と勉強を“リンク”!子どもの「判断力」「応用力」「計算力」を鍛えるよい方法ですね。そして、日常生活の中で時間の管理がある程度できるようになったら、お出かけ先でのスケジュールを子どもに組み立てさせてみてはいかがでしょうか。一日のスケジュール表を紙に書いて、「○時にここに着くには、何時に出ればいいかな?」「お昼には何分ぐらい時間を取ろうか?」など、最初はご両親と一緒にスケジュールを組み立ててみましょう。慣れてきたら、自分で考えさせてみて、ご両親が無理のないスケジュールになっているかを確認してみるのもいいかもしれません。そして実際に現地へ行ってみて、スケジュール通りに回れたのか、回れなければどこで時間がかかったか、時間が足りなかったのかなどを、一緒に話し合ってみるのもおすすめです。子どもはその体験をもとに、次回は時間の管理を工夫することができるでしょう。時間の配分を予測したり、改善したりすることができるようになると、日常生活や学校生活の時間の使い方も上手にできるようになるでしょう。<この体験で身につく力>思考力判断力時計を読む力時間の使い方臨機応変に動く力3つのアプローチを親が意識しておく!買い物やお出かけの計画などを、ただ経験させるのではなく、以下のようなことを親御さんが意識しておくのがより効果的なようです。【「考える」とは】「自分の言葉で語れること(What)」「疑問に思うこと(Why)」「手段や方法を思いつくこと(How)」のいずれかのことをしているときに、「考えている」という状態になると考えます。通常の教育では、「これは何?」「どこ?」「いつ?」「どっち?」が多く、このようなインプットばかりのアプローチでは、考えるという行為は起こりにくいのです。(引用元:東洋経済ONLINE|「考える力がない子」を変える3つの問いかけ)意識しておきたいのが、この3つのアプローチです。集団で行う学校での学習では、自分の言葉で伝えたり、じっくり時間をかけて手段や方法を考える機会が少ないのが現状。しかし日常での経験の中であれば、その機会は親御さん次第でたくさん与えることができるのです。〇自分の言葉で語れること(What)〇疑問に思うこと(Why)〇手段や方法を思いつくこと(How)買い物やお出かけなどをきっかけに、自分の言葉でどうしたいかを人に伝えられたり、そこで疑問に思うことを言葉にしたり、手段や方法を考えたりという経験をたくさんさせて、自然と考える力を身につけさせましょう。***知識をインプットするような机の上の勉強だけではなく、日常の中の経験と学習内容をリンクさせることで、自らの力で考え、判断する力が自然と身につきます。これが親子での楽しい体験であれば、子どもは「またやってみたい!」「もっと何かしてみたい!」という意欲にもつながります。たっぷり時間が取れる長期休みなどに、ぜひ親子で実践してみてくださいね。文/内田あり(参考)ベネッセ教育情報サイト|親子で過ごす時間が子供の学習能力を底上げする!日経DUAL|中学受験にも生きる!冬のおでかけ学習【社会編】東洋経済ONLINE|「考える力がない子」を変える3つの問いかけ
2019年01月15日「すべての子どもが豊かに遊べる東京」をコンセプトに、2010年に設立された「一般社団法人TOKYO PLAY」。その代表理事・嶋村仁志さんは、子どもが子どもらしく遊び、心身ともに健全に成長できるようにと、遊びを大事にする大人を増やそうと奮闘しています。そんな嶋村さんは、遊びが子どもにもたらしてくれるもっとも重要なものは、「自主性と安心感」だと語りますが、それを得る機会を奪われている子どもも少なくないのだそう。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)冒頭写真提供:嶋村仁志遊びで子どもが得るのは「自主性」と「安心感」遊びのなかで子どもが得られるものとしては、まず「体力」が挙げられるでしょう。最近は、体力は「行動体力」と「防衛体力」にわけて考えられています。行動体力とは、行動を「起こす」筋力などの能力、行動を「持続する」持久力や柔軟性などの能力、行動を「調整する」素早さや器用さ、バランス感覚などの能力のことです。一方、防衛体力は、寒さや暑さ、振動、化学物質など「物理化学的ストレス」に対する抵抗力、細菌など「生物的ストレス」に対する抵抗力、空腹や口の渇き、疲労といった「生理的ストレス」に対する抵抗力、不快、苦痛、恐怖など「精神的ストレス」に対する抵抗力が挙げられます。これらが強くなれば、当然、子どもは健康に育つと期待できます。とはいえ、わたし自身は、遊びが子どもにもたらすものとして、なにより「自主性」と「安心感」が重要だと思っています。遊びとは、自分がやりたいと思うことを主体的にやること。やりたくないことは絶対にやらなくてもいい。遊びとは、そういう「自主性」の塊なのです。でも、いまの子どもは自主的に遊ぶ権利を奪われつつあると見ています。幼い子どもでも、毎日がスケジュール漬けになっていることも少なくないですよね。何時に起きて保育園に行き、午前はなにをしてお昼ご飯を食べて、お昼寝をして迎えに来てもらってあれこれ習い事をして、家に帰ったらご飯を食べてお風呂に入って歯を磨いて……。やることもやる時間も決まっています。そういう生活のなかで、子ども自身が「いま」を決めている時間ってどれくらいあるのでしょうか?本来、それは遊びの時間として残されていた部分です。そういう時間を積み重ねて大人になれば、たとえお金持ちにはならなかったとしても、本人が面白そうだと思ったことは積極的にやるし、ひとりでやるのは難しいことなら遊びのなかで培った力によって他人を頼って協力することもできる。それこそ、自ら考えて行動できる「21世紀型」といえる人間になれるのではないでしょうか。「面白そうだからやってみる」というマインドが人生を豊かにする他人と比較されない、他人に評価されない、自分で決めて、失敗も含めて「自分で自分の人生を手づくりできる時間」が生活のなかで確保されている。その「安心感」が、チャレンジ精神にあふれ、適応力や柔軟性や発想力を備えた人間に子どもを育ててくれます。遊びというものは、じつはここでいう「安心感」を得るためにあるものだと思っています。ところが、いまの子どもの多くは自分自身でやることを決められず、大人の誰かが決めた基準で比較、評価され続けられています。すると、子どもはその基準に自分が見合っているか、他人に劣っていないかと気になり成果ベースでものごとを考えるようになる。そうなると、本当なら持っているはずの力を十分に発揮できません。できることはやるけれど、できないかもしれないことはやらないという選択肢をチョイスするようになるからです。それでは、将来社会に出て仕事をするにも、ちょっと問題がありますよね。できないかもしれないけれど、やっていくなかでなんとかする。そういうことも仕事には必要な力です。仕事に限らず、やってみたことはないけれど面白そうだからやってみようというマインドを持っているほうが、きっと豊かで楽しい人生を送れるはずです。失敗する経験を奪われつつある子どもたち大人って、つい子どもに口を出してしまうものですよね。でも、それではよくない。子どもの自主性を尊重し、大人が口をつぐむ。まずはそこからはじめてはどうでしょうか。わたしがあるプレーパークで見た子どもたちは、ベンチを一生懸命につくっていました。使っていたのは薄っぺらの廃材だし、足は細くて長さもバラバラで心もとない。それでも、子どもは「完成した!」と、平気で座るわけです。どうなるかはわかりますよね?当然、グラグラと揺れるし、すぐに壊れてしまいそうになる。でも、それでいいんですよ。子どもたちにとってのドラマと学びはそこにあるわけですから。ところが、大人によっては「ここに筋交いを入れよう」なんてアドバイスをする、さらには「貸してみろ」なんて道具を取り上げてしまうような人もいます。また、プレーパークとちがって、すでに立派な工作キットが用意されている「ベンチをつくろう」というような体験プログラムの場合は、ただ説明書のとおりにつくらされるだけ。絶対に失敗しない代わりに、子どもには面白くもないし、なにももたらしてはくれません。いまは、一度の失敗もなく最短の時間で「体験」できるパッケージ化された商品があふれています。子どもが思ったとおりにやって、失敗する経験を手に入れる機会が本当に少ないのです。この時代に生きる大人の役割は、そのような機会を子どもに保障してあげることなのではないでしょうか。失敗も含めた「偶発的な学び」を得る機会を大切にしてあげてください。『子どもの放課後にかかわる人のQ&A50 子どもの力になるプレイワーク実践』嶋村仁志 他 著/学文社(2017)■ TOKYO PLAY代表理事・嶋村仁志さん インタビュー一覧第1回:遊具なし、プログラムなし。異例だらけの“ガラクタ遊び”が欧州で大人気の理由第2回:大切にしたい遊びの“リスク”。子どものチャレンジを支える遊びのルールとは?第3回:子どもの工作が“失敗作”でも、親はアドバイスしてはいけない第4回:中高生では遅い。子どもが体験すべき「小さな危険」と「小さないたずら」(※近日公開)【プロフィール】嶋村仁志(しまむら・ひとし)1968年8月6日生まれ、東京都出身。子ども時代は野球と自転車と缶けりざんまいの日々を送る。英国・リーズ・メトロポリタン大学社会健康学部プレイワーク学科高等教育課程修了。1996年に羽根木プレーパークの常駐プレーリーダー職に就いて以降、プレイワーカーとして川崎市子ども夢パーク、プレーパークむさしのなど各地の冒険遊び場のスタッフを歴任。その後フリーランスとなり、国内外の冒険遊び場づくりをサポートしながら、研修や講演会をおこなう。2010年、「すべての子どもが豊かに遊べる東京」をコンセプトにTOKYO PLAYを設立。2005年から2011年までIPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)東アジア・太平洋地域副代表を務め、現在はTOKYO PLAY代表理事、日本冒険遊び場づくり協会理事、大妻女子大学非常勤講師。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年01月14日「ドルトンプラン」という言葉を聞いたことがありますか?1910年代に米国で始まった、自主学習を重視する教育方法です。モンテッソーリ教育やシュタイナー教育と比べて日本での知名度は低いかもしれませんが、いま日本でじわじわと注目を集めている様子。ドルトンプランとはどのような教育なのか、そして東京都で2019年に開校する、ドルトンプランに基づいた学校をご紹介します。ドルトンプランの発祥ドルトンプラン(Dalton Plan)を考案したのは、米国の教育者ヘレン・パーカースト(1887~1973)です。教育方法史を専門とする宮本健市郎教授(関西学院大学)によると、パーカーストはワシントン州の小学校で1年生の担任を務めた際、読書の時間にフォークダンスを行ったり、地理の時間に子どもを外に連れていったりなど、斬新な授業で注目を集めました。1910年に地元で大規模な競技場が完成した記念の祭典では、生徒のダンスを指揮して大成功に導き、教育委員会から表彰されたそうです。このことから、パーカーストが子どもの身体表現を重視していたことがうかがえます。同年、パーカーストは「実験室案(laboratory system of education)」という実験的な教育を実施しました。これは、教科ごとの「実験室」を設け、それぞれの部屋に担当教師を配置するというもので、のちのドルトンプランにつながっています。イタリア発祥のモンテッソーリ教育について学び、米国での普及活動を熱心に行ったあと、1919年、パーカーストはニューヨーク市に4年生~8年生を対象とした学校を設立しました。これが、2019年現在は幼児から高校生までが通う「ドルトン学校」の前身なのです。そして1920年に、マサチューセッツ州のドルトンという町で、上述の「実験室案」を実施しました。このときの教育法は、1922年に出版された『ドルトンプランの教育(Education on the Dalton Plan)』にまとめられました。ドルトン学校によると、この本は14の言語に翻訳され、世界的に受け入れられたそう。そして今でも、その独自性は高く評価されているのです。ドルトンプランの原則『ドルトンプランの教育』によると、ドルトンプランには「自由(freedom)」と「協働(co-operation)」という2つの原則があります。自由ドルトンプランにおいて、子どもには、邪魔されることなく自分の勉強に没頭できる自由が与えられなければいけません。子どもが物事に深い興味を抱いているときは意欲に満ちているのであり、勉強の過程で出現する困難さも乗り越えやすいからです。そのため、ドルトンプランにおいては、ベルによって授業時間を強制的に区切ることはされません。協働パーカーストの考えによれば、旧来の教育において、子どもは同じ教育課程の仲間と過ごすあいだ以外は集団で生活しないため、学校を卒業したら非社交的になりがち。しかし、社会生活とは「協働」および「相互作用(interaction)」なので、学校の成績がよいだけで生きていけるわけではないのです。そのため、ドルトンプランでは、子どもが意識せずとも社会の一員として動き、それを楽しめるような環境が整えられています。ドルトンプランの方法論実際、ドルトンプランは具体的にどのような教育を行っているのでしょう?パーカーストによると、ドルトンプランは固定のカリキュラムやメソッドではなく、時代を経て変化するもの。なので『ドルトンプランの教育』に書かれていることとは異なる点もありますが、現在のドルトン学校におけるキーワードと特徴を紹介しましょう。1.ハウス(House)ドルトン学校において、ホームルームのクラスは「ハウス」と呼ばれています。これは、ドルトンプランの原則である「協働」の精神を養う大事な基盤です。担任は「ハウスアドバイザー」といい、子どもひとりひとりの学習状況をサポートします。ドルトン学校のハイスクール部門(9~12年生)では、ハウスは学年混合で編成されます。実際の社会では、年齢が異なる人と共に活動するのが当たり前なので、より本物の社会に近い状態だといえるでしょう。2.アサインメント(Assignment)「アサインメント」とは、先生と子どものあいだで交わされる「契約」の意味。大学におけるシラバスをさらに詳細にしたような、授業で扱われる主な内容・宿題・レポートの規定・評価基準などが記されている冊子です。子どもはアサインメントを参照し、自分に何が求められているか把握しつつ学習を進めます。たとえば、ドルトン学校が公開している、8年生の歴史のアサインメントは、以下のような内容です。日本の学校や大学で、ここまで詳しい学習のガイドラインを提示してくれることはほとんどないのではないでしょうか?主要な問い:このユニットを読み進める際、以下の問いについて考えてください。これらはアメリカ独立もしくは現代にどう当てはまりますか?教室でのディスカッションや自分のノート、課題レポートなどで、これらの問いについて自由に言及してください。・「権力」や「力」を与えるのは誰ですか?いつ、どのようにして、権力は正当に(不正に)行使されますか?・権力を疑うことは、どのようなときに正当化されますか? 権力が尊重されるべきなのは、どのようなときですか?・すべての人間に共通しているのは、どのような「自然権」ですか?・暴力の行使は常に正当化されますか?暴力を避けるのであれば、変化を生み出すのにほかにどのような方法が可能ですか?(後略)課題読書についての説明:・それぞれの課題読書は、規定の締切日までに終わらせる(正確な締切日については、ムードル[※学習管理システム]またはホワイトボードの掲示を参照)。・自由に読み、先に進んでよい。・課題読書のメモをとる際、リーディング・クエスチョン(※)を使う。自分にとって最もよいやり方でメモをとる。・社会科の宿題に使うのは、30~45分のみ。(後略)(※「英仏間の戦争が『世界大戦』だとみなされうるのはなぜですか?」など、テキストの内容についてより深く考えるきっかけとなる質問)(引用元:The Dalton School|Assignment: Revolutionary Argument)3.ラボ(Lab)「ラボ(ラボラトリー)」とは、子どもと先生が1対1もしくは小グループで行う話し合い。課題について相談したり、授業内容について発展的な質問をしたりできる、貴重な時間です。9~12年生の場合、ラボは各教科専用の部屋で行われます。これは、生徒がいつでも使えるよう、専門的な本を並べた場所。パーカーストはこれらの部屋を「Laboratory」と呼び、生徒が勉強に没頭できる場所として重視していました。そもそも、ドルトンプランの元の名称は「ドルトン・ラボラトリー・プラン」。理科の実験を重視していると誤解を受けないよう、「ラボラトリー」が外されたという経緯があります。ドルトンプランのなかでも特に核となるのが、ラボだといえるでしょう。日本にドルトンプランの学校はある?モンテッソーリ教育やイエナプランのように、異なる年齢の子どもたちを一つのクラスに編成するオルタナティブ教育は珍しくありませんが、ドルトンプランの「アサインメント」「ラボラトリー」はかなり独特ですね。このような教育課程を経た子どもは、自主性や学習に対する意欲を育みそうです。ニューヨークに留学することなく、このような教育を受けさせたいと思ったら、どうすればよいのでしょう?実は2019年4月、東京都調布市に「ドルトン東京学園中等部・高等部」が開校するのです。ドルトンプランを全面に押し出し、「主体的に学び、探究・挑戦し続ける」「多様性を理解し、他者と協働する」などの生徒像を掲げています。ドルトン東京学園では、ドルトンプランの重要な3要素であるハウス、アサインメント、ラボラトリーが実施されます。まず、クラスとは別に、中等部1年~高等部3年のそれぞれの学年から編成されるハウスが組まれ、「異なる学年の生徒集団が、主体的に活動内容を考え、協働して実践していく」コミュニティとなるそう。また、学習内容ごとに作成されるアサインメントには、学習の流れや評価方法などが書かれており、生徒が計画的に学ぶ姿勢を身につける手助けとなるのだとか。そして、ラボラトリーは生徒が自由に使える時間。中等部1年では週に2時間程度ですが、高等部では増えます。生徒はこの時間に教員からアドバイスを受けたり、グループ学習をしたり、一人で学んだりと、自分で設計した学習計画に沿って勉強するそうです。ドルトン東京学園では、生徒がさまざまな経験をし、主体的に発信を行える機会を持てるよう、多くの個性的な行事が予定されています。仲間と協力し、努力した成果を大勢の人の前で見せることを通じ、コミュニケーション能力や主体性が養われることは間違いありません。-スポーツフェス:ハウスの一体化を目的に、ハウス対抗の団体種目を行う。-STEAMフェス:個人およびハウスで科学技術を研究し、発表する。-アートフェス:本格的な舞台装置のある講堂で、演劇や演奏を発表する。また、ドルトン東京学園は「グローバル市民」の育成を目指しており、英語教育にも力を入れています。中等部・高等部の6年間で生徒全員が2回の海外研修を経験するほか、英語を日常生活だけでなくビジネス、アカデミックの分野でも使えるように授業が行われるのだとか。一般的な日本の学校で行われている画一的な詰め込み教育とは、何もかもが違うといえますね。***自主性と、他者との協働。ドルトンプランは、まさに21世紀のグローバル社会で必要とされているこれらの能力を伸ばしてくれる教育だといえるでしょう。意欲を持って自ら勉強に取り組み、さまざまな立場の人たちとの交流を楽しみ、自分の活動を積極的に発信できる人間になってほしい――。そんな願いを持つ親御さんは、ぜひチェックしてみてください。(参考)Helen Parkhurst (1922), Education on the Dalton Plan, New York City, E. P. Dutton.The Dalton SchoolDalton 100|22. Education on the Dalton PlanJ-STAGE|ドルトン・プランの成立過程とヘレン・パーカーストの思想形成ドルトン東京学園中等部・高等部
2019年01月13日都会では子どもたちの遊ぶ場がどんどん減っているなか、さまざまな「遊び」をしかけている人たちがいます。それが、2010年に設立された「一般社団法人TOKYO PLAY」。活動の主な目的は、子どものために遊びを大事にする大人を増やすこと。お話を伺った代表理事・嶋村仁志さんは「プレーパーク」のエキスパートでもあります。プレーパークで遊ぶことが、子どもにどんな影響を与えるのでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)冒頭写真提供:嶋村仁志モットーは「自分の責任で自由に遊ぶ」デンマークで生まれ、イギリスで発展した冒険遊び場(インタビュー第1回参照)は、日本でも「プレーパーク」という名称で徐々に広がりつつあります。公園の一角や河川敷、里山など私有地を使わせてもらって不定期で設置する、あるいは月に1回、年に数回といった具合に定期的に設置するものについてはだいたい400カ所くらい。常設のものは20〜30カ所といったところでしょうか。国内初の常設プレーパークが、東京・世田谷の羽根木プレーパークです。開園は1979年。そこで、プレーパークについての重要な考え方が根づくきっかけとなった出来事が起こりました。開園間もない羽根木プレーパークで子どもが怪我をしてしまった。運営者と地域住民の話し合いのなか、ルールをきちんと看板にして掲げようという話になりました。当初は「自由に遊ぶ」ということだけを掲げるという案もありました。でも、本当に自由に遊ばせるためには、大人から子どもに「責任」を返してあげないとならないのです。大人の世界でもそうですが、なにかにチャレンジするというときに「失敗したら責任は誰が取るの?」なんて言われたら、それは「チャレンジするな」と言われていることとほとんど同じですよね。そうなると、チャレンジしたい、「やってみたい」という気持ちが奪われてしまうのです。であるなら、子どもに責任を返していこうという表現をした方がいい。そういう経緯があり、「自分の責任で自由に遊ぶ」という看板を掲げました。これこそ、プレーパークのモットーです。自由な遊びで「責任」を学んだ子どもたち「責任」についての話をもう少ししましょう。あるプレーパークによく遊びに来ていた小学生の兄弟が泥だらけになって帰ったときのこと。お母さんが帰宅したら、ふたりで仲良くお風呂に入っていたのだそう。しかも、洗濯機には脱いだ服がちゃんと入っている。いつもはお風呂にはなかなか入らないし、服は脱ぎっぱなし。でも、このときはちがった。兄弟は、泥だらけになって服を汚してしまったことに対して、小学生なりに「責任」を感じたようだということを、次の日になってお母さんが教えに来てくれたことがあります。別のプレーパークでは、ちょっとした怪我をした子どもがいた。「念のため、おうちの人に連絡しようか?」と聞くと、「嫌だ」と言う。これはよくあるパターンなんです。怒られたくないとか、「もうプレーパークに行っては駄目」と言われるかもしれないとか、子どもはそう思うんですね。でも、あまりにも頑なに拒絶するので、その子に理由を聞くと、「僕がやりたいことをやって怪我をしたのに、プレーパークの人に謝らせたくない」と言うではありませんか。ちょっとびっくりしましたね(笑)。自分のやったことを人のせいにせず自分で責任を持つというのは、あたりまえですが、大人になったときにすごく大事な価値観ですよね。でも、それは誰かに言われてできるようになるものではありません。遊びを通じて実際に泥んこになったり、怪我をしたりするなかで、実感として感じることで「責任」がどういうものかを学ぶわけです。遊びは、体力や発想力、想像力といったものを育てるものでもありますが、もっと「心の奥行き」みたいな部分を深めるものなのだと思います。写真提供:嶋村仁志子どもと一緒にリスクを考えるもちろん、「子どもに責任を返す」とはいえ、本当の危険は取り除いてあげないといけません。そこでわたしたちは「リスクとハザード」という考え方を基本にしています。リスクは、挑戦につきものの危険です。株投資はリスクを伴うものですが、そのリターンはお金ですよね。子どもの遊びの場合、リターンは達成感や友だちと協力した思い出などになるでしょう。それらは大いに味わわせてあげなければなりませんが、一方でハザードという危険もある。これは、子どもの目には見えない隠れた危険、子どもが自ら選びようがない危険のこと。たとえば、子どもがいかにも走り込みそうな場所にある柱から飛び出ている釘などです。そういったものは、大人がきちんと排除しなければなりません。また、「リスク・ベネフィット・アセスメント」という考え方もあります。リスクに対してベネフィットとは「利益、効果」といった意味。いわゆるデメリットとメリットと考えてもらったほうがわかりやすいかもしれませんね。いま、目の前で子どもがある遊びに挑戦しようとしている。それに伴うリスクはどれくらいのものなのか、どんな工夫をすればどれだけ減らせるのか。そして、子ども自身がどれだけ「やりたい」と思っているのか、やったことでどんなものを得られるのか。それらを総合的に判断し、子どもにチャレンジさせるかどうかを決めるのです。もし、本当にやめたほうがいいものであれば、子どもと話をしながら「今回はあきらめよう」と伝える。ある程度の年齢になれば、子どもでもしっかり話せばわかってくれるものです。本人抜きで大人が一方的に判断するのはやっぱり良くありません。写真提供:嶋村仁志遊びを大事にする大人を増やさなければならない子どもにとっての危険という点では、いまは高まっている時代だと感じますね。それは、危険な場所が増えたというような外因的なものではありません。あるプレーパークで出会った子どもなのですが、段ボール箱に入って、なんと7、8メートルもある急斜面の崖から滑ろうとしていたのです。なぜそんなことをするかといえば、もっと小さい頃から、より軽い危険を伴う経験を積み重ねていないからなんですね。いわゆる「恐怖心」が育っていないのです。高さの感覚は5歳までに80%が育つのだそうです。公園に登り棒などの遊具があるのも、高さという感覚、高いことが怖いという感覚を育てるためです。でも、そういう感覚を持てないまま中高生になったとしたらどうでしょう?幼い子どもより力があるだけに、悪ふざけのつもりで命が危険にさらされるようなことをやりかねません。ところが、いまは子どもからどんどん危険を遠ざける傾向にありますよね。放課後児童クラブなどの子どもを預かる場では、とにかく危なそうなものはすべて「なし!」。「ジャングルジムは2段目まで」「ブランコの立ちこぎは2年生から」といったルールがいくつもある。これは、雇用の問題も関係しています。職員は嘱託社員やパートなど雇用形態がバラバラですから、子ども教育に対するモチベーションもバラバラ。結果、親御さんからクレームを恐れて、少しでもリスクがあれば「やめておきましょう」ということになってしまうのです。そんな環境で育った子どもは、チャレンジできないまま体だけが成長し、本当の危険や恐怖を実体験のなかで得ることができない。そうなると、自分の痛みを知らないばかりか、他人の痛みにも共感することができないのです。それは、子ども自身はもちろん、その周囲の人間にとっても危険なことでもあります。子どもたちだけでしっかり遊べる世のなかであれば、わたしたちのような大人は必要ありません。ただ、これだけ子どもが遊べない社会になると、遊ぶことを大事にできる大人を増やさなければなりませんね。そして、大人たちには、遊んでいる子どもの表情にぜひしっかり注目する目線を持ってほしい。子どもはなにか面白いものを見つけると、口を開けたまま顔が固まります。これが最大の関心を示している表情なのです。この表情こそ、挑戦したい気持ち、失敗してもへこたれない気持ち、発想力、集中力といった、遊びをとおして得られるものの原点です。その芽生えを見逃してしまうのは、親としてすごくもったいないことですよ。『子どもの放課後にかかわる人のQ&A50 子どもの力になるプレイワーク実践』嶋村仁志 他 著/学文社(2017)■ TOKYO PLAY代表理事・嶋村仁志さん インタビュー一覧第1回:遊具なし、プログラムなし。異例だらけの“ガラクタ遊び”が欧州で大人気の理由第2回:大切にしたい遊びの“リスク”。子どものチャレンジを支える遊びのルールとは?第3回:子どもの工作が“失敗作”でも、親はアドバイスしてはいけない(※近日公開)第4回:中高生では遅い。子どもが体験すべき「小さな危険」と「小さないたずら」(※近日公開)【プロフィール】嶋村仁志(しまむら・ひとし)1968年8月6日生まれ、東京都出身。子ども時代は野球と自転車と缶けりざんまいの日々を送る。英国・リーズ・メトロポリタン大学社会健康学部プレイワーク学科高等教育課程修了。1996年に羽根木プレーパークの常駐プレーリーダー職に就いて以降、プレイワーカーとして川崎市子ども夢パーク、プレーパークむさしのなど各地の冒険遊び場のスタッフを歴任。その後フリーランスとなり、国内外の冒険遊び場づくりをサポートしながら、研修や講演会をおこなう。2010年、「すべての子どもが豊かに遊べる東京」をコンセプトにTOKYO PLAYを設立。2005年から2011年までIPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)東アジア・太平洋地域副代表を務め、現在はTOKYO PLAY代表理事、日本冒険遊び場づくり協会理事、大妻女子大学非常勤講師。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年01月13日2010年に設立された「一般社団法人TOKYO PLAY」。「すべての子どもが豊かに遊べる東京」をコンセプトに、東京でさまざまな「遊び」を仕掛けています。今回取材を受けてくださった代表理事・嶋村仁志さんは「プレーパーク」のエキスパート。TOKYO PLAYの活動、そして、「プレーパーク」とはどんなものなのかを教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)主な活動は「遊ぶことの大切さ」を伝える啓発「TOKYO PLAY」は、もともとわたしが2007年に立ちあげた「子どもの遊びと大人の役割研究会」というものがベースとなっています。それを発展解消させるかたちで、2010年に設立しました。主な活動は、「遊ぶことの大切さ」を伝えていく啓発にあります。いま、いちばん力を入れているものが、都内のあちこちで仕掛けている「とうきょうご近所みちあそびプロジェクト」。地元地域に暮らす人たちが町会や商店街と協力し、使用許可を取った道路で多世代の人が楽しみ、交流する場所をつくることを支援するというものです。普段ならお互いにすれちがうだけの関係の人たちが、「遊ぶ」というキーワードによって交流する。近所の子どもたちの育ちの場、世代を超えた交流の場にしたいと考えています。ただこれは、むかしであればどの地域でもあたりまえにできていたことかもしれません。でも、いまはなかなか難しい。車の交通量は増え、社会の少子高齢化が進むなかで静かに暮らしたい人たちも増えています。その結果、住民同士のコミュニケーションは、都会に限らず、田舎でもなくなりつつあります。そうした傾向が影響しているせいもあるのか、子どもが道で危ないことやご近所に迷惑がかかることをしているのをそばで見ているにもかかわらず、注意できない親や、夜中まで家の前でバーベキューをして、注意されても「え?なにが悪いの?」といわゆる逆ギレするような人もいます。「将来の大人」をきちんと育てなければならないこういう人たちは、「道路族」として呼ばれることもあるようですが、その背景として、子どもの頃に近所の人にかわいがられたり、逆に迷惑をかけて怒られたりしたような、ご近所の他人とのコミュニケーション経験がないまま大人になってしまったのかもしれません。本来、家のすぐ近くの環境というのは学びの宝庫でした。そこで遊んでかわいがられたり怒られたりして学んだ経験があり、近所に断りを入れる、気を使うといったあたりまえのことができれば、本来はこんな問題は起きませんよね。せっかくいい大学、いい会社に入ったにもかかわらず、近所の人たちと必要最低限のやり取りもできないような大人を再生産しないためにも、家のすぐ近くの環境の使い方を見直さないといけない時代になってきているのです。わたしたちのプロジェクトが公園ではなくご近所の道に着目していることには、そうした理由があります。そういう意味では、「将来の大人」をきちんと育てなければならないということになる。2060年の日本では、子どもと大人の数の割合が1対9.96になるという試算があります。ひとりの子どもを約10人の大人たちがどんな目線で見るのか、それが重要です。子どものことを、邪魔なものであったり「自分には関係ない」と思ったり、あるいは子ども教育の専門家などが自分のサービスの「お客」として見る。そういうものばかりだとしたら、その社会では子どもをきちんと育てることができないのではないでしょうか。そうではない、ご近所できちんと子どもを育てられる環境を確保したいのです。デンマーク発祥の「冒険遊び場」わたしが子どもにとっての遊びの役割に興味を持ったのは、「冒険遊び場」との出会いがきっかけでした。冒険遊び場が生まれたのはまだ第二次世界大戦中だった1940年代のデンマーク。コペンハーゲン郊外で住宅地を造成しているなか、新しい公園をつくることになった。その都市計画に関わっていたソーレンセン氏は、大風の日に倒れた木に子どもたちが群がって遊んでいる姿を見たことがありました。また、廃材置き場にも面白さを見出していたそう。その構想を生かして生まれた新しい公園が、「廃材遊び場(Junk Playground)」です。そして、第二次世界大戦が終わったイギリスのロンドンでは、がれきのなかで子どもたちが遊んでいました。「大人よりも早く子どもたちはがれきのなかで復興をはじめている」と言われるなか、今度はイギリスの都市計画家、アレン・オブ・ハートウッド氏がデンマークの廃材遊び場を見て、「これだ!」と思ったのだそうです。ただ、そのままの名称ではイメージがあまり良くない。そこで、当時、子ども教育に熱心だったイギリス王室関係者が「いま、子どもたちが必要としているのは『冒険』だ」として、「冒険遊び場(Adventure Playground)」と名前を変えてイギリスに広まることになりました。現在、イギリスでは250カ所くらい、ドイツでは400カ所くらいの冒険遊び場があります。これが、日本では「プレーパーク」という名称でも広まっているのです。写真提供:嶋村仁志子どもの発想と想像力によって変化する遊び場プレーパークは、一般的な公園とはまったくちがうものです。大人が完成品として用意した遊び方も決まっている遊具やプログラムのようなものはありません。あるのはいわゆるネコ車やのこぎり、金づち、シャベルといった道具に木、土、水、火など、それからさまざまなガラクタです。それを、子どもたちが「やってみたい」と思ったふうに使って遊ぶ。大人が遊び方を指示するなんてことはありません。子どもの発想と想像力によってつねに変化していく遊び場というわけです。もちろん、置かれているガラクタもつねに変わっていきます。たとえば、ある日突然、古タイヤが置かれるといった具合です。写真提供:嶋村仁志先日わたしが視察したロンドンの冒険遊び場では、ロンドンオリンピックのときに公園で使われ、廃棄予定だった大きな滑り台が設置されていましたね。こういうふうに、海外ではけっこう大規模なものもあります。ドイツには、プレーパークで働くプレイワーカーの指導を受ければ、子どもたちだけで高さ4メートルまでの建物をつくってもいいというルールがあるところも。中高生くらいになると、自分たちでスケボー用のランプをつくったという例もありますよ。写真提供:嶋村仁志当然、危険はつきものです。ただ、子どもたちは小さなけがから学ぶことも多い。ですから、危険をどう判断するかが重要です。冒険遊び場では、子どもの目が届かないような本当の意味での危険は排除し、大事故につながらないための介入はします。でも、チャレンジという意味での危険は残すことを大切にしています。なぜなら、それらは子どもたちの「心の冒険」だからです。生活のなかでドキドキ、ワクワクすることが、子どもにとってなによりも大きな学びになるのです。『子どもの放課後にかかわる人のQ&A50 子どもの力になるプレイワーク実践』嶋村仁志 他 著/学文社(2017)■ TOKYO PLAY代表理事・嶋村仁志さん インタビュー一覧第1回:遊具なし、プログラムなし。異例だらけの“ガラクタ遊び”が欧州で大人気の理由第2回:大切にしたい遊びの“リスク”。子どものチャレンジを支える遊びのルールとは?(※近日公開)第3回:子どもの工作が“失敗作”でも、親はアドバイスしてはいけない(※近日公開)第4回:中高生では遅い。子どもが体験すべき「小さな危険」と「小さないたずら」(※近日公開)【プロフィール】嶋村仁志(しまむら・ひとし)1968年8月6日生まれ、東京都出身。子ども時代は野球と自転車と缶けりざんまいの日々を送る。英国・リーズ・メトロポリタン大学社会健康学部プレイワーク学科高等教育課程修了。1996年に羽根木プレーパークの常駐プレーリーダー職に就いて以降、プレイワーカーとして川崎市子ども夢パーク、プレーパークむさしのなど各地の冒険遊び場のスタッフを歴任。その後フリーランスとなり、国内外の冒険遊び場づくりをサポートしながら、研修や講演会をおこなう。2010年、「すべての子どもが豊かに遊べる東京」をコンセプトにTOKYO PLAYを設立。2005年から2011年までIPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)東アジア・太平洋地域副代表を務め、現在はTOKYO PLAY代表理事、日本冒険遊び場づくり協会理事、大妻女子大学非常勤講師。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年01月12日9歳で「子どもの環境団体」に興味を持ち、12歳でリオデジャネイロの環境サミットに団体の代表として参加し、子どもの視点から環境問題についてスピーチをした少女、セヴァン・カリス=スズキを知っていますか?1992年、「世界を5分間沈黙させた少女」として世界中で有名になり、その翌年にはUNEP(国際連合環境計画)の「世界の尊敬すべき500人」の勲章を受けました。物怖じせず、自分の考えを強く、はっきりと話す姿は、とても印象的でしたね。彼女ほどでなくても、海外では、自分の意見を持ち、それを的確に周囲に伝える力が非常に重視されます。欧米の小学校では、生徒一人一人が特定のトピックについてスピーチをしたり、調べ学習をした上でプレゼンテーションをしたりする機会もたくさんあります。そこで求められるのは、論の展開です。論理展開には、問題発見、現状分析、物語展開、問題解決など、その目的によって、いくつもの展開方法があります。幼少期から、効果的な論理展開ができるように練習しておくと、記述式の試験や、入試の面接、英語4技能試験のスピーキングテストなどでも有利になるでしょう。ここでは、英語のプレゼンテーションを例にして、論の展開の仕方をご紹介します。今回注目するのは、冒頭部分。慣用表現を使って、プレゼンテーションにおける思考の流れをナビゲートするのがポイントです。1. 開始のシグナル「はじめます」日常会話では、「あのさあ」「ねえ、聞いて」「ほら」のような言葉を使って、話し出す前に相手の注意をひきますね。英語では “Hey” “Listen” “Now” “Look” “Well” などにあたります。しかし、プレゼンテーションのような改まった状況では、これらは礼を失した表現と受け取られてしまいかねません。そこで、次のような表現で口火を切るのが普通です。・では、そろそろはじめましょうか。OK, now, shall we begin?・そろそろはじめさせていただきます。OK, I’d like to start now.司会者がいる場では、司会者が使う言葉でもあります。2. 謝辞「話をする機会をいただき、光栄です」開始のシグナルの次に、感謝の意を表すことがあります。・この会議にお招きいただき、感謝しています。Thank you so much for inviting me to this conference.・ここでお話しする機会をいただき、光栄です。I’m honored to have an opportunity to talk here.政治家の演説などでは、冒頭で謝辞を述べる場面がよく見られますね。3. エピソードや有名な言葉の引用「……によると」何かを発表する際に肝心なのは、プレゼンテーションの狙いを述べること。時にはいきなり目的が何なのかを明らかにすることもありますが、多くの場合、その背景について述べてから目的に入るでしょう。そんな時は特に、聞き手を意識した語りをする必要があります。そのためには、聴者を巻き込むために、次のような表現を使います。・(皆さん)ご存じのように。as you (all) know・もちろん、皆さんお気づきのことですが……。I’m sure you are all aware of …あるいは、エピソードから始めることもあります。第7代国際連合事務総長コフィー・アナンがノーベル平和賞受賞の際に行った有名な演説は、あるエピソードで始まりました。今日、アフガニスタンで女の子が生まれるでしょう。彼女の母親は彼女を抱き、授乳し、彼女をあやし、彼女の世話をするでしょう。それは、ちょうど、世界中のどこにあっても母親がやっているように。こうした人間の本性ともいえる最も基本的な行為において人間に区分はありません。その後に、貧困をはじめとする、アフガニスタンが直面する状況の厳しさについて語ったのです。また、これから話したい話題の背景を述べる時に、有名な人物の言葉を引用する方法も、よく用いられます。・ジョン・デューイによると、教育は人生のための準備ではなく、それは人生そのものである。According to John Dewey, “education is not a preparation for life; it is life itself.”・ネルソン・マンデラは「教育は世の中を変える最も強力な武器である」と述べたことがある。Nelson Mandela once said, “Education is the most powerful weapon one can use to change the world.”権威ある知識人や著名人の言葉を引用することで、説得力が増しますね。4. 話の目的を述べる「今日の狙いは……」ここで本題に入るわけですが、まずは話の目的を明らかにすることが大切です。聴衆は、最初に告げられた話の目的が、今後どう展開していくかに期待を寄せるのです。・今日私がここにいるのは、……について話すためです。I’m here today to talk about ….・私のプレゼンテーションの目的は……です。The purpose of my presentation is to ….まずおおまかに、その後に細かく、目的を伝えることもできます。・大きなテーマとしては……についてお話ししたい。Generally, I’d like to discuss….・もっと具体的に言うと……に焦点を当てたい。More specifically, I’d like to focus on….どこに着目するつもりかをあらかじめ伝えることで、聞き手も重要なことを聞き逃さずに、話に集中できるようになりますね。5. 話の順序を伝える「3つの話をします」トピックの数や話の順番を事前にはっきり伝えることは、とても大切です。なぜなら、聞く側が話の道筋を予想でき、プレゼンテーション全体の内容を理解しやすくなるからです。スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行った有名なスピーチにも、この手法が用いられています。世界最高の大学の1つの卒業式にこうしてみなさんとご一緒できることを光栄に思います。正直に言いますと、私は大学を卒業していません。これが、大学の卒業式というものに私が一番近づいた瞬間です。今日、私の人生経験から3つのお話をしたいと思います。私がお話するのはまさにそれです。大げさな内容ではありません。たった3つの話です。感謝の意を示し、簡単なエピソードを入れて、話の目的を述べた後、3つの話をすることを伝えています。さて、このように「3つ」と述べたら、それが何であるかを明らかにしなければいけません。順序立てて話をするためにジョブズは、それぞれの内容をこのように一言で説明しています。・1つ目の話は、点と点をつなぐことです。The first story is about connecting dots.・2つ目の話は、愛と喪失についてです。My second story is about love and loss.・3つ目の話は、死についてです。My third story is about death.話のポイントと話す順序を明確に示すことで、話全体の「構造」が明らかになるのです。トピックが2つであれば、“One is”(1つは) “The other is”(もう1つは)と、列挙するまでもありません。しかし3つになると、スティーブ・ジョブズのように、助数詞などを使って列挙する方法が有効です。・まずはじめにTo begin(start)with・第1に・First / Firstly / First of all・第2にSecond / Secondly・第3にAnd third / Thirdlyトピックが4つ以上ある時は、上記の表現に加え、「最後に」 “Finally” で締めくくるといいでしょう。これらの5つの点を押さえれば、英語でのプレゼンテーションはぐっとわかりやすいものになるはずです。それだけでなく、様々な分野で活用できるポイントがたくさんあります。特に、常に目的を意識することは、試験や学校の授業において、とても重要です。さらに、これからどんな話をするのかを事前にまとめて伝える力は、英語4技能テストや入試の面接でも、効果を発揮するでしょう。
2019年01月11日『男の子も、女の子も、ステレオタイプにはまらない生き方を。子どもの本棚のバランスを考える』という記事で以前、男の子が主人公の物語は、女の子が主人公の物語よりも多く出版されていることをお話ししました。ジェンダーバランスと同様、物語におけるバランスの悪さが指摘されている分野がもう一つあります。それは、家族のあり方や性自認、人種や障がいのあるなしなどの様々な「多様性」です。多様性を子供の本棚に子供達は本を読む時、単純に字を読むことを覚えるだけでなく、社会規範も学んでいきます。「これがふつう」「これはめずらしいこと」「それはいいこと」「あれはわるいこと」といった規範は、必ずしも本の中に直接的に現れるとは限りません。本の中心となるテーマが友情や勇気だったとしても、出てくる主人公たちが全員お父さんとお母さんと一緒に暮らしている白人の男の子ばかりだったら、子供達はそういった「背景」までひっくるめて、メッセージを受け取ってしまいます。現実の世界には、片親の家庭もあれば、障害を持つ子供や大人もたくさんいます。子供たちはきっといつか、様々な背景や事情を持つ人々に出会うでしょう。今後、今よりもっと多様性が重要視されるようになると思います。そんな社会を生きる子供たちにとって、「様々な人々のあり方」をあらかじめ知っておくことは、とても大切です。幼少期から楽しめる絵本を通して、親子で考えてみませんか。多様な家族のあり方を描く絵本小さな子供にとっては、自分の家族だけが「ふつうの家族」です。お父さんがお仕事をしていて、お母さんが専業主婦の家庭の子供にとっては、それが「ふつう」。お母さんが会社で働いていて、お父さんがフリーランスで一人っ子の子にとっては、それが「ふつう」。昔だったら、絵本に出てくるのは、お父さんとお母さん、そして子供が2人ぐらいまでがスタンダードだった、と言っても良いでしょうか。けれど、今の社会において、現実の家族はもっともっと多様なものです。ここでは、多様な家族についての絵本をご紹介しましょう。■『タンタンタンゴはパパふたり』パパが2人のペンギンの家庭の子供、タンゴの物語。ニューヨークのセントラル・パーク動物園での実話が絵本になりました。米国図書館協会の Notable Children’s Book(注目すべき子供のための本)に選定され、数々の賞を受賞した話題作 And Tango Makes Three の邦訳版です。■『いろいろいろんなかぞくのほん』まさに家族の多様性をテーマにした本。大家族もいれば片親家庭もあり、離婚の結果、兄弟が違うお父さんやお母さんを持っていて、それでも一緒に暮らしているケースもある。お父さんとお母さんの肌の色が違う家庭もあるし、養子として受け入れられた子供達のいる家族もある。こうした多様な家族のあり方を明るく描いているのが特徴的な一冊です。人と違って大丈夫——様々な個性が許される社会を描く英語絵本■Here Comes Frankieフランキーは、とても静かな家に暮らしています。お父さんもお母さんも、音がないほうがいいと言います。そんな家で育ったフランキーが初めてトランペットを吹くと「汚れた皿洗いの水の色と、玉ねぎの漬物の匂い」の音が飛び出してしまうのです。フランキーのトランペットから出てくる音は、どんどん綺麗なものや大胆な柄に変わっていって……。まるで空想の世界の物語のように感じられますが、実はこれは「共感覚」というコンディションを持っている子供達の世界を描いた絵本です。共感覚とは、色が「聞こえて」しまう、音の「味がして」しまう、というように、複数の感覚が一つの刺激に反応してしまうコンディションのこと。「モダン・ジャズの帝王」と呼ばれる、アメリカのジャズトランペット奏者のマイルス・デイヴィスや、フィンランドの作曲家シベリウス、そして抽象絵画の創始者とされるロシア出身の画家、カンディンスキーも共感覚者でした。本書の最後のページには共感覚の説明があり、このような共感覚者の有名人が挙げられています。■Mixed中国系アメリカ人作家のアリー・チャンによる Mixed(まざっちゃった)。三原色の青・赤・黄色たちは、お互いにどの色が一番優れているのかで対立します。でも最後には、お互いを認め合うことに。混ざった時に生まれてくる色の華やかで美しいこと!人種のメタファーとして読むこともできますが、母親でも父親でもない、独特の個性を持って生まれてくる「子供」の独自性を、とても強く肯定する物語にもなっています。■Freddie and the Fairy「もはやイギリスの子供で聞いたことがない子供はいない!」というほどの知名度を誇る絵本、『グラッファロー』については、前にもご紹介しました。その『グラッファロー』の作者、ジュリア・ドナルドソンによる可愛らしい絵本です。ある日、妖精を助けたフレディはお礼に願いを叶えてあげると言われるのですが、妖精は実はあまり耳がよくなくて……。フレディのお願いは変な形で叶えられてしまいます。さあ大変!ジュリア・ドナルドソンのトレードマークとも言えるリズムの良さと、ユーモラスなストーリーラインが印象的。さらに、耳がよく聞こえない人たちと話すときに気をつけなくてはならないことが自然とわかる内容になっています。どれも日本語訳はまだないのですが、英語でのよみきかせの際に、ぜひ手に取っていただきたい絵本です。ジェンダーの問題と同様、多様性についても、様々な取り組みが進められていますから、書籍そのものはそれなりに出ています。今必要とされているのは、読み手がそういった本を、積極的に手に取ることなのです。(参考)ジャスティン リチャードソン, ピーター パーネル 著, 尾辻 かな子, 前田 和男 訳(2008),『タンタンタンゴはパパふたり』, ポット出版.メアリ ホフマン 著, 杉本 詠美 訳(2018),『いろいろいろんなかぞくのほん』,少年写真新聞社.Tim Hopgood, Here Comes Frankie, (Macmillan Children’s Books, 2015)Arree Chung, Mixed, (Macmillan Children’s Book, 2018)Julia Donaldson, Freddie and the Fairy, (Pan Macmillan, 2012)
2019年01月10日「もしも」を使うと作文が書きやすくなる!?途中で書くことに詰まってしまう。子どもにはよくあることです。そんなときは、子どもに魔法の言葉「もしも」をふりかけてあげてください。「もしも」をきっかけに想像の世界へ飛び立つことで、意識下にある、その子の考えや気持ちが表に出てくることも少なくありません。そうして表に出てきたものが、作文を魅力的なものにしていきます。魔法の言葉「もしも」には、大きく“変身する役割”と“願望達成の役割”のふたつがあります。どちらも、作文を書くうえで有効です。作文を書く子どもの手が止まったら「もしも」を使って、親がさり気なく誘導してあげてください。「もしも」で他の誰かに大変身!?ひとつ目の「もしも」は“変身するためのもの”です。あたり前のことですが、子どもは、子ども自身の視点で物事を考えようとします。そうすると、自分の意見や考えを書いた段階で「もう十分に書いた」「もうこれ以上は書けない」とブレーキをかけ始めます。そんなときに、変身の「もしも」を使えば、子どもは迷い込んだ袋小路から抜け出して、新たな世界へと旅立つことができます。◆「もしも」を使った変身例・もしも、わたしがママだったら〜・もしも、わたしがこの本の作者だったら〜・もしも、わたしが、ケーキ屋さんの店長だったら〜・もしも、ボクが日本でいちばんえらい人だったら〜・もしも、ボクが宇宙飛行士だったら〜・もしも、わたしが校長先生だったら〜・もしも、わたしが動物園の飼育員さんだったら〜・もしも、わたしがディズニーランドのスタッフだったら〜・もしも、ボクがユーチューバーだったら〜・もしも、わたしがAKB48のメンバーだったら〜「もしも」を使って、自分以外の何者かに変身することで、子どもの想像力が一気に活性化します。変身した立場から、それぞれ個性的な考えや提案を書き始めることでしょう。もしもボクが、日本でいちばんえらい人だったら、おじいちゃんとおばあちゃんに、広くて安全なおうちをプレゼントします。おじいちゃんやおばあちゃんが転ばないようにせっけいした家で、ボクやお父さん、お母さんともいっしょにくらせる大きなおうちです。それから、まちにゴミをすてる人からは「ばっ金」をとります。ふけつな町になると、みんなが気もちよくないからです。あと、歩きながらスマートフォンをいじっている人からはスマートフォンをとりあげます。じこがおきるとあぶないからです。もしも、ボクがユーチューバーだったら、まい日、コンビニやスーパーでうっているおかしを食べて、しょうかいしたいと思います。日本のおかしを食べつくしたら世界のおかしもしょうかいしたいです。今までに見たこともないおかしをしょうかいできたら、見てくれる人たちも楽しいと思います。味だけではなく、おかしの形や、おかしの入ったふくろや箱、おかしの名前なども、しょうかいしたいです。どちらの作文も、変身先の世界で、自由に想像力を発揮しています。作文を読んだ親は、作文の内容がどうであれ、ホメてあげてください。「スマートフォンを取り上げるのは、ちょっと厳しいんじゃない?」「毎日、お菓子を食べたらお金がかかるよ」などという正論やジャッジは無粋です。子どもの想像力を讃えて共感してあげることが大切です。「もしも」で願望が達成する!?もうひとつの「もしも」は“願望を叶えるためのもの”です。どんな子どもにも「こうなったらいいなあ」と思っている願望があるはずです。「もしも」を使って、その願望が満たされた状態を作り出します。すると、子どもの感情が動き、新たな発想が生まれやすくなります。◆「もしも」を使った願望達成例・もしも、ママがボクにガミガミおこらなくなったら〜・もしも、九九がすらすらと言えるようになったら〜・もしも、かん字テストで100点とれるようになったら〜・もしも、クラスでいちばん背が大きくなったら〜・もしも、かけっこがはやくなったら〜・もしも、夏休みのしゅくだいがひとつもなかったら〜・もしも、学校に行かず、一日中、好きなだけゲームをしてもいいなら〜・もしも、わたしがお姫さまだったら〜・もしも、お兄ちゃんと別々の、自分だけの部屋があったら〜・もしも、この世からびょうきがなくなったら〜願望の裏側にあるのは、その子の思想・価値観のようなものです。「もしも」で願望を叶えることによって、その子が大切にしている“宝物”が見えてきます。もちろん、願望が達成した状態ですので、子どもも活き活きと言葉を紡いでいくはずです。もしも、夏休みのしゅくだいがひとつもなかったら、ボクは朝から晩まで野山をかけまわりたいです。昆虫さいしゅうをするためです。まい日、山や林に行ってカブトムシやクワガタをつかまえます。お昼はおにぎりをたべます。川ではザリガニやカエルをつかまえます。海に行くことができたら、パパといっしょにつりをしたいです。海にもぐって貝をとるのも楽しそう。おおきな魚をつったら家にもちかえって、おさしみにしてみんなに食べてもらいます。もしも、お兄ちゃんと別々の、自分だけの部屋があったら、どんなにうれしいかわかりません。本だなには、大好きな「ワンピース」のマンガをならべます。いっしょうけんめいに作ったひこうきとクルマのプラモデルはつくえの上におきます。青色が好きなので、カーテンとまくらは青色にしたいです。ともだちがあそびにきたら、いっしょにマリオのゲームをします。お兄ちゃんに「うるさい!」「外であそんでこい!」といわれるしんぱいがありません。そうなったらうれしいです。いずれの作文も“その子らしい”言葉で書かれています。願望が達成した状態をイメージすることは、大人だけでなく、子どもにとってもワクワクすることなのです。それゆえ筆も進みやすくなります。「もしも」という乗り物で自由に旅させよう!もちろん、「もしも」は、ネガティブなアプローチで使うこともできます。たとえば、「もしも、大きなじしんがおきたら〜」「もしも、おさいふをおとしてしまったら〜」「もしも、たいようが消えてなくなってしまったら〜」「もしも、テストで0点をとってしまったら〜」という具合です。親としては少しドキっとするかもしれませんが、ネガティブなアプローチも“その子らしさ”であり、“個性の片鱗”に違いありません。したがって、ネガティブなアプローチで「もしも」を使ったとしても、とがめずに見守ってあげてください。くり返しになりますが、子どもが「もしも」という乗り物でどこへ行こうとも、大人がその事実を受け止めてあげることが肝心です。「もしも」には、子どもの想像力や発想力のスイッチを“オン”にするパワーがあります。ふだんから「もしも」で考えるクセをつけておくと、いざというきに(作文を書くときに)オリジナリティが生まれやすくなります。「もしも」という乗り物で旅することは、子ども自身にとっても、楽しく刺激的なはず。きっと今まで以上にワクワクしながら作文を書くようになるでしょう。
2019年01月09日「子どもにやらせたい習い事」として、しばしば挙げられるスイミング。かつて自分もやっていたという親御さんも多いのではないでしょうか。子どもは保育園・幼稚園でプール遊びを始め、小学校で泳ぎ方を習うことが多いと思いますが、習い事としては何歳から始めさせるのが効果的なのでしょう?今回は、子どもにスイミングを何歳から習わせるべきか、3つの観点から考察します。みんなは何歳からスイミングを習っているの?実際のところ、どれだけの子どもがスイミングを習っていて、何歳から始めているのでしょう?広告代理店の博報堂が2016年3月、「小学生の長子がいる母親」1,428名を対象にインターネット調査を実施したところ、小学生の81.0%が習い事をしていると判明しました。なかでも最多だったのが「水泳教室」(31.1%)。「低学年」では39.8%、「中学年」では35.6%と、3分の1を超える多さでした。一方、「高学年」では17.8%と、第5位にまで落ち込んでしまっています。代わりに第1位となったのが「通信教育、宅配教材」でした。また、「習い事を始めた年齢」の平均について、「水泳教室」は5.6歳。これは「ピアノ、音楽教室」「野球やサッカー等の運動クラブ」など19個の項目のうち、「ダンスなどのパフォーマンス教室(バレエ含む)」と並んで第4番目の早さです。一方、「続けさせたい年齢」の平均は「水泳教室」だと11.3歳で、同じく第4番目でした。「体力作りのために小さい頃から水泳をやらせていたけれど、高学年になったらやめさせて勉強に注力させる」という図がイメージできますね。別の調査結果も参照してみましょう。ベネッセ教育総合研究所が2017年3月、「3~18歳(高校3年生)の子どもを持つ母親」16,170名を対象に行ったアンケートによると、最も人気の習い事はやはり「スイミング」。幼児の23.0%、小学生の33.6%が習っていました。両方のアンケート結果を見ると、およそ3割の子がスイミングを習っていて、就学前から始める子も小学生から始める子も多い、ということですね。スイミングを習うメリットどうしてこんなにも多くの親が、子どもにスイミングを習わせているのでしょう?それは、スイミングを習うことには「泳ぎが得意になる」という以上のメリットが数多くあるからです。体力をつけられる「元・水泳日本代表選手、萩原智子さんに聞いた『習い事としての水泳をオススメしたい5つの理由』」でもご紹介したように、スイミングは健康な体づくりに最適です。健康のためというなら、ほかのスポーツでもよさそうですが、スイミングならではの大きなメリットがいくつもあります。温水プールの水温はおよそ28~30℃ですが、体温より低い水中で運動を繰り返すことで、体温調節機能が強化され、カゼを引きにくくなると言われています。水泳は最高スピードで泳いでも、最大筋力の1/3程度しか使わず、テンポが毎分60回程度であるため、筋の血流量が最大となり、筋の持久的能力の発達を促します。また、最大筋力を必要としないので、筋・腱や関節・骨への負担が小さく、成長期の児童・生徒も安全に運動することができます。水泳はテニスやバドミントン等とちがって、左右両側の筋を交互にバランスよく使用するので、均整のとれた身体の発達が期待できます。また、特定の腕や脚を集中的に使うことがないので、関節が未発達な、幼児や児童にも安心して泳がせることができます。様々なスポーツ傷害に関する報告書をみても、水泳はサッカー・テニス・野球のような、特有のスポーツ傷害が最も少ないスポーツの一つです。(太字による強調は編集部で施した)(引用元:文部科学省|学校体育実技指導資料第4集「水泳指導の手引(三訂版)」)自分もスイミングを習っていたという親御さんなら、うなずける点が多いのではないでしょうか。スイミングは全身を使ううえ、水の浮力のおかげで体に負担がかかりすぎず、腕や脚など特定の部位を傷めることが少ないのです。小さな子にも安心して運動させられますね。空間認識能力を鍛えられる「空間認識能力を鍛える楽しい方法。ゲームとおもちゃが意外と使える!」で詳しくお伝えしたように、「空間認識能力」は「人間が秘めた最大の潜在能力」かもしれないと考えられています。空間認識能力が高いと、各種のスポーツでパフォーマンスを発揮しやすくなったり、設計関係の職業に就きやすくなったりするだけでなく、空間認識能力は創造力・イノベーションと関連しているとまでいわれているのです。この空間認識能力を伸ばすにはいくつか方法がありますが、そのひとつがスイミング。人類学者のグウェン・デワー氏によると、子どもの空間認識能力を育てるには、子どもがものの大きさや方向を意識できるような声かけをするのが効果的だそう。そして、数学教育などを研究するロビン・ヨルゲンセン教授(キャンベラ大学)によれば、スイミング教室のコーチが指導で使う言葉には、家庭ではなかなか出会えない空間的な表現(「突き出しの角にある赤いリング」「背泳ぎできるように向きを変えて、目は上に」など)が多く含まれています。実際、ヨルゲンセン教授が、スイミングを習っている3~5歳の子ども177人に認知機能測定テストを受けさせたところ、「Understanding Directions(方向理解)」分野での得点平均が、一般の平均より約16点も高いという結果でした。集中力がつくスイミングスクール「ケーニーズ」によると、スイミングは「何もしなければ水中に沈んでしまう」ため、一生懸命に泳ぐことによって集中力がつくそう。たしかに、泳いでいるあいだは早くゴールに着こうと必死ですよね。それに、正しいフォームで泳がないと沈んでしまい、適切なタイミングで息継ぎをしないと水を飲んで苦しい思いをします。そのため、泳いでいるあいだは自分の体の動きに全神経を集めるので、集中力がつくのかもしれません。東京大学の学生にスイミング経験者が多いのは有名な話ですが、「スイミングのおかげで集中力がついた」と話す東大生もいるようです。スイミングは何歳から始められるのかさて、スイミングには多くのメリットがあることがわかりましたね。すぐにでも子どもにやらせたくなりそうですが、実際のところ、スイミング教室に通えるのは何歳からなのでしょうか?実は、0歳から通えるスイミングスクールは多いのです。2018年12月時点で29都道府県に展開している「コナミスポーツクラブ」は、4カ月~高校生まで年齢に応じた5種類の子ども向けスイミング教室を展開。4カ月~2歳の子どもが保護者といっしょに参加する「ベビースイミング」は、親子で水遊びをしたり子どもが水に浮かぶのに慣れるのを促したりするコース。泳ぐ練習はしませんが、親子のスキンシップには最適ですし、水への恐怖心を小さいうちに取り除くことには大きな意味があります。スイミングを何歳から始めるべきか1:運動神経を鍛える『栄養・生化学辞典』によると、運動神経とは「筋肉を支配し、身体の運動や姿勢を制御する神経」。運動が上手にできる人のことを、俗に「運動神経がよい」と言いますね。さて、この運動神経ですが、米国の高名な人類学者リチャード・スキャモン(1883~1952)によると、神経の発達は4歳頃に全体の約8割が、6歳でおよそ9割が完了するそう。そして12歳でほぼ10割です。つまり、神経の発達期間が終わってしまう前に、さまざまな経験を子どもにさせて神経に刺激を与えることにより、「運動神経を良くする」ことが重要だといえます。そのため、神経が急速に発達している4歳までにスイミングを習わせはじめるのが特に効果的だといえるでしょう。幸いなことに、スイミングスクールには0歳から通えるので、運動神経を刺激するのに最適だというわけです。スイミングを何歳から始めるべきか2:子どもに意欲はあるか?4歳までにスイミングを始めるのが効果的とはいえ、あくまで目安にすぎません。2016年に引退した水泳のマイケル・フェルプス選手は、五輪で計23個もの金メダルを獲得した伝説的人物ですが、水泳を始めたのは7歳だったそう。ADHD(注意欠陥・多動性障害)だと診断され、「エネルギーをコントロールするため」にスイミングを勧められたそうです。スイミングは神経の発達に効果があるとはいっても、小さい子どもが嫌がっているならば、無理に通わせるのは賢明ではないかもしれません。ベネッセ教育総合研究所が2009年3月、「3歳~17歳(高校2年生)の子どもを持つ母親」15,450名を対象に実施したアンケートによると、小学生の親が運動系の習い事を選ぶ際に最も重視している点は「子どもが楽しんでいる」(95.8%)かどうか。これに対して「成果が目に見える」はわずか18.8%でした。我が子にスイミングを習わせたいと思ったら、まずは子どもの意思を確認してみましょう。「ぜひやってみたい」と前向きならよいのですが、あまり乗り気ではなかったり、スイミングがどんなものかよく知らなかったりする場合、とりあえず体験教室に行かせてはどうでしょうか。そこで水遊びを楽しいと思えたら入会すればよいし、やはり嫌だと思ったらやめればよいのです。以前はスイミングを嫌がった子どもでも、成長とともに興味を持ち、やってみたくなるかもしれません。幼稚園や小学校のお友だちに触発されて「うまく泳げるようになりたい」と一念発起するかもしれませんよ。「運動神経をよくするために、すぐにでもやらせなきゃ!」と焦らずとも、子どもが意欲を持つまで待ってみてもよいのではないでしょうか。スイミングを何歳から始めるべきか3:水を怖がっているか?子どもにスイミングを習わせるメリットのひとつには、「子どもが水に慣れ、水を怖がらなくなる」ことがあります。皆さんのお子さんのなかにも、お風呂を嫌がったり、プールを怖がったりする子がいるのではないでしょうか。そうなると、子どもをお風呂に入れるのに苦労したり、小学校の水泳の授業が心配になったりしますよね。もし今、子どもが水を怖がっているのなら、小さいうちにスイミングに通わせることで水に慣れさせることができるかもしれません。浅いプールで水遊びをしたり、ほかの子どもたちが泳いでいるのに触発されたりして、だんだんと水への恐怖を克服できる可能性がありますよ。もっとも、「小さい頃に無理やりスイミングに行かされてトラウマになり、ずっとプールが苦手」という人もいますので、注意が必要です。スイミングを習うのに必要な費用スイミングが持つ数々のメリットと、習いはじめるのに適切な時期を確認しました。すぐにでも始めたくなったかもしれませんね。そこで気になるのは、お金の問題です。楽器などほかの習い事に比べれば安いイメージがありますが、実際、どれくらいの費用がかかるのでしょう?上述したベネッセによる2009年のアンケートでは、子どもにスイミングを習わせている親が払う関連費用は、平均で6,100円/月。運動系と芸術系を合わせた40種類の活動のうち、9番目の高さです。ほかの運動系の習い事は、野球・ソフトボールが3,900円、サッカー・フットサルが4,200円、空手が4,200円などでした。意外に費用が高めなのはどうしてでしょう?それは、スイミングを習っている子の多くは民間企業のスクールに通っている一方、野球やサッカーを習っている子は地域ボランティアや自治体が運営する団体に所属することが多いから。ベネッセの同調査によると、民間企業のスクールに通う場合の支出平均は、スイミングが6,900円。サッカーが6,400円、野球が6,000円。いずれも安くありません。ところが地域ボランティアが運営する団体だと、それぞれ2,600円、3,300円、3,000円にまで激減します。そして、民間スクールに通う子の割合は、スイミングで86%、サッカーで32%、野球で9%。この差が、習い事にかかる費用の相違に直結しているのです。スイミングにかかるお金を節約したいのなら、地元の自治体やボランティア団体が運営する教室を探すのがよいといえます。***あまりにもメリットの大きい習い事、スイミング。お財布と相談しつつ、ぜひ小さいうちから習わせてあげたいものですね。(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|元・水泳日本代表選手、萩原智子さんに聞いた「習い事としての水泳をオススメしたい5つの理由」StudyHackerこどもまなび☆ラボ|東大生の約6割が習っていた「スイミング」。いつから習いはじめるべき?StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの「集中力」を養う方法。遊びや習い事を活用しよう!StudyHackerこどもまなび☆ラボ|東大生の幼少期の習い事の第1位は「スイミング」!そのメリットとは?StudyHackerこどもまなび☆ラボ|空間認識能力を鍛える楽しい方法。ゲームとおもちゃが意外と使える!ジュニア スイミング スクール ケーニーズ|水泳から得られる効果とはコナミスポーツクラブ|スイミングスクールプレジデントオンライン|水泳で頭が良くなる?東大生の6割が小学生時代にスイミング公立はこだて未来大学|身体的な発達心理学コトバンク|運動神経博報堂|【博報堂こそだて家族研究所】「子どもの習い事・身につけさせたいスキル」レポートベネッセ教育総合研究所|第1回 学校外教育活動に関する調査 2009ベネッセ教育総合研究所|第3回 学校外教育活動に関する調査 2017(データブック)文部科学省|学校体育実技指導資料第4集「水泳指導の手引(三訂版)」Olympics|Michael PHELPSRobyn Jorgensen Consulting | Adding Capital to Young AustraliansEarly Childhood Australia| Australasian Journal of Early Childhood Vol. 37 No. 2 June 2012
2019年01月08日小学生~大人を対象に行なった文部省の調査によれば、鉛筆を正しく持てている子どもの割合は、どの学年においても1割未満なのだそう。にもかかわらず、東大生の8割は鉛筆を正しく持てているという衝撃のデータがあるのです。鉛筆を正しく持てることと学力にはどんな関係があるのでしょう?■参照コラム記事はこちら↓東大生の8割は鉛筆を正しく持てる。「鉛筆の持ち方」と「学力」の深い関係
2019年01月06日世界中の子どもたちに愛されている絵本のひとつ、エリック・カールの『はらぺこあおむし』。この絵本が大好きな子どもたちはかなり多いのではないでしょうか?さて、この絵本に使われている技法をご存知ですか?「コラージュ」というのだそうですよ。今回は、子どもたちの発想力をぐんぐん伸ばす、親子でできるコラージュ作品の作り方をご紹介します。文・作品提供/芸術による教育の会講師後藤和人想像力を開放できる「コラージュ」の魅力「コラージュ」とは、貼り付けるという意味があり、日本では美術の技法のひとつとして広く認知されています。有名な『はらぺこあおむし』の絵本もコラージュです。絵具以外のあらゆる素材を組み合わせて画面に貼り付けることで、描写するだけでは表現できない「模様」や「素材感」を作品にほどこすことができるのです。たとえば、写真や模様がプリントされている包装紙などを作品に利用して、視覚的な表現に変化をつける。または、段ボールやクシャクシャにした紙を使い物理的な凹凸をつけて、触覚的な変化をつけることができます。このコラージュは、絵画作品に限らず立体作品にも応用できるので、子どもたちは想像力を思い切り開放することができるでしょう。今回は、幼いお子さんでも制作することができる2種類のコラージュをご紹介します。コラージュ<1>:雑誌やチラシの切り抜きを使おう!ファッション雑誌やスーパーのチラシなどに載っている商品写真、それから動物や車など、実際の物の形を利用したコラージュに挑戦してみましょう。切り抜きは大人が行い、貼り付けとお絵かきができるようにしてあげれば、幼いお子さんでも十分に楽しめますよ。このように実際の写真の切り抜きを使う事で、遊びながら考えるきっかけにつながります。例えば、まず犬の切り抜きを貼った場合、子どもは「その犬の周りには何があるだろう?」と考えるのです。エサが必要かな、犬小屋が必要かな、はたまた、ひとりだと寂しいから子犬が必要かな、などと想像力を働かせるでしょうね。お散歩に行きたいと思ったら、庭を描く事もあるかもしれませんし、狂暴な犬だとしたら檻を描く事もあるかもしれません。また、親子で一緒にコラージュをする際は、想像力をかきたてるコミュニケーションを取ってみてください。「この犬はどこにいるのかな?」「犬は何かを見ているね、何を見ているのだと思う?」などの会話が、より一層面白い制作につながるでしょう。このコラージュの方法は、お絵かきに遊び心がある子、工夫するのが好きな子に比較的向いていると思います。<材料>のり、水性カラーマーカーペンまたはクレパス雑誌、チラシの切り抜き<方法>①雑誌、チラシの写真を切り抜く今回のコラージュの主旨は、切り抜きを使っての制作です。まだはさみがうまく使えない子の場合は、あらかじめ大人が切り抜いておいても良いでしょう。②切り抜きを組み合わせてイメージする切り抜きをのりで貼る前に、紙の上で動かしてみたり、いくつもの切り抜きを組み合わせたりして遊びます。ああでもない、こうでもないと組み合わせながら、子どもはいろんな想像を膨らませているのです。のりで貼る事が目的にならないように、とにかく自由に遊ばせてみてください!③お絵かきをしながら切り抜きを貼るお絵かきをしながら切り抜きを貼っていきます。このとき、子どもの描いている物を通じて色んな会話をしてみましょう。「ここに何を描いたの?」「この〇〇は何しているの?」「これからどうなるの?」などです。沢山描く事が目的ではなく、子どもが自然に楽しく想像できることが大切です。その想像を作品に反映できるような会話をしてあげてくださいね。コラージュ<2>:家にある素材を探してみよう!次は、家にある素材でのコラージュです。わざわざ買わなくても、皆さんのご自宅にはきっとたくさんの素材があるはず。たとえば、包装紙やデパートの紙袋にはいろいろなデザインが描かれていますよね。それに、難しい字が並んでいる新聞紙も子どもにとっては素敵なデザインに見えるものなのです。子どもは視覚以外にも触ることで多くの情報を得ようとするので、ビニール袋や段ボールの凹凸も面白い感触を味わえるでしょう。これからご紹介するコラージュの方法は、視覚的な作品の見栄えを意識するのではなく、触った感触やデザインから何を制作していくか「直感的」に考える事ができます。また、見つけた素材の色や形や感触から何に使えそうか考えてみるのも頭を使った良い遊びになるでしょう。いわゆる「見立て遊び」ですね。こちらのコラージュの方法は、直感的に制作をするような子が向いているでしょう。素材を自分で切ったり、貼ったり自分でできる方が楽しめる内容なので、幼稚園年中、年長さんの方が楽しめる内容です。もしくは手でちぎれる素材で、のりやテープで貼りやすい物であれば年少さんでも十分楽しめます。<材料>のり、水性カラーマーカーペンまたはクレパス、はさみ、セロテープ、ボンド段ボール、紙袋、ビニール袋、新聞紙、雑誌、包装紙、和紙、毛糸、折り紙、アイスの棒、布の切れ端、など<方法>①コラージュに使えそうな素材を探す今回はのり、セロテープ、必要であればボンドを使います。「のりやセロテープで付きそうな物を一緒に探そう」と言えば、子どもは何を探せばよいか何となくイメージできるはず。②素材を触って楽しむ見つけた素材を触って、親子で感触を楽しんでみましょう。大きい物や切りにくい物は大人がある程度の大きさに切っておいてあげてくださいね。③素材で遊ぶお絵かきをする紙の上で色んな素材を並べて遊んでみましょう。この時、見立て遊びとして「これは何に使えそうかな」と一緒に考えてみることが大切です。ここで子どもは想像力を掻き立てていくのですから。④切ったり貼ったり描いたりして制作を楽しむ絵を描いてみたり、素材を切って貼ったりして制作を楽しみましょう。子どもによっては、描く行為よりも素材を貼る事に夢中になる時があります。その場合、無理に絵を描かせる必要はありません。素材をじっくり楽しみたい子は、素材を貼るだけでもOKです。「体」という認識が生まれる作業最後にひとつ、子どもが「体」というものを意識する時のお話しをしましょう。とくに幼稚園年少さん、年中さんの子ども達の絵に見られる頭足人(とうそくじん)という表現があります。描いた人間に体がなくて、顔から手足が出ている表現です。一生の内でもほんの数か月しかない表現で、子どもらしい愛らしい表現と言えるでしょう。そんな時期に洋服の切り抜きコラージュをした子どもは、意識が「体」へ向く場合があります。なぜかというと、「体」がある事で可愛い洋服が着せてあげられるからです。子どもは必要と思わない物は描きません。そこに洋服やスカートがあるから「体」を意識するのです。ですから体の描き方を教えるよりも、子ども自身が「体があると面白い」と思えるきっかけをサポートすると良いでしょう。特に女の子の場合はピンクの洋服であったり、スカートであったり興味をひくアイテムが多いと思います。我が子が好きそうな服が載っている、雑誌やチラシを用意してくださいね。【プロフィール】芸術による教育の会(げいじゅつによるきょういくのかい)東京、神奈川、埼玉、千葉、インターネット上に約100教室の美術教室を運営。在籍生徒数約3800人。「世界の子どもたちとアートを通してつながりたい!」を将来のビジョンとし、言葉の壁をアートで乗り越えた未来を目指しています。■芸術による教育の会ホームページ「芸術による教育の会」は、5つの事業と60年以上の実績をもとに美術を通して、子どもたちの成長に寄り添います。■お家でビジュツ!動画で学べる!作品を掲載できる!どこでもアート!!「びじゅつでつながろうどこでもアートきっず」・インターネット美術教室なので、自宅でレッスンが受けられます。必要な教材は発送します。・お子さまに合わせたカリキュラムを作成し、個性を引き出して伸ばします。・それぞれの成長段階や個性に合わせた技術指導を行います。・YouTubeの動画もあるよ。いろんな工作動画を見て下さい。どこでもアート公式チャンネルはこちら
2019年01月05日お風呂でのひと時は、親子の大事なコミュニケーションの場です。ゆったりと湯船につかっていると身体も心もリラックスして、普段話せないようなことを話してくれることもありますよね。それ以外にも、お風呂はとても有効な「学びの場」でもあります。お風呂で九九を覚えることや、親子で言葉遊びをすることは、子どもの能力にも効果的に働きかけます。今回は、お風呂で役立つ知育アイテムや数遊びなどについて詳しくご説明します。さっそく今夜から試してみてくださいね。お風呂場は集中力が増す!『欲育』のススメ東京ガスの都市生活研究所が提唱する『浴育』という言葉を知っていますか?その定義は、「入浴を通じて生涯の心身の健康をより良く育むために、入浴の効果や入浴方法、お風呂の楽しみ方などを学ぶこと」とあります。親子入浴は、子どもの成長や親子関係にも大きな影響があることも知られており、その日一日の出来事を話すことで、親子ともに元気をチャージできる場であることは、誰もが実感したことがあるのではないでしょうか。さらに、お風呂タイムを親子の学習タイムとして活用することも、広い意味での『浴育』につながっています。「お風呂場は集中できるベスト空間」と述べるのは、『子どもの能力を決める0歳から9歳までの育て方』(KADOKAWA出版)の著者であり、子育て支援士の田宮由美さん。気が散るものを持ち込めない狭い空間は、何かを覚えたり考えたりすることに向いているそうです。つまり、習慣として毎日入っているお風呂は、親子のコミュニケーションが深まるだけではなく、『学び時間』としてもその効果が絶大であることは明らかなのです。子どもは成長とともに一人でお風呂に入るようになります。親子で一緒にお風呂に入る時期は、思っているよりもずっと短いもの。だからこそ、毎日の入浴タイムを大切にしたいですね。定番の「お風呂ポスター」は目的に合わせて選ぼう小さなお子さんがいるご家庭のお風呂には、必ずと言ってもいいほど水でくっつくポスターが貼られているのではないでしょうか?ただぼんやり湯船につかっているだけでも、壁に貼られているポスターを眺めていると、いつのまにかその内容を覚えてしまうものです。カリフォルニア工科大学の研究者によると、リラックス状態の脳は新しい記憶が残りやすいのだそう。お風呂の中は絶好の学習時間というわけですね。また、親御さんが指差しながら質問するなど、親子コミュニケーションにも役立ちます。くもん出版のお風呂用ポスター「おふろでレッスン」シリーズは、その種類の多さと充実した内容が高い人気を誇っています。ひらがな・すうじ・ABC・九九といった基本の表から、四字熟語や慣用句などの珍しいものまで、子どもの年齢に合ったものを選ぶことができます。「おふろでレッスンひらがなのひょう」くもん出版「おふろでレッスン九九のひょう」くもん出版「おふろでものしりはかせ四字熟語/ことわざ」くもん出版また、日本地図や世界地図を貼るのもおすすめです。教育コンサルタントの上野緑子さんは、「親子でお風呂に入り、その日のニュースに出てきた地域や自分の住んでいるところ、おじいちゃん、おばあちゃんの住んでいるところを探してみると楽しいですよ」と述べています。家族旅行で行った場所やこれから行ってみたい場所など、親子共通の話題で盛り上がることもできますよ。「おふろでレッスンにほんちず」には、全都道府県の県章と県花も載っているので、県章の由来を親子で考えてみてもいいでしょう。「おふろでレッスンにほんちず」くもん出版「おふろでレッスンせかいちず」には、各国の国旗が載っています。上野さんによると、「国旗を覚えるとオリンピックの開会式の入場行進などテレビで国旗を見つけるのが楽しくなりますよ」とのことです。東京オリンピックに向けて、今から各国の国旗を覚えることを目標にしてもいいですね。「おふろでレッスンせかいちず」くもん出版また、あの無印良品でも、子どもの学習用おふろポスターを作っています。シンプルでスッキリとしたデザインなので、インテリアの邪魔にもなりません。「おふろポスター・ABC」無印良品日本地図のポスターは、枠に沿って各地域の特産物のイラストが並べられています。これをきっかけに日本の各県に親しみを感じ、日本各地の特産物などさまざまなことに興味を抱いてくれることも期待できますね。「おふろポスター・ちず」無印良品それ以外でも、長い期間子どもが飽きずに、楽しみながら勉強ができる工夫を凝らしているポスターが各社から発売されています。学研の『おふろで旅する世界地図』は、お湯をかけると黒い部分が消えて答えが見えるようになるという優れもの。クイズになっていると熱中して楽しめるので、いつのまにか各国の特徴をつかんでいるお子さんに驚かされますよ。「おふろで旅する世界地図」学研お風呂で「算数脳」を育む!?次にご紹介するのは、ポスター以外のアイテムです。子どもにとって、水(お湯)の中で手を動かすことや、浴室の壁におもちゃをペタペタ貼ってはがす、という遊びを繰り返すことは、巧緻性を鍛える訓練にもなります。スポンジ状の数字やアルファベットのセットは、100円ショップなどでも手軽に手に入れることができますよ。水に濡れてもOKな絵本やパズル、お風呂でお絵かきができるグッズなど、お風呂用の知育アイテムは世の中にたくさんあります。どれも子どもが喜んで夢中になる工夫がされているため、「気に入るかな?」と心配せずに気軽に用意してあげましょう。また、算数脳を鍛える「タングラム」を、お風呂でも楽しめるアイテムもあります。三角や四角のピースを組み合わせて絵を作っていく遊びから、図形感覚を育むことができます。「さんすう脳をきたえるおふろタングラム」小学館最近では図形の問題でつまずく小学生が増えてきているといいます。苦手意識が芽生える前にお風呂で楽しく学ぶことが大切ですね。何もなくてもお風呂で「学び」を生み出せる!最後に、ポスターやおもちゃなどのアイテムを一切使わない「お風呂の学び」をご紹介します。まず、親子のスキンシップも兼ねて「背中の文字当て」はいかがでしょうか。背中に文字を書き合いっこをして、何という文字が書かれたのか当てるゲームです。記憶力アップに最適な「逆さ言葉遊び」もいいですね。「ろふお」→「おふろ」「35842」→「24853」単語や数字をしっかり覚えて逆さに答えるという単純なゲームですが、毎日続けていれば確実に集中力と記憶力が養われます。「100まで数えたらお風呂から上がろう」というのはよくありますが、「100、99、98、97、96……」と逆から数えたり、「1、3、5、7……」と一つ飛ばしにして数えたりすると新鮮です。親子で交互に数えることで「負けないぞ」と正しく数える意欲も高まります。ただし、数を数えるときに絶対に守らなければならない「決まり」があります。「脳科学おばあちゃん」として有名な久保田カヨ子先生は、次のように述べています。注意しなければならないのは、日本語の場合、「1、2、3、4、5、6、7、8、9」のうち、「4」と「7」を「よん」「なな」と必ず同じように読むことです。こうすることで、数字の意味をきっちり理解してもらいます。決して、「し」「しち」と、カウントダウンしてはいけません。(引用元:DIAMOND online|お風呂学習で絶対にやってはいけないこと)日本語にはさまざまな読みがあり、意識していないとついごちゃ混ぜにしてしまいがちです。正しい日本語で、正しい数え方を教えてあげることも大切なんですね。***お風呂は親子のもミュニケーションの場であると同時に、貴重な学びの場でもあります。ここでご紹介したヒントを参考に、充実したお風呂タイムを楽しみましょう!(参考)東京ガス株式会社風呂文化研究会|「浴育」のすすめSHINGA FARM|お風呂で子どもを伸ばす入浴法とは!~毎日の入浴タイムを有効活用~All About|世界をもっと身近に感じ、日本にもっと興味を持とう!お風呂で学ぶ日本地図・世界地図All About|お風呂で知育遊び 算数・国語編DIAMOND online|お風呂学習で絶対にやってはいけないことStudy Hacker|お風呂は暗記効率が良いことが明らかになりました!お風呂暗記ツール3選
2019年01月05日子どもがいるとどうしても気になるのが、習い事の問題。小学校の勉強や部活ではできない体験をさせられますし、就学前にスポーツやアートに親しむことで、子どもの発達によい影響を与えたいと望む親御さんは多いことでしょう。とはいえ、「習い事なら何でもいい」と考えている人は、そういないのでは?最近は「東大生の多くが子どもの頃にやっていた習い事」が注目を浴びるなど、「脳の活性化」という観点で習い事を検討する保護者もいます。それに、「ほかの家庭ではどんな習い事をさせているんだろう?」と気になったり、勉強との兼ね合いも悩みどころです。そこで今回は、ちまたで人気の習い事と、習い事を選ぶ際のポイント、「StudyHacker こどもまなび☆ラボ」編集部オススメの習い事をご紹介します。お子さんの習い事を決める参考になれば幸いです。子どもの習い事人気ランキングベネッセ教育総合研究所は2017年3月、「3~18歳(高校3年生)の子どもを持つ母親」16,170名を対象に「第3回 学校外教育活動に関する調査」を行いました。その結果によると、就学前の子どもの多くがやっている習い事などの活動トップ10は以下のとおり。なお文字をクリックすると、「StudyHacker こどもまなび☆ラボ」の関連記事をお読みいただけます。幼児に人気の習い事などの活動ベスト10第1位 スイミング(23.0%)第2位 体操教室・運動遊び(15.5%)第3位 英会話・英語教室(10.5%)第4位 楽器の練習・レッスン(9.6%)第5位 音遊び/リズム遊び(音楽教室)(8.2%)第6位 リトミック(5.9%)第7位 サッカー/フットサル(4.5%)第8位 ダンス(3.3%)第9位 計算や漢字などのプリント教材教室(2.9%)第10位絵画/造形(2.5%)水泳が習い事として人気なのは有名ですが、小学校に上がる前の子でも5人に1人が習っているというのは驚きですね。スイミングが心身に与えるよい効果に期待を寄せる保護者が多いのかもしれません。英会話やプリントによる勉強をすでに始めている子が一定数いるというのも注目ポイントです。次に、小学生の習い事について見てみましょう。広告代理店の博報堂が2016年3月、「小学生の長子がいる母親」1,428名を対象に実施した「『子どもの習い事・身につけさせたいスキル』レポート」によると、多くの小学生がやっている習い事は以下のとおり。小学生に人気の習い事ベスト10第1位 水泳教室(31.1%)第2位 通信教育、宅配教材(29.3%)第3位 ピアノ、音楽教室(25.6%)第4位 そろばんなどの自習型学習塾(22.8%)第5位 野球やサッカー等の運動クラブ(20.9%)第6位 英語教室(20.4%)第7位 その他(13.7%)第8位 受験対策用の学習塾、教室(10.2%)第9位 水泳、ダンス以外の体育教室(9.5%)第10位ダンスなどのパフォーマンス教室(バレエ含む)(7.7%)水泳は相変わらず、圧倒的な人気です。そして、4人に1人が通信教育で勉強したり、音楽教室に通ったりしています。体や知能が発達したためか、就学前と比べて習い事にチャレンジする子が多いようです。習い事を選ぶポイントどの習い事が人気かは大体わかりましたが、こんなにも選択肢があると迷ってしまいますね。習い事を選ぶ際、どのような点を考慮して決めればよいのでしょう?ポータルサイト「goo」を運営するNTTレゾナントと読売新聞が2006年、3歳〜中学生の子どもを持つ1,026名を対象に実施した「子どもの習い事に関する調査」によると、保護者たちは以下のような理由で習い事(学習塾含む)をさせているようです。習い事をさせる理由ランキング第1位体力や運動能力の向上(46%)第2位子どもが自分で行きたいと言ったから(45%)第3位音楽や美術、書道など文化的な能力の向上(30%)第4位受験を目的としない学力向上(29%)第5位受験対策(15%)子どもの意欲を重視しつつ、やはり「子どもの能力を伸ばしてあげたい」と考えて習い事をさせる親が多いのですね。ひととおりの運動や文化的活動は幼稚園や学校でもできますが、その時間はごくわずか。体育がずっと苦手だったという人や、音楽の授業をまじめに受けても楽譜が読めるようにならなかったという経験を持つ大人は多いはず。学校以外で何か特別な活動に取り組ませ、得意分野を作ってあげたいと思いますよね。さて、多様な習い事のなかから「これをやらせよう!」と決めたとしても、考慮すべきことはまだあります。世のなか、特に都市部にはあまたのスイミングスクールやピアノ教室が展開しているからです。どの施設・団体で習わせればよいのでしょう?ベネッセ教育総合研究所が2009年3月、「3歳~17歳(高校2年生)の子どもを持つ母親」15,450名を対象に実施した「第1回 学校外教育活動に関する調査」の結果によると、親たちは以下のことを重視しているそうです。習い事選びで重視することランキング第1位子どもが楽しんでいる(94.3%)第2位費用が安い(61.2%)第3位家から近い(57.3%)第4位指導者が信頼できる(53.8%)第5位子どものレベルに合っている(49.2%)やはり、子どもが楽しんで活動できることがいちばんのようですね。また、第2位~第5位の要素は、習い事の続けやすさに関わっています。これらの要素がひとつでも欠けると、習い事を続けるのが物理的に難しくなったり、子どもの意欲が低下したりしかねません。検討している施設・団体が上記の要件を満たしているか確かめるため、いくつか体験授業を受けて比較してみるのがよいのではないでしょうか。習い事を選ぶ際に考慮するポイントは、人によって異なります。「StudyHacker こどもまなび☆ラボ」編集部が重視しているのは「脳の発達」という観点。子どもが小さいうちにさまざまな体験をさせると、脳の神経が刺激され、よりよく発達すると考えられています。脳の発達が大いに期待できる、オススメの習い事を3つ、ご紹介しましょう。おすすめの習い事1:そろばん日本人にとって定番の習い事、そろばん。地域にいくつか教室があるのではないでしょうか?そろばんは、右脳を刺激してくれる習い事として知られています。ふつう、私たちが計算をするときには論理的思考をつかさどる左脳を主に使いますが、NPO法人・国際総合研究機構の副理事長であり脳科学を専門とする河野貴美子氏によると、そろばんの有段者は暗算をする際、右脳を用いているのだとか。彼らの頭のなかではそろばんの珠(たま)が動いているので、イメージをつかさどる右脳が活発になっているそうです。右脳を活発にすると、記憶力や直感が磨かれると考えられています。ほかにも、そろばんには以下のようなメリットがあります。詳しくは「子どもにそろばんを習わせる5つのメリット。リーズナブルだけど脳への効果は抜群!」をご覧ください。●自信が養われる●集中力がつく●費用が安め●資格が取れるおすすめの習い事2:ピアノみんなが憧れる習い事・ピアノ。東大生の多くが習っていることでも知られるようになりましたね。一般社団法人・日本子ども音楽教育協会の理事長である滝澤香織氏によると、ピアノの演奏は右手と左手を同時に使うため、右脳と左脳の両方が活性化されるそう。これによって、右脳と左脳のあいだにある神経の束「脳梁」が太くなり、右脳・左脳間の伝達がスムーズになるそうです。また、精神医学を専門とするジェームズ・ハジアク教授(米バーモント大学)らの研究により、楽器を練習した子どもほど、集中力をつかさどる脳の部位が発達していることが明らかになりました。ピアノをはじめとした楽器を演奏するには、指先を精密に動かし、リズムを正確に刻み、楽譜を素早く読めなければいけません。多くのことを一度にこなさなければならないため、集中力がつきやすいのかもしれませんね。ピアノには以下のように、ほかにも多くのメリットがあります。詳しくは「ピアノは何歳から始めるべき?脳科学から徹底的に考えてみた。」をご覧ください。●音感が養える●外国語が得意になる●自己制御や問題解決能力など「人間指数(HQ)」が養えるおすすめの習い事3:スイミング子どもの習い事として人気ナンバーワンなのがスイミングです。最近は、ピアノと並んで多くの東大生が経験した習い事としても有名ですね。スイミングは体だけでなく、脳も鍛えると考えられています。特に育つとされているのが「空間認識能力」。方向や位置関係を正しく理解し、目の前にないものを頭のなかで再現できる力です。この能力が高いと、自動車を運転しやすくなったり、スポーツで活躍しやすくなったり、設計関連の仕事に就きやすくなったりします。心理学者のデイビッド・ルビンスキー氏によると、空間認識能力は「人間のなかで眠っている潜在能力のうち、最大の部分かもしれない」とのこと。創造力やイノベーションとも関係しているそうなので、スイミングを通して子どもの秘めた能力が開花するかもしれませんね。ほかにも、スイミングには以下のようなメリットがあります。詳しくは「東大生の幼少期の習い事の第1位は『スイミング』!そのメリットとは?」をご覧ください。●集中力がつく●風邪をひきにくくなる●全身の筋肉を鍛えられる●ケガをしにくい「子どもの習い事をやめさせたい」と思ったら子どもがやりたがったし、将来のためになれば……と思って始めた習い事。しかし、さまざまな事情により、「そろそろやめ時かな」と感じることがあるかもしれません。習い事をやめさせたいと思うのには、以下のような場合が該当するでしょう。-子どもの意欲がなくなり、練習しなくなった。-習い事よりも勉強に注力させたい。-月謝を払いつづけるのが厳しい。「子どもの意欲がなくなった(ように見える)」場合最初は楽しそうだったのに、今ではいやいや通っているみたい……。子どもがこんな様子だったら、まずは「最近、習い事はどう?」「今はどんなことをやっているの?」と話を聞いてみましょう。そしてもし、「先生が好きじゃない」「同じクラスに嫌な子がいる」のように環境に不満を持っていることがわかったら、別の教室を検討するか、大きなスクールであれば曜日・時間を変更してクラスを替えてみては。また、「今やっていることが難しすぎて、ついていけない」のであれば、先生と相談してみましょう。環境に不満があるわけではなく、「もう充分にやった」「ほかのことに時間を使いたい」と思っているのかもしれません。今の習い事について「次の目標はある?」「どれくらいまで上達したい?」と聞いてみて、あまりポジティブな答えが返ってこないのであれば、やめてしまってよいでしょう。「やめる」といってもけしてネガティブなことではなく、ひとつのことを終えて、次のことに挑戦するというだけの話です。友だちと遊んだり、別の趣味に熱中したりする時間が生まれて、それもまた素晴らしい経験となるでしょう。一方、楽器のように自宅での練習が求められるにもかかわらず、練習の意欲を失っている場合は、少し難しいです。練習したがらない理由が「その習い事に飽きた」というものであれば、やめてしまってもよいでしょう。しかし、習い事自体は好きなのに、地道な練習を面倒に感じてしまう時期はあるもの。練習しないからといってすぐにやめさせてしまうのは早計かもしれません。子どもを信じてしばらく様子をうかがってみましょう。その際、たとえば楽器の習い事なら「久しぶりに○○ちゃんの演奏聞きたいな」と促して、演奏が終わったら褒めたり、親子でコンサートに行ったりなどのアプローチをとってみてはいかがですか。「もっとうまくなりたい」と願う気持ちがよみがえるかもしれません。習い事より勉強を優先してほしい習い事をやめて、その分の時間を勉強に使ってほしい……。そう考える保護者は少なくないようです。上述したベネッセの「第3回 学校外教育活動に関する調査」によれば、「運動やスポーツをするよりももっと勉強してほしい」と考えている小学生の親は37.5%、「音楽や芸術の活動をするよりももっと勉強してほしい」だと45.2%でした。この割合は調査のたびに増えています。けれど、机での勉強では得られない経験ができるのが習い事ですから、できればやめさせたくないものです。「家でも学校でも全く勉強をせず、通知表の数字がひどい」といった極端な状況でなければ、習い事はぜひ続けるべきだといえます。子どもがなかなか勉強をせずに悩んでいる場合、「子供が勉強しないときの対策。イライラはNG、親子で勉強計画を立てよう!」を参考にしてみてください。子どもが勉強しないときに役立つ6つのアドバイスを掲載しています。金銭的に厳しい……最初の頃はなんとかなったけれど、今は習い事の費用を払うのが家計的に厳しい場合。弟・妹が生まれた、子どもの習い事が増えたなどの背景があるかと思います。子どもが続けたそうにしているのに、お金の都合でやめさせなければいけないのは辛いですよね。まずはできるだけ、習い事を続けられる方法を模索してみましょう。子どもが複数の習い事をしている場合、率直に家計の事情を伝え、最も続けたい習い事を1つに絞ってもらいます。「あれも、これもやりたい」と子どもは思うでしょうが、複数の物事を比較して決定するよい機会です。金銭教育だと思うことにしましょう。子どもの金銭感覚を養う方法については「『お金教育』は幼少期から。お金の大切さを知るための、最初の4ステップ」をご覧ください。習い事が1つでも、まだ厳しいという場合、今よりも安価に習える教室・団体を探してみるという手もあります。上に挙げた「第3回 学校外教育活動に関する調査」によると、小学生のスポーツ系の習い事に関して、「民間経営」の団体で習っている場合の平均費用は月に6,000円台でしたが、「地域ボランティア運営」だと2,000~3,000円台、「自治体・公益法人運営」だと3,000~4,000円台でした。習い事の教室を開いている団体の見つけやすさは地域によって異なりますが、諦めずにできるだけ安い運営母体を探してみましょう。***子どもの習い事について、悩みは尽きないかもしれません。「StudyHacker こどもまなび☆ラボ」は今後とも、習い事に関する知見を発信してまいります。(参考)ベネッセ教育総合研究所|第1回 学校外教育活動に関する調査 2009ベネッセ教育総合研究所|第3回 学校外教育活動に関する調査 2017(データブック)博報堂|【博報堂こそだて家族研究所】「子どもの習い事・身につけさせたいスキル」レポートNTTコム リサーチ|子どもの習い事に関する調査StudyHacker こどもまなび☆ラボ|子どもにそろばんを習わせる5つのメリット。リーズナブルだけど脳への効果は抜群!StudyHacker こどもまなび☆ラボ|ピアノは何歳から始めるべき?脳科学から徹底的に考えてみた。StudyHacker こどもまなび☆ラボ|東大生の幼少期の習い事の第1位は「スイミング」!そのメリットとは?StudyHacker こどもまなび☆ラボ|空間認識能力を鍛える楽しい方法。ゲームとおもちゃが意外と使える!
2019年01月04日お手伝いはどんどんさせたほうがいい、と頭ではわかっているものの、子どもにやらせると失敗して逆に時間がかかったり、教える手間が惜しかったりと「面倒だな」という気持ちが先に立ってしまいませんか?忙しい日々のなか、時間的にも精神的にも余裕がなくて、つい「今度ね」と言ってしまっていませんか?今回は、お手伝いがもたらす想像以上のメリットについて、詳しくご説明します。“お手伝い” こそが、いま子どもに与えるべき「学びの機会」■「やりたい!」気持ちが芽生えたときがチャンスNGO「ピースボード」の船上にあるモンテッソーリ保育園「ピースボード子どもの家」の代表を務める小野寺愛さんは、「子どもが「やりたい!」と言ったときを逃してはいけません」と力説します。お手伝いと言っても、子どもが小さいうちは、かえって手がかかります。でもそこで『こぼすからママがやるよ』とか、『あぶないから、あっちへ行ってて』と遠ざけてしまうと、実際にちゃんとできるようになる頃には、『面倒くさい』『やりたくない』と、なってしまう。子どもが『やりたい!』と言ったときに、一緒にやってみる。また、どうしたらできるのかを考えて、環境を整える。そして、『できたね』『たのしいね』という体験を積み重ねることが、こころも成長させるし、自分のことは自分でやる習慣につながります。(引用元:『できる子になる!0歳からのお手伝い』クーヨンBOOKS12,2015年6月,クレヨンハウス.)子どもの「やりたい!」気持ちを大切に。誰だって最初からうまくできないのだから、親としてまず一番に心がけることは、“長い目で見守ってあげること” なのかもしれませんね。しかも、お手伝いには「自立心」を育むだけではなく、教育的効果も存分に期待できることがわかっています。■生活習慣と学力の深い関係国立青少年教育振興機構の鈴木みゆき理事長は、「お手伝い」についてインタビューで次のように言及しています。【お手伝いがもたらす効果】・子どもの自己肯定感を高める・マナーを学ぶことにつながる・「時間の感覚」を身につけられるより良い人生を歩むためにはどれも重要ですね。また、生活習慣が身についている子どもほど学力が高い、というデータから、次の結果を導き出しています。「お手伝い」が「時間の感覚」を身につけさせ、「時間の感覚」が「生活習慣」を身につけさせ、「生活習慣」が「高い学力」をもたらすというわけです。(引用元:Study Hacker こどもまなび☆ラボ|「お手伝い」が子どもにもたらすいくつものメリットーーお手伝いの習慣が高い学力につながる理由)■お手伝いが子どもの “生きる力” に直結する!『お手伝い至上主義』の著者であり東大卒MBA教授の三谷宏治氏は、「家庭での仕事を自分が責任をもってやるという “お手伝い” は、生きていくうえでもっとも大切なことのひとつ」だと述べます。そして、幼少期にお手伝いをしてきたかどうかで、就職や仕事への向き合い方に大きな違いが出ると断言しています。三谷氏によると、お手伝いをしてきた人たちには次のような特長が見られるそうです。・段取りがいい・指示をされなくても自分で仕事をつくることができる・自分で考えてトラブルに対応しようとする・自分の意思で決定することができる・思いやりの気持ちを持ち、よく気が利く・感謝を忘れないつまり、「コミュニケーションスキル」や「問題解決スキル」といった『生きる力』が身についているのです。生活習慣やマナーがが身につく、学力が高くなる、生きる力が育まれる……お手伝いっていいことだらけ!面倒がらずにどんどんお手伝いをさせれば、いずれ必ず、お子さんにとっても親御さんにとっても、良い結果をもたらすはずです。では続いて、それぞれの “お手伝い” にどんな教育的効果があるのか、詳しく見ていきましょう。マルチタスクが必要とされる『料理』は小さいうちから!以前コラム(Study Hacker こどもまなび☆ラボ|小学校の「国語・算数・理科・社会」につながっていく!子どもが料理をするメリット)でご紹介したように、子どもがが料理を手伝うことは国語や算数の力にも直結します。【国語】料理は五感を磨きます。その磨かれた五感は、作文や日記で表現する力を豊かにしてくれます。また、レシピを読み、作業工程を理解する力も、広い意味では“国語力”と呼べるでしょう。【算数】料理は、ただ「作るだけ」ではありませんよね。材料の準備から片付けまで、必要な段取りを順序立てて考える力=ロジカルシンキングを養います。また、2人分のレシピを4人分に計算し直したり、大さじ1(15cc)と小さじ1(5cc)の関係性を理解したりと、頭の中でパッと計算する訓練にもなるでしょう。【理科】野菜のどの部分を料理に使うのかを知ることは、植物の勉強になります。また、水を火にかけて沸騰させると蒸発して水の量が減るということを実際に目で見て体験すれば、理科の勉強にもつながります。さらに、料理を手伝って得られることは、長い目で見ると、子どもたちの将来にも大きな影響を及ぼします。以前ご紹介したコラム(Study Hacker こどもまなび☆ラボ|五感が鍛えられるだけじゃない!集中力や思考力も高まるメリットだらけの「親子料理」)では、次の3つの能力が料理によって発達すると説明しています。【能力1:豊かな表現力】料理をお手伝いすることで「自分の考えをわかりやすく説明できる」「感情コントロールがうまくできる」「率先して行動できる」といった能力につながることが、内閣府の調査結果でも証明されています。【能力2:高い集中力、忍耐強さ】料理中の集中力は達成感につながり、さらに次への意欲や頑張る気力と忍耐力が育まれるプラスのループを引き起こします。「ひとつのことに集中して取り組む」というルーティンは、家庭での学習習慣にも好影響をあたえることがわかっています。【能力3:創造力と思考力】料理とは、クリエイティビティと論理性が必要な知的作業です。完成形を想像しながら、食材の組み合わせを考えて計画的に作業することは、実はとても難易度が高いのです。自己肯定感が育まれる『掃除・片づけ』掃除や片づけは、どうしても大人がパッとやってしまいがちです。ではなぜ子どもに掃除させようとするともたついてしまうのでしょうか?それはきっと「道具」が合っていないのかもしれません。前出の「ピースボード子どもの家」代表の小野寺さんは、娘さんが2歳のときに「子どもの小さな手でも使いやすいように」と、モンテッソーリ園にあったものを真似て小さなミトン型のふきんを作ったそうです。すると、手を入れてしっかりと拭けるようになったとのこと。また、そのふきんをしまいこまずに、子どもの手が届く『いつもの場所』に置くことがポイントだと言います。(中略)それからは、たとえば牛乳をこぼしても、子どもを叱ったり責めたりせず、『あのふきんで拭こうよ!』と前向きなことばをかけられるようになったこともよかったです。(引用元:『できる子になる!0歳からのお手伝い』クーヨンBOOKS12,2015年6月,クレヨンハウス.)まずは、子どもの手に馴染む道具を用意してあげましょう。そして、いつでも取り出せる場所に置くだけで、「汚したら自分できれいにする」習慣が身につきます。また、調布市にあるシュタイナー教育を実践する「ぎんのいずみ子ども園」の山本ひさの園長は「片づけは食事や掃除と同様に大人になってもやるべき当たり前のこと」と述べます。きれいに片づくと、周囲が「気持ち良い」と感じ、自分の行為が「役立った」という感覚が生まれるそう。そのとき『できた!』という自己肯定感が育つのです。一般社団法人「親・子の片づけ教育研究所」代表理事である澁川真希さんによると、「収納を工夫することで想像力が養われたり、元の場所に戻すことで習慣力もついてきます。また、自分にとって必要なもの、必要でないものがわかるようになります」と、片づけがもたらす効果は数え切れないとのこと。整理整頓の習慣がしっかりと身についていれば、自然と学習環境を整えるという動作にもつながっていきます。効率よく学習に取り組むためにも、まずは机周りやお部屋の環境を整えるクセをつけたいものですね。目の前の課題に挑戦し、問題解決能力を磨くことができる『洗濯』毎日洗濯をしている親御さんにとっては、あまりにも当たり前すぎて気づかないことがあります。たとえば、大人は無意識のうちにバランスをとって、洗濯物をまっすぐに干すことができますよね。しかし子どもにやらせてみると、片方は重たいズボンで反対側はなぜか靴下だけ……と、明らかに傾いてしまうことはありませんか?そこで、「どのバランスだと傾かずに洗濯物が干せるかな?」ということを考えさせましょう。重さを均等にして、より効率的に乾かす、という “重さの原理” が学べます。また同様に、「お日さまが当たるところに干すと乾きやすいよ」「シワを伸ばすと、きれいに干せるね」と、干し方のコツを理由を添えて説明してあげることで、太陽の光の動きと温度・湿度の関係などを経験から学ぶことができるでしょう。さらに、洗濯物が乾いてからも学びのチャンスです。洗濯物の分類、整頓、収納までの流れを自分の頭で考えながら同時に手を動かすということは、最初のうちは意外と難しいものです。しかし、回数をこなしていくうちに、必ず手際よく作業ができるようになるでしょう。もしくは子ども自身が試行錯誤して、「もっとやりやすいやり方がある!」と新しい方法を見つけるかもしれませんね。毎日の洗濯を手伝うことが時間的に難しければ、週に一回、持ち帰った上履きを自分で洗わせてもいいでしょう。「どうすればもっと汚れが落ちるかな?」「どこに干したらよく乾くかな?」と、考察と挑戦を繰り返すことで、課題をクリアする達成感を得ることができるはずです。『買い物・おつかい』で判断力・決断力・自己管理能力の総合的な力が鍛えられる最後に、お買い物のお手伝いやひとりでおつかいに行くことも、ある程度の年齢になったら必ず経験させたいことです。一緒に買い物へ行くことは、普段食べている料理にはどのような食材が使われているのか、調理する前はどのような形で売られているのか、お菓子とお野菜ってどっちが高いのかな?など、子どもに知っておいてもらいたい「食育」の知識をたっぷりと吸収することができるからです。また、「この予算内で○○と△△を買ってきてね。お金が残ったら好きなお菓子を1つだけ買ってもいいよ」と、おつかいに行かせるとします。すると、子どもは頭をフル回転させて、品物を選び、お金を計算し、判断力と決断力を駆使してその課題をやり遂げるでしょう。お買い物は、瞬時の計算力と判断力、そして何より “自己管理能力” を鍛えることができます。失敗を繰り返しながらも経験を重ねることで「生きた勉強」にもなり、国語や算数などの教科にも確実に活かされるのではないでしょうか。***せっかく子どもが「お手伝いしたい!」と言っているのに、させないなんてもったいないと思いませんか?時間と心に少し余裕を持って、親御さんがゆったりとした気持ちでお手伝いをさせてあげることで、思わぬ教育的効果をもたらすかもしれませんよ。(参考)『できる子になる!0歳からのお手伝い』クーヨンBOOKS12,2015年6月,クレヨンハウス.Study Hacker こどもまなび☆ラボ|「お手伝い」が子どもにもたらすいくつものメリットーーお手伝いの習慣が高い学力につながる理由日経DUAL|子の就職力を高める「ヒマ・貧乏・お手伝い」習慣Study Hacker こどもまなび☆ラボ|小学校の「国語・算数・理科・社会」につながっていく!子どもが料理をするメリットStudy Hacker こどもまなび☆ラボ|五感が鍛えられるだけじゃない!集中力や思考力も高まるメリットだらけの「親子料理」いこーよ|子供が「お手伝い」するのに「お片付け」しない理由対策も紹介
2019年01月03日「お年玉」といえば、子どもたちのお正月のメインイベント。それと同時に、親御さんたちにとっては大きな悩みの種と言って間違いないでしょう。なぜなら、我が子が大金を手にする機会だから。「子どもがもらったお年玉、どう扱えばいいの……」と戸惑ってしまいませんか?子どもたちが手にするお年玉の金額の相場はどのぐらいなのか、調べてみました。そして、子どもにとってタメになる有意義なお年玉の使い方を解説していきます。小学生のお年玉金額の相場は?学研教育総合研究所の「小学生白書Web版 2017年8月調査」によると、2017年のお正月にもらったお年玉総額の平均は、小学校1年生で17,480円。2年前の15,670円に比べ1,810円も増えていました。この3年間の金額の増加傾向は、2年生以上の学年においても同様に見られます。そして、見逃せないのが、3万円以上の高額のお年玉をもらっている1年生が25%もいる、ということ。「○○くんは、5万円ももらったんだって!ぼくよりすごく多くてうらやましい!」なんて話も、そう珍しくはないのです。ちなみに、2年生以上がもらったお年玉金額の平均は、2年生:17,585円、3年生:19,362円、4年生:19,007円、5年生:21,482円、6年生:21,400円です。ざっと、小学生のお年玉の相場は、低学年が1万円台後半、中学年が約2万円、高学年だと2万円台前半、といったところでしょう。お子さんが今はまだ低学年でも、学年が上がれば上がるほど、お年玉でもらう金額は増えていきます。親としては、子どものお年玉事情からは今後も目が離せませんね。お年玉の使い道は?さて、子どもたちはこんなにも多額のお年玉を、どのように使っているのでしょう。さきほどの調査から、今度は「2017年にもらったお年玉の使い道」を見ていきます。どの学年においても、使い道の1位は「貯金」。その割合は各学年とも80%以上で、他の使い道を圧倒しています。そして2位以降の、実際にお金を消費する場合の使い道を見てみると、1・2年生で最も多いのは「おもちゃ」で約35%。それに続くのは「ゲーム機・ゲームソフト」「本・雑誌」「お菓子などの食べ物」「文房具」で、それぞれ10%前後でした。また、学年が上になるほど「おもちゃ」を買う子どもは減り、「ゲーム機・ゲームソフト」「本・雑誌」を買う子どもの割合が増えます。子どもの興味関心の移り変わりがお年玉の使い道にも如実に表れていて、興味深いデータです。子どもたちが、お年玉を使って大好きなものを嬉しそうに買う姿が、目に浮かびますね。お年玉は誰が管理している?ここまで見てきたように、多額かつさまざまな使い道があるのがお年玉。子どものいる家庭では、このお年玉を誰が主導して管理しているのでしょう。住信SBIネット銀行の調査(2017年)によると、子どものお年玉を「親がすべて管理」すると答えた人の割合は、子どもが5歳以下の場合で92.6%であったのに対し、子どもが6歳以上11歳以下の場合だと64.7%。未就学児のお年玉を親がすべて管理するのは自然なことですが、小学生になると親がすべて管理するケースは減り、代わりに「親と子どもでそれぞれ管理」が増えて23.5%という結果でした。お年玉の管理の方法として一般的なのが、「子ども専用の口座で貯蓄する」というもの。調査会社のDIMSDRIVEのアンケート(2014年)で、未就学児~小学生の子どもがいる人のおよそ65%が、お年玉は子ども専用の口座に貯めていると答えていました。子どもが自由に使っていい分を渡し、残りを子ども専用の口座に入金する、というやり方をしている家庭もあるようです。今はまだお子さんのお年玉を親が全部預かっているというご家庭も、小学校入学を境目に、「親子で一緒に管理する」方法へとシフトしてもいいのかもしれません。お年玉は「お金教育」の絶好のチャンスお年玉を子どもにもある程度管理させることは、「お金教育」という観点からも大いに勧められるべきことです。お金教育とは、「お金とは何か」「お金の大切さ」「お金の使い方」などについて子どもに教えること。「「お金教育」は幼少期から。お金の大切さを知るための、最初の4ステップ」でもご紹介している通り、正しい金銭感覚を養ったり、数・計算の概念を身につけたり、欲求をコントロールする力を養うためには、幼少期のうちからお金教育を始めておくことが重要です。多くのお金教育のプロたちが、「お年玉はお金教育の絶好のチャンス」だと断言しています。その一人として、子どもに金銭教育の機会を提供するNPO法人金融知力普及協会事務局長の鈴木達郎氏は、次のように言います。(お年玉を)親が全額管理することは絶対にやってはいけない(中略)お金のやりくりは学校では身につかない。家庭でしか覚えられないのに、その機会を奪うことになる(引用元:日本経済新聞|お年玉で育てる「使い上手・ため上手」な子)カッコ内は編集部にて補った学校教育のなかで、お金の大切さや計画的な使い方について学ぶのは、小学校5・6年生の家庭科。それ以外に学校でお金について学ぶ機会があったとしても、とても「金銭感覚を養う」のにじゅうぶんとまでは言えません。お金教育は、家庭での取り組みこそが大切なのです。子どもが、お年玉としてまとまったお金を手にするお正月は、お金教育・金銭教育をはじめるのにもってこいの時期。親が丸ごと預かってしまうのは、とてももったいないことだと言えるでしょう。プロが勧める!お年玉の有意義な使い方ではここからは、お年玉を活用したお金教育の方法を具体的にご紹介しましょう。1. 「お年玉管理ノート」を作る上述の鈴木氏によると、お年玉と一緒に子どもに「おこづかい帳」や「おこづかい袋」などを渡すと良いのだそう。また、教育評論家の親野智可等氏も、お年玉を上手に管理するために「お年玉専用ノート」を用意することを勧めています。誰からいくらお年玉をもらったのか、そのお年玉のうちいくらをどうやって使うのか。これを親子で確認しながらノートに書き出すことが、お年玉を有意義に使うための第一歩です。2. お年玉の管理は「2本立て」が基本お年玉の総額をはっきりさせたら、その使い道を考えます。考え方の基本は「2本立て」。すなわち「使うお金」と「貯めるお金」です。「現金」と「預金」と言い換えてもいいでしょう。お年玉のうち、いくらを「使うお金」にし、いくらを「貯めるお金」にするのか、親子で話し合ってください。ファイナンシャルプランナーで、子どものお金教育に関する執筆・講演活動などを多数行なうあんびるえつこ氏は、この2本立てを「短期運用」と「長期運用」という言葉で説明しています。短期運用の使い道はお菓子や日用品などを買うこと。対する長期運用は、将来の夢のためにお金を使うことです。あんびる氏は長期運用の考え方を次のようにアドバイスしています。長期運用といってもこれなら難しくありませんね。長期運用のお金は、使い道を親子で話し合いましょう。小学校就学前ならランドセルや入学式に着る服、小学生なら自転車やスポーツ用品、夏休みのキャンプ費用など……ある程度高額なものにします。● 何のためにいつごろ使うか● そのためにいくらぐらい必要かといった目標を定めることが大切です。(引用元:ベネッセ教育情報サイト|まとまったお金の貯め方、使い方を教えるチャンス!お年玉、親の上手な関わり方[現代っ子のお金学])3. 発展編の「3本立て」もおすすめ「2本立て」を発展させた「3本立て」で、お年玉の使い道を考えるというやり方もあります。そのひとつが、子どものお金教育などに取り組む千葉商科大学教授・伊藤宏一氏が提唱する「SOS」です。SOSとは、Saving(貯金)、Offering(寄付・人のために使うお金)、Spending(買い物)の頭文字。SavingとSpendingは先ほど見た2本立てと同じで、これにOfferingが加わった形です。子どもがクリスマスプレゼントやお年玉をもらって嬉しかったように、自分も誰かを嬉しい気持ちにさせられるようなプレゼントを考える機会を設けてみてはいかがでしょう。「おばあちゃんへのプレゼント用に○○円とっておこうか」などと提案するといいですね。また、困っている人のために寄付することも一案です。もちろん子どもですから、使えるのは些細な金額。ですが、お正月は「誰かのために」お金を使うことの意義を教える良い機会でもあるのです。4. 気を付けるべきことお年玉の使い道を決めたあとで気をつけたいことを、いくつか紹介します。・「無駄遣い」だと決めつけない貯金などを除き子どもの手元に残ったお金を、実際子どもが使うようになったら、親は時折収支をチェックしてあげましょう。ここで注意すべきなのは、子どものお金の使い方を「無駄遣い」だと決めつけないこと。親にとっては無駄でも子どもにとっては必要なものもあるからです。さらに、失敗から学ぶことも重要なこと。NPO法人おかねの楽校理事長・安江巧氏は、次のように言います。「失敗も大事な経験。買い物をする際、『本当に欲しいのか、必要なものなのか』と考えるようになる」(引用元:産経ニュース|お年玉で始める金銭教育使い道は親子で話し合って)経験からお金の使い方を学ばせるには、おこづかい帳に「買ってよかったもの:○」「買わなければよかったもの:×」「わからない:?や△」をつけさせ、自己評価を記録させると良いでしょう。お金の使い方の良いトレーニングになります。・預金する際は、子どもと一緒に銀行へ貯金する分として取り分けた金額を口座に入金する場合は、ぜひ子どもと一緒にATMや窓口へ行きましょう。その意義を、親野氏が次のように説明しています。窓口の人に自分でお金を渡して、通帳も自分で受け取ります。ATMに入れる場合も、子ども自身の手で機械の中にお金を入れるなど自分で操作させるようにします。これによって、子どもはお金を預けるということの意味をよく理解するのです。これらをすべて親の手で済ましてしまい、帰宅してから子どもに「預けておいたよ」と言っても子どもにはその意味がよくわかりません。(引用元:ベネッセ教育情報サイト|子どものためになるお年玉の扱い方とは?[教えて!親野先生])こうすれば、子どもはお金を預けることの意味を知るだけでなく、お金が貯まっていくことの喜びも味わうことができます。・お年玉をくれた人へにお礼を伝える子どもに、お年玉をくれた人へ手紙を書かせるのもおすすめです。お礼の気持ちとともに「貯金したよ」「○○を買ったよ」などと使い道を伝えさせましょう。感謝の気持ちを思い出させるだけでなく、「パーっと使ってしまってはいけないな」という意識を持たせるきっかけになります。お年玉をくれたおじいちゃん・おばあちゃんも、きっと喜ぶはずですよ。***「何となく、子どもに使わせるのは怖い」「お年玉はとりあえず預かっておこう」。これまでそう思っていた親御さんも、今年のお年玉は子どもと一緒に使い道を考えてみましょう。子どもの「お金を使う力」を養う機会として、お年玉をぜひ活用してみてはいかがですか。(参考)学研教育総合研究所|小学生白書 Web版 2017年8月調査 4.日常生活について お年玉(金額・使い道)SBIホールディングス|~お年玉に関する意識調査~お年玉の平均支出予定総額は25,899円 前年調査よりも減少傾向DIMSDRIVE|「お年玉」に関するアンケート2014StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「お金教育」は幼少期から。お金の大切さを知るための、最初の4ステップ日本経済新聞|お年玉で育てる「使い上手・ため上手」な子ベネッセ教育情報サイト|子どものためになるお年玉の扱い方とは?[教えて!親野先生]ベネッセ教育情報サイト|まとまったお金の貯め方、使い方を教えるチャンス!お年玉、親の上手な関わり方[現代っ子のお金学]日本経済新聞|お年玉、おもちゃに消える前に親が教えたいことさぽナビ|<特集>子どもに伝えたいお金のこと (2)
2019年01月02日2018年2月にスタートした『StudyHacker こどもまなび☆ラボ』では、たくさんの学びの情報を読者のみなさまにお届けしてきました。その中でも最も人気の高かった記事をランキング形式にしてご紹介します。ここからは上位(5位〜1位)にランクインした記事をダイジェストでお届けします!★第5位★『“親の愛情” で子どもの海馬が大きくなる!?子どもの脳を育てる5つのヒント』脳が発達する幼少期、親がしてあげられることとは?習い事や運動が脳に及ぼす影響はもちろん、自然体験や絵本の読み聞かせも脳科学の視点から非常に良い影響を与えていることがわかりました。「子どものために」と信じて行なっているけれど、はたして脳科学的に効果があるのかな?と不安を感じている親御さんが、安心して子育てできる情報が満載です。ワシントン医科大学のJoan Luby博士らの研究グループはMRIを用いて92人の子どもの脳をスキャンしました。その結果、親からの愛情を充分に浴びて育った子どもは、そうでない子どもに比べて、脳の海馬の大きさが10%近くも大きかったそうです。脳とはとても不思議なもので、親の愛情のかけ方さえも子どもの発達に大きな影響を与えるのですね。他にも、自然体験では脳の前頭葉機能を改善してくれたり、読み聞かせが感情や情動にかかわる「大脳辺縁系」が活性化したりすることもわかっています。記事の中でより詳しく説明しているので、ぜひお読みください。★第4位★『「10歳の壁」「9歳の壁」「小4の壁」とは?子どもの発達段階を意識した4つの対処法』「○○の壁」という言葉、最近よく耳にするようになりましたよね。とくに9〜10歳という年齢は子どもの成長にとって大きな転換期であり、抽象的な概念も理解できるようになる大事な時期です。勉強がぐんと難しくなる時期でもあるので、ここでつまずかないためにも、この壁はぜひ乗り越えたいところ。そんな不安を抱えた親御さんたちからたくさんの支持を得たこの記事が第4位です。10歳ごろになると「他者意識」が発達し、他人との比較を通じて自分を認識するようになるため、子どもの自己評価や自尊心が低下してしまうのだそう。嫉妬などのネガティブな感情も生まれ、気に入らない相手を無視したり、その人について悪いうわさを流したりといった「関係性攻撃」につながってしまう場合もあるとのことです。勉強面だけではなく、精神面でも大きな変化が現れるこの時期。深刻な問題としてメディアなどでも取り上げられるようになり、いっきに注目が集まりました。そこでこの時期、親として子どもにどのように接したらいいか、記事の中で詳しく解説しています。「ほめて自信をつけさせる」「家事を手伝わせる」「体験活動をさせる」など、難しいことは一つもありません。ぜひ記事を読んで試してみてくださいね。★第3位★『「落ち着いて」はNGワード!?“本番に強い子”になる、正しい言葉かけと簡単トレーニング』子どもが本番で実力を発揮できないのは、「緊張しているから」だと思い込んでいませんか?でも緊張は誰でもするものです。ここで重要なのは「緊張していても実力が発揮できるか」ということ。この記事は「本番に強い子になるための方法を知りたい!」と願う多くの親御さんたちの心に響き、堂々の3位にランクインしました。森川氏は、「自己肯定感」が本番で力を発揮するための大きなポイントになると言います。(中略)“緊張したけどできた”という成功体験を積み重ね、自己肯定感を育てることが、“本番に強い子”につながっていくと言います。大事な本番前、ついつい「落ち着いて!」「あなたなら絶対にできる!」と励ましてしまいがちですが、これらの言葉を子どもにプレッシャーを与えてしまいNGだそう。ポイントは、子ども自身が「どれくらいできそう」かを確認する手助けをしてあげること。そして、「自分ができそうな行動(=OKライン)」を決めてあげて、ひとつひとつクリアしていくことです。これなら難しくありませんね。★第2位★『フランスの子どもは消しゴムを使わない。「間違いを消さない」がとても大切な理由』『StudyHacker こどもまなび☆ラボ』がスタートしてからすぐに公開されたこの記事は、長きにわたりランキング上位に君臨してきました。しかも、10ヶ月が経過したこの時期にも人気記事ランキングに再浮上するなど、その注目の高さがうかがえます。日本とは違うフランスの学習環境や学習への取り組み方、きっと参考になるはずですよ。消しゴムによって、子どもたちが書いた内容を初期化させないことで、教師は子どもたちの情報のすべてを把握できるのです。プロセスも含めて“思考の進化”が記録されることで、子どもの個性までが筒抜けになるため、採点する教師としては的確な評価と指導が可能になります。大事なのは、「正しいか」「間違っているか」ではなくそこに至るまでのプロセスなのですね。思考の過程を教師が把握することこそが、それぞれの子どもたちに合った指導を可能にしているのです。また、消せない文房具を使うことについて、「美しさ」を重視するフランスらしい理由も。文房具から見える教育への姿勢に驚き、感心したという読者からの熱い支持により、堂々の2位を獲得しました!★第1位★『観劇に出かける親子は驚異的に少ない。メリットだらけの演劇鑑賞、しないなんてもったいない!』映えある第1位に輝いたのは、『演劇鑑賞』のメリットをご紹介したこの記事です。公開後じわじわと話題を呼び、異例のロングランを記録したこの記事は、とある劇場からも問い合わせがくるほどに注目が集まりました。世の親御さんたちの「本当はもっと子どもを観劇に連れて行きたい!」という切なる願いがランキングの結果につながったように感じます。子どもたちは演劇を鑑賞することにより、人とのかかわり方、自分の意見の持ち方などを考えることができます。演劇鑑賞は、学力としては測ることのできない共感力や社会性などを養うことができる絶好の機会なのです。子どもの情操教育にも大きなメリットが期待できる演劇鑑賞について、今一度考えさせられる充実した内容の記事でした。豊かな感情表現を養い、共感力や社会性も育まれる演劇鑑賞は、子どもが小さいからこそぜひ親子で一緒に楽しみたいですね。記事では、子ども向け演劇の紹介もしていますので、ぜひ参考になさってください。***『2018年人気記事ランキング第6位~第10位』はこちら
2019年01月01日2018年2月にスタートした『StudyHacker こどもまなび☆ラボ』。新しい学びを提案した記事の数々が評判を呼び、夏には読書感想文講座を開催したり、「絵本部」として定期的にイベントを開催して読者の方たちと交流を広げたりと、その活動も多岐にわたってきています。2019年もますます多くの最新の学びの情報をみなさんにお伝えしていきますので、お楽しみに!今回は、2018年の1年間に公開された記事の中から、最も人気が高かった記事10本をランキング形式でご紹介します。まずは10位から6位までをダイジェストでお届けします。★第10位★『「勉強しろ」は逆効果!統計でわかった、親が本当にやるべき3つのこと』ついつい口うるさく子どもに「勉強しなさい」と言ってしまい、後悔することはありませんか?そんな気持ちを抱えた多くの親御さんたちの共感を得たのがこの記事です。声かけをした場合としなかった場合、子どもの勉強時間にどのような違いが出てくるのか、驚きの結果が明らかに!?「勉強しなさい」と言われた子どもの平均勉強時間は、言われなかった子どもよりも3.6分少なかったことがわかりました。このデータを見ると、「勉強しなさい」と言うことは、子どもの勉強時間を増やすのにあまり効果的ではなく、むしろ逆効果な場合もあるといえるでしょう。人は「○○しなさい」と命令されると自分の自由が制限されたと感じ、反対の行動をとる傾向があります。これを「心理的リアクタンス」と言います。「勉強しなさい」と言われると反発したくなるのにはちゃんと理由があったのですね。子どもが勉強したくなるポイントは「将来の話をする」「いっしょに勉強の計画を立てる」「夢中になれる体験をさせる」こと。記事で詳しく説明していますのでぜひご参考にしてくださいね。★第9位★『朝食で子どもの未来が決まる!?恐ろしい……ウソのような「朝ごはん」の事実。』親御さんたちにとって、子どもの朝ごはんについての悩みはつきませんよね。実は毎日の朝食が子どもの学力や脳の発達、さらに将来にも大きな影響を与えているのです。そんな衝撃的な事実にハッとした方も多いのではないでしょうか。朝食について改めて考えさせられたという反響が大きい記事でした。「朝食あり」の子どもの3割が、偏差値65以上の大学に合格している。「朝ごはんをほぼ毎日とり続けた人」たちは高収入層に固まりやすく、「朝ごはんを毎日は食べていなかった人」たちは低収入層に固まりやすい。朝食が大事であることは周知の事実ですね。ただし、朝食を用意する際には、「おにぎりだけ・トーストだけ」では不十分です。おかずの種類が多いほど発達指数が高くなる、というデータも出ていることから、バランスの良い献立が理想的です。記事では、時間のない朝でも簡単に作れるオススメのメニューもご紹介しています。★第8位★『今日から実践!子どもの可能性をぐんぐん伸ばすための「言葉かけ」』子どものテストの結果が悪かったとき、「なんでできないの?」と声をかけてしまっていませんか?この声かけ、実はNGです。子どもの能力を伸ばす声かけのコツは「プロセス」や「努力」を褒めること。すぐに実践できる声かけの仕方がわかりやすく紹介されていると評判を呼び、話題になった記事です。「プロセス・努力」を褒められて育った子どもは、たとえ天才であっても努力をする必要があると考え、挫折したときは、時間と努力を積み重ねることで乗り越えられると信じています。できる子だと思われるよりも、学ぶこと自体に価値を置き、困難な問題にも粘り強く取り組みます。「足が速いね!」「頭がいいね!」と褒めてしまうのはよくあることです。しかし、それは「才能」や「人格」を褒める言葉であり、その結果「成功は生まれつきの才能や頭の良さの結果だと信じるタイプ」へと導いてしまうそう。この記事では、子どもの努力やプロセスを褒めることの重要性と、声かけと同じくらい大切な「子どもの話を聞くこと」についても解説しています。★第7位★『一生に一度のゴールデンエイジに運動能力を一気に伸ばす!幼児期に重要な3つの外遊び。』ゴールデンエイジとは、体を鍛えて運動能力をアップさせるのに最も適している時期を指します。そしてそのゴールデンエイジの前段階である「プレゴールデンエイジ」とは、まさに『こどもまなび☆ラボ』読者のお子さま(3歳から小学校3年生)に当てはまるのです。この記事を公開すると、お子さまにスポーツをやらせたい、すでに本格的にスポーツに取り組んでいる、という親御さんから「非常に役に立った」というお声がたくさん届きました。年齢は多少前後しますが、いずれの場合もゴールデンエイジが「最も神経の発達するころであり、自分が経験したことのない運動でも見ただけで習得できるほどの能力を発揮する時期」という認識という点は共通しています。プレゴールデンエイジを充実させる幼児期の運動は、特別なスポーツを始めさせるよりも、子どもたちが日頃から慣れ親しんでいる「遊び」が最も効果的なのです。たとえば、基礎体力がついてとっさの判断力や素早い瞬発力が鍛えられる『鬼ごっこ』や、手足を巧みに動かす「巧緻性(こうちせい)」が身につく『ボール投げ』など、いつも公園などで遊んでいることこそが、プレゴールデンエイジに必要な能力を高めてくれるなんて驚きですよね。★第6位★『我が子を “自己チュー” にしないための3つの習慣 ~自己肯定感と自己寛容の関係~』近頃話題の「自己肯定感」。『こどもまなび☆ラボ』では、子どもの自己肯定感についていくつもの記事で紹介してきました。その中でもとくに反応が大きかったのが、「我が子を“自己チュー”にしない」というインパクトがあるこの記事です。自己肯定感と同じくらい大切なのは「自己寛容」という言葉に、大きな影響を受けた読者の方も多かったようですよ。「自己寛容」の要素が欠けたまま「自己肯定感」だけを育むと、自分を過信し、できない自分を認めないうえに、それを人のせいにするようになってしまうのです。本記事では「自己肯定感」と「自己寛容」がちょうど良いバランスで育まれるために、親としてできることをわかりやすく紹介しています。「GOODニュースを毎日語り合う」「得意なことを徹底して「認める」」「「ではどうしたらうまくいくだろう」を口癖にする」など、毎日のちょっとした会話の中でできる工夫が盛りだくさんなので、「読んですぐ実践したくなった」という感想がたくさん寄せられました。***『2018年人気記事ランキング第1位~第5位』はこちら
2019年01月01日年末年始になると子どもは冬休みに入り、家族で過ごす時間が増えますよね。この時期は、大みそかにお正月とイベントがめじろ押しで、それに伴って年越しそばやおせち、お雑煮など、昔から日本で親しまれている料理を食べる機会がたくさんあるでしょう。その時期ならではの料理を楽しむ意味を子どもに教えることは、家族間のコミュニケーションを充実させたり、子どもが食べ物や栄養について考えたりするきっかけに。今回は、年越しそばやおせち、お雑煮や七草粥といった年末年始の料理の意味について紹介します。ぜひお子さまと一緒に「〇〇を食べる意味はね……」と話してみてくださいね。■年越しそばを食べる意味年越しそばを食べる意味には諸説あります。■細く長く伸びるそばは、寿命や家運を伸ばすとされたため。■そばは切れやすいことから、1年の苦労や厄を断ち切るとされたため。■金箔を使う職人が、飛び散った金粉を集めるのに練ったそば粉を使っていたことから、そばは金を集めるとされたため。■大みそかに貧しい人々に向けてそば餅を振る舞ったところ、翌年から彼らの運気が上がったことから、大みそかにそばを食べると運がつくとされたため。そばの特徴から縁起を担いでいたり、実際の出来事がもとになっていたりと、さまざまなケースがありますが、いずれの場合も新しい年を良いものにしたいというポジティブな思いがあるようです。また、そばの薬味として欠かせないネギにも、疲れを労うという意味の「労ぐ(ねぐ)」、祈るという意味の「祈ぐ(ねぐ)」、神職の「祢宜(ねぎ)」といった言葉にかけて、1年の頑張りを労いつつ、新年を良いものにしたいという願いが込められています。■おせちを食べる意味「おせち」とは暦上の節句(季節の節目)のことで、節句に食べる料理をおせち料理と呼んでいました。現在では節句の中でも特に重要な正月に食べる料理を指す言葉として使われています。おせちには煮物や酢の物など、日持ちのする料理が多いですが、これには普段から料理を担当していることの多い女性にお正月の三が日はゆっくり休んでもらうという意味があるのです。また、お正月は神様をお迎えする時期であり、お正月に火を使うなどして台所を騒々しくするのは良くないとされていることもかかわっているようです。また、おせちが詰められる重箱には「めでたさを重ねる」という意味があり、縁起が良いとされています。おせちにはさまざまな品目がありますが、それぞれに込められた意味や願いは以下の通りです。■数の子卵の数が多いことから、子孫繫栄を願う縁起の良い食べ物とされています。■田作り田作りとは、片口イワシの稚魚を干して甘く炊いた料理です。片口イワシを肥料として使った田畑が豊作になったことから、五穀豊穣を願う食べ物とされています。■黒豆黒い色には邪気払いの意味があります。また、真っ黒に日焼けするほど、まめで勤勉に働けるようにという願いも込められています。■たたきごぼう地中の深くまで長く真っすぐ根を張るごぼうを食べて、家全体が堅固であることを願います。■紅白かまぼこかまぼこの形が初日の出に似ていることから、おめでたい食べ物とされています。さらに赤には魔除けや慶び、白には清浄の意味があります。■伊達巻伊達巻の形が巻物に似ていることから、知性を象徴する食べ物とされています。また、卵を使っていることから子孫繫栄を願う意味もあります。■昆布巻き昆布は「よろこぶ」の語呂合わせとして縁起が良いとされています。また、昆布巻きの中身のニシンは子をたくさん産むので、子孫繫栄の願いも込められています。■栗きんとん漢字で「栗金団」と書くことから、金や豊かさの象徴とされています。■海老海老は長いひげを生やしており、加熱すると腰が曲がることから、ひげが伸びて腰が曲がるまで長生きするという願いが込められています。■お雑煮を食べる意味お雑煮は、お餅とさまざま(雑多)な食材を煮込むことからその名がついたとされていますが、元々お雑煮には年神様に供えたお餅が使われており、食べることで年神様から新年の力(年魂)をいただくという意味がありました。また、前菜として新年の酒宴の前に食べると胃を安定させることから、内臓を守るという意味で「保臓(ほうぞう)」と呼ばれていたという説もあります。■七草粥を食べる意味七草粥とは、セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロの七草が入ったお粥です。聞きなれない名前も多いですが、スズナはかぶ、スズシロは大根を指します。七草粥を1月7日に食べる習慣は、江戸時代から始まったといわれています。七草は前日の夜に未婚の乙女が摘んだものが望ましいともいわれていました。七草は冬の寒さにも負けずに芽を出すことから生命力の象徴であり、食べることで邪気払いや無病息災を願うという意味があります。縁起の良い七草ですが、実はこの時期に食べるのには栄養面や健康面にも関係しています。お正月はおせちやお雑煮などの味の濃いものをたくさん食べてしまいがちで、胃腸に負担がかかっています。七草はどれもビタミンが豊富であり、なおかつお粥にして食べることで消化が良くなるため、胃腸の回復を助けます。七草粥は、お正月の暴飲暴食で疲れた胃腸の救世主のような存在なのです。***子どもと一緒に年末年始ならではの料理を作ったり食べたりしながら、その意味や願いについて伝えることは、日本ならではの季節感を意識することや食べ物の歴史に興味を持つことにもつながります。今年の年末年始は、伝統料理を通した食育にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。文/田口るい(参考)東京ガス ウチコト|「おせち料理の意味ってなに?」おせち料理の意味と由来、ルールそばの散歩道|麺類雑学事典年越しそばAll About|正月行事の由来と過ごし方キッコーマン|七草粥の豆知識日本文化いろは辞典|
2018年12月29日