シェアしたくなる法律相談所がお届けする新着記事一覧 (13/28)
*画像はイメージです:先日、ある有名人が「自分の住所をネットに書き込まれた」として、警察に被害届を提出したものの、受理されなかったことを告白し、話題となりました。昨今SNSや掲示板などで個人の住所や電話番号が第三者によって書き込まれることは稀にあるだけに、「他人事とは思えない」という声があがっています。本当に住所などの個人情報をネットに書き込むことは違法ではないのでしょうか?インターネット問題に詳しい法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士に、ご意見を伺いました。 ■刑法上違法とはいえない「刑法上、違法というためには、当然、刑法に違反していることが必要です。刑法には色々な罪が定められていますが、刑法に定められている罪以外のものについては、罪とされることがないのが原則です。この原則は罪刑法定主義と呼ばれます。氏名や住所を公開することは、どの刑法上の罪にも当たりません。このようなことをされると、“名誉毀損だ”と主張する方が多いように感じますが、名誉毀損は社会的評価の低下がなければ成立しません。氏名や住所が公開されても、社会的評価が低下することはないため、名誉毀損が成立することはありません。今回、警察が被害届を受理しなかったのは、このような理由と考えられ、極めて当然の対応ということになります」(清水弁護士) ■民事上は不法行為となる余地がある「しかし、氏名や住所はプライバシーとして保護される余地があります。承諾なくプライバシーを公開すれば、プライバシー侵害となり、これは民事上、不法行為ということになります。したがって、この例でも、氏名や住所を公開した人物に対して、プライバシー侵害として損害賠償請求をする余地があります。ただし、住所や氏名が開示されただけということだと、賠償額としては高くはならないと思われます。なお、損害賠償請求は、その公開した人物に対してすることが必要です。しかしインターネット上に公開された場合、公開した人が誰かということが分からない場合が多いのではないかと思います。この場合、発信者情報開示請求という手続きを経てからでないと、損害賠償請求をすることができません。したがって、公開した人の責任追及をしようとしても、少々大変かもしれません」(清水弁護士) 刑法に反していないため警察が被害届を受理しない行為は「当然のこと」なのだそう。しかし、書き込んだ人物を特定することができれば、民事上の不法行為に問うことができる可能性は高いようです。インターネット上に他人の個人情報を書き込むのはやめましょう。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年11月19日*画像はイメージです:交通違反などが原因で、パトカーから止まるよう指示されることは、多々あります。そんなときほとんどの人は指示に従うことでしょう。しかし、なかには逃げたいと思う人もいるはず。交通違反以外に「やましいこと」がある場合などは、実際に逃走するケースもあるようです。 ■死亡事故を起こすケースも稀に発生するのが、パトカーから逃げようとして事故を起こし、運転者が亡くなってしまうケース。この場合、逃走するほうに非があるのはわかるのですが、追い立てたパトカー側にも責任を問う声があります。このような場合、運転者の遺族としては警察に補償を求めたいところ。また、仮に何の罪もない通行中の一般人を巻き込んだ事故となれば、こちらの家族も治療費や補償を警察に求めていきたいところでしょう。警察に補償を求めることはできるのか。エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に解説して頂きました。 ■警察に補償を求めることはできる?「警察官などの公務員の違法な行為によって損害を受けた場合には、その公務員が所属する国又は公共団体に対して、国家賠償法による損害賠償請求をすることが考えられます(国家賠償法1条1項)。パトカーに追跡されていた車が事故を起こしたようなケースでは、その追跡行為が違法である場合に限り、その警察を設置している公共団体に対して、国家賠償法に基づく損害賠償請求をすることができます。そして、どのような場合に警察官の追跡行為が違法となるかについて、最高裁判所は、「およそ警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断してなんらかの犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由のある者を停止させて質問し、また、現行犯人を現認した場合には速やかにその検挙又は逮捕に当たる職責を負う(警察法2条、同65条、警察官職務執行法2条1項)」として職責を認定しています。そのうえで「職責を遂行するために被疑者を追跡することはもとよりなしうるところ」として、追跡行為自体の正当性を認めています。「警察官がかかる目的のために交通法規等に違反して車両で逃走する者をパトカーで追跡する職務の執行中に、逃走車両の走行により第三者が損害を被った場合」については、その「追跡が当該職務目的を遂行する上で不必要であるか、又は逃走車両の逃走の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし、追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当であることを要する」として、逃走態様や交通状況等の事情から判断して追跡が不相当と言える場合には違法性を認めるとしました(昭和61年2月27日判決)。これは、パトカーに追跡されていた車に同乗していた者や、事故に巻き込まれた一般人のような第三者が損害賠償請求する場合だけでなく、パトカーに追跡されていた車を運転していた本人が損害賠償請求をする場合にも、警察官の追跡行為が違法となるのはどのような場合かについての判断基準となっています。この判例を受け、実際の裁判例を見てみると、損害賠償請求が認められたものとしては、警察官が、暴走行為をするバイクを停車させるために幅寄せ等の行為をした結果、バイクが標識と衝突し、運転者が死亡、同乗者が重傷を負った事例において、幅寄せ行為等に警察官の過失が認められ、追跡方法が違法であると判断され、損害賠償請求が一部認容されたものがあります。(徳島地裁平成7年4月28日判決)」(大達弁護士) ■損害賠償が認められる可能性は低い?「その他、警察官の呼びかけを無視して逃走をしているような場合で、警察官の追跡行為が違法とされた目立った例は見当たりません。警察官の追跡行為が違法とされる可能性がある例として考えられるのは、下記の条件をすべて満たすような限定的な場面と思われます。・逃走運転者の人物や住所が警察に知れていて、後に逮捕や検挙、任意の取り調べが容易でその場での追跡が不必要である・追跡原因となった違法事由や嫌疑が軽微なものである・追跡行為によって事故等が起こる具体的な危険性が生じている上記の条件をすべて満たしつつ、漫然と追跡し続けた結果として事故が発生したような場合でない限り、国家賠償法に基づく損害賠償請求が認められる可能性は低いと考えられます。なお、事故に巻き込まれた第三者は、事故を起こした運転者やその保険会社に対して、損害賠償請求をすることができ、それによって損害はある程度填補され得ます(自動車損害賠償保障法3条、民法709条)」(大達弁護士) 警察による追跡行為が違法とされる例は限定的のようです。補償を求めることができるケースもありますが、無用なトラブルを避けるためにも、やましいところがないのであれば、パトカーに呼び止められた場合には、素直に応じることが無難なようです。 *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*curvabezier / PIXTA(ピクスタ)
2017年11月18日*画像はイメージです:近時、高齢者の資産管理に関する相談が増えていると感じます。それもそのはず。国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、50歳まで一度も結婚をしていない方の割合は2015年時点で男性が23%(概ね4人に1人)、女性が約14%(概ね7人に1人)と上昇の一途を辿っています。また、配偶者がいたとしても子がいなければ場合によっては単身者となってしまいます。その意味で、今後誰しもが直面する可能性のある問題といえます。このような悩みを抱えた方の死亡や認知症にまつわる問題につき、法律上、どのような対処方法があるのかにつき考えてみましょう。 ■伝統的な対処方法としての遺言自らの考えどおりに相続をさせたい場合、真っ先に浮かぶのは遺言だと思います。この方法のメリットは比較的自由に資産承継させることができる点にあります。特に、特定の人に特定の財産を「相続させる」旨の遺言があれば、不動産であってもその相続人が確定的に権利を有し、単独で所有権移転登記手続をすることもできます。また、法的なことにはなりますが、子の認知等の身分に関することも遺言ですることができます。ただし、遺言はそれ自体が法律行為なので、遺言をする方の判断能力がなければその有効性が争われる可能性もあります。また、ご自身で作成しようとすると気付かないうちに内容が矛盾していたりして「相続させる」旨の遺言と解釈できなくなってしまったり、法的な形式を満たさなくなる等、せっかく作成したのにいざという時に使えなくなってしまうおそれもあります。このような観点から、近頃は公正証書遺言が増えていますが、公正証書にしたからといって内容にお墨付きがもらえるわけではないことには注意が必要です。 ■法定後見制度と任意後見制度について遺言の他に、現在活用されることが多い対処法として、法定の成年後見制度と任意後見制度があります。法定後見制度はご本人の判断能力が常に欠けた状態になってからでないと利用できず、原則として後見人は財産の保存行為しかできません。任意後見制度は逆にご本人の判断能力が欠ける前に後見人を指定せねばならず、必ずしも指定した者が後見人に就任するとは限りません。たとえば、懇意にしている姪が近時破産していたりすると、後見人に指定しようとしても、裁判所の判断によっては他の者が後見人に指定されます。また、いずれの制度もご本人が亡くなった場合、後見人ができることはありません。そのため、基本的にはご本人が生存中に限り、財産を管理・維持してもらえるだけです。 ■新たな対処方法としての民事信託制度そこで、近年新たに活用され始めた対処法が民事信託制度です。民事信託とは、不動産や金銭等の資産を一定の目的に沿って信頼できる者に託し、その目的の範囲内で管理、運用及び処分を可能にする制度です。その最大のメリットは、委託した方が亡くなった後も効力を残すよう取り決めることによって、相続の手続をすることなく、スムーズな資産継承が可能となる点にあります。また、民事信託後、委託した方が認知症になった場合であっても変わらず管理、運用及び処分ができます。デメリットとしては専門性が高いので専門家の関与が必要不可欠である点と、子の認知等の身分行為はできない点が挙げられます。このように、民事信託制度は、遺言によって対処できない問題と後見制度によって対処できない問題のそれぞれを解決する画期的な制度と評価できます。もっとも、民事信託制度は未だ十分に認知されておらず、活用例も多くないのが現状です。今後、高齢者の資産管理に関する問題が一層社会問題化していくことが予想され、広く周知されていくものと考えられます。本稿をお読みになられた方は民事信託制度につき頭の片隅に置いていただければと存じます。 *著者:弁護士 中川 翔伍(丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士。離婚、相続、労務まで幅広く多様な案件を扱う)【画像】イメージです*xiangtao / PIXTA(ピクスタ)
2017年11月16日*画像はイメージです:スーパーマーケットや百貨店、コンビニエンスストアといった流通業界で働く人などの労働組合で作る『UAゼンセン』が行った、サービス業における実態調査によると、7割もの人が客からの迷惑行為を被ったことがあると回答したそうです。報道によると、迷惑行為の内容として、「暴言」、「同じ内容を繰り返す」、「説教など権威的態度」、「セクシュアルハラスメントを受けた」などがあるようですが、どのような違法行為に当たるのかみてみましょう。 ■迷惑行為は罪になるのか「暴言」、「同じ内容を繰り返す」、「説教など権威的態度」については、行為態様などにもよりますが、これをされることが不快ではあるでしょうが、何かしら罪に直ちに当たるとすることは難しいでしょう。もっとも、これらの行為を継続的に行うことで、対応している人が長時間通常の業務をすることができなくなっている状況が発生しているようであれば、業務妨害罪が成立する余地があります。他方、セクハラは、これも具体的な行為態様にもよりますが、強制わいせつ罪に当たる可能性があります。 ■たとえば、次のような行為は?報道では、「2時間にわたって正座させられた」といった被害に遭った方が紹介されていました。命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせた場合には、強要罪になりますが、本来、店員は客から正座を要求されるいわれはありません。そして、2時間という長時間にわたって正座をさせられるという状況は、何らかの加害が加えられる可能性を考慮しているものと思われます。したがって、正座を強要される態様によりますが、強要罪が成立する可能性があります。 コンビニ等で、土下座を強要したことをもって逮捕されている事案は比較的ありますが、これと似たように考えることができるでしょう。 また、「(要求を)聞いてくれないならインターネットの掲示板に個人名を出して投稿することもできるんだ」と言われたという例も紹介されていましたが、これは自由、名誉に対して加害の告知をしているといえることから、脅迫罪が成立する可能性があります。 さらに、「酔っている客から横腹を殴られた」という例も紹介されています。これは暴行罪に該当するものであり、仮にこれによって怪我をしてしまった場合には、傷害罪が成立することになります。 *著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)【画像】イメージです*Dean Drobot / Shutterstock
2017年11月14日*画像はイメージです:昨今大手企業の不正行為が相次いで発覚しています。いずれも日本を代表する企業であるだけに、その影響は計り知れないものがあります。一連の不正は、会社内で「当たり前」のような状態となっていた模様。それを見かねた一部の勇気ある社員が内部告発をしたことで、不正が明るみに出たようです。 ■意外と知られていない「内部告発」の方法自分の働いている会社の不正を告発することは、自らの首を絞めかねない行為。ほとんどの人が「見て見ぬふり」をしてしまうことでしょう。しかし、正義感などから、やはり「内部告発に踏み切るべきだ」と考える人もいるはず。この場合、周りの社員にバレないよう、密かに行動する必要があることは、皆さんご存知のとおりです。その一方で、「どこに、どうやって」告発をすれば良いのかは、あまり知られていません。仮に企業の不正を内部告発する場合、どのように進めれば良いのでしょうか?星野・長塚・木川法律事務所の木川雅博弁護士に解説していただきました。 ■内部告発はどのように行う?「最近も、性能データ数値、リコール件数、決算資料等の改ざん・ごまかしなどの企業の不正に関する報道が相次いでいます。従業員からの内部告発によって企業の不正や不祥事が明るみに出ることがありますが、原則として内部告発は実名で行うことになっているため、告発による不利益や報復をおそれてしまう方も多いかもしれません。そこで、実際に内部告発をしたいと思った場合にはどうすればよいかについて、制度を含めて簡単にお伝えしたいと思います」(木川弁護士) ■公益通報者保護制度(内部通報者保護制度)の存在「公益通報者保護法上の公益通報は、労働者が、不正目的ではなく、会社や役員・従業員等について生じている(まさに生じようとしている場合も含む)法令違反(コンプライアンス違反)行為を会社や外部に通報することです。公益通報者保護法や裁判例上、通報した人に対して降格・異動・解雇等の不利益行為を行ってはならないとされており、企業内の不祥事を発見した従業員が通報しやすくなっています」(木川弁護士) ■実際に内部告発をするときはどうしたらよいか「とはいえ、実際には不祥事が組織ぐるみで行われている場合などでは通報者に対する退職勧奨や不利益取扱いが行われてきたこともあります。法律は当事者間で紛争になってから守ってくれるものですので、事実上、不利益な扱いを受けない保証はありません。公益通報者保護法違反に対する罰則がないことも問題視されています。そこで、通報を検討している方が取り得る方法は2つあり、1つは匿名で通報をすることです。匿名通報は公益通報者保護法上の保護の対象になりませんが、理由のない不利益取扱いを受けた場合は裁判で争うことが可能できます。上司や会社を信用できない場合に様子見として会社上層部または外部に通報してみるのもいいかもしれません。そして、もう1つはその会社に見切りをつけて堂々と実名で通報を行うことです。昔とは違い、不正は明るみになりやすくなっていますのでその会社でキャリアを積んでも水の泡になる可能性が大いにあります。そのような会社は、残業代が払われないなど既に自分が被害を被っている場合がありますので、タイミングとコストを考慮して通報を行うのがよいでしょう。どこに、どのタイミングで通報するかについて迷われた場合は、第三者委員会や弁護士会の公益通報相談窓口へ相談するとよいです。結局、公益通報を行うこと自体によるメリットがない上、公益通報者保護法違反に罰則もなく、しかも、むしろ不利益取扱いを受けるリスクを背負うだけという点がネックだと思います。法改正もさることながら、どうしても社内での自浄作用が働かない場合には通報も選択肢の1つとして考えるような法令遵守行為が礼賛されるような社会になることを願います」(木川弁護士) 現状内部告発を行う場合は、会社からの不利益取扱いなどを受ける可能性があるようです。自分を守るためにも、告発の前に弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。 *取材協力弁護士:木川雅博 (星野・長塚・木川法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野・長塚・木川法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです* NOBUHIRO ASADA / Shutterstock
2017年11月13日*画像はイメージです:自分の配偶者が自分以外の異性と仲良くしていることが発覚した場合、ショックに感じる方も多いのではないでしょうか。中には「離婚をしたい」と感じる方もいらっしゃるかと思います。肉体関係を持っていることが明確であれば離婚できることはご存知かと思いますが、果して単に仲良くしており不貞行為を行っていない場合はどうなのでしょうか。 ■そもそも離婚ができる場合まず前提知識として、離婚する方法としては、(1)相手方と離婚に合意するか、(2)裁判所に離婚を認めてもらうかの2つしかありません。お互いが話し合った結果合意するのであれば、協議離婚(あるいは調停離婚)が成立することになります。この場合には、どんな理由であろうと離婚は成立します。しかし、相手方が合意しない場合には、そのままでは協議離婚(あるいは調停離婚)は成立しません。この場合には、裁判所に離婚訴訟を提起して、裁判離婚を認めてもらうしかありません。裁判離婚を認めてもらうためには、民法の定める「離婚原因」というものが必要となります。民法は5つの離婚原因を挙げていますが、特にしばしば問題とされるのは「配偶者に不貞な行為があったとき」(※1)、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(※2)の2つです。このような離婚原因があると裁判所に判断してもらえれば、裁判離婚が認められることになります。 ■裁判で争う場合にはどうなる?それでは、あなたが離婚訴訟を提起したところ、相手方が「確かに食事や遊びには行っていたが、神に誓って肉体関係はなかった。絶対離婚したくない」といった主張をしているという場合は、どうなるのでしょうか? ・肉体関係を伺わせる物的証拠がある場合裁判所は、お互いの言い分を聞いた上で、肉体関係の有無が争いになっている場合には、「証拠調べ」を行います。証拠には書類、写真、録音、証言などさまざまなものがありえますが、当事者から提出された証拠を裁判所がそれぞれ調べた上で争えない事実を確定していき、最終的に肉体関係の有無を判断することになります。相手方が肉体関係をいくら否定していても、例えば相手方が他の異性とラブホテルに入ったところの写真と、数時間以上して一緒に出てくるところの写真があるという場合を考えると、「相手方が他の異性と一緒にラブホテルに入り数時間経って出てきた=ラブホテルに数時間滞在していた」というのは争えない事実だということになります。ラブホテルは通常性行為をするための場所ですから、「ラブホテルには入ったが、カラオケをしただけ」というように相手方が弁解しても、肉体関係が認められる可能性は高いでしょう。そうすると、「不貞な行為があったとき」という離婚原因がある=裁判離婚が認められる可能性が大きいということになります。 ・肉体関係を伺わせる物的証拠がない場合は?他方、このような証拠は何もないという場合、当事者尋問や証人尋問で、当事者や他の第三者から事情を法廷で聞くという手続きを取ることになります。もし仮に「相手方が他の異性とラブホテルに入るのを見た」「数時間して出てくるところも見た」という証人の証言があり、そしてそれが信用できるものだと判断されれば、「相手方が他の異性とラブホテルに入って、数時間過ごしていた」というのが事実だと認定され、結果として肉体関係が認められる可能性もあるでしょう。とはいえ、そのような証言が得られ、かつそれが信用できると判断される可能性は一般論としてそれほど高くないと思われますので、その場合には肉体関係が認められる可能性は低いと思われます。そして肉体関係が認められないとなると、「不貞な行為があったとき」という離婚原因はない、ということになります。したがって、食事や遊びだけだったというだけでは、離婚は認められない可能性が大きいといえるでしょう。もっとも、この場合でも、相手方とその異性とが常識外れに親密・濃密な交際を続けてきているということについて立証できるのであれば、その他夫婦関係の実情など諸般の事情も考慮して、「婚姻関係を継続し難い重大な事由」があると判断される=裁判離婚が認められるという可能性はありえるでしょう。 離婚訴訟では証拠の有無が極めて重要になりますので、話し合いでの離婚がまとまらない可能性があるのなら、証拠を集めるための努力を惜しまないことです。 ※1:民法770条1項1号※2:民法770条1項5号*著者:弁護士 近藤美香(秋葉原よすが法律事務所。家事事件を専門的に取り扱い、500件以上の家事事件を取り扱った経験を持つ。JADP認定の夫婦カウンセラーの資格を保持している。)【画像】イメージです*つむぎ / PIXTA(ピクスタ)
2017年11月10日*画像はイメージです:電車に乗っていて、誰のものかわからない財布が座席に落ちていた。その場合、多くの人々は車掌や降りた駅の駅員に届けることでしょう。しかし、中には自分の中で「悪魔」が登場し、その財布を持ち去ってしまう人もいるかもしれません。そのようなことは、当然犯罪になります。このようなことをした場合、一体どのような罪に問われる可能性があるのか。パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に解説していただきました。 ■電車内にあった財布を盗むとどんな罪になる?「電車内にあった財布を拾って自分のものにしたという場合には、「窃盗罪」(刑法235条。10年以下の懲役または50万円以下の罰金)、または「遺失物(占有離脱物)横領罪」(刑法254条。1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料)の成否が問題になります。窃盗罪と遺失物等横領罪、この2つの犯罪の違いは、勝手に自分のものにした他人の所有物(今回のケースでは財布)が、第三者(所有者とは限らない)の占有下にあったかどうかによって決まります。つまり、その所有物が第三者の占有下にあった場合は窃盗罪となり、誰の占有下にもなかった場合は遺失物横領罪となります。今回のケースでいうと、電車の座席に財布があり、所有者と思われる人が近くにいない(既に下車してしまった)といった状況であれば、その財布を占有下においている人が誰もいないので、勝手に自分のものにすれば「遺失物横領罪」が成立することになるでしょう。ちなみに、かなり古い判例ですが、大審院大正15年11月2日判決・大刑集5巻491頁は、列車内に乗客が置き忘れていった物(毛布1枚)につき、(列車内にあるからといって)乗務鉄道係員がそれを占有しているということにはならないから、それを自分のものにした被告人の行為は(窃盗罪ではなく)「遺失物横領罪」にあたるというべき、と判示しています」(櫻町弁護士) ■ケースによって微妙なものも存在なお、「誰かの占有下にあったかどうか」の判断は、ケースによって微妙なものもあります。まずは、バス待ちの行列に並んでいた人が、近くにあった台の上に写真機を置いたのを忘れ、行列が進むに従って写真機から離れていってしまい、置き忘れに気づいて引き返したときには、写真機は既に持ち去られていたというケースを紹介します。このケースでは、行列が動き始めてから引き返すまでの時間が約5分にすぎず、置き忘れた場所と引き返した地点との距離も20m弱にすぎなかったといった事情から、写真機はいまだ持主の占有下にあったとして、窃盗罪の成立が認められました(最高裁判所昭和32年11月8日判決・刑集11巻12号3061頁)。一方、スーパーマーケットの6階エスカレーター脇に設定されていたベンチ上に札入れを置き忘れ、そのまま地下1階食料品売場まで行き、約10分後に思い出して札入れを取りに戻ったが、既に札入れは持ち去られていたというケースでは別の判決が下されています。「公衆の自由に出入りできる開店中のスーパーマーケットの6階のベンチの上に本件札入れを置き忘れたままその場を立ち去って地下1階に移動してしまい、付近には手荷物らしき物もなく、本件札入れだけが約10分間も右ベンチ上に放置された状態にあった」といった事情から、札入れは既に持主の占有下にはなかったとして、遺失物横領罪の成立が認められています(東京高等裁判所平成3年4月1日判決・判時 1400号128頁)。いずれにしても、他人が置き忘れたような物を見つけたら、きちんと届けることが大切ですね」(櫻町弁護士) 財布が落ちている状況などによって、問われる罪が変わるそうです。とはいえ、いずれの場合も犯罪であることには変わりありません。財布に限らず物が落ちていたら近くの駅員や交番に届けましょう。 *取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Andrei Korzhyts / Shutterstock
2017年11月06日*画像はイメージです:高速道路での煽り運転は、全国で数件発生が報告されているほか、Twitterなどでは「自分もやられたことがある」と被害を訴える声が少なくありません。仮にそのようなことを受けた場合、どのように対処すれば良いのか。また、相手を煽り運転の被害を警察に訴える場合はどうすれば良いのか。弁護士の目線から、どのように対処すれば良いのか、エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に解説して頂きました。 ■煽り運転にも様々な種類がある「“煽り運転”と一言で表現しても、その態様には、進路妨害、幅寄せ、クラクション、パッシング、異常接近、追い回しなど、様々な態様のものがあります。そして、その中でも、刑事罰の対象になるものとならないものがあるので、刑事罰の対象となるものに関して解説しようと思います。まず、道路交通法上、煽り運転そのものを処罰するものとして、道路交通法において、急ブレーキの禁止(24条)車間距離の不保持(26条)無理な進路変更(26条の2第2項)駐停車禁止場所における停車(44条)不必要なクラクション(54条2項)高速道路上における停車(75条の8第1項)が規定されています。以下、各行為の罰則をまとめると、・危険を回避する必要がないにもかかわらず急ブレーキをした場合には、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金(119条1項1号の3)・車間距離を保持しなかった場合には、高速道路の場合には3月以下の懲役又は5万円以下の罰金(119条1項1号の4)、それ以外の場合には5万円以下の罰金(120条1項2号)・無理な進路変更をした場合には、5万円以下の罰金(120条1項2号)・高速道路以外の駐停車禁止場所における停車をした場合には、15万円以下の罰金(119条の2第1号)・不必要なクラクションを鳴らした場合には、2万円以下の罰金又は科料(121条1項6号)・高速道路上における停車をした場合には、15万円以下の罰金(119条の2第1項2号)となっています。また、幅寄せ行為については、暴行罪(刑法208条)に当たるとした裁判例もあります。(※1)さらに、「人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」をして、人を負傷させた場合には15年以下の懲役。人を死亡させた場合には、1年以上の有期懲役が科されることになります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条4号危険運転致死傷罪)。これら煽り行為をされたことを証明するためには、ドライブレコーダーなどによって動画を残しておくことが一番有力だと思われます。ただし、運転者が運転しながらスマートフォンなどによって録画をするのは、事故を起こす危険があり、運転者の遵守事項(道路交通法71条5号の5)に違反する危険性もありますので、自動車の運転中には、運転者は動画を撮らないようにしましょう」(大達弁護士) ■窓を開けずドアロックをして身を守るでは、煽り運転や煽り行為をされたときには、どのように対処したらいいのでしょうか?「煽り行為をされた場合には、まず自身の身を守るようにしてください。煽り運転者は先に行かせるか、進路妨害をされたら減速して安全な場所に停車した上で、扉を開けられないようにしっかりドアロックをかけ、煽り運転者から求められても窓も決して開けず、速やかに110番をして警察に連絡しましょう。自動車は便利な乗り物ですが、一歩間違えば凶器となりかねません。煽り運転をしないことはもちろん、されたとしても冷静に対応し、充実したカーライフを楽しんでくださいね」(大達弁護士) ドライブレコーダーを用意し録画すること、危険が発生した場合はドアロックで外に出ず、速やかに通報。これが有効ということですね。 ※1:東京高等裁判所昭和50年4月15日判決など*取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*TTstudio / Shutterstock
2017年11月03日*画像はイメージです:婚約後に相手の嫌なところが見えてきて婚約を取り消したくなるケースもあるかと思います。たとえば相手に多額の借金があった場合、婚約を取り消したいと考える人もいることでしょう。今回は上記の場合に婚約を取り消せるのか、また、婚約の定義や婚約取り消しに伴う損害賠償について解説してみたいと思います。 ■婚約とは何か実は、民法上では婚約とは何か、また、何をすれば婚約になるのかという規定は定められていません。しかし、法律学上は、将来適法な婚姻をしようという男女間の約束のことをいう、といわれています。たとえば「同棲はするが婚姻届は出さないでいよう」という約束や、あるいは同性間の約束は、婚約にはあたりません。もちろん、そのような二人の間で何らかの契約が成立していると考える余地は十分ありえますが、伝統的な法律学は、その状態を「婚約」という言葉では表現していないのです。法律学の理屈上は、男女二人が自分自身の真意に基づいて上記の約束をすれば、それだけで婚約は成立することになります。契約書にしたり仮祝言などの儀式を行ったりしなければならないというわけではありません。とはいえ、婚約が一方的に破棄されてしまった場合にこのような外形的な事実が全くないとなると、裁判官に「そもそも婚約が成立したとは言えない」と判断されてしまう可能性もあります。理屈上のことはともかく実際には、ある程度の外形的事実がなければ婚約の事実を証明することができないために、婚姻は成立していないと判断される傾向にあります。 ■婚約成立後に別れることはできる?婚約が成立しているといえるときに、相手が多額の借金を背負っていると判明した場合には、別れることはできるのでしょうか?結論から言えば可能です。何故かというと、婚姻はあくまで純粋に自由な意思に基づいてなされるべきものですので、「一旦婚約したのだからその約束どおり婚姻しろ」と強制することはできないからです。あなたとしては相手方に婚約破棄を通告するだけで足り、それ以上特に何かをする必要はありません。 ■損害賠償についてなお、一般論としては、婚約破棄に正当な理由がない場合には、破棄された側に損害賠償を支払う義務が発生する場合はあります。しかし、具体的な状況にもよりますが、相手が多額の借金をしているという事実は婚約破棄の正当な理由にあたるといえる場合が多いと思われますので、その場合は損害賠償を支払う義務はないと考えられます。 ■婚姻後の場合だと異なってくるところで、多額の借金があると判明したのが婚姻した後だったという場合には、このように簡単に別れられるとは限りません。仮に相手方が話し合いの段階(=協議・調停)で離婚に応じてくれればよいですが、応じてくれない場合には、あなたが離婚訴訟を提起して裁判官に認めてもらわなければ離婚できないのです。一般的な話として、離婚訴訟では、離婚を求められる側に「離婚原因」がなければ、離婚を認めてもらうことができません。相手方の多額の借金が離婚原因にあたる可能性はあるのですが、借金がいくら以上なら離婚できる、いくら未満なら離婚できないという単純な話ではありません。それ以外にも様々な事情を総合して、たとえば相手方が怠惰な性格をしている、働く意思がない、生活能力がない、それ故に「婚姻関係を継続し難い重大な事由」がある、と裁判官が判断してくれれば、(相手方が拒否していても)裁判離婚が認められることになります。そのためには、離婚訴訟の中で、相手方の怠惰な性格などをあなたが立証(証拠をもって証明すること)していかなければなりません。相手方の多額の借金が判明した場合、そのことを理由とする婚約破棄は比較的容易ですが、離婚となると簡単にできるとは限りません。その点をよく踏まえたうえで、相手方との関係を今後どうしていくべきか、よく検討すべきでしょう。 *著者:弁護士 近藤美香(秋葉原よすが法律事務所。家事事件を専門的に取り扱い、500件以上の家事事件を取り扱った経験を持つ。JADP認定の夫婦カウンセラーの資格を保持している。)【画像】イメージです*kai / PIXTA(ピクスタ)
2017年11月02日*画像はイメージです:月17日、CD585枚を山中に廃棄したとして、福岡県内に住む30代の男性が逮捕されたことが判明。このような不法投棄は紛れもない犯罪ですが、罪の重さや定義などは、いまいちよくわからないのも事実。そこでピープルズ法律事務所の森川文人弁護士にお伺いしました。に、CD投棄事件と絡めて解説していただきました。 ■不法投棄の罪の重さは?「不法投棄は、“廃棄物の処理及び清掃に関する法律”により、不法投棄者は五年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金(法人の場合は三億円以下の罰金)に処せられる場合があります。ここで不法投棄とは、同法で定められた処分場以外の場所に廃棄物を投棄することです。もっとも、廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったものをいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべき、とされています。CDが、直ちに廃棄物に当たるか否かは、そのCDの状態等によって、ということにはなりますが、よほどの新品ではない限り、通常は廃棄物にあたるものと思います。そうでければ、不法投棄しないでしょう」(森川弁護士) 不法投棄者は個人の場合5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、法人の場合3億円以下の罰金に処される場合があるそうです。重罪ですね。不法投棄は絶対にしないようにしてください。 *取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*poosan / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月30日*画像はイメージです:夫婦は様々なことを共有するもので、隠し事などはないと思われがちですが、実際は色々とあるものではないでしょう。言いたくない「過去」や「嘘」など、好きであるがゆえの隠し事ならまだいいのですが、中には結婚前に知り合った愛人と続いているなど、許せないものもありますね。 ■ある夫婦の隠し事が話題に最近そんな「夫婦の隠し事」で話題になっているのが、ネット掲示板上のある女性の書き込み。夫が独身時代稼いだ300万円を元手に株式運用し1,500万円儲けるなどしていたようで、5,000万円口座にあることがわかったというのです。そして、夫は30万円を振り込んだのみで、生活費に回してくれないそう。掲示板ではこの妻が夫を「ケチ」と表現し、「外車に乗りたい」「タワーマンションに住みたい」などと書き込んだたため、「浪費したいだけだろ」などと猛批判を浴びています。しかし、本来夫の貯金が5,000万円規模ならば、財産分与してもいいのではないかとも思ってしまいます。一体法律上どうなっているのでしょうか?高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。 ■財産分与を主張することはできる?「離婚時に財産分与の対象となるのは、婚姻中に夫婦が得た財産です。婚姻中に得た財産については、夫婦共有財産と推定されることになります(民法762条2項)。これに対して、婚姻前から持っていた財産(独身時代の預貯金等)や結婚後であっても相続によって得た財産は、夫婦が協力して得た財産とはいえないため、「特有財産」となり、財産分与の対象とはなりません(民法762条1項)。夫が独身時代に稼いだお金は「特有財産」になります。そして、そのお金を使って、結婚後に株で大金を儲けていたとしても、元手が「特有財産」である以上は、それを運用して得たお金も「特有財産」であることは変わりがありません。そのため、夫が独身時代に稼いだお金を使って結婚後に株で大金を儲けたとしても、儲けたお金は財産分与の対象にはなりません」(理崎弁護士) ■結婚後の場合は?独身時代のお金を元手にしていれば財産分与の対象とはならないことがわかりました。では、結婚後である場合はどうなのでしょうか?高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に聞いてみると……。「結婚後に稼いだお金は、原則として夫婦共有財産となります。そのため、そのお金を元手にお金が増えた場合には、増えたお金についても、基本的には夫婦共有財産となり、離婚時の財産分与の対象となります。もっとも、毎月のお小遣いなど夫婦共同生活とは関係のないお金を運用して稼いだお金については、特有財産となり財産分与の対象とはなりません」(理崎弁護士) 夫婦だからすべてのお金を財産分与できるというわけではないようです。 *取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月28日危険性が叫ばれていながら、逮捕者が耐えない薬物事件。最近も二世タレントがホテルで使用したとして逮捕され、芸能界に衝撃が走りました。この事件については親の監督責任を指摘する声と、「もう成人なのだから親に責任はないのではないか」との意見で、賛否両論となっているよう。離れて暮らしている場合はともかく、同居の場合、責任は発生するのではないでしょうか?あすみ法律事務所の高野倉勇樹弁護士に見解を伺いました。Q.親と同居している息子が覚せい剤を使用…親が罪に問われることはある?*画像はイメージです:同居者が処罰されるのは「共犯」である場合に限られます。共犯とされる可能性がある場面はいくつかあるものの、相応の関与がなければ処罰されません。「覚せい剤は、所持、譲渡、譲り受け、使用などが禁止されています。覚せい剤を所持又は使用していた人の同居者は、所持・使用に関与していたのであれば、共犯として処罰されます。同居者が共同して覚せい剤を保管していたのであれば、“共謀”して“所持”していた共犯者として処罰されます。どの程度の関与があれば共謀があったといえるかは事件毎の事情によって異なります。覚せい剤が自宅に持ち込まれることを知ってあえて許可していた場合(保管場所を提供した場合)には、共謀して所持していたと認定され、処罰される可能性が高いと思われます。他方、保管されていることすら知らなかった場合には、共謀していないと認定され、処罰されることもないでしょう。また、“共謀”といえる程の関与はしていないとしても、覚せい剤の所持や使用を手助け(法律用語でいう“幇助”)したという程度に関与した場合には、共犯(幇助犯)として処罰されます。どの程度の手助けが“幇助”といえるのかは、やはり事件毎の事情によって異なります。覚せい剤を秘密裏に使うために便利な部屋(完全防音の地下室など)をあてがったという場合、それだけでは幇助とはいえません。その部屋が専ら覚せい剤を使用するために使われると認識していたような場合には、所持や使用の幇助が認められる可能性があります。裁判になれば、検察官は、同居者も覚せい剤があると知りながら保管していたことや保管場所・使用場所を提供していたことなどを立証する必要があります。その場合、同居者であることだけを立証して、“同居者なのだから、当然、保管されていることや使用されていることは知っていたはずだ”と主張するだけでは、共謀や幇助を立証できたことになりません」(高野倉弁護士) 親と同居していたとしても、共謀や幇助が立証されない限り、子どもの覚せい剤使用によって親が逮捕されることはないようですね。 *取材協力弁護士:高野倉勇樹(あすみ法律事務所。民事、刑事幅広く取り扱っているが、中でも高齢者・障害者関連、企業法務を得意分野とする)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月27日TwitterやFacebookを配偶者に隠れて使っているという人は、意外に多いのではないでしょうか。中には、夫や妻に直接言えない「悪口」を書いている人もいることでしょう。バレなければ大丈夫なのでしょうが、相手の目に触れる可能性は否定できません。仮にSNSに「悪口」を書かれている側がそれを発見した上、激怒し離婚を切り出した場合、正当な事由として認められるのでしょうか?法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士に、ご意見を伺いました。 Q.配偶者がSNSで悪口を書き込んでいるのを発見!離婚事由として認められる?*画像はイメージです:の書き込みだけでは難しいが、書き込みが原因で離婚協議がまとまれば離婚は可能「離婚事由は、以下の5つが法定されています。一配偶者に不貞な行為があったとき。二配偶者から悪意で遺棄されたとき。三配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。四配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。五その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。 本件のようなものは、5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかどうかという問題になりますが、5号に当たるかどうかは、もろもろの事情を総合して判断するため、当該SNSの書き込みだけを理由としてこれに当たるとすることは一般的には難しいと思われます。もっとも、これが原因で離婚話になり、当事者間で離婚協議がまとまったということであれば、当然離婚は可能です」(清水弁護士) 書き込みだけでは正当な事由として認められることはありませんが、書かれた側が別れを切り出し、最終的に合意すれば離婚することは可能とのこと。SNSでの安易な「悪口」は注意が必要です。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月25日*画像はイメージです:日本の硬貨と韓国のウォン硬貨は、非常に似ています。最近も、イベントなどでわざとウォンを混ぜ、金額を誤魔化す事件も起こっているようです。韓国の通貨は日本では使えない(通用力がない)ものですから、使われる側にとっては迷惑なことでしょう。このように他国の通貨を円と誤魔化して不正に使用した場合、どのような罪になるのでしょうか?星野・長塚・木川法律事務所の木川雅博弁護士に、見解を伺いました。 ■外国の通貨を使用したら罪になる?「海外旅行で余った通貨を財布の中に入れっぱなしにしていた等の理由により、お店でうっかり外国の通貨で支払いそうになったことがあるかもしれません。少し昔には、変造された500ウォンを500円玉の代わりに自動販売機で用いられたという事件もありました。このようにうっかりまたはわざと違う国の通貨で支払いをした場合、罪に問われてしまうのかについて簡単に解説したいと思います」(木川弁護士) ■わざと外国の通貨で支払ったときは犯罪が成立「刑法をはじめとする刑罰法令は故意犯が原則で、特別規定がなければ過失犯は罪に問われません。以下で述べる取締法規において過失犯を処罰する規定はありませんので、うっかり(過失)ではなくわざと(故意)外国の通貨で支払いをしたときは犯罪が成立することがあります。例えば、スーパーや飲食店において日本円と外国通貨を間違わせる方法で商品・サービスの提供を受ければ詐欺罪が成立しますし、上記の変造500ウォンを500円の代わりに自動販売機で用いたように機械の誤作動により利益を得た場合は窃盗罪が成立します なお、故意に外国の通貨で支払いをした場合に限りませんが、偽札や通貨偽造などを規制する法律は刑法のほかにも、・通貨及証券模造取締法(通貨の模造品製造を規制)・紙幣類似証券取締法(紙幣類似の機能を有するものの発行規制)・すき入紙製造取締法(すかしの入った紙の製造規制)・外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造二関スル法律(偽造外国通貨流通行為等の規制)があります。中には初めて知る法律もあるかもしれませんね」(木川弁護士) ■外国通貨での支払いが許される場合「大手量販店、ホテル、外国人旅行者の多い地域の商店街などでは、外国通貨での支払いができます。また、クレジットカード決済の際に、日本円で支払うか外国通貨で支払うかを選べることもあります。もちろん、このように外国通貨での支払いができる場合であっても、日本円で支払うと言ったのに誤って外国通貨での決済とされてしまったような相手に過失がある場合を除いては、為替レートによる差損の返金要求はできません。ウェブ決済やビットコイン等の仮装通貨の流通に伴い、現在では必ずしも日本円で買い物をすることが必須ではなくなっています。それに伴い、通貨に関する犯罪は、現金の偽造やつり銭詐欺という単純なものではなく、投資話・投資スキームに関する高度なものになってきていますので、皆さんは巻き込まれたり騙されたりしないように注意してくださいね」(木川弁護士) 「故意に」外国の通貨を使用した場合は、罪に問われることがあるようです。「うっかり」の場合は罪にならないとはいえ、無用なトラブルに巻き込まれないよう気をつけたいですね。 *取材協力弁護士:木川雅博 (星野・長塚・木川法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野・長塚・木川法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています) 【画像】イメージです* Marian Weyo / Shutterstock
2017年10月24日*画像はイメージです:以前の記事では、離婚において必要な情報は、8つのポイントしかないことをお話しました。第1のポイントでは、離婚を切り出された際には、「パワーバランスを見極めることが大事!」というお話をしました。本日は、第2のポイント、子連れ離婚を上手に乗り切るためには、「裁判所の判断ポイントを知るべし」というお話です。未成年者の子どもがいる離婚のケースでは、「親権者」を夫婦のどちらか一方と定めない限り、離婚することは出来ません。未成年者の子がいる夫婦にとっては、親権者を定める問題は、最も重要で最も争いが激しい問題であります。 ■まずは話し合いから始まるまずは、夫婦間でのお話し合いを経て、無事に親権者を定めることが出来れば、離婚届に誰が親権者となるか、記入をして、提出をすれば、OKです。ただ、お話し合いで決着がつかない場合には、裁判所に親権者を決めてもらうことになります。親権のご相談でよく耳にするのが、「私は専業主婦ですから、経済力がありません。親権者にはなれないのでしょうか?」という質問です。その質問に対して、私は「経済力で親権者は決まりませんので、安心してください」と申し上げております。経済力は、親権者を決定する上での1項目に過ぎず、経済力がないというだけで親権者になれないということはありません。なぜならば、経済力は、相手方からの養育費や公的扶助で補うことが出来ると考えられているからです。 ■裁判所では親権者をどのように決めるかそれでは、裁判所はどのような観点から親権者を決めるのでしょうか。それは、「子どもの利益」「子どもの福祉」を重要視しています。具体的には、父親、母親双方の事情(監護に対する意欲や能力、健康状態、子への愛情、居住環境、監護補助者の有無など)や、子の事情(年齢、性別、兄弟姉妹関係、発育状況、健康状況、現在の環境、新しい環境、子自身の意向など)から総合的に判断されます。つまり、裁判所は、1つの項目のみを取り上げ、重視をして、親権者の判断をするのではありません総合的に考慮して、「子どもの利益」「子どもの福祉」の観点から、夫婦のどちらを親権者と定めるのがいいのかを判断する、というわけです。ですから、「私は不倫をしているのですが、親権者にはなれないのでしょうか?」という相談を受けることもありますが、不倫をした母親であっても、それのみをもって、親権者になれないというわけではありません。 ■中でも重視されているルールがあるまた、継続性の原則(現状尊重の原則)といって、特に問題が発生していない限りは、現在監護をしている親が引き続き監護を続けるべきという考え方があります。これは、まさに「子の利益」「子の福祉」の観点から、他の基準よりも重視されていると考えられています。この原則に従えば、子を現実に監護をしている親が親権者の指定を受けやすい、ということになります。とはいえ、実力行使をして子を奪い取ったケースでは、親権者を決める上でマイナスに働くことはいうまでもありません。 以上のとおり、親権者は、父親母親の事情と子の事情を総合考慮の上決定されます。考慮事項はたくさんありますが、ポイントは「子の利益」「子の福祉」です。あくまでも子の健全な育成にとってどちらの親が親権者として適切か、ということを頭に置いていただきたいと思います。 *著者:石橋千明(丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士。男女問題、離婚問題に精通。依頼者の方々や法曹の皆様に信頼していただける弁護士になるべく、日々研鑽に努める所存です。)【画像】イメージです*tomwang / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月23日*画像はイメージです:昨今、首都圏では「上野東京ライン」や「東急東横線」「西武池袋線」など、複数路線の直通化によって、列車の運転見合わせが増加したといわれています。神奈川県を走っている電車に乗っているにもかかわらず、栃木県内で発生した人身事故によって電車が止まるということも多々発生しており、乗客からは「これなら直通化しないほうが良かった」という声もでているようです。 ■勝手にドアコックを操作し降りるケースも電車に乗っているときに運転見合わせとなった場合、ほとんどの人が車内で運転再開を待っていることと思います。しかし、一部には電車内の非常ドアコックを操作し、勝手に線路に降りてしまう人もいるよう。車掌が車内アナウンスで絶対に線路に降りないよう促しているのですが、聞かない人間も残念ながら存在しています。このような場合、静止を無視して線路に降りた乗客は罪に問われないのでしょうか?星野・長塚・木川法律事務所の星野宏明弁護士にお話を伺いました。 ■電車運転見合わせ時に線路に降りたらどうなる?「線路への立ち入り行為は、たとえ運転見合わせ時であっても、勝手に自己判断で線路に立ち入ると鉄道営業法37条の「停車場其の他鉄道地内に妄に立入りたる者は十円以下の科料に処す」との規定違反することになります。火災が発生しているなど電車内にとどまっていては身体への危険がある場合を除き、無断立ち入りは、鉄道営業法違反となります。さらに、新幹線の敷地内へ立ち入った場合には、新幹線特例法3条2項違反となり、1年以下の懲役または5万円以下の罰金となります。また、線路に立ち入るだけではなく、設備を破壊するなど、列車の運行に支障をもたらすような行為をした場合は、刑法上の往来危険罪(2年以上の懲役)、過失往来危険罪(30万円以下の罰金)とされる可能性もあります。いずれにしても、重大な刑事責任に問われるおそれがあります」(星野弁護士) 「勝手に線路に降りる」行為は、重大な刑事責任に問われる恐れがあるとのこと。焦る気持ちがあっても、線路に降りないようにしてください。 *取材協力弁護士:星野宏明(星野・長塚・木川法律事務所(旧星野法律事務所)。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)【画像】イメージです*Scanrail / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月22日*画像はイメージです:昨今、電車の窓ガラスが割れる事故が頻発しています。9月21日には、午前9時にJR東海道線の川崎~品川間で、そして午後1時半頃には東急東横線菊名~妙蓮寺間で窓ガラスが割れる事故が発生しました。幸いけが人などは出なかったようですが、かなりのスピードを出す乗り物であるうえ、電車がすれ違った場合かなりの風圧が発生することから、乗客が危険な状況にさらされることは間違いありません。仮に電車の窓ガラスが割れ、乗客が負傷した場合、責任は誰が取るのでしょうか。治療費の請求などが可能であるかも気になります。エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解をお伺いしました。 ■電車の窓ガラスが割れ負傷した場合誰が責任を取る?「満員電車の窓が割れると一口に言っても様々な原因が考えられると思いますので、次のとおり場合分けしてみましょう。(1)満員電車に詰め込まれた乗客の圧力によって割れた場合(2)線路の敷石が跳ね上げられて割れた場合(3)投石など第三者の行為によって割れた場合今回は(1)(2)(3)のそれぞれについて解説してみたいと思います。まず、旅客運送に関しては、商法は590条1項で、次のように定めています。「旅客ノ運送人ハ自己又ハ其使用人カ運送ニ関シ注意ヲ怠ラサリシコトヲ証明スルニ非サレハ旅客カ運送ノ為メニ受ケタル損害ヲ賠償スル責ヲ免ルルコトヲ得ス」これは、鉄道などの旅客運送において乗客が損害を負った際には、旅客運送上の注意を怠っていなかったことを旅客運送会社自身が証明しない限り、その会社が損害賠償責任を負うとするもので、今回のケースでは、いずれの場合においても、鉄道会社が注意を怠ったかどうかがポイントとなります。以下、この前提を基に(1)、(2)、(3)について考えてみます。 ■(1)満員電車に詰め込まれた乗客の圧力によって割れた場合まず、通常想定しうる乗車数を超えているにも関わらず、駅員や乗務員等が乗車規制などの措置をとらなかったため、電車の窓ガラスが車内からの乗客による圧力に耐えられず割れてしまい乗客が怪我をしたというような場合についてです。また、整備不良等によって窓ガラスに欠陥が生じており、それに満員電車の乗客による圧力が加わったことによって窓ガラスが割れ、乗客が怪我をしたような場合には、鉄道会社が旅客の運送に関し注意を怠っていたといえそうなので、鉄道会社は損害賠償責任を負うことになると思われます。 ■(2)線路の敷石が跳ね上げられて割れた場合次に、敷石が跳ね上げられることにつき、相当の注意をしていたとしても跳ね上げられる危険のある敷石を発見できなかったというような場合についてです。これは、例えば、電車が通る直前にカラス等のいたずらによって線路上に置石がされた場合などのような不可抗力的な場合でない限りは、そのような危険を排除するという旅客運送上の注意を怠るものとして、鉄道会社は損害賠償責任を負う可能性が高そうです。 ■(3)投石など第三者の行為によって割れた場合最後に第三者の故意による違法行為が原因で窓ガラスが割れたような場合についてです。原則として、その行為をした者が民法709条に基づく損害賠償責任を負うこととなり、旅客運送事業者が責任を問われることにはならなさそうです。ただし、その行為が行われることが予見できたのにこれを防止しなかったなどの事情、具体的には線路に侵入防止のフェンスを設置しなかったとか、線路のすぐ脇で投石を伴う騒動が生じている状況を知りながら、何らの措置も取らずに通常運行したことにより投石事故が生じたような場合には、鉄道会社は旅客運送上の注意を怠ったものとして、損害賠償責任を負う可能性もあると思われます。毎日お世話になる人も多いであろう電車。満員電車には様々なトラブルがつきものですが、譲り合いの精神で環境は大幅に変わりますので、乗車時には時間にも心にも余裕をもって利用したいものですね」(大達弁護士) 鉄道会社が旅客運送上の注意を怠ったことにより窓ガラスが割れたと認められた場合は、損害賠償責任を負う場合があるようです。 *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*R-DESIGN / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月19日*画像はイメージです:ある大学の名誉教授が日本語ワープロ検定の試験問題を事前に受検者に漏洩していたとの報道がありました。問題の漏洩や受験者のカンニングなどはしばしば発覚しますが、法的にはどういった問題点があるのか解説してみたいと思います。 ■問題漏洩にはどんな法的問題があるのかまず、今回の日本語ワープロ検定試験を主催しているのは同試験の検定協会である民間の機関です。これを前提として、試験問題の漏洩によりどのような被害が誰に生じているかについて考える必要があります。本件の漏洩行為により被害を被っているのは、この日本語ワープロ検定試験を実施している検定協会自体です。一般的に検定試験は、合格者に一定の能力を有することが保証されることに社会的意義が認められます。しかし、試験問題の漏洩行為が行われることにより、試験が有する適正な審査基準という機能が失われ、試験の信用性や社会的価値が損なわれることになります。その結果、検定試験の受験者が減少し、これを主催者の事業活動に支障をきたす場合があります。このような、人や法人の業務を妨害する行為について、刑法は、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて人の業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する(刑法233条後段)」と定めています(業務妨害罪)。特に本件では、偽計を用いて業務を妨害したとして、偽計業務妨害罪(刑法233条後段)が成立します。 ■偽計業務妨害罪とは偽計業務妨害罪について詳しく触れてみたいと思います。まず、この「偽計を用い」るとは、人を欺き誘惑し、または他人の無知や錯誤を利用することを指します。「偽計」というためには、他人の適正な判断又は業務の円滑な実施を誤らせるに足りる程度の手段、方法であることを要します。一般的な例としては、メーカーの販売する商品の品質について事実とは異なる誹謗中傷を行ったり、また会社へ繰り返し迷惑電話をかける行為などが挙げられます。今回の行為も、試験が行われる前に試験問題を漏洩することによって、試験の実施という業務の円滑な遂行を妨げているため、この「偽計」行為に当たります。また、試験問題を漏洩した者は、必ずしも試験主催者の業務を妨害してやろうという意思で漏洩行為を行ったわけではなく、生徒や受験者を合格させたいという気持ちでこのような行為に出たのかもしれませんが、行為の結果業務が妨害されることを認識していたのであれば、やはり本罪は成立します(「未必の故意」といいます)。 ■漏洩した試験問題により違いはあるのか次に、漏洩した試験問題を主催する機関の性質によって成立する犯罪が異なってきます。例えば、国家公務員法では「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」(法第100条第1項)と定めているところ、漏洩した者が国家公務員であるような場合は、この守秘義務違反行為を行ったとして、国家公務員法違反が成立します。また、例えば医療に関する資格試験などについては、医師法や歯科医師法で情報漏洩行為を罰する規定が定められており、試験委員等が受験者に試験情報を漏洩した場合にはこれらの規定が適用されることになります。なお、情報漏洩に伴う行為として、試験問題を管理している場所から問題用紙や解答を権限なく勝手に持ち去ったりするなどの行為については、建造物侵入罪(刑法130条)や窃盗罪(235条)等により、当然に処罰されます。 *著者:弁護士 渡部孝至(弁護士法人はるかぜ法律事務所代表弁護士。『身近な弁護士』をモットーに、ご依頼者様の目線で親切・丁寧・迅速な対応を行い、リーズナブルなご費用で良質なサービスを提供することを使命としている。)【画像】イメージです*kou / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月17日ときおり「誤認逮捕だった」との報道を見聞きしたことはありませんか?誤認逮捕はあってはいけないものですが、稀に発生しているのも事実であるようで、一般市民としては、少々怖さを感じてしまいます。誤認であることが確定した場合、補償などを受けることができるはずですが、意外とこの種のことは知られていないように思います。補償を受けることは可能なのか?また、どのような法律で定められているのでしょうか? Q.誤認逮捕が確定した被疑者は補償を受けることができる?*画像はイメージです:被疑者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があるときは、被疑者補償規定(法務省訓令)に基づき、補償が得られることがあります。被疑者補償規程(法務省訓令)の第3条に「補償は,抑留又は拘禁の日に応じ,1日1,000円以上12,500円以下の割合による額の補償金を本人に交付して行う。2. 本人が死亡した場合において,必要があるときは,相続人その他適当と認める者に補償金を交付することができる」とあり、1日あたりの値段が決まっています。また、具体的な金額についですが、こちらは第4条の2に「 補償金の額を定めるには,拘束の種類及びその期間の長短並びに本人が受けた財産上の損失,得るはずであつた利益の喪失及び精神上の苦痛その他一切の事情を考慮しなければならない」とあり、拘束の種類・期間の長短・財産上の損失、得るはずだった利益、精神上の苦痛などを考慮したうえで、金額が決定されます。以上のように被害者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由がある場合は、被疑者補償規程に基づき、補償が得られることがある、ということになります。もちろん補償を受けたとしても、突然仕事を休むなどすれば場合によっては会社を解雇されるなどして社会的信用を失ってしまう可能性も否定できません。警察には、このようなことがないようお願いしたいものです。 *取材協力弁護士:河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動をしており、弁護士生活7年目を迎える。敷居の低い気軽に相談できる弁護士を目指している。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月16日*画像はイメージです:月28日兵庫県の中学校に勤める男性教諭が、卒業生の女性に対し「デートしたい」などとLINEメッセージを送っていたことが報じられています。教諭は9月26日付で訓告処分となったようですが、以前にもトラブルになっており、ネットからは「退職させるべきではないか」「教師に向いていない」という厳しい声もでているようです。一方で「卒業生ならば良いのではないか」「教師と生徒・元生徒という立場でも、お互いが恋愛感情を持っていれば恋愛しても良いのではないか」という同情的な意見もあがっています。今回の件のような教師と生徒、元生徒とデート、恋愛をするようなことは法律的に許されるのでしょうか?ともえ法律事務所の寺林智栄弁護士に見解をお伺いしました。 ■教師と生徒・元生徒の恋愛は許されるのか?「兵庫県で、40代の中学校の教師が10代の女性卒業生に対して『ちゅ~してしまうかも』、『デートしたい』などとLINEを送ったことにより、訓告処分を受けたことが話題になっています。卒業生なのであれば、もう先生と生徒という関係にはありません。そのため、この教師が訓告処分を受けたことに対して疑問の声も上がっているようです。先生と生徒、元生徒との恋愛は許されないのでしょうか。今回はこの点について考えてみます」(寺林弁護士) ■青少年保護育成条例への抵触「18歳未満の女性に対する性的な行為はほとんどの自治体で青少年保護育成条例によって禁止されています。真摯な交際であれば許されるという例外もありますが、実際のところ、そうみなされるケースは非常に少なく、先生と生徒、元生徒(18歳未満)との恋愛で性的な関係があれば、この条例に反するとされ刑罰の対象となるでしょう」(寺林弁護士) ■今回の件について「今回の件については、“元教師”という権威的立場を利用して、性的発言を元生徒に行った点がセクハラに類似する“性的嫌がらせ”とみなされたのではないでしょうか。もう卒業している学校とはいえ、自分の兄弟が通学している場合などには、自分の対応いかんで何らかの不利益を被ることも想定されます。そのような状況ではなくても、これがどんどんエスカレートして、例えばストーカー行為に及んだりわいせつ画像を撮らせるよう懇願するような危険性があったのかもしれません。実際、この男性教諭は以前にもトラブルがあり、この件も踏まえたうえで自覚が足りないと訓告処分が科されたのではないかと思います」(寺林弁護士) ■結局のところ先生と生徒の恋愛は許されるのか「許されることがあるとすれば、対等な立場で性的な関係を一切伴わない「純愛」しかありえないものと思われます」(寺林弁護士)性的関係を伴う場合、その立場上周囲の理解を得ることは難しいようですね。 *取材協力弁護士:寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Christo / Shutterstock
2017年10月14日*画像はイメージです:手品用のコインとして使用するために硬貨を偽造し、販売をしていた男性が逮捕されるという出来事があったようです。購入者も相当数いたため100万円ほどの売上があったとの報道がされていますが、どういった犯罪になるのか、解説してみたいと思います。 ■どんな罪になるのか本件の場合は、貨幣損傷等取締法違反に該当しますが、これは、硬貨を損傷したり、鋳つぶしたり、損傷したり鋳つぶすために集めたりした場合に成立する犯罪です。貨幣に対する社会的信用を保護するために犯罪とされています。貨幣損傷等取締法違反に当たる場合、1年以下の懲役または20万円以下の罰金で処罰される可能性があります。 ■購入をした人への罰則はない損傷された貨幣・鋳つぶされた貨幣を購入した人に罰則はありません。貨幣損傷等取締法が購入者を処罰する規定を置いていないことからすると購入者を処罰しない趣旨だと考えられるからです。 ■貨幣の偽造とはどんな違いが?今回の件とは異なりますが、貨幣の偽造についても触れてみたいと思います。貨幣の偽造は、貨幣に酷似したものを作り出す行為です。本物の貨幣として使用する目的で貨幣を偽造した場合、通貨偽造罪として無期または3年以上の懲役で処罰される可能性があります。通貨偽造罪も通貨(貨幣含む)に対する社会的信用を保護するために犯罪とされています。しかし、本物の貨幣として使用する目的で貨幣を偽造した場合の方が、本物の貨幣を損傷した場合よりも通貨に対する社会的信用の侵害の程度がはるかに大きいため重く処罰されるわけです。 *著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月12日業務を遂行する上で必要な費用、「経費」。会社員の場合、出張の交通費や客先との接待費、文房具などの購入費用などが、それに該当します。通常、経理担当者などが経費として適切であるかを判断するため、不正が疑われるようなことはできないと思いますが、中には私的な会食であるにもかかわらず、「接待」として経費で落とすケースがあるようです。また、上手く経理担当の目を誤魔化そうと工作し、経費として金銭を受け取ることもあるのだとか。このようなことを繰り返す人間については、それ相応の罪に問いたいところ。そのようなことは可能なのか。法律事務所あすかの冨本和男弁護士にお伺いしました。 Q.私用な支出を経費で会社に請求…罪に問うことはできますか?*画像はイメージです:詐欺罪が成立する可能性があります「結論からいうと、詐欺罪になります。詐欺罪は、人を欺いて財物を交付させ、その占有を取得した場合に成立します。相手を“だます”という手段によって、相手を“誤信”させ、相手に財物を“交付”させた場合に成立するわけです。その会社員は、会社からお金をだまし取ろうと思って、会社の経理担当者に対し、私用で使ったお金であり本来会社に請求できないにもかかわらず、接待であったと装って経費の精算を請求し、経理担当者に経費の精算だと誤信させ、お金を支払わせており、詐欺罪が成立するわけです」(冨本弁護士) 経費のごまかしは詐欺罪。絶対に行わないでください。 *取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*jazzman / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月10日*画像はイメージです:ある日、家に帰ってみたら妻が荷物を持っていなくなっていた。また、旦那が行方をくらまし、連絡が取れなくなってしまった。そのようなケースを一般的に「蒸発」と呼びます。蒸発が発生してしまった場合、「された側」は途方に暮れてしまいます。離婚しようにも連絡がとれませんし、慰謝料や養育費の交渉もできません。パートナーに蒸発されてしまった場合、どのようにして離婚や慰謝料請求を行えばいいのでしょうか?高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。 ■蒸発されてしまった場合どうやって離婚の手続きをとる?「妻が突然家を出て行ったということだけでは離婚事由としては認められません。離婚事由として認められるためには、「悪意の遺棄」と言えるとき(民法770条1項2号)、妻の生死が3年以上明らかではないとき(同項3号)、別居が5年以上続いており、それ以外の事情からも婚姻を継続し難い重大な事由ありと認められるとき(同項5号)です。なお、“悪意の遺棄”とは、婚姻関係の破たんを目論んで正当な理由なく別居する場合などです。妻の居場所や連絡先が分からない場合には離婚協議をすることは出来ませんが、最終的には「公示送達」という方法によって、裁判上離婚をすることが出来ます。妻が子どもを置いて出て行ったような場合には、妻は親権者としてふさわしくないことは明らかなので、夫が親権者に指定される可能性は極めて高いでしょう。養育費については、仮に裁判所によって具体的な金額を決めてもらったとしても、妻の居場所も連絡先も分からない以上は、養育費を妻から支払ってもらうことは事実上不可能でしょう」(理崎弁護士)「悪意の遺棄」が認められた場合は、「公示送達」という方法で裁判上離婚することができるそうです。ただし養育費については、居場所や連絡先がわからないので、裁判所で金額を決めても請求できないとのこと。パートナーであっても、相手の動向をある程度注意する必要がありそうですね。 *取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】*polkadot / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月09日*画像はイメージです:結婚生活3年目のSさんは、専業主婦の妻と2人暮らし。幸せな生活を送っているようですが、ある悩みを抱えています。それは、妻が一切家事をしないということ。不倫など不貞をしているわけではないようですが、家事をやる気がないそうです。Sさんは1人暮らし時代が長く、家事を完璧にこなせるため、現在はすべてを引き受けていますが、仕事で疲れているときも家事を手伝ってくれないため、不満に思っており、離婚を考えています。しかし、「家事をやらない」というだけで、離婚できるのかどうかわからず、悩んでいるそう。そのようなことは可能なのか。離婚問題に精通した高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。 ■「家事をやらない」ことが理由で離婚できる?「まず、家事は夫婦が協力して分担するものなので、妻だけが家事をしなければならないわけではありません。夫だけが働いており、妻が専業主婦の場合には、必然的に妻がしなければならない家事の割合が大きくなるということです。妻が家事を全くしない場合に、離婚事由として認められるかどうかですが、そのことによって夫婦関係が修復不可能な程度に至っていれば、”婚姻を継続し難い重大な事由”(民法770条1項5号)ありとして離婚事由として認められる可能性はあります。具体的には、ゴミ出しをせずに家がゴミ屋敷状態になっているとか、十分な時間があるのに全く料理をしないとか、子どもの世話を全くしないといった状態が長期間かつ継続的であれば、婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性はあります」(理崎弁護士)家事をしないことで夫婦関係が修復不可能になってしまった場合は、離婚が認められることもあるようです。夫と妻が家事を分担し、お互いの負担を軽くするような関係を構築したいものですね。 *取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*yellow_rail / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月08日*画像はイメージです:昨今は企業が公式Twitterを設置するケースが増えています。これは日本人にTwitterが広く普及しているためで、有功なツールとして各社が重視していることに起因していると思われます。 ■炎上トラブルも多々発生有用性が認められている一方、炎上することも増えています。特に最近は企業アカウントがほかの企業のアカウントを差別化を図る意味で「ゆるさ」をウリにするアカウントが登場し、ツイートの内容が賛否両論となることが多く、場合によっては謝罪やアカウント停止の措置がとられることもあります。また、個人アカウントのつもりでツイートしたことが間違って企業アカウントで呟いてしまい、思わぬ波紋を広げたケースも。そうなると企業のイメージを損なうわけですから、担当者の処分も考えなければいけなくなるでしょう。しかし、Twitterの不適切発言だけで担当者を処分するのは、少々やりすぎのようにも思えます。実際のところどうなのでしょうか?法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士にご意見を伺いました。 ■企業Twitterの炎上で担当者を処分することはできる?「懲戒処分をするためにはそもそも懲戒について定めた就業規則があり、それに違反していることが必要です。就業規則があり、それに違反するような不適切な発言をしているということであれば、それを理由にして懲戒することは可能です。しかし、“ゆるさ”を許容するような状況があり、それの範囲を逸脱しているとまでいえないというような事情があれば、形式的に規則に反していてもそれだけで処分することは難しいと思われます」(清水弁護士) 就業規則や会社の状況などを総合的に見て、懲戒妥当であるか否かが決まるようです。判断できない場合は、弁護士に相談してみましょう。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月03日*画像はイメージです:野球はプロ・アマ問わず根強い人気がありますが、プレー中だけではなく、観戦中にもファウルボールが当たるなど、怪我のリスクは潜んでいます。硬式ボールは非常に硬く、失明といった重大な事故になっているケースもあるようです。このような野球場での硬式ボール衝突による事故は、プロ野球などで年に数件発生しているようですが、責任は誰に発生するのでしょうか?打った選手なのか、球団なのか、球場なのか。法律事務所あすかの冨本和男弁護士にお伺いしました。 ■打者の責任は?まず、打った張本人である打者に責任は発生するのでしょうか?「安全設備が整っていると考えられる球場で普通にプレーした結果ということであれば原則として責任は負わないと考えます。ただし、観客がグラウンドに立ち入っていたような場合、打球がその観客に当たって怪我をさせる危険性があるわけですから、そのことに気付いた打者としてはプレーをストップする義務があります。それにもかかわらず、打者がその義務に違反してプレーを継続し打球がその観客に当たった怪我をさせたような場合、生じた損害について責任(不法行為責任)を負うと考えます」(冨本弁護士) 普通にプレーしている場合には、打者に責任は発生しないようです。 ■球団運営会社の責任は?次に球団運営会社の責任はどうなるのでしょうか?「打者が上記の不法行為責任を負う場合、球団運営会社はその打者を使用していた者として責任(使用者責任)を負うと考えます。打者に責任がない場合でも、球団運営者に責任が生じることは考えられます。球団運営者は、観客との間で野球観戦契約を締結していると考えられますが、信義則上観客の安全に配慮する義務(安全配慮義務)を負います。球団運営者がこの義務に違反したことによって観客が怪我をした場合、球団運営者は観客に生じた損害について責任を負うと考えます。また、球団運営者は、球場所有者・管理者から球場を借りて占有しているといえます。球場の安全設備に欠陥があって事故が発生した場合、球団運営者は球場の占有者としての責任を負う可能性もあると考えます」(冨本弁護士) こちらは、責任を負う可能性があるようです。 ■球場管理者・球場所有者の責任最後に球場管理者・球場所有者の責任はどうでしょう?「球場管理者・球場所有者は、球場の安全設備に欠陥があって事故が発生した場合、球場の占有者・所有者としての責任を負うと考えます。実際に裁判になった事件として、平成22年8月21日、札幌ドームで日本ハム対西武戦を1塁側内野席で観戦していた女性がファウルボールの直撃を受けた事案があります。被害者は、試合を主催し札幌ドームを占有していた日本ハムファイターズ、指定管理者として札幌ドームを占有していた札幌ドーム、札幌ドームを所有していた札幌市に対し裁判を起こしていました。この事案において、被害女性は、プロ野球の試合に小学生を招待するという球団運営者の企画によって、座席を確保し観戦していました。札幌高裁は、札幌ドームの安全設備等に欠陥があったとは認められないが、球団運営者には、野球や野球観戦に不慣れな者に対して危険性の低い座席のみ選択できるようにするか、危険性の高い席と低い席があることを知らせる義務があったとし、それにもかかわらずそうしなかったとして球団運営者の責任を認めました(平成28年5月20日札幌高裁判決)」(冨本弁護士) 球場運営・管理者の場合は、実際に責任をとるよう求める判決が出ているようです。プロ野球などで使われている硬式ボールは非常に固く、打ちどころが悪く死に至った事例もあります。観戦の際には十分注意するようにしましょう。 *取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*104000 / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月01日*画像はイメージです:離婚する際に子どもがいれば多くのケースでは養育費を払うことになろうかと思います。場合によっては、今後一切の連絡を取りたくないといった理由から一括払いするケースもありますが、一括で貰った養育費を使い切ってしまった場合には追加で養育費を請求することが出来るのでしょうか?判例と併せて解説したいと思います。 ■養育費を追加(増額)請求できることがあるまず前提として、協議、調停や審判の形で養育費を一旦取り決めた場合であっても、家庭裁判所は、必要があると認めるときにはその取り決めを変更することができるとされています(民法766条3項、880条)。仮に相手方が追加請求に応じなくても、家庭裁判所に取り決めを変更してもらえるよう調停・審判を申し立てることができるわけです。一般論としていえば、養育費の額を取り決めた際に前提とされた事情に変更が発生し、養育費の増額が必要となったという場合には、増額請求をすることができます。もっとも、仮に事情の変更があったとしても、その事情変更が取り決め時に予見可能であった場合には増額は認められないとされています。いいかえれば、取り決め時に予見不可能であった事情変更が生じた場合に増額が認められることになります。ここでいう予見不可能な事情変更の典型例は、収入の減少、教育費の増額、子どもの病気といったものがあげられます。 ■ 養育費を一括で受け取っていても、追加請求できることも一括で支払った側の心情からすれば、“これを支払えば全て終わり”という気持ちになるのはある意味当然のことでしょう。しかし、受け取った側(子ども)からいえば、“いくら一括で受け取っていても、状況が変わり現に足りなくなってしまったのだから支払ってほしい”という状況になることもありえます。結論からいえば、仮に養育費を一括で受け取った場合であっても、追加で養育費を請求することが認められる可能性はあります。 ■ 追加請求を認めた審判例一括で受け取った後の追加請求を認めた審判例があります(東京家庭裁判所平成9年10月3日審判)。申立人と相手方が離婚する際に、子が成年に達するまでの養育費として1,000万円を申立人が一括で受領したのですが、その子が私立の小中学校に通学したため、中学卒業までにその1,000万円を使い切ってしまったというケースです。さらに言えば、申立人は、1,000万円の養育費のほかに、離婚に伴う財産分与・慰謝料として3,000万円を受け取っていたのですが、その3,000万円を父親の事業につぎ込んで使い切っていました。裁判所も、「『成年に達する迄の養育費として』1,000万円を受領したのに、事件本人の中学卒業までに使い切ってしまったことについては、その支出につき計画性や工夫が足りないと批判されてもやむを得ない面がある」と申立人を批判しています。しかしそれでも、相手方も私立だけの教育コースを歩んでおり、子どもにも同程度の教育を受けさせることが不相当とはいえないということも理由にあげて、養育費の追加請求を認めています。親が子どもに対する扶養義務を果たすために負担する費用が養育費ですが、子どもがどの程度の扶養を必要とするのか、あるいは親がどの程度の扶養を負担できるのかといった事情は、養育費の金額を取り決めた後に変動することもよくあります。しかしその変動が取り決め時に予見可能であったのなら、そのことも踏まえて取り決めをしているはずですから、取り決めた額から増額(減額も)する必要はないと裁判所に判断されることになってしまいます。とはいえ、予見可能か不可能かというのは簡単に区別できるものでもありません。養育費を一括で支払ってもらった場合でも、何らかの事情変更があるならば、あきらめずに追加で支払うように調停・審判を申し立ててみる価値は十分にあります。 *著者:弁護士 近藤美香(秋葉原よすが法律事務所。家事事件を専門的に取り扱い、500件以上の家事事件を取り扱った経験を持つ。JADP認定の夫婦カウンセラーの資格を保持している。)【画像】イメージです*SoutaBank / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月30日*画像はイメージです:月21日、野菜を1円で販売していた愛知県のスーパー2店に対し、公正取引委員会が独占禁止法違反にあたるとして、運営会社に対し再発を防止するよう警告しました。これは1円で販売されることにより、ほかのスーパーや八百屋の販売業務を困難にしかねないためだそうで、1円にすることによって通常より数倍の売上があったそうです。独占を禁止するという論理は理解できますが、別にいくらで販売しようと店舗の自由ではないのでしょうか?星野・長塚・木川法律事務所の木川雅博弁護士に、今回の問題について見解を伺いました。 「先日、愛知県のスーパーで野菜を1円で販売した事業者が独占禁止法違反の疑いで警告を受けたとの報道に接しました。警告の理由は1円で野菜を廉価販売したことが“他者の事業活動を不当に妨げる可能性がある”とのことですが、野菜に限らず、よく広告などで目玉商品がきわめて安い価格で販売されていることを目にする機会があると思います。そこで、今回は、どのような態様で商品を安く販売すると“他者の事業活動を不当に妨げる可能性がある”とされてしまうのかについて解説したいと思います」(木川弁護士) ■一時的なセールや季節限定商品などは独占禁止法違反とはならないことが多い「独占禁止法は、不公正な取引を規制する法律であり、その一態様として事業者による不当廉売を禁止しています。何が不当廉売にあたるかについては公正取引委員会が「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」というガイドラインを出しており、同ガイドラインでは(1)廉売の態様(価格・費用及び継続性)、(2)「他者の事業活動を困難にさせるおそれ」、(3)正当な理由の有無の3つから不当廉売に当たるか否かを判断すると定められています。具体的な例でいうと、仕入れや製造原価割れで商品を販売することは他の事業者が同じ価格で販売して競争に参入することを妨げてしまうので、原則として不当廉売となり得ます。しかし、たとえば、開店セールでお客さんを集めるために、ある特定の商品だけを数量限定できわめて安い価格で販売しても、それは一時的なもので他の事業者の参入を妨げることにはなりませんから、上記の(1)や(2)の要件を充たさず、不当廉売には当たらないとされています。また、生鮮食料品は時間が経てばその品質が急速に低下しますし、クリスマスケーキのような季節限定商品は需要の最盛期を過ぎると売れなくなってしまいます。このように、見切り販売をする必要がある場合は正当な理由があるとして上記(3)の要件を充たさず、やはり不当廉売に当たりません」(木川弁護士) ■今回のケースの問題点「今回の1円野菜のケースは、2つの店舗が互いに競争するために継続的に行っていたものですので、周辺の他のスーパーや八百屋さんの販売を困難にさせかねないとして警告がなされたものです。日にちと数量限定で野菜を1円で売っていたとしたら、セールの頻度にもよりますが警告がされなかったといえます。なお、野菜の安売りに関する不当廉売の疑いでの警告は全国初のようですが、最近では卸売業者がビールを原価割れで小売店に納入していたことが不当廉売の疑いがあるとして警告がされたケースがあります。2つの店舗はもしかしたら不当廉売規制の存在を知らなかったのかもしれませんが、警告によるレピュテーションリスクや地域内の他の事業者とのあつれきが生じてしまいますので、セールを行うときは独占禁止法違反とならないよう十分注意したいところです」(木川弁護士)今回に限らず、「安売りセール」にはつねに「独占禁止法違反」の可能性が潜んでいるのですね。 *取材協力弁護士:木川雅博 (星野・長塚・木川法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野・長塚・木川法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*アクア / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月29日*画像はイメージです:月8日、兵庫県の警察官が、県公安委員会に無断で横断歩道やはみ出し禁止線を設置したとして虚偽公文書作成・同行使と道交法違反で書類送検されました。調べによるとこの警察官は平成27年7月から今年4月にかけて県公安委員会の許可を得ていたかのように文書を作成し、上司に提出。兵庫県相生町など9箇所に、横断歩道やはみだし禁止線などを設置していました。この警察官は停職一ヶ月の処分を受け、依願退職したそうです。 ■一般人が標識を落書き・破壊・移動したらどうなる?神戸の事件は他の地域に住む方にとっては無縁ですが、道路標識に落書きをする、壊す、移動するなどの行為は「起こりうること」です。仮にこのようなことをした場合、どのような罪に問われるのでしょうか。エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解をお伺いしました。 「道路標識も国や自治体が所有し、管理をする器物であり、いたずら書きや故意に破損させることで、その本来的な効用である交通ルールの表示機能を毀損することになりかねません。そのようないたずら書きや故意の破損は、器物損壊罪(刑法261条)が成立する可能性があります。また、具体的な破損等がなかったとしても、標識を勝手に移設し、それによって標識の効用を妨げたといえるような場合には、同様に器物損壊罪が成立する可能性があるものと考えられます。それに加え、道路標識を破損し、又は移設したことによって交通の危険が生じた場合には、道路交通法115条に違反することになります。器物損壊罪の法定刑は3年以下の懲役又は30万年以下の罰金若しくは科料、道路交通法115条違反の法定刑は5年以下の懲役又は20万円以下の罰金と、決して軽いものではありません。ただし、これらの罪は故意に行われた場合にのみ成立するものですので、不注意などの過失で破損してしまった場合には成立しないとされています」(大達弁護士) ■故意ではなくても警察には報告を同じく大達弁護士にお話を伺うと、「自動車を運転していて標識にぶつけて破損してしまった、というような場合において、これを警察等に報告しなかった場合には、いわゆる“当て逃げ”として、道路における危険を生じさせた場合には1年以下の懲役又は10万円以下の罰金が科せられる可能性があります(道路交通法117条の5第1号、同72条1項前段)。危険を生じさせていなくとも、警察への報告をしていなかった場合には3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科される可能性があるので注意が必要です(道路交通法119条1項10号、同72条1項後段)。なお、道路標識の設置方法に問題があるような場合で、移設を希望する場合には、警察署や役所へ相談すると対応してくれる可能性がありますので、まずは最寄りの役所や警察署に相談をするようにし、勝手に移動して罪に問われるということのないよう注意して下さい。標識は道路利用者への道しるべ。それを勝手にいじることは利用者を誤った方向に導きかねず、そこにはもっと重大な結果が生じてしまうリスクがあり得ます。自分の人生の道しるべをも見失ってしまわないように、標識はそのルールも標識自体もきっちり守りましょう」(大達弁護士) 標識への落書き・破壊・移設は立派な犯罪。行わないようにしましょう。 *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです* hwanchul / Shutterstock
2017年09月27日*画像はイメージです:昨今、芸能人や一般人に対して「ドッキリ」を仕掛ける番組が増加しています。「ヤラセ」ではないかとの声もありますが、仮に本当に騙している場合、少々「やりすぎ」と感じることもあります。場合によっては、騙された側がドッキリと告げられ、怒り出すことも。通常このような場合は番組側が謝罪するなどしてとりなすため、問題にはならないのですが、あまりにも度が過ぎる場合は、「提訴」に踏み切ることもあるかもしれません。「ドッキリ番組」で騙された側が違法性を主張することはできるのでしょうか?パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士にご意見を伺いました。 ■違法性を主張することはできる?「ヤラセではなく“本当に騙している”、つまりそのような“ドッキリ”を仕掛けられることについて本人の同意を得ていないということであれば、それが民事上の不法行為、あるいは刑事上の犯罪行為にあたる場合には、損害賠償責任を負ったり、刑罰が科せられたりする可能性があります。例えば、対象者が所有する自動車のタイヤをパンクさせるという行為をドッキリとしておこなった場合、当該行為は“器物損壊”として、民事上の損害賠償責任を負う可能性と、刑事上の犯罪として刑罰を受ける可能性(3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料。刑法261条)があるといえます。なお、“ドッキリ”の具体的内容によっては、対象者の権利や利益を侵害していない、あるいは損害が生じていないとして、法的な責任を負わないというケースもあるかもしれませんが、例えば、大声で人を驚かすというようなドッキリについては、人の左耳もと近くで携帯用拡声器を通じてやにわに大声で“市長”と怒鳴りつけた行為を、暴行罪(刑法208条)にあたると判断した裁判例があります(大阪地裁昭和42年5月13日判決・判時487号70頁)ので、状況によっては同じように“暴行”と判断されることもあるでしょう。ですから、“これぐらいなら大丈夫だろう”と軽率に判断し、行為に及ぶことは控えたほうがよいと思います」(櫻町弁護士) ヤラセではく本当に騙されている場合、その内容によっては違法性を主張できることもあるようです。 ■肖像権侵害の可能性も「また、“ドッキリ”の場合は、対象者の驚いている様子等を撮影し、これを放送することになると思いますが、本人の同意を得ないで容貌等を撮影する行為、また、それを不特定多数に公表する行為については、“肖像権侵害”として民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。例えば、刑事裁判の被告人につき、法廷での容貌などを撮影した行為、及びその写真を週刊誌に掲載して公表した行為が不法行為にあたるかが争われた裁判で、最高裁判所は(“肖像権”という表現は使っていませんが)“人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する”、“人は、自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も有すると解するのが相当”としています(最高裁判所平成17年11月10日判決民集59巻9号2428頁)」(櫻町弁護士) 本当に騙されているとするなら、法律違反が発生する可能性が高い番組であるようですね。 *取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*あんころもち / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月25日