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皆さんは純喫茶のメニューで何が一番お好きでしょうか?私はその時々のブームがあって、かつては毎日オムライスを食べても飽きず、平日も1時間という短い昼休みを存分に利用して、勤務地から行ける範囲の純喫茶へひたすら足を伸ばして食す日々もありました。現在のブームは「ホットサンド」です。メニューには「焼きサンドウィッチ」と書いてあることも。食欲をそそるこんがりとした焼き色とさくっとした表面。そこにはたっぷりのバターが染み込ませてあり、運ばれてくるまでに漂ってくる匂いだけでおなかが鳴ってしまうほど、魅惑のメニューです。都内には好きなホットサンドを食べられる純喫茶が何軒かあるのですが、今回はその中から、代々木の駅前にあり、美味しい珈琲とマスターとの楽しいお喋りも楽しめる「TOM」を紹介します。マスターとのお話を楽しみながら…代々木「TOM」いかにも純喫茶、という内装の1階にも惹かれますが、窓が多くて開放感のある2階席がとても好きです。ほの暗くてときめく階段を上がった2階では、初代マスターがお出迎え。誰かとの打合せでこちらにやってくることが多いせいか、扉を開ける私を見つけた二代目マスターは「待ち合わせ?」といつも声を掛けて下さいます。メニューを一通り眺めて、待ちに待った焼きサンドウィッチと、この日のサービスコーヒーを注文します。楽しみに待つこと数分。初代マスターがにこやかに近づいてきて、こんな風に話しかけて下さいました。「物を書く人でもネタに困ることがありますか? もしそうであれば私がいくつでもお話をしましょう。こういう仕事をしていると、話のネタは尽きることがありませんからね」と。ある日伺ったのはこんな話でした。初代マスターの豊富な話題に聞き入ってしまう「うちは高校生をアルバイトに雇わない規則なのだけど、あるとても寒い日に、セーラー服を着た女性が店に飛び込んできて『ここで働かせてください』っていうんです。お断りする理由を伝えると『これ!』と手渡されたのは、卒業証書。『今日卒業してきたからもう高校生じゃないんです』と。思わず笑ってしまったのと、彼女が明るくて元気な良い子でしたから、雇うことにしたんです。すると、『もう1人働きたいという人がいるんですけど…』と言うんです。なんとそこに現れたのは彼女のお母さん。どうやら、お酒を飲むと暴れてしまう父親から二人で逃げようと決めていて、それがちょうど高校卒業の日だったそうで。でも、2人は雇う余裕はなかったから、お母さんの方には住み込みの別の仕事を紹介してね。娘さんは働きながら勉強して資格を取って、立派に就職したのです。それからしばらく経ったある日、彼女が僕の前に現れてね。『会ってほしい人がいます。マスターが賛成するなら結婚したい』って1人の男性を連れてきたんです。きちんとした人だったから歓迎して、2人は無事結婚して、旦那さんの故郷である広島へ行ったそうです。もちろんお母さんも連れて。お父さんはどうしたかって?『県境までは許すけどそれ以上は近づかせていないわ』って」美味しいホットサンドを頂く前に、こんな風に映画になりそうなエピソードをマスターから聞くことが出来るTOM。難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2017年11月10日スリル満点な手植え体験春に田植え体験してきました。若いオーナーが運営する古民家ゲストハウスが、1泊2日の農業体験ツアーをやってたんです。『百姓貴族』や『銀の匙』といった荒川弘先生の農業マンガをはあはあ言いながら読んでいる和久井は、農業にとっても興味があります。……自分で作った食材でピザとか焼いてみたい!同じ日に体験ツアーに参加したのは、和久井のほかに就農希望のご夫婦と、シングル男性の計4名でした。昼過ぎに現地に到着すると、他の方たちはすでに集合していて、まずは全員で自己紹介をして、田んぼへGOです。田植えをする田んぼには、数日前に水が入れられたばかり。泥水でヌッタヌッタです。長靴だと、足を取られて歩きにくいので裸足になってもいいんですって。それならとさっそく長靴と靴下を脱ぎました。腰痛でダウン見ず知らずの4名が集まって、いきなりの共同作業。誰が一番早く植えられるかなんとなく競争になったり、苗を渡し合って協力したり。作業が終わる頃にはすっかり仲良くなってました。その後は、みんなで夕食。オーナーのお父さんがやってきて火炎放射器を豪快にぶっ放して炭に火をつけ、BBQが始まりました。もうこの頃には「10年来の友人」感覚です。食後の酒が盛り上がったこと!しかしそのあと、とんでもない事件が……。1日一緒に体験すると人となりがわかる酒豪であるオーナーのお父さんはみんなと一緒に豪快に飲み散らかし、正体不明になってに担がれリタイア。シングル男性も続いて縁側でリタイア。みんなで彼を部屋に運び、適当に布団で寝かしつけ、残った夫婦と和久井の3人で軽くおしゃべりしてました。そろそろ寝ようかってことで、和久井は自分の部屋に戻ったんです。自分の部屋といっても二段ベッドが2つほど置いてある、2階のドミトリーでした。夫婦は個室で、リタイア男子は別のドミトリーを使用していたので、和久井の部屋は貸切状態です。どこに寝ようかな……。上にしようか下にしようか、やっぱり出入りしやすい下にしよう、なんて思って布団を敷いて二段ベッドの下段で休んでいました。すると……。スラッ……襖が開いて、リタイア男子が入ってくるではないですか……!!!ちょ、待てよ……!いやいや、モノマネしてる場合じゃないよ、何か用!?(何かってなんだ!?)お前は「来月結婚するんだ」とか言って愚痴ってたよな!?愚痴るのは構わないけど、結婚前にご乱行のつもりなの……!?とか思ってると、リタイア男子は和久井の寝ているベッドを覗き込んできます。「な、なに……!?」和久井が恐る恐る聞くと、彼は黙って和久井を見つめています。(どうしよう、ここは峰不二子的になんか気の利いたこと言わなきゃいけないのかな……)モンモン考えていると、彼はそのままプイッと後ろを振り返り、折りたたんであるお布団へ突進し、そのままグーグー寝始めました。……なんだったんだ……。結局、朝まで緊張してあまり寝られず、どうしたものかと思っていると、リタイア男子はムクリと起き上がってそのまま部屋を出て行きました。そうして階下のみんなと合流した彼が、こう言っているのが聞こえます。「朝、気づいたら姉さんの部屋で寝てた。たぶん知らないうちに連れ込まれたんだと思う」軽く殺意が湧きました……。お前のせいでほとんど寝られなかったんだぞ。結婚間際のヤツなんか連れ込むか!民宿や古民家風のゲストハウスは、個室に鍵がついていないことが多いですが、それは顧客同士の信頼感があってこそ。数々のゲストハウスに泊まっていますが、個室破りは初めてですよ。「面倒くせえ……」と思いながら、和久井も階下へ合流しました。ところが予想に反してみんな、和久井が連れ込んでないこと、なんもやらかしてないことも承知のようなんです。「やっぱりね」みたいな。さすが、1日一緒に農作業だのご飯の用意だの、仕事をすると、人となりがわかるものですね。よかったよかった。オーナーが、嬉しそうに言いました。「いやー、相手が和久井さんでよかった。他の女子だったら大問題ですよ」おい、ちょっと待て。和久井だって大問題だよ!こっちにやる気がない以上なんにも起こらないのが正義だけど、部屋まで来てなにも起こらないとか、未遂(?)の相手が和久井でよかった扱いっていったい女としてどうなんだ。なんだかいろいろ中途半端だなあ。というわけで、未知の体験あり、スリルありの農業体験でした。自分で植えたお米が食べられるのを楽しみにしていたんですが、先日、宿から連絡が来たので聞いてみたところ、「今頃は、いろんな方が美味しくお召し上がりになってると思います!」と元気よく返事が来ました。軽く殺意が湧きました……。稲刈りのときは連絡するって言ってたくせに!Text/和久井香菜子前回記事<HPも予約サイトにもない!疲れた人がたどり着く加計呂麻島のオアシス>もチェック!加計呂麻島の民宿は、元気をもらえる「ゆるいオアシス」でした。
2017年11月09日「価値観を変えたくて」の旅行者に思うことby rawpixel「価値観を変えたくて、一人旅しているんですよ」と言われて、「またか」と思った。インドに行くと、この価値観を変えたくて旅行している就職活動前の大学生と出会い、話す機会が必ずある。インドには、野良牛がいて、大きな道路や路地裏、店の前、至るところで姿を見ることができる。その野良牛に出会うのと同じくらいの確率で、価値観を変えたいと話す大学生に会っている気がする。以前もお伝えしたように、この前まで有給休暇の消化期間をいただいて、2週間ほどインドのラダック地方を見て回った。タクシーをたまたまシェアしたハンガリー人から、少し離れた村で祭りがあることを聞き、急遽スケジュールを変更して「デスキット」という村に向かった時の話だ。こんな時期の、こんなところに何故日本人が…と思って話かけてみると、どうやら就職活動前に大学を休学して、約4か月間で世界を旅しているらしかった。「価値観を変えたくて」「何かを吸収したくて」と普通の顔をして言えてしまう大学生に出会う度に、不思議な気持ちになる。価値観が変わるのは、結果の話であって、目的にするにはなんだかおかしい気がして。自分の中身を変えるためだけに、こんな僻地にまで足を伸ばせるのも、なんだか違和感を覚える。こんなことを言うのは少し恥ずかしい気もするけれど、私の安い価値観は、間違いなく旅行で激変したと思っている。大学生の言葉に、おかしさみたいなものを感じながら、私だって同じようなものだった。私の旅行の目的は特になくて、「なんとなく楽しそうだから」「行ってみたいと思ったから」程度だし、意識も低ければやる気もない。価値観を変えたくて日本国外に出ている人と比較すると、きっと頭に詰め込んでいる情報量も少ないだろうし、全然何の役にも立たないようなことばかりを覚えて帰国している気すらする。「旅行に行くと価値観が変わる」という言葉に対して、「そんな価値観しか持っていないのかよ」と毒づく人がいるけれど、大抵はあまり国外に出たことのない人が言っているように思う。私の人生観や性格は、旅行中に色々な人に出会い、たくさんの場面で少しずつ決断し、変化していった。旅行は、間違いなく人の価値観を変えると思っている。今までにないものに触れた瞬間、価値観は少しずつ変化していく人が考えを変えるきっかけや自分を客観視する時間、自分の常識が覆される機会というのは、そう滅多に訪れるものではない。例えば、知らなかった世界に飛び込んでみたり、人と出会って会話をしたり、新しいことをはじめてみたりと、今まで自分の持ち合わせていなかったものに触れた瞬間に、価値観は少しずつ変化していくのだと思っている。絶対に海外である必要はないけれど、旅行は歩いているだけで衝撃を受けることがある。今回の野良牛だってそうだ。日本では見られるものではない。人間としての扱いを受けていない物乞いの人達、当然のようにポイ捨てをする人、目や耳に入る全てが真新しい環境で、自分に何の変化も訪れないだなんてありえないんじゃないだろうか。6時間くらいバスに揺られながら、隣の席に座った地元の女の子とポテトチップスを分け合ったこと。チャイ屋で知り合ったネパール人の女の子に日本の文化を説明したこと。現地でできた友達にバイクの後ろに乗せてもらって、綺麗な景色を見ながらドライブをしたこと。文字にすると大したことないのかもしれないけれど、色々なところで偶然出会った人に優しくしてもらったり、話をしたりすることによって、気づかされることがたくさんある。山道を歩いていると、たまたま僧侶に声を掛けてもらって、一緒にクリケットをしにいく機会があった。その中に一人、とても流暢な英語を話す方がいて、ラクダを見に行くことになった。歩きながら、ラダックのことや僧侶の生活など、色々なことを教えてもらう。その会話の中で、「僕は国外に行ったことがないんだ。日本は、とても大きな国なんだよね?旅行には行けないから、想像するんだ」と言われた。さり気無い一言だったけれど、衝撃を受けたのをよく覚えている。何が幸せで、どんな人生が一番いいんだろう、と思った。どこへも行けない僧侶の彼は、気軽にどこにでも行ける外国人の私を、どう見ているんだろう。おそらく自分よりもお金を持っていて不自由していないであろう外国人の私に対して、優しく接してくれるのはなぜなんだろう。決して尋ねたりはしないけれど、数日程ずっと考えていた。今回あったことも、色々なことを考えるきっかけになったし、おそらく忘れることはないんだろう。何かふとした瞬間に思い出して、「あんなこともあったんだし、また仕事を頑張ろう」と思う日も来るかもしれない。旅行にでることを「面倒くさいなあ」「死んだらどうしようかなあ」と考えることもあるけれど、その不安を吹き飛ばすくらい楽しい面が大きい。色々な人たちとの出会いや今まで気が付かなかった発見、自分の知らなかったことに驚き、感動するために、多分私はこれからも時間を見つけて様々なところに行くのだろうと思う。Text/あたそ<私たちには時間がない!「誰かを誘いたい」のに気が引ける理由>もチェック!誘いたい、だけど面倒くささが勝ってしまう。本当にしたいことをするだけでも、私たちには時間がないのだから。
2017年11月07日さわやかな秋晴れの空が恋しいなか、時雨の日々を重い足取りで通りすぎると、紅葉が赤く色づき、「山粧(よそお)う」季節ですね。澄んだ冷たい空気を胸いっぱいに吸い込んで、紅葉を眺めることができたら、日頃の疲れもふき飛びそうです。この時期、秋の恵みとしてさまざまなものが旬を迎えますが、その中でも昔からスタミナ食材として「山うなぎ」と呼ばれてきたのが、「山芋」です。山芋には、日本原産の自然薯(じねんじょ)や大和芋、長芋など、実は600種類以上もあるそうです。消化によく、スタミナもついて美味しいこの山芋を使ったレシピで、体調を崩しやすいこの季節の変わり目を乗りきりましょう!長いものふわふわ焼きお好み焼きの“おもてなしバージョン”といったところでしょうか。何枚も焼いたりひっくり返したりする必要がなく、オーブンに一度入れてしまえば出来上がります。見た目も華やかですし、他のお料理と一緒におもてなししたいときに便利な1品です。ふわふわでとても美味しいですよ。<材料>直径27cmの耐熱皿1個分キャベツ 1/4個長いも200g卵 4個マヨネーズ 大さじ1醤油 大さじ1豚挽肉 100g桜えび 大さじ2薄力粉 30g1. キャベツは1cm角くらいのざく切りにしておく。2. 長いもの皮をむき、ボウルにすりおろす。そこに溶き卵、マヨネーズ、醤油、豚挽肉、桜えびを加えて泡立て器でよく混ぜ合わせる。ゴムべらに持ち替え、薄力粉を加えてさっくりと混ぜ合わせる。 1のキャベツも加えてさらに混ぜ合わせる。3. 耐熱皿に 2 を流し込み、トントンと数センチ上から耐熱皿ごと落として気泡を抜く。4. 190度のオーブンで40分焼いて出来上がり。お好みでソースやマヨネーズ、鰹節や青のりをかけてお召し上がり下さい。Text/太田みお働くおひとりさまにとっての毎日はめまぐるしくて、ゆっくり季節を感じる時間さえ取れないですよね。「休日のたった1時間でいいからほっとしたい…」元外資系バリキャリから一転、丁寧な生活を目指して料理研究家になった太田みおさんが、四季の彩りを簡単に楽しむ「レシピ=歳時記」をお届けします。
2017年11月02日第26回「1人ラーメン入門」(c)つめをぬるひと今回は「私は1人でラーメン屋に行くが、友人から『カフェは1人で入りやすいが、ラーメン屋は入りづらい』と言われた」という投稿。私は1人でラーメン屋に行くことに慣れている。仕事終わりにふらっと寄って帰る。正確にはラーメンよりもつけ麺が好きで、食べ終わった後、店員に「すみません、スープ割りを」と気兼ねなく割ってもらう。いつから平気になったのか、なぜ平気になったのかを遡ってみた。昔、学生時代に何人かでつけ麺屋に行くことが多かった。というよりは、つけ麺が好きな人が多かった。当時一番好きだったのは、立川のらーめんたま館の中に入っている「井の庄」。その頃の私は、こってりした魚粉が乗ったようなつけ麺が好きだった(最近はもうあっさりしたものしか食べなくなった。歳か)。他にもいろいろな店に連れて行かれることが多く、スープ割りというものを知ったのもその時期だ。これはラーメン屋に限った話ではないが、あらかじめ何人かで行ったことのある店には、その次からは1人でも行きやすいような気がする。今でこそ私は、入ったことのない店にも1人で道場破りできるようになったが、昔は、なんとなく店のシステムや要領を分かっているところじゃないと入れなかったなと。別に1人でラーメン屋に入れたからといって何があるわけではないけれど、ふと夜に思い立って、近所のラーメン屋にふらっと行くのは結構楽しい。Design&Text/つめをぬるひとこの連載では、爪作家である私が、読者のみなさんが「どんなおひとりさまか?」をヒントに爪をつくります。あなたのエピソードを添えて、送ってください。前回記事<「好きってなんだっけ?」発言を考えてみる>もチェック!熱さではなく心地よさ。
2017年10月30日もう、このまま住んじゃいたい!毎月どこかへフラフラ旅をしている和久井ですが、今までちょっと苦手だったのが、民宿です。人の家を間借りするような形なので、ゴチャゴチャとものが溢れていたり、ホコリっぽかったり、食事の時にはオーナーから聞きたくない話を延々と聞かされそうな気がしたり。泊まった宿が土木労働者さんたちの常駐宿で、お風呂に入ったらお湯が泥水になってたなんてこともあったなあ……。だけどこのたび、とても素敵な民宿に出会いました。お友達が紹介してくれたところで、奄美諸島のひとつ、加計呂麻島にある宿です。「海辺からの美しい夕陽を、ぜひ見て欲しい!」とお勧めされていました。宿の女将さんはちょっと「見える」人らしく、何を見てくれるのかも楽しみでした。もうね、もう、あのまま住んじゃいたい! ってくらいよかった。「恋はデジャブ」って映画があるんですが、これ、とあるおっさんが毎朝目が覚めると同じ日の繰り返しだった……って話です。この宿でならデジャブってもいい!! もう帰りたくない……。まず、朝と晩(頼めば昼も)、黙っててもめっちゃ美味いご飯が出てくるんです。それがどんなに幸せなことか! おひとりさまにしかわからない贅沢ですよね。裏の畑で取れた新鮮な野菜と、地のモノの肉や魚。どでかい冬瓜をくり抜いてお皿にして、中身をサバ缶と冬瓜で煮た郷土料理とか、ゴマ味噌味のお鍋とか、新鮮でコリッコリしたお刺身とか、もう天国です。朝焼けと共に星が消えていきますお客さんもよかった。出会ったばかりの女子と、いきなり一緒にシュノーケリングをやって、お酒を飲んで語らって、ドライブに行きました。離れを借りている親子も「一家団欒」という感じで微笑ましかった。鹿児島出身だという旦那さんが西郷隆盛顔でした。加計呂麻島でロケが行われた映画『海辺の生と死』を観てから行ったので、最初は島内をあれこれ観光しようと思ってたんだけど、「やっぱいいや」ってなって、宿からほとんど出ませんでした。癒やしの宿でした。疲れた人たちがたどり着く、オアシスみたいな。いろんなパワーを注入された感じです。過ごしている最中に、あれはいくら、これはいくらだなんて一度も言われなかった。現実に引き戻される瞬間がないんです。この宿はホームページもなく、もちろん予約サイトにも登録されておらず、予約は電話のみ。基本的に人の紹介で運営しているようです。信頼できる人から紹介されていく、紡ぎの宿。だからお客さんも気のいい人たちばっかりなんですね。紹介してくれたお友達が和久井を選んでくれたってこと、とっても嬉しいです。女将さんは、宿を出るときに、見えたことをアドバイスしてくれました。和久井のことは、「宿に来た瞬間から、『なにを言ってくれるのかな、なにを言ってくれるのかな』と期待に満ち満ちた顔をしていた」そうです。犬並みです……。最後に「またおいで」って言われました。これまた嬉しかった。元気になりました。ビジネスライクな宿には、誰が泊まっても一定のサービスが提供される安心感があります。手作りの宿は、求められる人たちだけが来る安心感がありました。どちらにも魅力があります。揺るがない宿は「当たり」です。各地に定宿を作っている和久井ですが、この民宿は宝物レベル。ずっと大事にします。Text/和久井香菜子前回記事<現地で自由にカスタマイズすれば、おひとり旅はもっと充実する>もチェック!一人旅の醍醐味と言えば、気ままなカスタマイズですよね
2017年10月28日幼い頃の思い出に直結しているからでしょうか。馴染みのある洋菓子店の包装紙を見ると、懐かしい気持ちとともに幸せな記憶がふわりとよみがえってくる気がします。ロマンチックで素敵なデザインのものが多いのですが、中のお菓子がメインのため、すぐに捨てられてしまうことも多い儚さ。洋菓子を大切に包むその包装紙の美しさに気を留めるようになったのは、おそらく「美人画」で有名な東郷青児のイラストがきっかけでした。例えば、今は無き吉祥寺の「ボア」では、2007年の閉店間際に東郷イラストの包装紙や店名の入った皿、当時の制服や伝票を、ボアを愛した人たちに販売していました。色々と買い求めたので、今も時折取り出してはうっとりと眺めています。また、現在も営業している、青い光が室内を灯す幻想的な京都の「ソワレ」では、自分への土産に東郷イラストの入ったオリジナルタンブラーを購入したのですが、自宅でも純喫茶気分を味わえるので重宝していますし、季節によって絵柄が変わるショップカードもついつい集めてしまいます。東京では、池袋駅前にビルを構え、手土産に喜ばれるアーモンドチュイルが有名な洋菓子とパンの「タカセ」、早い時間に売切れてしまうことも多いスワンシュークリームが人気の駒込駅前の「アルプス」、モンブラン発祥の地と言われ、店内にも多数の東郷の絵を眺めながら喫茶出来る自由が丘の「モンブラン」、私はまだ訪れていないのですが、久我原にある洋菓子の「フラマリオン」でも東郷イラストの包装紙を使用しています。物心ついた頃からぼんやりと好きだった東郷青児のイラストは、大人になってからさらに意識するようになり、出会えるととても嬉しく、しわを伸ばして大切に保管しています。「生誕120周年東郷青児展」で美しい作品の数々をひょんなご縁から、現在、新宿「東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館」で開催中の「生誕120周年東郷青児展」(2017.11.12(日)まで)招待券を美術館の方から頂いたので先日拝見してきました。ずっと気になっていながらも未訪問だった場所。エレベーターで42階へ上がり、ひんやりとした空間の中で見る絵は、想像以上に迫力があるものでした。特徴である色の濃淡の美しさから目が離せなかったり、包装紙などに代表される美人画のタッチとはまた雰囲気の違った絵も数多く展示されていて、とても一度ではしっかりと味わい尽くせない濃厚な内容でした。ミュージアムショップには、「池袋 タカセ」のクッキー詰め合わせや、東郷イラストのマスキングテープ、クリアファイル、ポストカードなど思わず欲しくなってしまうグッズもたくさんありました。難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2017年10月27日「誰かを誘いたい」欲求に駆られるときby Ben White私だって、誰かを誘いたい時もある。大体のことはなんだって一人でできるつもりでいるし、ほとんど抵抗はない。というか、何かやりたいことがあったとした場合、自分の趣味に合う人をリストアップして、その中で仲のよさを考えた上で、興味を持ってもらえるかどうか、断られないかどうか、休みが合うかどうか判断する…。人を誘う上で考えなければならないことが多すぎて、一人でいる不安(ほぼない)よりも、誰かを誘う際の面倒臭さがどうしても勝ってしまう。「誰かいたら楽しいのかもしれないけど、まあ一人でもいいか」という結論にいつも至る。結局は、連絡無精なんだろうと思う。「誰かを誘いたい!」と思っても、実行に移されることは滅多になかった。この「誰かを誘いたい!」という欲求が私の中で沸々とわいてくる時には、2パターンある。ひとつは、「一人で平気なままでは、多分ヤバい!」と、なんとなく孤独死や老後の孤立へと地続きになっているような焦りを感じる時。何かキッカケがある訳ではないけれど、湯船に浸かりながらただボーッとしている時とか、真夜中になかなか寝付けない時とか。思い付いたように、ふと感じることがある。「このままでは、絶対に駄目だ! ひとりで死んでいくことになるかもしれない」という確信みたいな思いが、だんだんと焦りに変わっていく。しかし、単純な性格をしているからなのか、眠りについて、夜が明ければ、そんなどうしようもない焦りが頭の中からサッと消え、いつも通り生活に戻っていく。相変わらず一人でいても平気で、全然寂しいとも思わなくて、「ずっと一人でいても寂しいとすら思わないのは、やっぱり駄目なんじゃないか? 自分は、何か感情が欠けているのでは…?」「でも、寂しいと思えるようになるには、何から始めればいいんだ…」と、考えが頭の中を巡る。この行きつく先のない焦りは、もう一種の病気みたいなもので、昔からずっと感じている。どうしようもない。多分、今後も私の中で戦っていかなければならない感情のひとつなんだと思う。限られた時間の中で、誰かを犠牲にするなんてできないもうひとつは、「これは、誰かと共有した方が一人よりもずっと楽しいんじゃないか!?」と思い付いた時。この場合が、なかなか厄介なんじゃないかと最近になってから余計に考えるようになった。誰かと共有しても楽しいかもしれないことのひとつとして挙げられるのが、旅行だ。私は大学時代から海外旅行が好きで、社会人になった今でも趣味の一つとして継続している。というか、実はこの原稿もインドの北部・レ―という土地で執筆している。泥まみれの状態でヒッチハイクをしながら移動をしたり、現地人と同じ食事を取りながら会話を楽しんだりするのも好きだ。でも、仲のいい友達と少し高めのホテルに泊まって、ちょっとロマンチックなバーでカクテルを楽しんで、ああだのこうだの言いながら観光地を巡るのも、きっと同じくらい楽しい。今年の年末はどこで過ごそうか考えた時、誰か親しい友達と一緒であれば絶対に楽しいだろう、とふと思った。0時ぴったりの花火を見て、初詣をして、お酒を片手に何かしら美味しいご飯を食べる。現地の習慣にならった新年の祝い方をしてもいいかもしれない。最高じゃないか! いい2018年を迎えられそうな気がした。具体的なことは何も考えていなかったけれど、妄想に妄想が進み、勝手に私の気持ちを盛り上げていたのだった。…と、折角気分が盛り上がっていたのに、誰かを誘うための壁にガンガンぶち当たっていく。さらに困ったことに、社会人になると時間やお金の使い方が人と合わなくなってくる。旅行なんて誘えたもんじゃない。銀行員やサービス業の友人は休みが合わないし、休みのスケジュールが同じ友人は年末年始に合わせてきっと田舎に帰るだろう。あの人は話をする分には面白いけれど、趣味が全く合わない。あの子と一緒に旅行をするのはなんか違う気がするし、あいつはいつも忙しそう……と考えていくと、全然気軽に誘えない。私がまだ大学生だった頃、「学生時代は時間があってお金がないけれど、社会人になるとお金があっても時間がないよ」と言われたことがある。当時は、「ふーん」くらいの感覚で適当に聞き流していたけれど、その言葉の意味がようやくわかるようになってきた。社会人になって生活の大部分を働くことに費やさなければならない。自分が自由に使える時間なんて、本当にわずかしかないのかもしれない。その限られた時間の中で、できること・やりたいこと・やらなければならないことは限られてくる。大人になると、どんどん選択肢も増えていくし、他人に迷惑をかけなければ自分ひとりでなんだってできる。だからこそ、自分が本当にしたいことしかしなくなるし、他の人の価値観も大切にするべきなんだと思う。無理矢理付き合わせてしまうのも悪いし。と、考えていると、やっぱり「まあ、ひとりでいいか」という結論に至って、私の単独行動に拍車をかけてしまっている気がする。Text/あたそ<誰かと買い物って楽しい?ひとりで戦い抜かなきゃいい買い物できないよ>もチェック!付き合うのも付き合わされるのも、楽しくない…。あなたにとっての買い物は、どんな時間ですか。
2017年10月24日おひとり旅なら自分次第でいくらでも変えられるby Stokpicふらりとセブに行ってきました。池袋の東口にある西武じゃなくて、フィリピンのセブです。8日間ほどあったのだけど、初セブだったので宿は前半しか取らず、残りの3泊は現地の様子を見てから決めることにしました。日本から予約していったのは、シキホールという“黒魔術”の島。まあ、黒魔術と言ってもたぶん観光用の文句だと思います。ラブポーション(惚れ薬)を売っていたり、ヒーリングなんかをやってくれる場所がいくつかあります。その島のコテージを借りて、海を眺めつつ4日ほどだらだらしてました。さて、次にどこへ行こうか考えていたところでした。宿で一緒になった韓国人の男性が、これからドゥマゲッティという港町に行くというんです。「いいところですよ」と。彼にオススメのホテルを聞き、会う約束をして荷物をまとめ、ドゥマゲッティへ向かいました。今は、ネットさえあればどこからでも宿が予約できるところが本当に便利ですね。ホテルドットコムやagoda、Booking.comといった予約サイトを使って、好きな場所で、好きな条件の宿を探せます。サイトによって得意な地域や、登録されている宿が若干異なったりするので、気に入ったところが見つからない場合は、サイトを変えてみるとよいと思います。昔は、着いた場所の駅や空港から宿に電話をして予約したものです。求められる英語力と緊張感がとてつもなかったので、本当に便利になりました。というわけで、気軽に宿が取れるおかげで、旅行中でも行き先を自由に決められるようになりました。観光ってお天気によってやりたいことも異なってくるので、現地の情報次第で行き先を変えられると取れ高もいいですよね。その場で出会った素敵な人や物によって、旅の内容はいかように変えられます。これも、ひとり旅ならではの気軽さかもしれないですね。海外でバスは乗客を待ってくれないこうして和久井の初セブは、前半は離島でバケーション、後半は都市部の観光と決まりました。セブは比較的治安がいいと言われていること、夜の出歩きは韓国人の彼と一緒だったことで、危険な目に遭わずに過ごしました。……ただひとつのトラブルを除いて。ドゥマゲッティからバスでセブの中心部に戻ろうとしたときのことです。途中、バスごとフェリーに乗って小一時間ほど海を渡るところがありました。バスがフェリーに乗り込むと、乗客たちはバスから降りてフェリーの客室へ移動しました。ベンチに座っていると、「フェリー代を払え」ときっぷを持った男性がやって来ます。え、バス代の他にフェリー代も個人で払うの?だったらバスから降りなければフェリー代はなし?もうまったくシステムがわかりません。下船間近になり、お手洗いを済ませてからバスに乗ろうかな、と思ってトイレに入ったんです。で、出てきたら、バスがすでに発車してるじゃないですか!ちょっと待て! なぜ置いていく?慌ててバスの進路を遮り、乗り込みました。運転手やスタッフ、乗客たちが和久井に向かって何か茶化して笑っています。そんなん知るかー! ああびっくりした。出発の際に人数確認とかしないんですかね。もうまったくシステムがわかりません。どうやら和久井は、海外でバスに置いていかれるという運命みたいなんです。これは、トルコに行ったときのお話。バスで12時間という長時間の移動をしていたら、途中で体調を崩してしまったんです。深夜のパーキングエリアにバスが止まったので、急いで降りて、汚物の処理をしました。で、ヨロヨロとトイレから出たら、なんと勢いよく自分の乗っていたバスが走り始めているじゃないですか。トルコの、深夜の、山奥のパーキングエリアですよ。置いて行かれたら、どんな目に遭うかわかったもんじゃありません。吐いた直後に、バスを追いかけて全力疾走です。サザエさんの数倍辛い。しばらくすると運転手が気づいたようで、バスを止めてくれました。こっちはもう半べそです。そのバスには運転手の他にスタッフが1人いましたが、どうやら彼が人数確認を怠ったようで、運転手に叱られてました。恨み言を言おうにも、なんとそのバスには英語が通じる人が一人もいませんでした…。あの経験を思い出すと、たいていの旅のトラブルは平気な気がしてきます。海外では、バスは乗客を待ってくれません。これからはバスを降りる際に、「俺は降りるぜ、覚えてろよフーゥ!」みたいに主張することにします。Text/和久井香菜子前回記事<即ご利益あり?振られた彼から連絡がきた…高知県・鳴無神社の縁結び>もチェック!縁結びのパワースポット、高知県・鳴無神社へ。そのご利益のほどは……。!?
2017年10月23日秋の花といえば、菊ですね。日本庭園に咲き誇る大輪の菊も、道ばたに咲く可憐な野菊も、その美しさに、見ているだけで心清められる思いになります。この菊ですが、日本では古くから食用・薬用としても使われてきました。茹でるとふわっと良い香りが立ち上ります。もし店頭で出会えたら、この季節、彩り美しく風雅な秋の味覚として、ぜひ家でも料理してみてください。菊の花の下ごしらえ方法1.菊の花は、がく、おしべ、めしべを除き、花びらだけをちぎり取ります。2.鍋に湯を沸かし、酢と塩を少々加えます。菊の花びらをそこに加え、菜箸で沈めながら一煮立ちさせます。3.ざるにあげ、冷水にひたして色止めをしつつ、しばらくおいてアクを抜き、水気をよく絞ります。下ごしらえを終えた菊の花は、おひたしや酢の物にするのが一般的な調理方法です。胡瓜、わかめ、しめじ、などお好みのお野菜や海藻きのこ類、そしてしらすやちりめんじゃこ、ツナなども加えてもおいしいですよ。菊花と胡瓜とちりめんじゃこの酢の物材料<作りやすい分量>きゅうり 1本菊の花びら 30gちりめんじゃこ 30g○純米酢 大さじ3○きび糖 大さじ2○薄口醤油 大さじ1*菊の花びらは、先に紹介したように下ごしらえしておく。1.きゅうりを薄くスライスし、ボウルに入れ、塩水(約3%=1カップの水に対して塩小さじ1程度)に10分ほど浸しておく。※たて塩といいます。2.ボウルに○を合わせてきび糖をよく溶かし、三杯酢を作る。そこに、ちりめんじゃこを加えて浸す。3.2のボウルに、下ごしらえして水気を良く絞った菊の花びら、1の水気をよく絞った胡瓜を加え、むらなく和える。味がなじめばできあがり。見た目も美しい秋の菊の花。どうぞ召し上がれ!Text/太田みお働くおひとりさまにとっての毎日はめまぐるしくて、ゆっくり季節を感じる時間さえ取れないですよね。「休日のたった1時間でいいからほっとしたい…」元外資系バリキャリから一転、丁寧な生活を目指して料理研究家になった太田みおさんが、四季の彩りを簡単に楽しむ「レシピ=歳時記」をお届けします。
2017年10月18日第25回「熱さではなく心地よさ」(c)つめをぬるひと今回の投稿は「かれこれ3年ほど恋人がいなく、好きになる感覚を忘れてしまった。どうすれば好きな人が現れますか」という女性。恋人ができない理由は人それぞれ。高い条件を付けすぎる人。自然に事が運ぶことを待っているだけの人。そして、恋愛に疲れて「そもそも好きって何だっけ?」と自問自答する人。頂いた投稿では「3年恋人がいなくて人を好きになる感覚を忘れてしまった」とあるが、3年どころか5年10年と人を好きになれないまま過ごす人はいる。3年…と焦って、無理矢理誰かを好きになろうとしても上手くはいかない。年齢によっては「そんな流暢なこと言ってられない」と思うかもしれないが、焦ることは近道にはならない。そしてもう一つ思うのが、歳を重ねると好きになる感覚が若い頃とは多少違ってくるということだ。そりゃどんなに歳をとっても、燃え上がるような恋がしたい! (書いてるだけでなんか恥ずかしい)とか、これ! っていう感覚がないと無理! みたいな形で恋愛ができたら素敵なのかもしれないけど、だんだん歳を重ねると、熱さよりも心地のよさを求めてしまう。熱い恋愛だけを追い求めていると、できるものもできない…というか、できても疲れて続かないかもしれない。それに、年齢と共に気持ちや環境も変わるし、好きという感覚そのものが変わっていてもおかしくはない。今この人と一緒にいたらどうなるか。一緒にいて心地が良いか。熱さではなく、心地よさ。今回はそんな心地よさが「好きという感覚」になることを考えて描いた。過去の感覚にとらわれず、身を委ねてみるのも良いかもしれない。Design&Text/つめをぬるひとこの連載では、爪作家である私が、読者のみなさんが「どんなおひとりさまか?」をヒントに爪をつくります。あなたのエピソードを添えて、送ってください。前回記事<睡眠は、とても素晴らしい。>もチェック!予定がない休日は寝ることが増えた。お昼寝って最高の贅沢だと思う。
2017年10月16日真夏のように暑い日が戻ったかと思えば、一気に涼しくなってきましたが、皆さま体調を崩されてはいませんでしょうか? いよいよ本格的な秋がやってきて、行楽には良い気候となりますね。私にとって、純喫茶巡りと同じくらい好きなのは、知らない街を散策することです。暇さえあれば路線図を眺めて、まだ見ぬ路地に思いを馳せることも。ところで、皆さんは東武鉄道東上本線の大山駅で下車したことはありますか?私はとあるきっかけでこの街を訪れたのですが、ふらふらと散策してみたところ、時間に余裕があればもっと歩き回ってみたいと思ったほど、とても味わい深い土地でした。今回はそれまで馴染みのなかった大山駅を目指す理由となった、純喫茶についてお話します。絶対見つけたくなる純喫茶「ピノキオ」大山駅から徒歩で約10分。少し遠いので初めて訪れる時は迷ってしまうかもしれませんが、歩くことがお好きな方は、移り変わる景色を眺めているうちにあっという間に到着してしまうかもしれません。だんだんと不安になり始めた頃に見えてくる真っ白な壁に赤いひさし、「COFFEE SHOP」と描かれたまあるい看板が目的地「ピノキオ」です。想像よりも広い店内は茶色の家具で統一され、落ち着いた雰囲気。現在は稼働していないそうですが、ゲーム台のある風景にぐっときます。カウンターの中には、一見寡黙な、でもお話するととても優しいマスターとにこやかなママさん。いつも忙しそうに、しかし丁寧にてきぱきと動かれています。知らないとたどり着くことのできない、閑静な住宅地の中にある「ピノキオ」を目指してやってくる人たちのお目当ては、こちらの人気メニューであるホットケーキ。手品師のマギー司郎さんによって有名となったそうで、訪れたほとんどの方が注文するそうです。まるいホットケーキはマスター熟練の技目の前に置かれた熱々のホットケーキは、まずその分厚さに驚きます。作っている過程を眺めていたら、なんと型には入れず、そのまままるく形を作って焼いていたので大変驚きました。どのホットケーキも焼き上がる頃に綺麗な形になっているのは、皆さんの笑顔のために数えきれない程のホットケーキを焼いてきた、マスターの熟練さによってなせる技です。食べ始める前には「小ぶりかも」と思っていましたが、生地はふんわりとしているようでずっしりと重く、満腹感、満足感ともにばっちりの抜群の大きさなのでした。メニューは他にもトーストやサンドイッチ、スパゲティと豊富。特に私が気になったのは、ホットケーキと同じ銅板でこんがり焼かれる厚切りトースト。難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2017年10月13日真夏のように暑い日が戻ったかと思えば、一気に涼しくなってきましたが、皆さま体調を崩されてはいませんでしょうか? いよいよ本格的な秋がやってきて、行楽には良い気候となりますね。私にとって、純喫茶巡りと同じくらい好きなのは、知らない街を散策することです。暇さえあれば路線図を眺めて、まだ見ぬ路地に思いを馳せることも。ところで、皆さんは東武鉄道東上本線の大山駅で下車したことはありますか?私はとあるきっかけでこの街を訪れたのですが、ふらふらと散策してみたところ、時間に余裕があればもっと歩き回ってみたいと思ったほど、とても味わい深い土地でした。今回はそれまで馴染みのなかった大山駅を目指す理由となった、純喫茶についてお話します。絶対見つけたくなる純喫茶「ピノキオ」大山駅から徒歩で約10分。少し遠いので初めて訪れる時は迷ってしまうかもしれませんが、歩くことがお好きな方は、移り変わる景色を眺めているうちにあっという間に到着してしまうかもしれません。だんだんと不安になり始めた頃に見えてくる真っ白な壁に赤いひさし、「COFFEE SHOP」と描かれたまあるい看板が目的地「ピノキオ」です。想像よりも広い店内は茶色の家具で統一され、落ち着いた雰囲気。現在は稼働していないそうですが、ゲーム台のある風景にぐっときます。カウンターの中には、一見強面の、でもお話するととても優しいマスターとにこやかなママさん。いつも忙しそうに、しかし丁寧にてきぱきと動かれています。知らないとたどり着くことのできない、閑静な住宅地の中にある「ピノキオ」を目指してやってくる人たちのお目当ては、こちらの人気メニューであるホットケーキ。手品師のマギー司郎さんによって有名となったそうで、訪れたほとんどの方が注文するそうです。まるいホットケーキはマスター熟練の技目の前に置かれた熱々のホットケーキは、まずその分厚さに驚きます。作っている過程を眺めていたら、なんと型には入れず、そのまままるく形を作って焼いていたので大変驚きました。どのホットケーキも焼き上がる頃に綺麗な形になっているのは、皆さんの笑顔のために数えきれない程のホットケーキを焼いてきた、マスターの熟練さによってなせる技です。食べ始める前には「小ぶりかも」と思っていましたが、生地はふんわりとしているようでずっしりと重く、満腹感、満足感ともにばっちりの抜群の大きさなのでした。メニューは他にもトーストやサンドイッチ、スパゲティと豊富。特に私が気になったのは、ホットケーキと同じ銅板でこんがり焼かれる厚切りトースト。こぶ茶があるところも地元のお客さんが多いことを想像できてほっとします。近くで暮らしている人たち、遠くからやってくる人たち。そのどちらもが混在して寛いでいるからこそ、純喫茶というものは面白いのかもしれません。今度のお休みに東上線に乗ってとびきりのホットケーキを食べに出掛けるのはいかがでしょうか?Text/難波里奈前回記事<『まるで宮殿のような美しい純喫茶「王朝喫茶 寛山」でアナログなひとときを>もチェック!初めての福井上陸で、長年恋い焦がれた純喫茶「王朝喫茶 寛山」を訪れることができました。
2017年10月13日一緒にショッピングに行くのって楽しい?(c) Marion Michele昔から、「誰かと一緒にショッピングをする」というのが苦手だった。何が楽しいのか全く理解できない。例えば、自分の趣味嗜好と異なる人がいたする。その人の価値観を共有することができなかったとしても、理解をしてあげる・認めてあげるというのが正しいのだろうけど。知り合いに、全く一人で行動できない人がいる。話を聞いてみると、ご飯を食べにいくのも“誰かと一緒じゃなきゃ無理”、映画館や美術館に行くときは“絶対に誰かと一緒にいる”という。まあ、その理由もなんとなくわかる。前者は、彼女は元々お洒落なお店が好きなんだけれど、間接照明とか、素材を生かしたこだわりメニューとか、バルサミコ酢! バーニャカウダ! みたいな店は、まず一人で入れるところが少ない。牛丼屋やラーメン屋など、比較的男性が多い店で、男性に囲まれてご飯を食べるのもどうも苦手らしい。後者は、映画や美術にさほど興味がないのだろうと思う。だから人との会話のネタや思い出づくりの一環として、映画館や美術館に行く。どこに行くかよりも誰と行くか。オ! 現代を生きる若者っぽい。一人で行くのも楽しいけれど、誰かと一緒に時間を共有すること、会話を重ねていくこと、どちらも同じだけの魅力があるし、それぞれの良さは分かっている。つもり。しかし、ショッピング。これだけは駄目だ。もちろん、私の性格的に問題があるのは分かっている。人と買い物に行く楽しさが、全く理解できない。今度の日曜日、友達とアウトレットに行くんだよね」とか「この前、恋人と買い物とカフェ巡りで表参道に行って~」とか。そうそう、それそれ。その類。きっと、映画館や美術館と同じで、欲しいものもあるけれど、会話のネタや思い出のひとつを作るために、一緒に行くんだろう。分かってる、分かってる。でも、誰かと一緒に行く必要あるのか? と、どうしても思ってしまう。一人で戦い抜かなきゃ得られない高揚感まず、服でもアクセサリーでも、センスの合う人を探すのが難しい。「趣味や価値観が同じ人は、自然と自分の周りに集まってくる」という言葉があるそうだけれど、あれは絶対に嘘だと自分の周りを見渡しながら思う。センス以外にも欲しいものが同じであるとか、お財布の事情がどうとか、色々考えてみるけど、何もかもが同じ人なんて、そう滅多に見つけられない。だから、誰かと一緒に買い物に行く機会があっても、自然に“付き合う”か“付き合わされる”かのターンになってしまう。2人で買い物をするには、どちらかの時間を犠牲にしなければならないなんて、あまりにも悲しすぎる。それだけじゃない。私にとっての買い物は、自分との闘いみたいな一面がある。この時だけは集中力が高まり、通常よりも計算が2倍ほど早くなる。お金もかかるし、今後自分の身に着けるものだからひとりできちんと考えたい。今見ているものが、自分に本当に必要なのかを見定めたい。試着してみて、イマイチだったこともある。散々悩んだ挙句、買わないことだってある。だから、「もしかしたら、あっちの店のデザインの方がいいかも?」なんて思ってしまったとき、誰かを付き合わせてしまうのは申し訳なさすぎる。やっぱり、誰かと買い物に行くのは難しい。そして何より、一番は私自身の趣味の問題がある。私は、「それ、どこで買ったんだ!」と突っ込まれるくらい派手な服やアクセサリーを身につけることが多い。年齢を重ねたからなのか、顔が地味だからなのか、トレンドを一切無視した装いをすることが多くなった。見た目くらい、自分の好きなようにしたい。毎日好きなものを身につけて、幸せな気持ちに包まれていたいじゃないか! と思っている。こんな趣味になってしまうと、他の人を巻き込めない。お気に入りの一品を購入した後の、じわじわと迫る高揚感もたまらない。勇者は、レベルアップをしてから武器を買いそろえる。私の場合は、洋服とアクセサリーを買いそろえることによってレベルアップしている気がする。自分だけの宝物を手に入れたような、どこに身につけるのか考えただけでニヤニヤしてしまうようなあの感じは、多分一人で、自分自身やお財布と戦い抜いた後でなければ味わえないんだと思う。秋服は、もう遅いかもしれない。そろそろ冬にも着られるような服を買いそろえなければ。思いっきり、派手なやつ。服を買うなら、履き倒せるブーツと、大振りなピアスが欲しい。Text/あたそ<これ以上、私たちは仲良くなることができない。寂しさに耐えられない瞬間>もチェック!ひとりより誰かといる時。どうしようもなくさみしくなるのはなぜだろう。
2017年10月11日すっかり秋ですね。この時期になると、大分県に住む祖母から毎年楽しみな贈り物が届くのです。それは、ダンボールいっぱいの「かぼす」。かぼすは、ゆずやすだちと同じ香酸柑橘類のひとつでとても香りが豊か。酸味はマイルドで、甘さも感じられるほどです。また、クエン酸が豊富に含まれ、季節の変わり目の疲労回復にばっちり。そんなかぼすを焼いたさんまや松茸に絞ったら、それはそれはもう、秋の恵みが口いっぱいに広がり、さわやかな香りが鼻から抜け、最高に美味しいです。今回は、これまた絶品の「かぼす蕎麦」をご紹介します。かぼす蕎麦【材料】1人分かぼす 1個蕎麦 1人前麺のつゆ 500ml分(麺つゆを指定の濃度で薄めたもの)ごぼう 10cm舞茸 40g1. ごぼうはささがきにして、ボウルに張った水にしばらく浸けてアクを抜く。舞茸は小分けにし、かぼすは薄い輪切りにする。2. 麺つゆを小鍋であたため、 1 のごぼうと舞茸をいれて6分ほど中火で煮る。3. 別の鍋にお湯をわかし、蕎麦をゆでる。4. どんぶりに 2 の麺つゆ、茹で湯を切った 3 の蕎麦を入れ、 1 の輪切りにしたかぼすを表面に並べてできあがり。さわやかな香りがたちのぼり、ほんのり甘い麺つゆとかぼすの酸味のバランスが絶妙で美味しいです。身体がぽかぽかあたたまりますよ。もちろん冷たいおそばでいただいてもとっても美味しいです。高級蕎麦店で時々出会える、「すだち蕎麦」に似た風味。冷たいお蕎麦の場合は、茗荷や白髪葱などのお好みの薬味と一緒に召し上がっても美味。ぜひ楽しんでみてください!Text/太田みお働くおひとりさまにとっての毎日はめまぐるしくて、ゆっくり季節を感じる時間さえ取れないですよね。「休日のたった1時間でいいからほっとしたい…」元外資系バリキャリから一転、丁寧な生活を目指して料理研究家になった太田みおさんが、四季の彩りを簡単に楽しむ「レシピ=歳時記」をお届けします。
2017年10月04日第24回「睡眠愛の雑記」(c)つめをぬるひと今回は「予定がない休日は寝ることが増えた。お昼寝って最高の贅沢だと思う」という投稿。先に言っておくと、今回はどれだけ私が寝ることが好きかをだらだらと書いているだけのコラムなので、読んでるうちに眠くなったら寝たらいい。予定のない休日。早く起きて家事や制作に費やす日もあるし、前日夜遅くまでドラマを一気見して、昼前に起きることもある。でも、早く起きた日は夕方になると必ず眠くなって、お昼寝をしたら最後。起きたら20時! なんてことも。寝疲れすることもある。どこでも寝られる。家ではもちろん、電車でも寝るし、旅行先でも割とすぐ寝られる。そしてなんといっても二度寝。私は毎日しっかり二度寝をしている(二度寝にしっかりとかないけど)。平日は、起きる時間とその30分前の2回、目覚ましをセットしている。1回鳴ると、二度寝しつつ携帯を見つつテレビを見つつの、非常にだらっとした時間を過ごす。私はこの時間がないと、一日調子が出ない。でも休みの日は、いちいち数えてるわけではないけど、きっと三度寝くらいはしている。それくらい寝ることが好き。睡眠は、お昼寝は、二度寝は、とても素晴らしい。帰省するからと早めの提出にむけて深夜に書いている今も、内容が内容なだけにお布団が恋しくなっている。今回はそんな、溢れんばかりの睡眠愛を込めて制作した。Design&Text/つめをぬるひとこの連載では、爪作家である私が、読者のみなさんが「どんなおひとりさまか?」をヒントに爪をつくります。あなたのエピソードを添えて、送ってください。前回記事<自炊は適度なプレッシャー>もチェック!無理なく、適度なプレッシャーを感じながら自炊をするスタイルが自分には合っているのです。
2017年10月02日褒められたら嬉しい。でも必ずしも評価される訳じゃないby Kyle Broad突然なんだという話ですが、人に褒められると嬉しいですか? もちろん嬉しいですよね。私もすごく嬉しいです。程度の差こそあるものの、人に褒められて嬉しくない人はなかなかいないと思います。人間が仕事をする主な理由は生活費を稼ぐためだけれど、社会やまわりの人と関わる中で承認を得たいからというのもある。一生働かなくてもいいほどの大金を手に入れたとしても、2~3年ふらふら遊んだらだんだん飽きて退屈になってきて、猛烈に何かがやりたくなったりするんだと思います。褒められたら嬉しいし、やる気も出る。それは誰だってそうだし、悪いことではないです。でも、自分の行いが常に他人に評価されるかといったら、残念ながらそうとは限りません。評価してほしいところで評価してもらえなかったり、逆に「え、そこ?」という部分で褒めてもらったり。他人のことは自分でコントロールできないから、「他の人からの承認」に自分のモチベーションをすべて依存してしまうと、浮き沈みが激しくて情緒不安定になってしまいます。現代に生きる私たちの「思いついたことすぐ言っちゃう病」先日、クリストファー・ノーラン監督の新作『ダンケルク』を映画館で観てきたんです。第二次世界大戦中のダンケルク海岸における、英仏連合軍の撤退作戦を描いた作品です。いろいろなインタビューによると、『ダンケルク』の構想のきっかけとなった体験は25年も前。友人と、小さな船に乗ってドーバー海峡を19時間かけて渡ったそうなんですが、その体験がものすごくキツくて印象に残っていたらしい。いつか映画にしたいとは思っていたものの、25年前のその時点では、自分の映画監督としての技術に自信がなかった。だから、今回になってやっとそれが実現したわけですが、25年もの間、ノーラン監督は他の作品を製作しつつ、構想を温め続けてきたということですね。ノーラン監督は、ゴシップや興味のないニュースに時間を奪われるのが嫌なので、スマホをあまり使わないんだそうです。ということはおそらく、SNSも積極的には見ていないのでしょう。でも、もしノーラン監督がドーバー海峡を渡ったのが今で、しかも彼がTwitterをやっていたら……「ドーバー海峡めっちゃ荒れててワロタ」「まじでキツい」「最高にキツいので映画化しようと思う」とか、すぐ言っちゃうと思うんですよね。そして、それがたくさん「いいね!」されるなりリツイートされるなりして、すぐに実現しちゃう。もしくは、あまり反応がなくて、「あ……もしかして、ドーバー海峡がキツい話、つまんない?」と思って、その時点で諦めちゃう。これって、どちらもすごくもったいないと思うんです。前者のように、話が早くていいという考えもあるかもしれない。だけど、「自分の中で期が熟すのを待つ」「技術がそこまで到達するのを待つ」ということを、現代の私たちはなかなかできなくなっていると感じるんです。「思いついたことすぐ言っちゃう病」です。すぐにアウトプットしたい、すぐに評価されたい。そしてそれこそが最善であるという風潮ができています。だけど、出来上がった『ダンケルク』を観ると、ノーラン監督があまりスマホを使わない人で良かった、25年前にTwitterがなくてよかったと、きっと多くの人が思うはず。『ダンケルク』は、ノーラン監督が今の技術で、今のタイミングで製作したからこその作品であると、私は思ったんです。たった一人で「温め続ける」思いがあってもいいまわりの人から褒められたい、承認されたいという思いは誰もが持っているし、もちろんノーラン監督だって例外ではないでしょう。映画がヒットしたら嬉しいし、興行成績が振るわなかったら落ち込むと思います。人間が社会的動物である以上、モチベーションを完全に自活するのは難しいけれど、他者からの承認にモチベーションを依存するのは、簡単な代わりにとても不安定です。せっかくのアイディアを失ってしまう危険だってある。「まだ誰にも言ってないんだけど、私はこれをすごく面白いと思ってる!」という事柄を、1つや2つ抱えていてもいい。期が熟すのを一人で静かに待っていてもいい。なかなか出来なくなっているからこそ、一人で「温め続ける」ことはとても尊いのではないかと、『ダンケルク』を観て思いました。そんな「ドーバー海峡がキツい話」、もとい英仏連合軍の撤退作戦を描いた本作、ぜひ観に行ってみてください。IMAXは迫力満点だけど、酔います(私だけ……?)。Text/チェコ好き前回記事<「孤独死」ってそんなに怖い?私はむしろ理想の最期です>もチェック!孤独死って、考えようによっては案外悪くないものかもしれません。
2017年09月30日矛盾を抱えていても放棄できない「家族」世の中には、自己啓発や心理、癒しなど、いろんな講座やサービスがありますね。和久井はいろいろ顔を出していて、モロ自己啓発のセミナーに行ったこともあるし、占い系の講座やビジネスセミナーにも顔を出したことがあります。これらはまったく方向性の異なるセミナーですが、意外なことに言っていることはすべて同じでした。それは「自分の心の声を聴き素直に生きること。そうすれば自然に自分と合わない人は距離ができて疎遠になる」です。ビジネスでもプライベートでも、どれほど世間体や周りの意見に流されてしまう人が多いのでしょうか。そしてそれで多くの人が悩んでいるようです。無理して誰かとつき合う必要も、自分を押し殺す必要もないんだということを、あらゆる手段で教えられないと、実行できないようなのです。自分に合わなかったり、不快な思いをさせられる人とは、距離を置けばいい。他人ならやりやすいですね。でもそれが家族だったら……? ハードルはもっとグッと高くなります。私たちは子どもの頃から「親に感謝しなさい」「親を尊敬しなさい」と教えられてきます。高校受験の模擬面接で「尊敬する人は両親」と答えるのが模範的回答でした。今はそれほど強制されないとは思いますが、それでも「家族という見返りのいらない相互労働関係」に社会はずいぶんと依存しています。子育ても介護も、家族内で完結していれば、社会保障はいりません。私たちは「家族は素晴らしいものだ」と教えられ、家族がどんなに矛盾を抱えていても、そこを放棄することは許されないプレッシャーを植え付けられています。『酔うと化け物になる父がつらい』は、毎晩のように泥酔する父親と、宗教にはまっている母親に育てられた女性のノンフィクションです。ストーリーは、幼少期、クソ男とつき合っていた青年期と、父の介護という大まかに3つのパートに分かれています。(c)︎菊池真理子(秋田書店)2017私にも将来、親を介護する時が来るかもしれません。事実、自分の子どもには自分と同じように結婚をして子どもを産んで、企業に勤めるべきだという親の期待は、今度は「自分を介護して欲しい」に変わったようです。それにはハッキリ「あなたたちの世話はしたくない」と告げました。親の飲酒に悩むわけでも、経済的に負担がかかっているわけでもありません。冷たいでしょうか。でも私はこれ以上、親の都合に振り回されたくないのです。それでも、いざというときになってすべてを否定できるかはわかりません。親を拒否しても心は晴れません。だからといって、したくない約束をする気にもなれません。どういう選択をしても、恐らく気持ちが晴れることはないのでしょう。この面倒くささこそが「家族」だと思うのです。その、家族から与えられた孤独感を埋めてくれる誰かを、私はずっと探しているんです。以前、親しかった女性から聞いた言葉を思い出します。「人間は、どうしようもなく孤独なんです。それがわからないうちは、幸せにはなれませんよ」家庭環境に関わらず、多くの人が孤独を感じているのかもしれません。過干渉でも、不干渉でも、どちらも人は満たされません。そのどうしようもないさみしさを、お酒で埋めようとする人もいれば、セックスで埋めようとする人もいる。宗教や占いに頼る人もいれば、何かのセミナーに夢中になる人もいる。「酔うと化け物になる父がつらい」に登場する人たち……父親、母親、DVの彼氏、主人公、妹と、誰もが孤独や自己肯定感と戦っています。家族がいても、ひとりでいても、孤独なのは同じかもしれません。家族に対するモヤモヤとした気持ちは親から子へ受け継がれて、輪廻のようにグルグルとめぐっているのでしょう。だから『酔うと化け物になる父がつらい』のテーマである「親の飲酒」が自分に当てはまらなくても、描かれている多くのことが胸に刺さり、共感を呼ぶのだと思います。とても、辛い作品です。家族を許しても、許さなくてもいいのだと思います。自分ができるようにしかできないのだから。Text/和久井香菜子前回記事<連載40年、既刊62巻。少女マンガの名作『王家の紋章』で自宅にいながら大冒険へ>もチェック!時間がたくさんある大型連休だからこそ、超長編の少女マンガをゆったり楽しむチャンス!
2017年09月29日夏の面影もすっかり消え去り、特に朝晩は秋の気配が濃厚となったこの頃ですが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか? 私は季節を問わず、純喫茶を巡って寛ぐ日々です。さて、皆さんは「テクノロジー疲れ」はしていませんか? というのは、先日出演させて頂いたラジオ番組(J-WAVE『TOPPAN FUTURISM』ナビゲーター:小川和也さん、相楽樹さん)で話題になったことから、様々な技術が進歩して生活に根付いて便利になったと同時に、それらから離れるアナログな時間が少なくなっていることについてじっくり考える機会となりました。テクノロジーの進歩は決して悪いことではなく、恩恵を受けていることのほうが多いのもたしかです。例えば、こうやって素敵な純喫茶を気軽に紹介できるようになったこともそうです。しかし、たまには携帯電話を開くことなく、のんびりとした時間を過ごしたいもの。今回は、そんな時におすすめの純喫茶を紹介します。ずっと恋い焦がれていた「王朝喫茶 寛山」それは福井県の福井駅から徒歩数分にある「王朝喫茶 寛山」。以前からその存在は知っていたのですが、「いつか訪れてみたい」と恋い焦がれたまま早数年。ようやく訪れるきっかけとなったのが、福井新聞社が発行している「月刊FU」編集部から頂いた1通のメールでした。「誌面で福井市内にあるいくつかの純喫茶を一緒に巡ってほしい」というありがたいお誘いを受けて、初めての福井訪問。駅前にはまるで本物そっくりな恐竜たちが唸り声をあげるオブジェが並び(といってもあくまで想像の中ですが)、路面電車が走る街並みはすぐ好きになるのに十分すぎるほど、素敵な光景でした。そして、お目当てだった「寛山」に繋がる地下階段の入口には、「王朝喫茶」という気になる文字が。コトバンクによると「王朝」とは「武家時代に対して、天皇を中心とする政治が行われた時代。奈良時代と平安時代をいうが、平安時代だけをさすこともある」とのこと。「王朝喫茶」のはっきりとしたイメージを掴めないまま、地下へ。想像の何十倍も美しい店内で過ごす贅沢なひととき「王朝」の言葉の意味を頭ではなく、視界で理解してしまうような、想像の何十倍も美しい光景が広がっていたのでした。大きな壁画、まるで宮殿のようなたくさんの白い柱、シャンデリアの下で光る石像、上品な色合いのふかふかのソファ、清潔に保たれた朱色の床、そして、店内奥には壁一面に輝くステンドグラス!この眺めと美味しい珈琲があれば、携帯電話は閉じたまま、優雅で贅沢な時間が過ごせるのも納得。メニューもサンドイッチにナポリタン、クリームソーダに冷やし白玉ぜんざいまで楽しめるのです。携帯の電波が全く入らない空間で、白い柱が何本あるかを数えてみるのもアナログな作業で楽しいかもしれませんね。純喫茶以外にも魅力がたっぷりだった福井県。おやすみの日に散策に出かけるのはいかがでしょうか?Text/難波里奈前回記事<『沈まぬ太陽』ロケ地、美しい純喫茶「ゆうらく」の頼もしい後継者>もチェック!限定200個ですが、マッチを作成しました!ゆうらくに行かれた際には是非お持ち帰り下さい
2017年09月29日ひとりであることに、寂しさや恐ろしさを感じる瞬間by Pixabay私には「寂しい」と思う瞬間が、人よりも極端に少ないんじゃないかと思っている。一人で好き勝手に行動し、なんでもできるようになってくると、寂しさや孤独がだんだんと感じられなくなる。鈍感になる、と言ってもいいかも。一人でいることが当たり前になると、誰かといることによる気疲れが胸の内でどんどん膨らんで、プラスに向いていた気持ちをどこかに吹き飛ばしてしまう。「寂しさを感じられる人は、誰かと一緒にいる楽しさを知っている人だ」みたいな言葉があるけれど、本当にその通りだと思う。私が身をもって、実感している。最近の私は、ほとんど一人で過ごしている。趣味である映画鑑賞も旅行も、思い立った時にフラッと立ち寄ることが習慣になった。人と会うのはお酒の席くらい。まあ、元々飲酒が好きだから、お酒を飲むついでに誰かに会う機会も異常に多かったりするんだけど……。今の生活サイクルは、自分的にかなり気に入っている。誰にも左右されず、好き勝手にできるのはそこそこ幸せなんじゃないかと思っている。他の人と比較するとつまらないだろうけど、自分が選んだ道だし、まあ、いいかな。でも、今のそれなりに満足いく生活の中でも、どうしても寂しさに耐えられなくなる瞬間がある。誰かとお酒を飲んで、少し酔っ払いながら終電に乗って、ぼーっと窓の外を見ながら帰路に着く。あの瞬間だけは、私がひとりであること、孤独であることに恐ろしさを感じて、どうしようもなくなる。誰かに話す訳にもいかず、いつも心の中で「死にたい、死にたい」とまじないのように唱える。体の中からひんやりとした感覚が襲う。そういった感覚から離れられなくなってしまうのは、大抵とても楽しい時間を過ごせたときだ。ある程度、心を開いている友人と美味しい酒を飲みながら近況報告をし、グラスの空き具合に比例して話が弾む。お酒を飲み、ゲラゲラ笑い、無敵になれる時間が過ぎると、先ほどまでのポジティブな感情が一気に引いていく。心や精神状態の均衡を保とうとするのか、もの寂しさがどっと私を襲うのだった。私たちはもう、これ以上は仲良くなれないなんで、寂しく感じてしまうのかなんて、とうに分かっていた。だって、私たちは今の関係を維持したまま、これ以上仲良くなることなんてできないじゃないか、と思うから。女友達は、これからきっと恋人ができたり別れたりする。そして、そのうち結婚して子どもをもうけるんだと思う。私より大切なものをどんどん作っていく。今の関係が最大だろうと思う。男友達なんてもっと最悪だ。今後もっと仲良くなるためには、今の友達関係を崩して、恋人同士になるしかないから。それに、友達同士でい続けることすら、なかなか難しかったりする。友達のままの関係を維持しようと思うと、そのうち彼女を作り、私という邪魔な女は排除されるのだ。結婚したらしたで、必要なくなるんだと思う。女友達、みたいな役割が。一番の親友が、お嫁さんになる(べき)だから。友達だけではなくて、人間関係なんていつ崩れてしまうのか分からない。気が付いた時には大体手遅れで、どうにもならないことが多すぎる。今はたまに連絡を取って、こうして顔を見合わせて、一つのお皿に乗せられた料理を突き合うような仲だったとしても、近い将来お互いにどうでもよくなってしまって、他人以下の関係に戻ってしまうことだって、大いにあり得ることだ。考えすぎかもしれない。でも、私からすると、ひとりでいることよりも、誰かと一緒にいることの方が、ずっとずっと寂しいと感じてしまう。ふとひとりになった瞬間、いつもと同じように過ぎていく未来のなさみたいなものをぼーっと考えている。Text/あたそ<誕生日を特別な日にしたい。でも私にとっての特別って何だろう>もチェック!楽しかったと思えるような日に、自分でコーディネートしてみませんか>
2017年09月26日チャンスは「ご縁」が繋いでくれるby Stokpicとってもかわいがってもらっている女社長さんに、こんなことを教えてもらいました。「チャンスはすべて人からやってくる」ああ、その通りだなあと思います。たいていのチャンスは知っている人からもたらされます。お互い見ず知らずの赤の他人から、とんでもないチャンスが来たらそりゃ詐欺だよね。100万円当たりましたとか、人妻が会いたがってますとか。助けたカメや蜘蛛からチャンスをもらうのは、まあ作り話です。善行をしたとして、それに対する報酬をくれるのは、現実社会ではやっぱり人でしょう。と思うと、ご縁って大事だなと思うんです。「良縁」って、恋愛のことだけじゃなくてすべてのご縁っていうけど、この「良縁」は人生の宝になるはずだから、いくらでもほしい。良縁に御利益のあるパワースポットと聞くと、ついついいそいそと出かけてしまうわけです。冒頭からたいへん言い訳っぽいお話ですが。やってきたのは、高知県にある鳴無神社。1251年創建という古い歴史を持つ神社で、土佐国一宮の土佐神社はここの別宮だったという話。え、それってもしかして下克上なの?高知市内から車で1時間ほどのところにあります。海に向かって鳥居が立つ、静かな場所でした。平日だったこともあり、人気はなし。あまりに静かすぎて、平日はお守りも水に溶かすおみくじ(読み終えたら海に流して下さいと書いてある!)も売っていないという静かさっぷりでした。悔しいので社務所に書いてあった電話番号にかけてみたら、毎月1日、15日と土日以外は宮司さんは神社に行かないのだとか。Googleマップに従うと、海を隔てた遙拝所に連れて行かれるので要注意。あまり人が多い神社は、神様が忙しいので振り向いてくれないと聞いたことがあります。なのでこういう静かなところはよりいっそうパワーがもらえそうな気がします。しかし人気がないのはいいんだけど(実際地元の人もほとんど知らない神社でした。地方あるあるですね)、あまりに人気のない日に行くと、こういう空振りもあるわけですな。まあともかくその時は、つき合っていた男性から「お前みたいな変わった人生を俺は送りたくない」「将来結婚とか絶対ない」などとけっこうな否定をされて振られたところでした。ああそうですか、「じゃああんたは、どこに保障があるわけでもない「普通」のためにいろんなものを捨てて生きればいいよ!」とハンカチを噛んで泣いていて、悔しいわ悲しいわで、とにかく良縁を求めていたんです(ってやっぱり恋愛がらみじゃねえかって話ですが)。恋人もどり、仕事きたるしかしその時、ひとつ大きな問題がありました。今回の観光では1日レンタカーを借りて、その車に地元の男性を乗っけていたんですよ、ガイドしてもらおうと思って。ところが、鳴無神社の紹介ページには「好きな人と一緒に行きましょう」とか書いてあるのです。その地元の男性は、とてもいい人だけど既婚者。結ばれちゃ困ります。「カップルだと思われたらダメだ! 車から降りたら口利かないから! 赤の他人、赤の他人でお願いします!」などとお願いして、ホントに車を降りたら目も合わせないようにしてお参りしました(笑)。「神様のことだから、口くらい利いたってどんな関係かわかるんじゃないのか」と彼からは疑問が投げかけられましたが、スルーです。念には念を入れます。静かな海に足を入れて深呼吸し、ここまで来られたことを感謝してお祈りしました。こういう静謐な気持ちになれる時間って大事ですよね。同乗者と口を利かない時点で、邪心でいっぱいという気もしますが。その御利益なのか、新しいお仕事のチャンスは来たし、その日の晩に振られた彼からも連絡がありました。あとはほれ、紙に名前書いて役所に出す緑の字のヤツ、お願いします!そして今、セブ行きの飛行機に乗っているわけですが、目的は“黒魔術の島”と言われるシキホール島です。そこに「ラブポーション」という媚薬があるそうです。教えてくれた女子曰く「めっちゃ効きますよ! 私はこれでほんとに彼ができました!」と言うので行ってきます。ただし彼女は2週間でその彼と別れたそうなので、それホントに彼氏というのか……てか、効き目短くね?あ、これは、道の駅にあるカツオソフトクリーム。何でもかんでもカツオを入れればいいと思うなよ!Text/和久井香菜子前回記事<「ドラクエⅪ」にハマった今年の夏。美しい海に惹かれてセブ島に行くことにした>もチェック!和久井さんがハマった「ドラクエⅪ」。その魅力と楽しみ方とは…!?
2017年09月25日秋はやっぱり、さんまでしょ!秋らしくなってきたかと思えば、蒸し暑い日もまだまだあり…秋雨前線の低気圧で、体調がすぐれないという方も多いのではないでしょうか。とはいえ、スーパーに並んでいる秋の味覚には、心奪われます。食欲の秋です。今年のさんまは例年に比べて痩せていると言われていますが、それでも食べたい、秋のさんま。今日は、さんまを使ったおしゃれな一品をご紹介します。さんまとマッシュルームのパエリアです。秋の味覚たっぷりでワクワクしませんか?さんまとマッシュルームのパエリア6.火を消してさらに10分蒸らす。仕上げにお好みでパセリとレモンをトッピングして出来上がり。見た目も華やかで、秋の味覚をたっぷり楽しめるパエリア。オーブンを使わなくても、フライパンで手軽に仕上げることができます。 秋のごちそうに、ぜひ作ってみてくださいね。Text/太田みお働くおひとりさまにとっての毎日はめまぐるしくて、ゆっくり季節を感じる時間さえ取れないですよね。「休日のたった1時間でいいからほっとしたい…」元外資系バリキャリから一転、丁寧な生活を目指して料理研究家になった太田みおさんが、四季の彩りを簡単に楽しむ「レシピ=歳時記」をお届けします。
2017年09月20日第23回「プレッシャーで自炊する」(c)つめをぬるひと今回は「日々の忙しさにかまけて外食ばかりになってしまう」という投稿。一人暮らしをしている人の自炊事情は様々。もう10年一人暮らしをしている私も、自炊についてはかなり波がある。まずは学生時代。昼は学食、夜はサークルの先輩達とご飯に行くこともあったので、朝に自炊することが多かった。学校に行かない日の夜ご飯は極力作るようにしていた。社会人になってからは、勤めていた仕事がかなり激務だったため、ほぼ外食ばかり。1人でラーメン屋や牛丼屋に入ったり、行ったことのない飲食店に1人で入ってみることに慣れたのもこの時期。私が上京してから知った店の情報はだいたいこの時期に得た。そして、転職して4年ほど経った現在。以前よりは時間に余裕が出来て、自炊をすることも増えた。最近になって気付いたことがある。一人暮らしだとスーパーで野菜を大量に買うことを渋る傾向があるけど、逆にたくさん(量というよりも種類)買っておいたほうが「腐らせてはいけない」というプレッシャーが生まれ、自炊しよう(というかしなければならない)気持ちになれる、ということだ。そんな自分のメンタルをうまく利用して自炊が増えたのかもしれない。とはいえ、朝が弱いので弁当は全く作らない。夜に外食を全くしないわけではない。自分にとって無理なく、程よくプレッシャーを与えながら自炊をするスタイルがちょうど良い。Design&Text/つめをぬるひとこの連載では、爪作家である私が、読者のみなさんが「どんなおひとりさまか?」をヒントに爪をつくります。あなたのエピソードを添えて、送ってください。前回記事<各々がクリエイティブ>もチェック!幸せそうなSNSの投稿が、その人自身を表しているわけではないのです。
2017年09月18日純喫茶経営者たちを悩ませる4つの出来事少しずつ秋を感じる瞬間が増えてきたこの頃。皆さまはいかがお過ごしでしょうか?日が暮れるのが早くなりましたが、心地良い気温の夜が嬉しく、ついどこまでも散歩したくなります。そんな時に、ふと立ち寄れる純喫茶の存在はとてもありがたいもの。しかし、昔ながらの純喫茶は年々その姿を消していくという悲しい現実が。その理由として多いのは、「店主の高齢化」「建物の老朽化」「安価なチェーン店の増加」「後継者の不在」などです。純喫茶を愛する者として、好きな店に足繁く通うことくらいしかできず歯痒いばかりですが、自分が暮らす街の純喫茶に通う方が増えることによって、その地域に根付いた純喫茶は長く続いていくのではないかと考えています。さて、今回は、閉店のきっかけになりうる懸念事項の1つ「後継者の不在」に対する不安を吹き飛ばしてくれる浅草橋の純喫茶を紹介します。 初代マスターから引き継いだ「純喫茶」の思い難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2017年09月15日自分の誕生日をどう過ごすかby Tim Mossholder夏がひと段落つき、秋に差し掛かるころ、私はいつも同じ悩みを抱えている。そう。来たる9/3、自分の誕生日をどのように過ごすべきなのか、いつも困ってしまう。悩みに悩んだ結果、今年はバンジージャンプをしに行くと決めていた。私は元々高所恐怖症で、高い所が苦手。何かに初挑戦したい気持ちと、年を重ねることをきっかけに何か苦手なものを克服しようという気持ちがあり、悩んだ結果として、1万6千円というぼったくりかと思うようなバンジージャンプをするために、4時間かけて茨城県のダムを選んだ。そのバンジージャンプは、地上から100mの高さにある橋から飛び降りることができ、日本一の高さを誇っているようだった。自分でも馬鹿らしい、何をしに行くんだろう、しかも誕生日に一人で……という様々な否定的な気持ちと葛藤しながら、朝5時前に起床し、何本かの電車を乗り継いで北上していく。最寄り駅に着くと、一本の電話が。出てみると、どうだろう。今朝、ダムから水死体が上がり、営業ができないという。「こんなことあんのかよ!」と思いながら、結局何もせず、東京へととんぼ帰りをするのだった。そこのバンジージャンプは、大雨だろうが濃霧だろうが決行されるため、中止になることなんて滅多にないそうだ。結局、特別なことは一切なく、何もしないでただ年を取っただけの日になってしまった。なんだか私らしいなあ、なんて思ったりもする。そう。おひとり様にとっては誕生日の過ごし方というのは、かなりの悩みどころだと思う。一緒に過ごしてくれる彼氏もいないし、友達に祝ってもらうのもなんだか違う気がする。気を遣ってもらいたくないし。家族も違う。誰かと一緒に過ごしていると、無理やり祝ってもらっているというか、一緒に過ごしてもらう感謝の気持ちよりも申し訳なさの方が勝ってしまう。人の時間を自分勝手に無駄にしてしまっているような、周囲の人の優しさを利用しているだけなような。「こんな気持ちになるなら、初めから一人で過ごした方がいいかなあ」と思って、もう何年も一人で好き勝手にしたいことをしている。でも、一人でやりたいことなんて、誕生日でなくてもできる。私で言えば、海外旅行に行くとか、映画を見に行くとか、好きなアーティストのライブに行くとか?特別だけど、わざわざ誕生日にしかできない特別なんかじゃない。何か特別な一日にしなければいけない気がするのに、自分の「特別」が何も思い付かない。毎年毎年、自分の想像力の乏しさにうんざりする。高いものを買ったり、少し贅沢な食事をしたりする? そんなのダメだ! 金で買えるもので、私の心は満たされないんだ!≫【番外編】あたそさんが外資系コンサルとランチデート!?特別な日だからこそ、自分が一番いいと思える体験を私の人生の中で、最もいい誕生日を過ごせたのは、モロッコのサハラ砂漠で星空を観に行った時だった。あれはよかった。日中50℃近くになる、砂以外は何もない砂漠をラクダに揺られながら進んでいく。それだけで異世界を歩いている気持ちだった。ラクダに乗り過ぎて、内股が筋肉痛になることなんて滅多にないと思う。暑さで殺されそうにはなったことも、オレンジっぽい砂と青い空というシンプルな構成でできた景色も、砂の上に布団を敷いて星を見ながら眠ったことも、恐らく絶対に忘れないし、何かあった時にふと思い出して「また頑張ろう」という気持ちになるんだろう。そうそう。そうだよ! そういうことだよ! 体も心もパーフェクトに満たされるような経験を、一年に一度の特別な日にしたい。誰かが一緒にいるから、なんとなく楽しかったとかじゃなくて。お祝いの日だから、ただケーキを食べてみるとかじゃなくて。自分が一番楽しかったと思えるような日を、ちゃんとコーディネートしたい。でも、社会人になってしまった今、時間にも制限があるからそう簡単に飛行機に乗る訳にはいかないし、自分に興味があることも限られている。他の人はどんな風に誕生日を過ごしているのだろうか? 誰かと一緒にいることも、一人でなんとなく過ごすことも憂鬱に思えてしまう、年に一度の特別な日を。来年の9/3は月曜日。有給を取って旅行に行くか、それとも日本でまたアホらしいことに挑戦するのか。多分、今年と同じように悩んで、なんだかんだ何もしない誕生日になってしまう気がする。ただ生まれた日ってだけなのに、これからもこの悩みや心が少し沈んでいくような気持ちを抱えていくのかと思うと、ちょっとだけ気が重い。Text/あたそ<日本ほど一人行動しやすい国はない。「さびしい」の思い込みを取り除こう>もチェック!女ひとりで行動しても浮かない日本がちょっと好きになるかもしれません。
2017年09月12日サッと作れる、オシャレないちじくレシピ【材料】(2人分)いちじく 2個クリームチーズ 50g生ハム 6枚バルサミコ酢 適量オリーブオイル 適量あらびき黒胡椒1. いちじくはくし切りにして皮をむき、生ハムは食べやすい大きさにちぎる。2. いちじく、クリームチーズ、生ハムを交互に皿に並べ、上からバルサミコ酢、オリーブオイルをまわしかけ、仕上げに粗挽き黒胡椒を散らしてできあがり。*バルサミコ酢は、とろみがつくまで煮詰めるとさらに美味しくいただけます。いちじくが美味しいこの季節、晩酌のお供にぜひお楽しみください。Text/太田みお働くおひとりさまにとっての毎日はめまぐるしくて、ゆっくり季節を感じる時間さえ取れないですよね。「休日のたった1時間でいいからほっとしたい…」元外資系バリキャリから一転、丁寧な生活を目指して料理研究家になった太田みおさんが、四季の彩りを簡単に楽しむ「レシピ=歳時記」をお届けします。
2017年09月06日第22回「各々がクリエイティブ」(c)つめをぬるひと今回は「ひとりでいることも好きだが、SNSで充実した投稿を見ると寂しくなる」という投稿。夫婦やカップル、子どもの写真など、人の幸せな様子を見ていると、そう感じてしまうのも分からなくはないが、幸せそうな投稿=その人の本当の姿、ではない。Facebookでは楽しそうな投稿が多いのに、Twitterでは愚痴がまじった本音をつぶやく、という人も少なからずいる。むしろ、その多面性が本当の姿なのでは。先日テレビで「友達とカフェにいる風を装う為に1人で2人分注文して写真を撮る」という女の子を見た。そうまでして…とも思うが、おそらくこれも彼女に言わせれば「個性」だ。だが、「個性」を奇特なもの、人が持ってないものを持っていることだと勘違いしている人が多い。持っているものや髪型、服装を「○○みたい」「○○系」とくくられるのが嫌という人。もっと個性のある人になりたい、と「個性」というものに強い憧れを抱いている人。でも、なぜか、そういう人に限って「まさに○○っぽい」と何かしらのカテゴリに当てはめられてしまう。普通が一番難しい。一見普通のことのように思える「子どもを産み育てること」は「とてもクリエイティブなことだ」となにかのインタビューで読んだことがある。誰かが作った音楽やアクセサリー、イラストを載せた記事も、夫婦や子どもの写真を載せた記事も、その人が作り出した「作品」と思ってSNSを見ると、寂しいというよりも感慨深くなるんじゃないだろうか。Twitterで流れてくる捻くれ且つ的を射た文章。facebookやインスタで見かける幸せそうな姿。どちらも秀逸。どちらもクリエイティブ!どちらが上ということではない。どちらも評価されるべきということだ。今回は、各々の作るものがそれぞれクリエイティブだという主張で爪を作った。Design&Text/つめをぬるひとこの連載では、爪作家である私が、読者のみなさんが「どんなおひとりさまか?」をヒントに爪をつくります。あなたのエピソードを添えて、送ってください。前回記事<転職の行先>もチェック!人生を面白い方向に進ませるのはたったひとつの決断かも…。
2017年09月04日銀座老舗デパートの中のオアシス8月もいつの間にか終わり、本日から9月となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?今年の夏は盆の頃に雨降りが続いたせいか、涼しい日も多く、不思議な毎日でしたね。さて、夏は食欲が出ないという声をよく聞きます。私はあまり気温に食欲を左右されることがないのですが、「食欲の秋」と呼ばれるこれからの季節におすすめのメニューがある店を紹介します。その店があるのは、銀座4丁目の老舗「西銀座デパート」の地下1階。洋服やアクセサリーなど女性向けの華やかなものたちが並ぶ館内を通り抜け、エスカレーターを下ると一番奥に「ブリッヂ」があります。難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2017年09月01日この夏、昼夜忘れてハマったことPixabay今年の夏は、いろんなところへ行きました。ホムラの里で温泉、グロッタの町でカジノ、美しい「白の入江」で景色に見ほれ、南の離島にも北の離島にも行きました。そして、とうとうずっと好きだった人と……。なんの話かというと、7月29日に発売された「ドラクエXI」です、すみません。ドラクエは中毒性があって、ハマる人は昼夜を忘れていそしみ、プレイ中は生活がかなり圧迫されるようですね。意外と和久井の周りでドラクエをしない人も多かったので、ちょっぴりその魅力を解説したいと思います。ドラクエシリーズの基本は「魔王のせいで魔物たちがウロウロしている世界。勇者が現れ、この魔王を倒して平和をもたらすまで」のお話です。自分が操作する主人公は、もちろん勇者。そう、ドラクエって物語なんです。大きな世界地図の中に街やお城が点在しています。勇者は滞在している街で「北に行くと城があるよ」などと情報を得て、その場所に向かいます。新しい街に着いたら、まずは情報収集。いろんな人に話しかけると、「お兄さん、強そうだね。ちょっと頼みたいんだけど……」などと相談事が持ちかけられたり、「怪しい奴め、ちょっと来い!」とか言ってトラブルに巻き込まれたりします。それを解決して次の街に行くと新事実が発覚したり、新たな問題が発覚して、またそれに首を突っ込んだり。こうして旅を続けて各地に残る伝説を聞き集めていくうちに、魔王とは何なのか、なぜ魔王が力をつけるようになったのかなど、その真相が解明されていきます。「あ、前の街で聞いた話の真相はこれなのか!」とか「あの謎の生き物は、ここから来たのか!」なんてわかってきて、思わず画面に向かって叫んじゃいます。「このトラブルを解決したら寝よう」と思っていても、解決すると次の街に行けるようになるので「次の街に行ったらやめよう」となり、街に行ったら新たな謎を持ちかけられるので「このトラブルを解決したら寝よう」となり……プレイ中はずっと寝不足です。ドラクエのドラクエたる所以和久井がドラクエにはまる理由のひとつは「毎回必ず泣いちゃう話がある」ことです。人と人がすれ違って誤解を生み、それが憎悪に発展したり。ひたすら純粋に誰かを想い続けて、長い長い時を過ごしたり。心揺さぶられるミニストーリーがてんこ盛りで、プレイ中にボロボロ泣けます。人の成長を描いた話が多いのも特徴です。弱くてズルイ人間が、勇者たちと触れ合うことで開眼して、立派に成長していきます。悪者かと思っていたら実は大きな事実が隠されていたりとか。ぶっちゃけこの前観た映画よりも、ドラクエのほうが奥が深くて切ない話がいっぱい詰まってたと思います。泣けるだけじゃなくてクスッともします。特に、登場人物がめちゃくちゃキュートです。「ドラクエXI」で同行する「ロウ」というちょっと太めのおじいさんはめちゃくちゃ女好きで、「行くぞ!」などと片手を振り上げた拍子に、バサッとエロ本を落としたりします。街の人たちのセリフもいちいち気が利いてて面白いです。街にはたまにバニーガールの格好をした女子がいて「パフパフしていく?」なんて聞いてきます。「はい」を選ぶと、暗闇に連れて行かれて……というのがシリーズ通しての定番です。大人なら「む?」と思っちゃうようなプチエロいネタが詰まっているところも楽しい。勇者は勝手に人んちに入って壺や樽を割り、本棚をあさりタンスを開けます。そうして何かを発見して「小さなメダルを手に入れた!」とか言うんです。勇者のパーティはすごい窃盗集団なんですが、だれも責めません。この辺は『勇者ヨシヒコ』で揶揄されてましたね。セカオワの「RPG」の歌詞の一部もドラクエそのものでウルウルします。色んな楽しみ方がある…そして旅に出たくなるゲームっぽい要素としては、魔物と戦って勝つと経験値やお金、たまにアイテムがもらえること。そして経験値を積むとレベルがアップします(テレレレッテッテッテーという効果音が鳴ります)。お金で武器や防具を買って、より強い魔物と戦えるように勇者やその仲間たちを強化していき、魔王との対決に備えます。もしあなたの周りの人がドラクエをプレイ中に、「あっ」とか「ひっ」とか叫んで辛そうにしていたら、「メタスラ逃したの?」*と聞いてあげてください。これはホントに悔しい。アイテムを収集してコンプリートを目指す人もいるし、レベル99までレベル上げする人、カジノで遊んでコインを貯め、他では手に入らないアイテムと交換する人ももいて、楽しみ方は本当に人それぞれ。。和久井は物語以外の部分はほぼスルーなのですが、それでも物語のラストにたどり着くまで80時間ほどプレイしました。3DSで遊んでたんですが、「白の入江」の景色がめちゃくちゃ美しく、お話も綺麗だったので、もう今、海に行きたくて仕方がありません。というわけで来月はセブ島に行ってきます。ドラクエほどのトラブルはいらないけど、いろんな人に出会って、新しい発見があるといいなあ。※メタスラ=メタルスライム。倒すと莫大な経験値がもらえるんだけど、憶病でよくダダダダっと音出して逃げられちゃいます。レベル上げするのにメタスラ狩りをするのはドラクエの定番です。Text/和久井香菜子前回記事<ジャニーズの完コピは「よさこい」に活かせるのか?高知よさこい祭りに挑戦>もチェック!ジャニーズソングを完コピできるという和久井さん。高知よさこい祭りに参加した体験を熱く語っていただきました!
2017年08月31日晩年をだれと過ごし、死にたいか?by Arieth「年をとったら、かわいいおばあちゃんになりたい」って、一時期みんな言ってた気がするけれど、あなたはどうですか?私はというと、「かわいいおばあちゃん」にはなれなくてもいいけど、頼むから料理ができない若者をバカにするテレビ番組を見て喜ぶ老人にだけはなりたくないと、強く思いながら日々を過ごしています。それはいいとして、20代や30代くらいだと、まだまだ自分の「死」や「最期」をリアルには想像できません。だけどぼんやりとなら、「晩年をだれとどんなふうに過ごして、そして死にたいか」なんて問題を、考えたことがある人も少なくないはずです。「孤独死」、むしろ理想の最期では?東京都写真美術館にて9月18日まで、『コミュニケーションと孤独』という展覧会がやっています。平成になってから普及したインターネット、SNS、そして孤独死の問題などを、現代の写真家たちがどのように捉えてきたかを知ることができる展示です。今回私が注目したのは、その中でも郡山総一郎氏の「Apartments in Tokyo」というシリーズ。これは、アパートで孤独死を遂げた人々の、生前に遺した部屋を撮影した作品群でした。「Apartments in Tokyo」に登場する部屋は、いかにも「孤独死を遂げた人の部屋」という感じで、見ていてあまり気持ちのいいものではありません。洗濯物が室内干しにしてあったり、炊飯器の中にごはんが残っていたり、醤油の瓶が机の上に置いたままになったりしています。布団にはシミがあって、干していないのかぺたんこに潰れていたりして。ですが、「気持ちのいいものではない」とはいえ、なぜか私は「Apartments in Tokyo」の部屋に、嫌な感じはあまり抱きませんでした。これを見て、「こんなふうに一人で晩年を過ごして、最期をむかえるなんて嫌だなあ」と思う人も中にはいるでしょう。だけど私はどちらかというと、「まあ人間だもの、しょうがないよね」という印象だけが残ったのです。「孤独死」というと、一般的には独身者の問題として連想されがちです。しかし、たとえ結婚していたとしても、妻や夫と同時に旅立つということは無理心中でもしない限りほとんどありえないわけで、つまりパートナーがいる人であっても、最期には必ずどちらかが一人で残る。子供がいる人であっても、昨今は老後に子供と同居するのはレアケースだといいます。本質的には、孤独死のリスクから逃れられる人はだれもいません。感想を強要はしないですが、「こんなふうになるなんて嫌だ」と思うより、「こうなったらまあこれはこれで」と思っておいたほうが、自分にも他人にも優しい気はします。そして今つい「リスク」という言葉を使ってしまいましたが、一人大好きの私は最近、「よく考えたらむしろ、孤独死って理想の最期では……?」と考えるようになってしまいました。以下はそんなわけで、私が考えた「ここが最高!」な孤独死のポイントです。ここが最高!孤独死のハッピーなポイントまず、孤独死の最大のハッピーポイントは、「慣れ親しんだ自宅で死ねる」ということではないでしょうか。病院でたくさんのチューブに繋がれ、家族や友人に手を握られて……なんて最期も悪くはないですが、たとえ一人であっても、思い出がたくさん詰まった自宅で最期の瞬間を迎えられるというのは、考えようによっては悪くない気がします。それから「死」を考えるときによく出てくる命題として、「あなたは愛する人よりも先に死にたいですか? 後に死にたいですか?」というものがあります。前者派の人にとってはやはり自分の最期として孤独死は望ましくないでしょうが、後者派の私にとっては、「孤独死=大切な人の最期を見届けることができた(後に大切な人を残さない)」ということで、こちらもやはり考えようによっては悪くない。もちろん、自宅で一人亡くなってから何日も見つからないままでいると、後に発見する人や清掃業者に面倒をかけるので、自分の身に異変があったらなるべく早くまわりに気付いてもらえるよう、日頃のコミュニケーションや手配は怠りたくないところですが。孤独死は現在、貧困など社会的弱者の問題と絡むので、なかなか諸手を上げて「理想の死に方だ」とは言えない部分もあります。でも、社会の高齢化が進むにつれて、孤独死が珍しい死に方ではなくなることはほぼ確実です。「死後に発見しやすいしくみ」さえ作れたら、一人で死ぬこと自体はそんなに怖くないと私は思うのですが、どうでしょうか。理想の晩年と死に方の話、ぜひ考えてみて下さい。Text/チェコ好き前回記事<「ひとり」も「ふたり」も、どの関係が尊いかなんて他人にはわからない>もチェック!二人でいるのに孤独を感じることのほうが寂しいかもしれない。
2017年08月29日