「心療内科」と掲げられた病院を見かける機会が増えた昨今。何か理由があるのでしょうか。心身医学専門医で心療内科医の野崎京子先生に詳しいお話を伺いました。■「精神科は行きにくいから、心療内科へ」と考える現実――街で「心療内科」が増えたように思います。実際のところはどうなのでしょうか。野崎先生心療内科は、1996年(平成8年)8月に、当時の厚生省(現・厚生労働省)から、「標ぼう」を認められました。「標ぼう科」とは、病院や診療所が外部に向けて当院は「○○科」です、と看板を出す、広告をすることが認められている診療科のことです。内科、外科、小児科、皮膚科 精神科などの表記はそれに該当します。心療内科はまだ歴史が浅いため、日本の心療内科医の人数は精神科医に比べて圧倒的に少なく、2012年8月現在では、「日本心療内科学会」認定の専門医は全国で129名、「日本心身医学会」認定の専門医は全国で586名というのが実情です。ですが、この15年余りで都市部を中心に、心療内科のクリニックの数は急増を続けています。それには、「心療内科クリニック」を開業する医師の大半は心療内科医ではなく、実は精神科医であるという現実があります。精神科医がクリニックを開業するとき、「精神科」という看板をあげると患者さんが通いにくいだろうと考え、「心療内科・精神科」と表現することが多いのです。標ぼうの方法については、現在の医療法では規制はなく、どの科を掲げてもよいことになっています。ですから、わざわざ患者さんが通いにくいだろう「精神科」という看板を表に出す医師は少ないのです。また、うつ病などの症状で病院を探す患者さんは、「精神科は行きにくいから、心療内科に行こう」と考える人が圧倒的に多い、というデータもあります。これらの理由が重なって、街に心療内科が増えているわけです。――心療内科に通っているつもりが精神科だった、ということがあるのでしょうか。野崎先生大いにあります。現在の確かな数字は出ていませんが、「心療内科の開業医の8~9割が精神科医」だと言われています。それが患者さんにとって支障があるかどうかというと、心療内科は「内科」の領域であり、内科としての疾患を診察しますから、訪れた精神科医が内科の症状について研究・研さんを積んできたかどうか、適切な診断ができるかどうかがポイントとなるでしょう。――心療内科の専門医を探すにはどうすればいいのでしょうか。野崎先生専門医は「日本心療内科学会」、「日本心身医学会」が実施する試験制度の受験資格を満たし(関連研修施設において5年以上の心療内科学臨床研修を修了していることなど、多岐にわたる)、試験に合格した医師に与えられる資格です。心療内科の専門医を探すには、「日本心療内科学会(」、もしくは「日本心身医学会(」のホームページから、「専門医一覧」をご確認ください。後者は氏名の掲載のみですから、電話で問い合わせてください。また、まずはかかりつけ医を訪れ、体と心の症状について率直に相談をすることをお勧めします。適切な医師を紹介してくれることもあるでしょう。――ありがとうございました。心療内科が増加する背景には、標ぼう科となった歴史や医師による開業に関する実情、また、患者にとっては受診しやすいという理由があるとのこと。病院を探すときの参考になりそうです。監修:野崎京子氏。心身医学・ペインクリニック・麻酔科専門医。京都大学医学部卒。国立京都病院、大阪赤十字病院などをへて、現在、心療内科・ペインクリニックの野崎クリニック院長。著書に『心療内科女医が教える人に言えない不安やストレスと向き合う方法』(マガジンハウス1365円)がある。野崎クリニック:大阪府豊中市新千里南町2-6-12北大阪急行桃山台駅から徒歩7分TEL: 06-6872-1841岩田なつき/ユンブル)
2012年11月10日ゼスプリ インターナショナル ジャパンは9月24日、一般内科医105名を対象に「免疫力に関するアンケート調査」を実施した。まず、一般内科医師に対し、「診察を行う中で免疫力が弱まっている人が増えていると感じますか?」と質問。すると、「増えている(46.7%)」、「非常に増えている(6.7%)」と回答した割合が半数以上となった。一方、「免疫力が弱まっている人が減っている」と答えた医師は0%で、医師は免疫力の低下傾向を実感しているようだ。続いて、免疫力低下の最大の要因について尋ねると、1位は「ストレス」(42.9%)、2位は「疲労」(14.3%)だった。その他、「食事」(12.5%)、「睡眠」(7.1%)、「運動」(7.1%)などが続いた。実際に診察する医師の多くが、ストレスを免疫力低下の最大の要因に挙げるほど、ストレスは現代人の生活に悪影響を及ぼしていることこと分かった。また、免疫力が弱まっていることを本人が「自覚していない」ケースについては、52.4%の医師が「多い」と回答。「非常に少ない」「少ない」と回答した医師は7.6%にとどまった。免疫力改善策について尋ねたところ、有効な改善策ベスト3は、「睡眠」(63.8%)、「気分転換・ストレス対策」(54.3%)、「食事」(44.8%)となった。さらに、免疫力と生活習慣の関連性について聞くと、9割近くの医師が「免疫力は日々の積み重ねで構築されると思う」と回答。毎日の健康習慣が免疫力を左右するようだ。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年10月18日歯科医でモデルという異色キャラ“美しすぎる~”というフレーズが各所で聞かれる昨今だが、今度は「美しすぎる歯科医」が話題を集めている。話題の人物は、東京歯科医科大大学院に在学する歯科医でモデルの関有美子。日本テレビ系「踊る!さんま御殿!!」などバラエティ番組にも積極的に出演し、知名度を上げてきている。歯科医として、同大学の歯学部付属病院で診察にたずさわるかたわら、人気ファッション誌「AneCan」などで、7年前から読者モデルとしても活躍している。現在では、このほかにも各メジャー誌から引っ張りだことなっている。やはり歯の美しさにはひときわプロ!歯科医ということもあって、やはり歯の美しさ、口元の美しさは、ひときわプロ級だ。本人も美しい白い歯が印象的で、9月には、自身が監修した「音波式電動歯ブラシセット D-beaute」(角川書店)を発売している。こちらはコスメ感覚のデザインでコンパクトな本体となっており、携帯にも便利な電動歯ブラシ。いつでもケアができ、歯の美しさと健康を保つことができるという。関は今後モデル業のみならず、女優にも挑戦したいと考えているとか。多彩に活躍の場を広げる彼女の今後に注目が集まる。元の記事を読む
2012年10月10日いい歯科医に巡り合いたい……と思う人は多いのではないでしょうか。いっそ、歯科医に聞いてみようと、歯学博士で歯科・口腔衛生外科の江上歯科(大阪市北区)院長・江上一郎先生に「歯科医から見たよい歯科医」についてお話を伺いました。■治療中心系、わくわく系、専門系……タイプがある「口コミや近所で評判の歯科医院があればまず訪れてみるとよいと思いますが、やはり、いい歯科医かどうかを決めるのは、患者さん自身です。『自分で確かめよう』と、積極的な気持ちで探しましょう」と江上先生。「われわれの業界では、歯科医院をタイプ別に分類しています。口コミがなく探すときには、まずどのタイプの歯科医院にかかりたいかを想定してからホームページや電話帳などで探してください」と、江上先生は、歯科医院を次のようにタイプ分けします。・治療中心系……一般的な「歯科」。一番多いタイプ。・わくわく系……子どもやファミリーを対象にしている。スタッフが白衣ではなくエプロンを着用したりと、歯科医院らしくない雰囲気を出している。・専門系……「歯科」一般のほか、子どもの治療を専門的に行う「小児歯科」、親知らずを抜く、歯根のうみの袋の摘出など、手術を含めた外科的処置の技術を持つ「歯科口腔(こうくう)外科」、歯並びや噛(か)み合わせを整える「矯正歯科」、インプラントを主流に扱う「インプラント科」、口臭を気にされる方を対象とした「口臭外来」など、専門性を掲げている。・予防系……歯周病予防に力を入れている。定期的に美容院感覚で通う人が多い。自費診療。・審美系……歯と口の美を追究し、美容目的の整形を行う。自費診療。・エンド系……根管治療に特化。抜歯をせずに、完全無菌状態で歯の神経が入っていた管(根管)、または歯根部の嚢胞(のうほう。分泌液がたまり袋状になったもの)の治療を行い、歯の保存を目的とする。自費診療。江上先生は、こう説明を加えます。「それぞれの専門に特化している場合と、複数の専門科を掲げている医院とがあります。歯科口腔外科は大学病院や総合病院にはありますが、個人のクリニックでは全体の1割ぐらいでしょう。審美系は都会に多いタイプです。具体的には、例えば、『親知らずに虫歯ができた。どうも抜いた方がよさそうだ。仕事が忙しい』場合は、ホームページで、『職場から通いやすい距離で、歯科口腔外科を専門にしている医院をピックアップする』と探してみましょう」■治療予算を相談できる医師を見つける次に、訪れたときのチェックポイントについて、江上先生に教えていただきましょう。・初診時、いきなり訪れるのではなく、電話をして、「歯ぐきのうずきが市販の鎮痛薬を3日ほど飲んでも治らないのですが、診てもらえますか」などと、症状を具体的に伝えてください。その対応によって訪れるかどうかを判断します。・受付のマナーが良い、全体に明るい雰囲気というのは、感じが良いだけではなく、経営に余裕があり充実したスタッフ教育を反映していると考えられます。・ある程度新しい設備がそろっていること。治療時間や治療中の痛みなど、患者さんの負担を軽減します。・いきなり治療を始めず、治療方法について説明をしてくれるかどうか。また、質問がしやすい雰囲気であるかどうか。患者さんが急いでおられたとしても、医師はきちんと説明をして同意を得てから治療にかかるべきです。・治療の予算を聞いてくれるかどうか。聞いてくれつ場合は、予算内で最大限の治療効果について考えてくれるでしょう。自費診療の場合は価格表示がされているかどうかも重要です。・子どもや学生、高齢の患者さんが多いと、優しく丁寧な治療を心がけているのだな、と推察できます。・清掃が行き届いている、薬のにおいが充満していない(空気清浄ができている)、スリッパが抗菌であるなど、院内の清潔度合いを見ます。清掃状態は、感染症の予防から、クリニックとしての心構えが反映されています。ありがとうございました。これからは積極的にこれらをチェックし、自分に合うかかりつけの歯科医を自らの判断で見つけたいものです。監修:江上一郎氏。歯学博士。専門は口腔(こうくう)衛生。歯科・口腔外科の江上歯科院長。江上歯科大阪市北区中津3-6-6阪急中津駅から徒歩1分、御堂筋線中津駅から徒歩4分TEL:06-6371-8902藤井空/ユンブル)
2012年09月22日体に不調を感じたとき、ふと頭をよぎる健康診断や人間ドック。ちまたに情報があふれるこのごろ、なんだか自分の身が気になります。そこで、内科医で大阪府内科医会副会長・泉岡医院院長の泉岡利於(いずおか・としお)先生に詳しいお話を伺いました。■健康診断にはない消化器官、がん検査がある始めに、健康診断と人間ドックの違いについて、泉岡先生はこう説明します。「どちらも体に異常がないかを確認するための検査です。『健康診断』は学校や職場、自治体で行われ、法令によって実施が義務付けられています。これに対し、『人間ドック』は任意で行う、つまり、希望する人が自分で医療機関を選んで受けに行く、という違いがあります。人間ドックは、『個人的に、健康診断より一歩踏み込んだより詳しい検査』だと言えます」具体的に、健康診断や人間ドックではどんな検査を行うのでしょうか。「健康診断では、主に心臓病、肺疾患、糖尿病などを対象に7~24項目の検査を行います。血液検査をすることがありますが、それで体のことがすべて分かる、と勘違いをされている方が多いように感じます。分かるのは、貧血、コレステロール値、肝臓や腎機能、糖尿病、痛風についてです。胃や腸などの口から肛門までの消化器官の異常やがんについて、詳しい症状までは分かりません。人間ドックでは、半日、一日、1泊2日など、費用や時間面で選択するコースによりますが、例えば、一日ドックでは約30項目を調べることになります。健康診断には含まれない、胃カメラ検査、腹部のCTやエコーによる検査、膀胱(ぼうこう)のエコー検査などを行います。がんのごく初期を発見するなど、健康診断では見つからない病気が分かる場合もあります。希望に応じて、医師の紹介なども行います」(泉岡先生)■事前に、自分に合う検査を医師に相談する人間ドックの初心者は、医師に何を質問すればいいのか分からないと思いますが。「人間ドックを受ける前に、自分に合っているのはどのような検査なのかを率直に尋ねるといいでしょう。『まあ、いいか』などと思わないで、自分が気になっている症状を細かく伝え、『この検査で不安を解消しよう』という姿勢で受けてください。また、検査結果の説明にはもちろんですが、結果を記した書面には、医療に関する専門用語が羅列されています。分からないこと、納得ができないこと、不安に思うことは、遠慮せずに担当医に質問しましょう」(泉岡先生)費用面の心配もあります。「患者さんから『家族が健康保険で検査を安く受けられたので、私もお願いします』と言われることがありますが、健康保険とは、本来『病気の人』への治療や検査に対して、医療費を保険者が一部負担する制度です。ですから、健康な方が体のチェックを行う場合、健康診断も人間ドックも、保険は適用されません。人間ドックは現在(2012年5月)、半日コースでおよそ3万円ぐらいからでしょう。職場で団体割引などがある場合もあります」(泉岡先生)人間ドックには、いつ、どのようなタイミングで行けばよいでしょうか。「体に異変を感じたら、年齢にこだわらず、より早く自分の体を見つめ直す機会だと考えて受けることをお勧めします。日本人男女の悪玉コレステロールの平均値は、欧米諸国の平均値をすでに上まわっている、という報告をご存知ですか。日本では今、ファストフードや肉食など食事の欧米化によって、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病など、生活習慣病の若年化が急速に進んでいます。また、乳がんや子宮がん、胃がんなどのように20代の女性の発症率が高いがんもあります」(泉岡先生)人間ドックが身近に思えてきました。人間ドックで健康意識が高まった、という声も耳にします。そろそろ考えるべきかもしれません。監修:泉岡利於氏。医学博士。内科医、大阪府内科医会副会長。医療法人宏久会泉岡医院院長。泉岡医院大阪市都島区東野田町5-5-8JR/京阪電鉄京橋駅中央出口から徒歩7分TEL:06-6922-0890岩田なつき/ユンブル)
2012年08月18日毎日疲れることばかり、何かと否定的、悲観的に考えてしまう日々において、少しでも前向きな考え、発想を持つことはできないものでしょうか。心身医学専門医で心療内科医の野崎京子先生にお話を伺いました。■人間は悪い出来事の方を多く記憶する習性がある物事を否定的にとらえる思考の傾向について、野崎先生はこう説明します。「『人間の感情記憶とは、自分にとって良い出来事より、悪い事象の方を多く記憶してしまうものだ』と複数の医師、学者、芸術家たちが言っています。人間は幼いころから、誰かに見下された、悪態をつかれた、いじめられたなどマイナスイメージが記憶に残りやすい習性があると言えます」思いあたります。「そのつらい思いが膨らんだり、マイナスの記憶に支配されたりすると、職場や家族、親しい人との人間関係にまで影を落とすことも多いでしょう。それを乗り越えて少しでも生きている充実感を高めるには、あらかじめ、『人は誰しもマイナス面を多く記憶してしまう習性がある』ことを知っておき、かつ、思考を前向きに持って行くように意識をすることから始めましょう」と、野崎先生は、その方法について次のように続けます。「医療現場で心理療法として実践されている思考法を一つ紹介しましょう。まずは、自分が幼いころ、親や身近な人に『してもらったこと』を思い出してみてください。誰しも、人に育てられたから今があります。たとえ親や誰かからひどい仕打ちを受けた記憶があるとしても、思い起こせば、与えられてきた衣食住教育を始め、何かしら『誰かにしてもらったこと』はあるはずです」(野崎先生)■「自分がして返したこと」を思い出す「してもらったことがどうも思い浮かばない」、「悪いことも連想してしまう」という場合はどう考えればいいでしょうか。野崎先生は、「『してもらった』人に対し、『自分がして返したこと』を思い出してください。例えば母親であれば、母の日にプレゼントをしたなど、相手が喜んでいたことを考えます。始めは、面倒だったりつらい作業だったりするかもしれませんが、3分も考えていたら、続けて考えることができるでしょう」(野崎先生)実践すると、「してもらったこと」より、「して返したこと」の方が圧倒的に少ないことに気付きました。野崎先生は、こう話します。「たいていはそうなんです。あらためて考えると、よくしてもらった人に対して、『自分がして返したこと』はあまりありません。これも人間の習性であること、また、自分の負の意識の思い込みに自ら気付いたとき、人への感謝の気持ちが生まれます。そのとき、自らの内にある憎しみやうらみを、少しずつプラス発想に変える機会を得たといえるでしょう」さらに、「職場の人間関係などでも同様に考えましょう」と野崎先生。「上司や同僚にしかられて傷ついた、家族や恋人、パートナーともめごとが絶えないなど、身近な人と感情的なトラブルを抱えているとき、その人に『してもらったこと』と、『して返したこと』を思い起こします。紙に書き出すと、よりわだかまりの解消につながりますが、通勤時間やバスタイムなど、ちょっとした時間に少し考えてみるだけでもかまいません。習慣化すると、何かマイナスの出来事があったとき、条件反射的にプラス思考ができるようになっていきます。何事にも否定的にとらえてしまうときは、自分を見失い、ささやかでも幸せを感じるような感性を持てないでいるでしょう。『してもらったこと』を自分の中で人生の輝く出来事としてクローズアップし、人の良い面、人から受けた恩に注目する練習を積みましょう。やがて、プラス思考につながるでしょう」つらいことがあれば、誰かにしてもらったこと、愛されたこと、それに対して自分がして返したことを思い起こす――。すぐに取り組みたい思考法です。監修:野崎京子氏。心身医学・ペインクリニック・麻酔科専門医。京都大学医学部卒。国立京都病院、大阪赤十字病院などをへて、現在、心療内科・ペインクリニックの野崎クリニック院長。著書に『心療内科女医が教える人に言えない不安やストレスと向き合う方法』(マガジンハウス1,365円)がある。野崎クリニック:大阪府豊中市新千里南町2-6-12北大阪急行桃山台駅から徒歩7分TEL: 06-6872-1841海野愛子/ユンブル)
2012年08月11日日本人の20%が睡眠について不調を抱えている、と言われます。そんな中、睡眠にまつわる言い伝えや都市伝説などをよく耳にしますが、本当のところはどうなのでしょうか。内科医で大阪府内科医会副会長・泉岡医院院長の泉岡利於(いずおか・としお)先生にそれらの真意についてお話を伺いました。■伝説1・眠り始めの3時間ぐらいが大切!?メカニズムとして、正しいのでしょうか。「健康な人の睡眠には、眠りが浅いレム睡眠と、深いノンレム睡眠という状態があります。この2つを合わせて約90分を1サイクルとし、起床まで繰り返すわけです。そこで、最初の2サイクル(約3時間)、いわゆる寝入りばなのノンレム睡眠からレム睡眠へのスムーズな移行がその後の周期、睡眠のリズムに影響すると言われています。また、体の成長や疲労回復に欠かせない成長ホルモンは、入眠後最初にくる深い睡眠時、つまりノンレム睡眠のときに最も多く分泌されます。このことからも、眠ってからの3時間までに深い睡眠に入ることが良質な睡眠と言えるのです」(泉岡先生)■伝説2・一晩で3時間程度の短眠でもぐっすり眠ればOK?いわゆるナポレオンの短眠伝説は本当でしょうか。「『平均寿命と睡眠時間には関連があり、睡眠時間が7~8時間の人が最も平均寿命が高い』という医学的な研究結果があります。これをふまえ、医学的に、人間は最低限4時間の睡眠が必要と言われています。最適な睡眠は生活環境とともに個人によって異なりますが、質とともに量、つまり時間も重要です。睡眠時の心身の働きを考えると、継続的に健康な状態を維持するためには、3時間では量が不足しています」(泉岡先生)■伝説3・食べたあとすぐに寝ると牛になる!?子どものころに散々言われたこの言い伝え。根拠はあるのでしょうか。「もちろん実際に牛になるわけではありませんが、食後すぐの睡眠は太りやすくなる、という意味でそう言われているのでしょう。これには、全身の機能を調節する自律神経が深くかかわっています。自律神経には、交感神経と副交感神経の2つがあり、切り替わりながら相互に働き合っています。そのうち、睡眠時や食事中など、心身共にリラックスしているときに働くのは副交感神経のほうですが、これが強く働くと胃腸の消化吸収力が高まります。ですから、食後すぐに寝ると消化吸収力が高まり、それだけ栄養分が蓄えられて太りやすくなると言われるのです」(泉岡先生)■伝説4・寝る直前の入浴は体に悪い!?風呂で温まったらすぐに眠りたいのですが、入浴直後の睡眠は熟睡できないと聞きます。「人の体温にはリズムがあり、夜には下がり始めて早朝には最も低くなり、その後、昼から夕方にかけて高くなります。夜は体が睡眠への準備をしはじめて、体温が下がるのです。睡眠の状態は、この体温のリズムに影響を受けます。風呂上りにバタンキューと寝ると、就寝中に体温が下がって風邪をひく、というのはよくあることです。睡眠直前に熱いお風呂に入ると交感神経が刺激されて体の準備と逆行します。ですから、就寝したい時間の約1~2時間前までに入浴し、ほてりが冷めたころ布団に入るのがぐっすり眠るコツです」(泉岡先生)■伝説5・日光を浴びるとよく眠れる!?日光というと紫外線対策として避けられがちですが、浴びたほうがよく眠れるというウワサはどうなのでしょうか。「日光にあたることによって、感情のコントロールにかかわる『セロトニン』という物質が体内で作られます。このセロトニンは、分解されて睡眠を促す『メラトニン』に変化します。ですから、日光を浴びる時間が長いほど、快眠を得やすくなります。寝つきが悪いという方は、朝の通勤時にひと駅多く歩く、ランチの時間に外に出て歩くなどして、日光浴をすることをお勧めします」(泉岡先生)■伝説6・トシとともに寝つきは悪くなる!?20代同士でも「眠りが浅い」、「年では?」という会話をよくします。「睡眠時に分泌される『メラトニン』は、抗酸化作用や免疫機能を高める働きもある物質で、いわゆる若返りホルモンと言われています。その分泌量は、10代後半から徐々に減少します。このことから、年齢を重ねるごとに、不眠の症状が現れやすい、眠りが浅くなる、夜中に何度も目が覚めるなどということと関係していると考えられています」(泉岡先生)数ある中から6つの伝説を検証しましたが、睡眠のリズムのことを始め、寝入りばなが大事、睡眠の約1~2時間前に風呂に入る、日光を浴びるなど、いずれも快眠へのヒントとなりそうです。監修:泉岡利於氏。医学博士。内科医。大阪府内科医会副会長。医療法人宏久会泉岡医院院長。泉岡医院大阪市都島区東野田町5-5-8JR/京阪電鉄京橋駅中央出口から徒歩7分TEL:06-6922-0890岩田なつき/ユンブル)
2012年08月05日最近、「かかりつけ医」という言葉をよく耳にします。何やら「気楽に行けそうな近くの診療所」という響きですが、「意外にどういう存在か知られていない」と言うのは、大阪府内科医会(大阪府下の内科診療所の医師が集まる団体)会長で、糖尿病専門医の福田正博(ふくだ・まさひろ)先生。医療の連携システムなども含め、詳しいお話を伺いました。■かかりつけ医の紹介だと、大病院での検査や入院の予約が早い――「かかりつけ医」とは、何をする医師なのでしょうか。福田先生「大病院志向」と言って、どんな病気でも大きな病院の方が安心だという風潮があります。しかし大病院では、「待ち時間があまりに長い」、「いつの間にか担当の医師が変わっていた」、「3時間待って診察は3分だ」などのデメリットも少なくありません。また大病院とは、より重症の、より専門的な治療を必要とする入院患者さんに対応することが本来の役割ですが、軽症の外来患者さんが多いと業務に支障をきたします。それをできるだけ解消しようと、現在は国の施策で医療機関の機能分担が進み、「病院は入院診療を受け持ち、外来の診療は診療所が受け持つ。その上で、病院と診療所が連携してネットワークを整える」というシステムができつつあります。日ごろは近所のかかりつけ医で健康の管理をしてもらい、検査や入院が必要なときは、どの科の専門医に受診するのがよいのか、どの専門病院、総合病院が良いのかが相談でき、紹介してもらえるというわけです。病院での検査や入院が終了すれば、またかかりつけ医で診療や薬の処方、管理を行います。――それは便利ですね。何かがあれば、まずは、かかりつけ医に駆け込むことによるメリットはたくさんありそうです。福田先生風邪をひいて熱がある、じんましんが出た、胃の不調が続く、不眠症かも?ねんざをしたなど、いろいろな体調不良のときにまず相談できるのがかかりつけ医だと考えてください。それに、街の開業医であるかかりつけ医は、待ち時間が少ない、医師とのコミュニケーションが成り立ちやすい、過去のいろいろな症状を把握されているなど、患者さんにとって安心、便利な点は多いでしょう。入院や検査が必要となった場合でも、かかりつけ医からの紹介で大きな病院へ行くほうが、その病院に直接行くよりも早く予約が入る、待ち時間が少ないということも多いようです。これはよく不思議に思われますが、「医療連携システム」上、連携している診療所からの紹介の場合は、予約の枠が別に設定してあり、通常より早くなることが多いのです。――かかりつけ医の上手な探し方を教えてください。福田先生家族や近所、周囲の人が通っている診療所の評判を聞く、いわゆる口コミ情報で探されるのが一番手軽でよいでしょう。しかし注意点が一つ、やはり医師と患者さんにも相性というものがありますので、その点は一度訪れてみて、ご自分で確かめることが大切です。病気でないとき、例えばインフルエンザの予防注射や健康診断などで受診してみるというのもいいでしょう。ポイントは、その医師が自分にとって話しやすいこと、話を聞いてくれること、丁寧に説明してくれることでしょう。ただし、にこにこと優しいだけでは不十分です。医師は患者さんのためにならないときは厳しく指導しないといけないこともあります。ご自分の健康にとって、本質的に良いアドバイスをくれる医師かどうかが重要でしょう。一方で、かかりつけ医が何でもできるスーパードクターである必要はありません。それよりも、健康管理について何でも相談に乗ってくれる、守備範囲以外の症状を発見した場合はすぐに適切な専門機関を紹介してくれる医師が理想です。また、大阪府内科医会では、会が市民の皆さまに推薦できる医師を認定する「大阪府内科医会推薦医」の制度を独自に設けていて、ホームページに一覧を掲載しています。そういう活動をしている地域もあると思いますので、インターネットなどを活用し、積極的に情報を探してください。――ありがとうございました。体調が悪いなと思ったときは家族や友人に相談しますが、その延長で、健康管理や薬について専門的な相談をすることができる、いざ病気というときに頼りになるのがかかりつけ医のようです。早速探してみてはいかがでしょうか。監修:福田正博氏。大阪府内科医会会長。医学博士。糖尿病専門医。ふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)院長。名医として数々のメディアで紹介され、著書に『糖尿病は「腹やせ」で治せ!』(アスキー新書)、『専門医が教える 糖尿病ウォーキング!』(扶桑社新書)、『専門医が教える5つの法則「腹やせ」が糖尿病に効く!』(マガジンハウス)、最新刊の『専門医が教える 糖尿病食で健康ダイエット』(アスキー新書)は、一般の人対象のヘルシーダイエットの実践法が分かりやすく述べられていて話題になっている。(品川緑/ユンブル)
2012年08月02日子どものときから内向的で、社会人になった今も人見知りをしてしまう性格だ、という人はけっこういます。なんとか改善したいのですが、いい方法はあるのでしょうか。心身医学専門医で心療内科医・野崎クリニック院長の野崎京子先生にお話を伺いました。■名刺配りが苦手でプチうつになる新入社員も「『人見知り』とは、本来は乳幼児が知らない人を見て、嫌がったり怖がったりすることを指します。本能的に危険を避けようとしているわけですが、現在は大人についてもよく使い、コミュニケーションが苦手という場合にも言うようになりました。私もどちらかと言うと、人見知りな方です。同業者の集まりなど社交的な場所で、積極的に名刺を配ってにこやかに雑談をする、などということは苦手です」と、だからこそ人見知りの人の気持ちが分かる、と言う野崎先生は、その克服についてこう続けます。「積極的に名刺を配る人にあこがれて、仕事上、あんなふうに動きたいと思うことがあるかもしれません。新入社員のころは特に、それができないから仕事で差し支えるといって、五月病やプチうつになる人もいます。でも、そういう体験をしたのなら、むしろ、『早くに自分の弱点が分かってよかった』と考えるようにしましょう。すると、仕事でもプライベートでも、毎日が建設的に動き出すようになります」さらに深く自分の弱点を見極めるために、野崎先生はこうアドバイスします。「人見知りだから営業的にはダメだ~と思い込まないで、自分のいい部分、例えば、『おとなしいけれど人の話をじっくり聞くタイプだ』、『温厚で人とのトラブルが少ない』、『内気だけど自分のこだわりを生かして技術的な仕事に就きたい』などと発想を転換し、落ち込む時間を自分の個性を生かすための時間に使うようにしましょう。気持ちも楽になるでしょう」■いい格好をしようとして緊張する「『近々、会社でプレゼンをするので、緊張しない薬はないか』、と心療内科を訪れる人もいます」と言う野崎先生は、緊張することについて、次のように分析します。「多かれ少なかれ誰しも経験はあるでしょうが、緊張とは、相手に対する警戒心とか、自分をよく見せよう、いい格好をしようと背伸びする意識から起こります。よく緊張する、人見知りするという人は、大人になっても危険を回避したい、また、自分をよく見せたい、褒(ほ)められたいという気持ちが強い傾向にあります」では、「ありのままの自分で評価してもらえればいい」と思うと、緊張感や人が怖いと言った気持ちからは開放されるのでしょうか。「そうです。自分の利益、自分そのものを守る気持ちより、ほかの人が心地よくなることを考えて行動すると、人見知りは改善されていくでしょう」(野崎先生)具体的な改善方法として、「うつ病になると、あいさつもできなくなることがあります。逆もしかり、です。ですから、まずは自分からあいさつをする習慣を身に付けましょう。相手があいさつをしてこないから自分もしない、ではなく、自分から思い切ってあいさつをする。すると、相手はさわやかな気分になり、次からはあいさつをしあうようになります。コミュニケーションが成立すると、あいさつの楽しさが分かってきます。出世しなきゃ、上司に気に入られるように立ち回らなきゃ、と画策する前に、行うべきはあいさつです」と野崎先生は、「受け身ではない自ら行うあいさつ」を勧めます。最後に、こうも付け加えます。「社交辞令が得意に見える人でも、よく聞けば、自分が言いたいことを言っているだけ、売りたいものを売っているだけ、ということもあります。不器用でも、誠実に仕事をこなして粘り強く相手の要求に応えていこうとする姿勢であれば、必ず正当な評価を得るときがくるでしょう。自分の性格や個性を悲観したり、マイナスに思ったりすることは何もありません」何だか気が軽くなりました。あいさつひとつとっても、相手の出方をうかがってしまうことがあります。自分も相手もさわやかな気持ちになれるよう、小さなアクションを積み重ねることが人見知り克服への道だと言えそうです。監修:野崎京子氏。心身医学・ペインクリニック・麻酔科専門医。京都大学医学部卒。国立京都病院、大阪赤十字病院などをへて、現在、心療内科・ペインクリニックの野崎クリニック院長。著書に『心療内科女医が教える人に言えない不安やストレスと向き合う方法』(マガジンハウス1365円)がある。野崎クリニック:大阪府豊中市新千里南町2-6-12北大阪急行桃山台駅から徒歩7分TEL: 06-6872-1841海野愛子/ユンブル)
2012年07月02日体のだるさが取れない、太りやすい、風邪をひきやすい……。そんなとき、「低体温症では?」という言葉をよく耳にします。内科医で大阪府内科医会副会長・泉岡医院院長の泉岡利於(いずおか・としお)先生に、その真相と要因や改善法について伺いました。■筋肉がついてなくて、ぽっこりお腹体型は要注意――低体温症の定義はあるのでしょうか。泉岡先生○○℃以下は低体温だという明確な定義はありません。20~30代の成人男女の正常な体温の目安は、36℃前後です。体温は、生まれたばかりの赤ちゃんは37℃程度あり、年齢とともに下がります。ですから、例えば35℃台なら低体温だとは、一概には言えません。ただし、若い世代を中心に、低体温による弊害が叫ばれているという事実はあります。また、家庭用の体温計は汗や室温の影響で低く表示されやすいので、気になったときは環境を整えてもう一度計り直しましょう。このとき、高く表示された方がより実際の体温に近いと考えてください。――どうして低体温になるのでしょうか。泉岡先生原因には運動不足、食事のバランスが悪い、無理なダイエットなどが挙げられます。低体温の場合、正常な体質の人より基礎代謝が低い傾向にあります。基礎代謝とは、人が動かずにじっとしていても、呼吸や内臓の動き、体温を保つことなどに消費するエネルギーのことです。エネルギーの大部分は、筋肉によって消費されます。そのため、同じ体重でも脂肪が少なく、筋肉量が多い人の方が基礎代謝は高くなり、消費するエネルギー量も多くなります。ですので、運動不足による筋肉量の低下、偏食やダイエットで筋肉のもととなるタンパク質の摂取不足の場合、基礎代謝が低下し、低体温となりやすいでしょう。特に、筋肉の中で大きな割合を占める、太ももの前と後ろの両側、胸、背中の4カ所の筋肉があまりついていない、でもお腹はぽっこりという方は、基礎代謝の低下が考えられます。■体がだるい、しんどい、風邪をひきやすい――低体温が原因で起こりうる症状について教えてください。泉岡先生基礎代謝の低下は、自己免疫機能の低下や循環の悪化につながります。ですので、体がだるい、しんどい、寒い、風邪をひきやすい、太りやすくやせにくいなど、さまざまな症状につながります。――低体温かもしれないと思ったときは、どのようにすればいいですか。泉岡先生基礎代謝を高めると、体温も上がりやすくなります。まずは、筋肉量を増やすことを考えてください。適度な運動をする、筋肉のもととなる肉や魚介類、卵、大豆製品、乳製品などのタンパク質をバランスよく摂取しましょう。また、基礎代謝が高くなると消費するエネルギー量が増え、脂肪の燃焼につながります。健康的なダイエットとなるでしょう。「低体温かも」と思い当たるようであれば、まずは生活の状況を見直してください。運動不足、朝食抜き、スナック菓子ばかり食べる偏った食生活、極端なダイエットなど、不規則な習慣に心当たりはありませんか。低体温は乱れた生活習慣が引き起こします。低体温に気付いたら、それは生活を見直すよいきっかけだととらえて、改善しましょう。――ありがとうございました。低体温の原因は、自らの日常生活にあることが分かりました。低体温だけではなく、鏡で自分の姿を見て、「基礎代謝の低下!?」と不安がよぎったときは、日々の習慣を見つめ、改めたいものです。監修:泉岡利於氏。医学博士。内科医、大阪府内科医会副会長。医療法人宏久会泉岡医院院長。泉岡医院大阪市都島区東野田町5-5-8JR/京阪電鉄京橋駅中央出口から徒歩7分 TEL:06-6922-0890岩田なつき/ユンブル)
2012年06月03日「この憂うつな気分……、これってうつ病?」と思うことはありませんか。憂うつとうつ病はどう違うのでしょうか。ボーダーラインはあるのでしょうか。心身医学専門医で心療内科医・野崎クリニック院長の野崎京子先生にお話を伺いました。■憂うつが10日以上続くかどうか――憂うつとうつ病の違いを教えてください。野崎先生憂うつな気分というのは、誰しも経験があるものです。何か心配なことがあるとき、会社で人間関係がうまくいかないとき、自分のミスで誰かに迷惑をかけたときなど、当然、気分は落ち込みます。このごろ、うつ病の情報がはんらんしていることもあり、憂うつになるとすぐに「私はうつ病かも?」と心配される人もいますが、そうとは言えません。憂うつになる原因を自覚し、何とか自分で対処しようとする、事態を好転させるように努める、また、友人と飲みながら無駄話をする、趣味に興じる、睡眠をとるなどで時間とともに憂うつな気持ちは晴れて行き、普段通りの自分に戻れるのであればうつ病ではありません。ただし、憂うつ気分が2週間以上ずっと続き、また次のような症状があれば、うつ病を疑う必要があります。・憂うつな上にさびしい、悲しい、焦燥感が強い・不安やイライラが続く・関心があった趣味もする気が起こらない・友人や家族と話したくない・どんなことにも集中できない・自信がなくて不安感が強い・罪悪感が強い・食欲がない、または過食・眠れない、寝つきが悪い、すぐに目が覚める、または過眠・自殺願望があるこれらが思い当たる場合は、早めに精神科か心療内科を受診してください。かかりつけの内科でも相談に乗ってくれるでしょう。ただし、個人によって症状はいろいろですから、うつ病だと自己診断するのは早計です。医師に相談しましょう。――例えば、仕事で上司に注意を受けたとき、憂うつとうつ病では感じ方は違いますか。野崎先生うつ病の場合は落ち込んだ気分の継続期間が長く、業務についての善処が容易ではなく、気分転換をする気にはならないでしょう。憂うつな気分が長く続くと辛いので、自分を責めずに病気だと認識して病院に行くことが大事です。■憂うつ気分におぼれずに、行動に移す――憂うつな気分から早く脱却する方法はありますか。野崎先生自分にとって何かマイナスの出来事があったとき、「落ち込む」、「憂うつになる」、「自分に言い訳をする」ことにおぼれたり埋没してしまうのではなく、その出来事に具体的に対処する方法を考えるようにしましょう。業務上のことであれば、誰かに電話をする、メールで報告をする、謝罪に行くなどするべきことがあるはずです。それを書き出して整理し、素早く実行に移したほうが、憂うつ気分が晴れるのは早いでしょう。何もすることが見つからないときは、とにかく寝る、掃除をする、洋服の整理をする、あるいは憂うつの原因をノートに書くなど、生活上のするべきことをするのも一つの方法でしょう。何より憂うつをひきずらないためには、日ごろから自分なりのテンションを上げる方法を持って実践しておくことが大事です。趣味がある、なじみの立ち飲み屋やカフェがある、お互いに話を聞きあう友人がいる、など、複数の方法を持っておきましょう。――ありがとうございました。目の前のするべきことをする、日ごろからストレス解消法を見つけておく、相談する相手がいる。落ち込み気分に浸っているよりも、具体的な行動を起こした方が憂うつからは早く脱却できる、というアドバイスをいただきました。実践あるのみです。監修:野崎京子氏。心身医学・ペインクリニック・麻酔科専門医。京都大学医学部卒。国立京都病院、大阪赤十字病院などをへて、現在、心療内科・ペインクリニックの野崎クリニック院長。著書に『心療内科女医が教える人に言えない不安やストレスと向き合う方法』(マガジンハウス1365円)がある。野崎クリニック:大阪府豊中市新千里南町2-6-12北大阪急行桃山台駅から徒歩7分TEL: 06-6872-1841海野愛子/ユンブル)
2012年05月28日「最近、高血圧の若者が増えているんですよ」と警鐘を鳴らすのは、内科医で大阪府内科医会副会長・泉岡医院院長の泉岡利於(いずおか・としお)先生。一方で、「低血圧の女性もまた増えているんです」と……。その要因や予防法について伺いました。■ジャンクフードが高血圧の一因――まず、高血圧と低血圧の診断基準を教えてください。泉岡先生高血圧の診断基準は、上が140mmHg以上、下が90mmHg以上です。また、上が100mmHg以下、下が60mmHg以下の場合を低血圧と診断します。――どうして高血圧の若者が増えているのでしょうか。泉岡先生大きな要因となるのは食生活でしょう。日本人がもともと塩辛いものを好む傾向に加えて、若い世代は味付けが濃くて塩分が多め、さらに脂質も多い高カロリーなファストフードやコンビニ食、スナック菓子などのジャンクフードを好んで食べることなどが考えられます。塩分は人間の体に必要不可欠ですが、多くとり過ぎると体内にナトリウムと水分がたまって体液量が増え、血圧が上昇します。また、貯留したナトリウム、水分を腎臓からこし出して排せつするため、さらに血圧が上昇します。――病院へ行ったほうがいい症状について教えてください。泉岡先生高血圧はほとんどの場合、自覚症状がありません。ですが、頭痛、肩こり、めまい、動悸(どうき)(どうき)、息切れなどがいつもよりひどい、どこか体がおかしいと思ったら、血圧が上がっている可能性があるので、医師に相談してください。――どうすれば予防できるでしょうか。泉岡先生まずは塩分が少ない食品を選ぶことを心がけましょう。漬物、干物、ラーメンやそばなどの汁やスープ類には塩分が多く含まれます。また、みそ、しょうゆ、ソースなどの調味料は使いすぎないように、料理はうす味にするなどの工夫をしましょう。そのほかに、生活習慣の悪化や運動不足も挙げられます。疲れたなと感じるときは十分に睡眠をとる、また、週に2~3回、適度な運動を継続することを心がけましょう。それと、タバコは止めるべきです。喫煙者は、非喫煙者と比べて薬が効きにくいだけでなく、血管の抵抗が大きくなり、高血圧の原因となることが医学的データではっきりと分かっています。タバコを1本吸うと血圧が約10 mmHgも上がるのです。■低血圧は本来、体にとってはいいこと――若い女性に多いと言われる低血圧ですが、低血圧が原因で起こりうる病気はありますか。泉岡先生低血圧が原因で病気になることはあまりありませんが、冷え性である、朝起きづらい、体がだるい、めまいや立ちくらみがする、朝の活動性が低く集中力に欠ける、などの症状がみられます。そもそも、血管の抵抗は年齢とともに上がっていきます。ですから、いずれ血圧は上がっていきます。低血圧の方は若いころに低い分、将来高血圧になりにくい、つまり心筋梗塞(しんきんこうそく)や脳卒中の可能性が低くなるので、本来はいいことだ、よかった!と認識してください。――低血圧を改善する方法を教えてください。泉岡先生まずは7時間以上の多めの睡眠と朝食をしっかりと食べる、この2つを行ってください。これで解決することも多いでしょう。あと、無理なダイエットは禁物です。――ありがとうございました。病気になってから後悔しないためにも、今すぐに日々の習慣を見つめ、改めたいものです。監修:泉岡利於氏。医学博士。内科医、大阪府内科医会副会長。医療法人宏久会泉岡医院院長。泉岡医院大阪市都島区東野田町5-5-8JR/京阪電鉄京橋駅中央出口から徒歩7分TEL:06-6922-0890岩田なつき/ユンブル)
2012年03月16日人前では避けたいのに、急に出ることがある「しゃっくり」や「ゲップ」。やたら止まらないとか、マナー違反が気になることもあります。なぜ起こるのか、何の兆候なのか、また、瞬時に止める方法はあるのかなどについて、内科医で大阪府内科医会副会長・泉岡医院院長の泉岡利於(いずおか・としお)先生に、伺いました。■頻繁にしゃっくりが出る場合は要注意――子どもの頃はよくしゃっくりが出ましたが、大人になって減ったように思います。関係はあるのでしょうか。泉岡先生しゃっくりは、肺の神経が刺激されて横隔膜がけいれんすることで起こります。一過性のものがほとんどで、明らかな原因がなくても起こりえます。子どもがよくしゃっくりを起こすのは、横隔膜が未発達のためですが、大人になって頻繁にしゃっくりが出る、また長期間続く場合、何らかの病気が隠れているケースがあります。例えば、肺にできた腫瘍(しゅよう)が肺の神経を刺激し、けいれんを起こしたためにしゃっくりが頻繁に出ていた、その腫瘍を調べてみると肺がんだった、ということもあります。――しゃっくりを止める方法はありますか。泉岡先生医学的に、すぐに止める明確な方法はありません。しゃっくりを止めるためによく耳にする、「驚かせてもらう」、「冷たい水を一気飲みする」などの方法にも、医学的な根拠はありません。横隔膜のけいれんが落ち着くと止まると考えられます。――では、驚かされてからしゃっくりが止まるまでに少し時間がかかるのは、けいれんが落ち着く過程だということでしょうか。泉岡先生そういうことです。「驚いた」、「冷たい水を飲んだ」ということに意識が向き、時間が経過している間にけいれんが治まっていったと考えられるでしょう。■ゲップの原因は生活習慣を見直すサイン続いて、「ゲップ」についてお尋ねしました。――ゲップが出る場合、何か病気の可能性はありますか。泉岡先生人間の体は、口からお尻まで管でつながっているとイメージしてください。体の中にたまった空気は、口から出る場合はゲップとして、お尻から出る場合はオナラとして排出されます。ゲップにはいくつかの原因があります。1.空気を飲み込む食道や胃に入った空気をゲップとして吐き出そうとします。早食いやドカ食いをすると、空気が食べ物と一緒に飲み込まれ、ゲップのもとになります。2.ストレスで空気を飲み込んでいるストレスや緊張などの精神的な原因から無意識に空気を飲み込んでいることがあり、ゲップの原因になります。3.胃の機能の低下胃の機能が弱まると、食べ物や空気が腸へと移動しにくくなります。すると、胃にたまった空気を吐きだそうとしてゲップになります。この場合、慢性胃炎や胃潰瘍(かいよう)、胃がんなどの病気の可能性も考えられます。4.腸管の動きが悪い便秘をすると腸内に便がたまり、発酵してガスが発生します。体内にたまったガスや空気は、ゲップやオナラとして排出されます。ゲップが臭い、おならのような臭いがするという場合は、腸管に病気の可能性もあるので医師に相談してください。5.食道の炎症本来は食べ物や胃酸が逆流しないように閉まっているはずの、胃と食道の間にある噴門部(ふんもんぶ)の機能が弱まっていることが挙げられます。これは胃食道逆流症(GERD)と呼ばれ、食道に胃酸が逆流して胸焼け、ゲップなどの症状を起こします。不規則な生活習慣やストレスが原因で若い人にも見られる病気です。胃の内容物が、口の中やのどに戻ってくるような、酸っぱいゲップと言われるものです。また食道に胃酸が逆流すると、食道が炎症を起こします。この状態が慢性化すると食道ガンの原因となることもあります。6.そのほかの病気である胃下垂(いかすい)により胃酸過多となる、体内に生息する細菌の一つ・嫌気性菌(けんきせいきん)から大量の臭気ガスが出ることが原因で、ゲップになることがあります。しゃっくりもゲップも、「一日に○回出たら体に異常がある」という基準はありませんが、頻繁に出たり、一度出たら止まりにくい場合は、自分の生活習慣を振り返り、心当たりのある原因を追及、改善することが大切です。ただし、『このしゃっくりは不自然だな、いつもと調子が違うな』、と感じる場合は早めに医師に相談してください。――ありがとうございました。しゃっくりやゲップは、そのときどきの体調を表すサインなのですね。「体の機能の一つですから、瞬時にストップさせることは無理であり、かつ、体にとってよくない」(泉岡先生)ということです。いつもと違和感がないかどうかのほうが大切だと知っておきたいものです。監修:泉岡利於氏。医学博士。内科医、大阪府内科医会副会長。医療法人宏久会泉岡医院院長。泉岡医院:大阪市都島区東野田町5-5-8JR/京阪電鉄京橋駅中央出口から徒歩7分TEL:06-6922-0890岩田なつき/ユンブル)【関連リンク】【コラム】心療内科医に聞く。おならを抑える方法とは?【コラム】心療内科医に聞く。大食いと過食症の違いとは?【コラム】内科医に聞く。足がつる、こむら返りの対策は?
2012年01月08日便秘や下痢のときになってしまう痔(じ)……。事前に防ぎたいけれど、なかなか人には相談しにくいものです。そこで、内科医で大阪府内科医会副会長・泉岡医院院長の泉岡利於(いずおか・としお)先生に、痔(じ)の原因と予防法についてお尋ねしました。■便秘や下痢は肛門に大きな負担がかかる――便秘や下痢のときに痔(じ)になりやすいのは、どうしてでしょうか。泉岡先生痔(じ)は、一言で言うと血流障害、血管のトラブルです。便秘や下痢になると肛門の血流、血管に大きな負担がかかり、痔(じ)になる確率も高くなります。例えば、便秘などで便が硬くなると、排便のときに肛門に圧力がかかり、出口が切れて「きれ痔(じ)(裂肛)」になります。下痢の場合は粘膜に便がたまっている状態なので、普段より肛門が刺激されて細菌感染を起こしやすくなります。また、肛門付近にある静脈叢(じょうみゃくそう)と呼ばれる毛細血管が集まった部分がうっ血してはれ上がり、「いぼ痔(痔核)」になることもあります。■アルコールや香辛料は痔(じ)の大敵――痔(じ)の予防法を教えてください。泉岡先生痔(じ)の症状が出るかどうかは、普段の生活習慣が大きくかかわります。薬や手術で治ったとしても、生活習慣を見直さなければ同じ症状を繰り返してしまいます。薬を使うことも大切ですが、何より「生活習慣を改善すること」が基本となります。また、アルコールや辛い食べ物をとりすぎると下痢や腸の炎症悪化につながることがあります。痔(じ)が気になる人は、過度の飲酒や香辛料の強い食べ物を控えるようにしましょう。ほかに、立ちっぱなし、座りっぱなしなど長時間同じ姿勢でいると肛門に圧力がかかり、血行不良を招くことから痔(じ)になりやすいと言えます。同じ姿勢を避け、血流をよくするために軽い運動やストレッチなどを心がけるようにしましょう。予防の方法を整理すると、次の6つです。痔(じ)予防のための6か条1.便秘や下痢にならないようにする2.適度な運動をする3.大量の飲酒は控える4.辛いものを頻繁にとらない5.立ちっぱなし、座りっぱなしなどの同じ姿勢を続けない6.規則正しい生活をする■痔(じ)と大腸がんでは、血の色が違う――痔(じ)と間違えやすい病気はありますか。泉岡先生痔(じ)というと、「痛い」、「血が出る」といったイメージを浮かべる方も多いのですが、実は出血もなく、痛みもない痔(じ)というものもあります。「ご本人に痛みなどの自覚症状がなく、排便時に突然、大量の血が出た。何か重大な病気かと思いあわてて来院されたが、検査の結果、体の内側にできるいぼ痔(内痔核)だった」というケースもありました。ただ、出血、腫れ、痛みなど、痔(じ)と思うような症状のなかには、大腸のトラブルが原因となって起こっている場合もあります。例えば、肛門からの出血は、「いぼ痔(じ)」や「きれ痔(じ)」のときに多い症状ですが、大腸ポリープや大腸がんの可能性もあります。それらの病気でも肛門からの出血や血便が見られることから、痔(じ)と間違いやすい疾患です。見分ける目安として、血の色があります。痔(じ)は肛門近くで出血するために採血をしたときのような鮮血になります。大腸がんなどのケースは内臓での出血のために暗い赤色になります。――ありがとうございました。痔(じ)を肛門の問題と考えるのではなく、自分の生活の根本的な生活の問題としてとらえることが、完治への近道と言えそうです。監修:泉岡利於氏。医学博士。内科医、大阪府内科医会副会長。医療法人宏久会泉岡医院院長。泉岡医院:大阪市都島区東野田町5-5-8JR/京阪電鉄京橋駅中央出口から徒歩7分TEL:06-6922-0890岩田なつき/ユンブル)【関連リンク】【コラム】ドキドキ、汗、便秘、頭痛……ストレスと疾患の境目は?【コラム】漢方医が教える。便秘プラス「ほかの何か」を治す方法【コラム】からし、ワサビ、ショウガ、ネギ。薬味には「腹やせ」効果が!
2011年12月31日上司、取引先、同僚などから「おまえはダメだ」などと自分を否定されたように感じたとき、どう考え、どう立ち直り、どう心の健康をキープすればいいものでしょうか。「ダメだ」ということばは、さまざまなとらえ方ができそうです。そこで、心療内科医で野崎クリニック(大阪府豊中市)院長の野崎京子先生に、お話をうかがいました。■冷静に、否定された理由の分析をするそもそも心の強さや弱さは人によって違うものでは?野崎先生は、こう説明します。「今の時代は、たとえば職場でトラブルがあった場合、誰かと話し合って解決するのではなく、帰宅後にインターネットの世界に依存して傷をなめあう仲間をつくることもできます。そういうことを続けていると、心の耐性は弱くなります」野崎先生は、まずは「そういった解決法ではない方法を考えましょう」と言い、否定されたときの対処法について、次のように話します。「否定された内容について、その理由を考えてみます。『なぜこの人はこう言うのか』と。正当な理由なのか、不当な理由なのかを判断するようにしてください。仕事の内容を否定しているのか、考え方なのか、性格的なことなのかなど、何に対して否定をされたのかを、冷静に考えてみましょう。否定する裏には、『相手にも理由がある』ととらえてみます。それを探るためにも、すぐに心を閉ざしてしまうのではなく、まずは相手の話を聞いてみるようにしましょう」■コミュニティ力と自分の力を磨こう他人から否定的なことばを言われたときは、冷静な判断ができず、それが正論なのかを認識するのは難しいものではないでしょうか。どう判断すればよいのでしょうか。「一人で判断するとどうしても自分の思考力の範囲で物事をとらえがちです。何が正しいのか分からなくなってしまう。思い込みで判断しかねないわけです。そうならないために、必要なことは二つ、『日ごろから知的なコミュニティと付き合う』、『何らかの自分の力を磨いて自信を持つ』ということです」(野崎先生)ここで、それら二つについて、具体的にレクチャーしていただきましょう。・知的なコミュニティと付き合う「同じ考え方を持つ人、共感しあえる人、共通の趣味など面白いコミュニティを築くことは、生きていくうえで大切なことです。ネット上での集まりではなく、顔を合わせて情報や意見を交換するリアルな付き合いをしましょう。合コンもいいですが、映画を見る、テニスをする、音楽を演奏する、など共通の趣味を持つ人たちと、テーマを持った集まりをもってみてください。実際に顔を合わせてお互いに良い刺激を与える相手との関係をつくることで、気付けば知的なつながりができます。他人から否定されて不当だと感じたときに、同じ価値観の相手に相談をすることで、情報交換をするだけでなく、冷静なアドバイスを受け取ることもできるでしょう。また、第三者の意見を聞くことで、活路を広げることができるはずです」(野崎先生)・自分の力を磨いて自信を持つ「多くの情報源に触れて、職場と家庭だけではない別の世界を広げることをおすすめします。たとえば本を買う場合はインターネットの情報だけに偏らず、書店に行って実際に手にとって自分のフィーリングに合うものを探すという行動を積み重ねることです。そうすることで知力が養われ、否定された内容が正当なのかどうかを見極める力をつけることができます。正当な理由であると思えば反省し、誠意を持って対応することで、一歩成長することができるでしょう」(野崎先生)■八つ当たりは個人攻撃ではないと心得るでは、取引先の相手に、自分の意見をうまく伝えることができない人から否定されたときは、どのようにとらえればよいのでしょうか。野崎先生は、「会社や上司に適切に報告をしましょう。こういった場合は、会社というシステムをうまく利用することです。納得ができないことに対して主張することは、当然の権利です」と言います。では、通勤途中に「肩があたった」などと因縁をつけられた、ショッピング中に店員から邪けんに扱われたなど、見ず知らずの相手から八つ当たりを受けたときは、どう考えればよいのでしょうか。「存在そのものを否定された気持ちになりがちですが、八つ当たりをする人というのは、相手は誰でもよいわけです。『自分が個人攻撃を受けたのではない』と自分自身に言い聞かせましょう」と野崎先生。最後に、野崎先生からのアドバイスを伝えます。「何よりも『お前はだめだ』と言われたときに、すべてを否定されたと思わないことです。完ぺきな人は世の中にはいません。誰しもコンプレックスや自信の無さを胸に抱いて生きています。自分自身にひそかに自尊心と自信を持てるよう努力していくことが、他人から否定されて落ち込む辛さを救ってくれると思います」誰かから否定されるような言葉を投げられたとき、ただ落ち込むだけではなく、相手の発言の意味を考えてみる――。野崎先生の、「自分の存在のすべてを否定されたと思わないこと」という言葉には勇気をいただきました。少しでも、人の言動の理由や動機を判断する力、見極める力を身につけるように努めたいと思います。監修:野崎京子氏。北野病院、国立京都病院、大阪赤十字病院、住友病院をへて、現在、大阪府豊中市の心療内科・ペインクリニックの野崎クリニック(院長。(岩田なつき/ユンブル)【関連リンク】【コラム】男性必見!女性に相談を受けたときの、100点の回答方法とは?【コラム】少しでも安く買いたい!お店で値切るコツはこれだ!【コラム】女子500人にアンケート!メールの返信から読む女子の心理
2011年07月14日「仕事がうまくいかない」、「上司や部下との人間関係」、「彼氏や彼女との摩擦」、さらには「不況や災害による社会不安」と、20代、30代を取り巻く環境にはストレスが付きまといます。「キレた」、「ムカついた!」、「イラっときた」、「不機嫌がおさまらない……」。感情のマイナス面が表へ出てしまいそうなとき、少しでも怒りをコントロールする方法を知っておくことは、いまや生きる知恵でもあります。ここ数年、本や雑誌、テレビ番組からビジネスの講演会まで、「怒り」をテーマにした内容が好評だと言います。これは、怒りについて四苦八苦している人が多いからだと考えられます。そこで、心療内科医で野崎クリニック(大阪府豊中市)院長の野崎京子先生に「怒りのメカニズム」と「怒りをコントロールする方法」についてお話をうかがいました。■「怒りのホルモン」といわれるノルアドレナリンが働く野崎先生は、「怒りという感情」についてこう説明します。「怒りを覚える要因は、ホルモンによるものと、加齢現象によるものの二つが考えられます。ホルモンの場合、怒りを感じると、脳がノルアドレナリンというホルモンの分泌を命じます。ノルアドレナリンは、通称『怒りのホルモン』といわれる神経伝達物質です。自律神経の一つである交感神経に働いて、覚醒、意識、意欲、不安を引き起こします。敵から身を守るべき場面やストレスを受けることがあると、このホルモンが出て血管が収縮、心拍数が上がって攻撃的な状態をつくるわけです」ムカッと来た瞬間には、無意識のうちに体内でこういうホルモン分泌が起こっているのだといいます。野崎先生は、「そのことを知っておき、『あ、怒りのホルモンが出ているんだな』と自覚するだけでも少しはコントロールが効くようになります」と言います。さらに、野崎先生はこう続けます。「もうひとつ重要な神経伝達物質に、セロトニンがあります。精神を安定させるホルモンですが、セロトニンの分泌には、日光や呼吸、歩行などの運動が影響します。引きこもって太陽にあたらない、昼夜逆転の生活、運動をしないなどだと、キレやすく、また、うつにもなりやすいのです」イライラするときは、日の光のもとで深呼吸や散歩をすれば、セロトニンが分泌されて怒りをコントロールしやすくなるというわけです。■怒りやすい=ストレス耐性が低いと自覚する怒りやすくなるときについて、野崎先生は次のように説明します。「皆さんも覚えがあるかと思いますが、体調が悪いときや、おなかがすいているとき、眠いときなどは自律神経がバランスをくずしやすいので怒りやすくなります。『今日はどうもイライラするな』と思ったら、まずは自分の体調がどうなのかを考えましょう。『朝食を抜いておなかが減っている』とか、『風邪気味だな』、『睡眠不足だ』と認識すれば、怒りの感情を理性にスイッチさせることができて、コントロールしやすくなります」では、「元々、怒りっぽい性格」の人の場合は、どう対処すればいいのでしょうか。「怒りやすい性格の場合、うつの場合も同様ですが、『自分はストレスに対する耐性が低い』のだと自覚することです。コントロールとは、認識・自覚からはじまります。すると、『自分の怒りは正当なのか、感情過多なのか』と考えることができます。また、次に『相手はどう思っているのか?』と想像してみることです。相手の立場に思いをいたらせることができれば、コントロールができていると考えてください。そして、繰り返しこの段階を意識して、思考の練習を行います。ムカッと来た瞬間にそこまで想像できるようになると、正当な理由なく怒る気持ちは薄れていくでしょう」と野崎先生。■怒りそうな会合には大切な人を同行する瞬間湯沸かし器のようにカッとなって、瞬時にはそう思えない場合はどうすればいいのでしょうか。「怒りを覚える対象に、『一拍置く』という対応をするようにします。日ごろからそう意識をしておくことです。すぐに相手に怒りを投げかけないために、『怒りそうならその場を去る。何かを判断するには、ひと晩以上置く』というルールを徹底するようにしてください。あるいは、いったん睡眠をとると、翌日には体調もよくなって考えが変わっていることがよくあるでしょう。精神性にも回復する力があることを信じてください。また、『上司やクライアントに腹が立っている。トラブルになりそう』などという予感がある場合、その勘は当たります。仕事の成果が得られないということにもなりかねません。そういうときに、打ち合わせや商談など対面しなければならない場合は、自分ひとりでは出向かずに、第三者を連れて行きましょう。できるだけ仲が良い人、信頼できる人がいいですね。人間は、大切な人がそばにいると感情のコントロールが可能になります。自律神経のバランスがよくなるのでしょう。私もかつて、重要な会合で怒りをぶちまけてしまいそうな予感があったときに、娘と息子を連れて出席しました。娘たちにもめごとを見せたくないという理性が働いて、難なきを得たことがあります」■怒りが高じて依存症に陥らないようまた、怒りが高じてコントロールができなくなった場合について、野崎先生はこうアドバイスをします。「怒りにまかせて、お金をむやみに使う、ギャンブルにはまりすぎる、お酒を飲んで悪態をつく。これらには気をつけないとなりません。こうなると、自分の行為そのものが脳に刺激を与えてさらにノルアドレナリンを分泌させ、怒りが怒りを呼び、非常に攻撃的な状態に陥る、その結果、依存症になるということがあります。こういった場合は、日ごろから自分の意見として言うべきことをこまめに言うことが大切です。ストレスのはけ口をまとめて、買い物、ギャンブル、お酒に向かわせると、いずれは人間関係を壊し、体調面にも悪影響を及ぼします」野崎先生は、最後にこう証言します。「依存症になってから心療内科を訪れる人は多いけれど、イライラがひどいからといって、カウンセリングを受けたり、心療内科を訪れたりする人はあまりいません。一人で悩んでいるよりも、早めに医師に相談したほうが解決の道は近いですよ」。怒りによって人間関係を壊す、仕事に破たんを来す前に、これらのアドバイスに耳を傾け、少しでもコントロールすることを心がけたいものです。監修:野崎京子氏。北野病院、国立京都病院、大阪赤十字病院、住友病院をへて、現在、大阪府豊中市の心療内科・ペインクリニックの野崎クリニック(院長。(阪河朝美/ユンブル)【関連リンク】【コラム】怒りを収める7つの法則【コラム】タイピングが激しくうるさい! ……直す方法ってあるの?【コラム】ピラティス式。プチパニックを癒やすための5つの方法
2011年05月06日