ポン・ジュノ、キム・ギドクなど鬼才と称される、類まれなる才能を多く輩出している韓国映画界からまた、才能あふれる監督が誕生し、世界で喝采を浴びている。これまで国内インディペンデント映画を中心に、俳優として活躍してきたヤン・イクチュン。「すべてを吐き出したかった」という理由で、初長編監督作『息もできない』で製作から主演まで1人5役をこなしてみせた。一体、その“すべて”にはどんな想いがあったのか?話を聞いた。本作の主人公は、かつて家庭内暴力をふるっていた父親に憎しみを抱いてきた取立て屋のサンフン(ヤン・イクチュン)と、母親を失い心の傷を抱える女子高生・ヨニ。“家族”のしがらみの中で生きる2人の魂の求め合いが描かれる。「いまから私が答えることは、私自身この映画を観て、理解したことが大部分だと思います」と前置きし、監督は本作を通じて描いた“家族”について語る。「自分の家族に対する悩みというのは“暴力”なのですが、家庭の中でなぜ一人が殴り、一人が殴られてという関係があるのか、子供の私には理解できなかったですし、それは夫婦の問題にとどまらず、家族全体にも影響を及ぼしますよね。家族のトラブルは、もちろんその深刻さに差異はあるものの、抱えている方が多いと思いますし、100%幸せな家庭で育った人は少ないと思います。また、韓国では、父母や祖父母の世代が社会的に非常に困難な時代、戦争やその弊害が残る状況の中で生きてきて、なかなか子供を手放したくないという風潮があり、子供が家族から精神的に独立するのが遅い。それは、父母の子供に対する愛でもありますが、同時に執着でもあると思うんです。家族から精神的に独立したいと、私も思っていましたし、実際に私が家を出て生活を始めて9年になりますが、精神的に父母から離れて独立することができたのは、ここ3、4年くらいのことです。ちょうど、この映画を作っている時期と重なるんですね」。自身が直面してきた問題と向き合いながら、同時に、その裏にある韓国の社会的背景を冷静に、客観的に見つめるヤン監督。本作に対する母国、そして家族の反応はどんなものだったのか?「父母世代の方は悪く受け取ってもおかしくはないのですが、実際に上映後に私に握手を求めてきてくれたのは、同世代よりも父母世代の方が多かったんです。映画の中で暴力シーンなどもありますが、それは父親が悪人だから暴力をふるうというふうには描いてないですし、あくまで歴史的、社会的な構造の中で追い詰められていることを描いてます。自分の父親もこの映画を観ましたが、恥ずかしいのもあったと思いますが、まあ頑張れよと言ってもらえましたし、これまで結婚しろとうるさかったのが、結婚はしたくなったらすればいいと言うようになったり(笑)。私自身、心がすごく健康になって、髪を伸ばしてみたり。もっと頻繁に電話するようにもなりましたね」。映画を通じて自身に芽生えた変化について、続けてこう語る。「劇中にサンフンが『お前、何グズグズしてるんだ?いつまでもグズグズしてたら周囲に被害が及ぶぞ』と(手下の)ヨンジェに言って殴るシーンがありますが、それはまさしく自分に言いたかったこと。自分は、選び取れずにこのままでいいのか?とずっと悩んできたことをサンフンの言葉を借りて問いかけてみたんです。そして、この映画を通じていま、他人に迷惑をかけない範囲の中で自分のやりたいことはできるし、自分自身を大事にしながらそれをやっていいんだと感じました」。熱い思いを語りながら、やんちゃな少年のような笑顔を時折見せる監督の姿は、もちろん怒りに満ち満ちたサンフンとは別人!現場では、監督と俳優、2人の切り替えは困難ではなかったのだろうか…?「あまり準備をしすぎるとキャラクターの生き生きしたものが失われてしまうので、台詞は忘れてしまわない程度におおまかに覚えて、少しぐらい忘れてしまってもいい。その代わり個々のシーンでの感情さえ掴んでいれば大丈夫というスタイルで臨んでます。だからアクションという声が掛かる前と後のテンションの切り替えもスムーズにできましたし、身体的には暴れる場面や殴る場面はしんどかったですが、精神的には苦労はしませんでした。これは僕の考えですが、90%は演技に没入しても残りの10%は理性は、カメラの外においておく。それは常に頭の中においていますね」。ちなみに、次回作については「全く予定がない」と、本作での燃焼した分の骨休みをしている様子のヤン監督。韓国の新鋭監督の今後の活躍に期待したい。■関連作品:息もできない 2010年3月20日よりシネマライズほか全国にて順次公開■関連記事:息苦しいまでの純愛ラブストーリー『息もできない』試写会に10組20名様ご招待崔洋一も唸る韓国の新鋭のデビュー作にしてフィルメックス大賞作『息もできない』
2010年03月23日類まれなる才能に恵まれながらも若くしてこの世を去ったヒース・レジャー渾身の遺作『Dr.パルナサスの鏡』。完成を見ずして逝去した彼の遺志を継ぎ、鬼才テリー・ギリアムの下、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルがヒースとの“4人1役”で主人公・トニーを演じたことで注目を集める本作だが、来年の公開に先駆けて、ヒース演じる“1人目のトニー”の貴重な出演シーンがこのたびお目見えに。ヒース、ジョニー、ジュード、コリンがその血を分かち演じるトニー。鏡の向こう側で人が心に隠し持つ欲望を映し出す“イマジナリウム”を携えて回る、「パルナサス一座」のメンバーの一人で、記憶を喪失した青年である。現実と鏡の世界を変幻自在に行き来する彼は、一人の娘を救うべく、摩訶不思議な鏡の奥の世界で賭けに出るのだが…。このたび初めてお披露目となったのは、生前のヒースがロンドンの街往く婦人たちを滑らかな語り口で口説き、「イマジナリウム」へと誘う場面。女性たちを前に紳士として振る舞うヒースの姿、そしてパルナサス博士の一人娘・ヴァレンティナ(リリー・コール)との魅惑的なやり取りが描かれる。こちらのヒース出演映像に続き、3人の“トニー”の出演映像も順次公開されるので、引き続きお見逃しなく!『Dr.パルナサスの鏡』は2010年1月23日(土)よりTOHOシネマズ 有楽座ほか全国にて公開。こちらの映像は『Dr.パルナサスの鏡』作品情報ページ、MOVIE GALLERYにてご覧いただけます。MOVIE GALLERY『Dr.パルナサスの鏡』作品情報ページ■関連作品:Dr.パルナサスの鏡 2010年1月23日よりTOHOシネマズ 有楽座ほか全国にて公開© 2009 Imaginarium Films, © 2009 Parnassus Productions Inc.■関連記事:ジョニー・デップ「ファンこそ僕のボス!」ファンサービスNo.1男の面目躍如ジョニー・デップ、超高額ギャラで『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ続投か?ヒース・レジャー初主演コメディがDVD化!劇中で「君の瞳に恋してる」熱唱もコリン・ファレル、共演女優の恋人との間に男児誕生ジュード・ロウの娘を出産したモデルがツーショット写真を英ゴシップ誌に公開
2009年12月14日20世紀を代表するファッション・デザイナーであり、現代女性のカリスマ的存在として崇められる、ココ・シャネル。類まれなる才能と反骨精神を糧にして、田舎の仕立て屋のお針子から伝説のデザイナーとなった彼女だが、その成功の裏には、ある一人の男性の存在がいた。彼の名は、アーサー・“ボーイ”・カペル。現在公開中の『ココ・アヴァン・シャネル』で、シャネルが生涯唯一、本当に愛したと言われるイギリス人実業家・カペルを演じた、アレッサンドロ・ニボラに話を聞いた。異国の地・フランスで支えになったオドレイの存在深い教養と先見的な視野を兼ね備え、出会った瞬間にシャネルの心を射止めるカペル。流暢なフランス語でココを口説く紳士に、女性の心は虜に。ニボラは、今回ハリウッドを離れ、異国の地・フランスでこの役に挑んだ。「今回、僕にとっての一番のチャレンジは、やっぱりフランス語で演技をすることだった。とにかくリアリティをもたらすために、言葉に集中しながら、かなり細かく指導を受けながら台詞を覚えました。普段、自分が慣れている仕事のやり方とも違ってとても難しかったよ」。そんな中、主人公・シャネル役のオドレイ・トトゥが、力強い支えになったようだ。「オドレイは何作か英語での役をやったことがあったから、なじみのない言葉で味わう境遇をよく理解してくれたんだ。撮影初日、僕は死にたい気分だったんだけど、彼女が僕を呼んでこう言ってくれたんだ。『最悪なのは最初だけよ、そこからはもう良くなるしかないわ』とね。とても心強いパートナーだった。彼女は、見た目はとても小柄で細くて、脆くてデリケートで純粋な、鳥のような生き物のように見えるけど、実際はタフな女性なんだ。とても野心的だし、知的で強い面を持った女性でした」。フランスでの撮影は3か月にも及んだ。改めてハリウッド映画の撮影との違いを尋ねると、時折いたずらっぽい笑顔を見せながら答えてくれた。「フランスのスタッフとは3か月の撮影の間ずっと一緒にいたから、家族のような気持ちになったよ。アメリカとの違いは、いつも昼にワインとチーズが出ることかな(笑)。そんな贅沢はアメリカでは味わえないからね。あともう一つの贅沢といえば、いつも朝の8時から夜の6時までしか働かないことだね。アメリカのインディペンデント映画では、1日14〜16時間働くのも普通だから。この作品は3か月かかったけど、アメリカだったら1か月で終わってたんじゃないかな(笑)」。また、本作でカギとなるのは、シャネルのスタイルを象徴する衣裳の数々。そのヒントとなったと言われる男性たちの衣裳も然り。目の前で話す、カジュアルルックなニボラと、髭を蓄えスーツを上品に着こなす劇中のカペル、どう見ても同一人には見えないのだが…。「衣裳というのは仮面舞踏会の仮面みたいで、別人のようにちょっと大胆になれますよね。でも今回、撮影の初日に監督に『カウボーイみたいな歩き方をしている。イギリスの貴族に見えないからダメ』と指摘されたんだ。僕としては、労働者階級から出てきた人物だったから、もう少し荒削りのほうがいいと思ったんだけど」。では、お気に入りの劇中のシャネルの衣裳は…?「僕の好きな衣裳は、シャネルとカペルが初めてキスするときに着ている少年っぽい服だね。小さい帽子に、小さなジャケットと短いズボンを合わせて。何でかは分からないけど、すごくセクシーだったよ。実は、(シャネルに言う)『少年の服を脱がせるのは慣れてないんだ』というのが一番のお気に入りの台詞なんだ(笑)」。男性視点での、ココ・シャネルの魅力カペルはシャネルの生涯の恋人であったのと同時に、男性中心の社会の中で、彼女の才能を開花させた立役者の一人でもあった。最後に、カペル役を通して見た、シャネルという女性の魅力を語ってもらった。「シャネルは最初の現代的な女性の一人だったと思います。女性がまだ社会に出て働いていない時代に仕事を持っていたからね。そのためには、多大な勇気と情熱、そしてときには残酷さも必要だったと思うし、それらの要素が彼女の能力と成功を支えていたんだ。現代においても男女関係なく、成功するためにはそんな資質が求められると思うけど、この時代では、常に競争の世界で生きる男性に対して、残酷さに関しては、女性が露骨にそれを出すのは敬遠されていたんだ。もちろん、女性だって残酷さは持ってるけどね(笑)。女性が自分の力を示しつつも女性らしさを保つのは困難なことだけど、シャネルはその両方を持ちあわせていた。そんなうまいバランスをいまの女性は追い求めているんじゃないかな」。■関連作品:ココ・アヴァン・シャネル 2009年9月18日より全国にて公開© Haut et Court - Cine@ - Warnerbros. Ent. France et France 2 Cinema■関連記事:オドレイ・トトゥ、シャネルを熱演!ダンスシーンに「恥ずかしがり屋なので」と照れも“シャネル”オドレイ・トトゥ来日に国民的美少女・工藤綾乃も感激!生まれ変わりたい女優は誰?「MTV」オリジナル携帯ストラップを10名様プレゼントファッション小噺vol.109王道の伝記&ピグマリオン精神に見る“シャネル”ファッション小噺vol.108現役ミューズが演じる“シャネル”伝説
2009年09月21日旅行が好きな気ままな夫婦2人暮らし。でも今年は帰省や旅行どころか、気づけば一歩も外に出ていない…という日もちらほら。おうちで過ごす時間がぐっと増えたからこそ、少しでも快適におうち時間を楽しむための工夫をしています。寒さが増してきた今、私達が取り入れたのは「ボアはんてん」。冬を満喫できるデザインと、夫婦おそろいで着られることがポイント。心もほくほくする「ボアはんてん」で、この冬を満喫中です。お部屋に馴染む今どき北欧ライクなデザイン小さな1LDKのマンションで夫婦2人暮らしの我が家では、お互いリビングで仕事をする日が度々あるのですが、換気のために窓を開けていると寒いし、かといって一日中暖房のきいた室内にいるのも乾燥が気になるしで、なかなか心地よく過ごせる環境って難しい。。そんなとき、がばっと羽織れるはんてんが大活躍。昔から親しまれてきたはんてんも、ボアを使った今どきなデザインだから、現代のお部屋にもすんなりと馴染んでくれました。貸しっこでも夫婦おそろいでも何かと好みが似ている私たちは、洋服をシェアしたり、欲しいものが一緒だった結果おそろいになんてことも度々。こちらのはんてんは、男女どちらが着てもおかしくないデザインとサイズ感も嬉しいポイントでした。154cmのわたしが着ると着丈は膝上辺りまで、袖はちょうど手首あたりでしっかり防寒できるサイズ感。176cmの夫はおしりが隠れるくらいの着丈で、7分袖くらいのすっきりした丈感で着用できました。1着を貸しっこするもよし、色違いで夫婦おそろいにしても◎。幅広い体格の方に着ていただけるデザインだから、サイズ選びで悩んでしまうお友達や両親へのプレゼントにもおすすめです。家事からコンビニまで!?どこまで行こう?ボア素材の方には大きなポケットがついているので、スマホや目薬など持ち歩きたい小物をぽんぽん入れられて、防寒以外にもお役立ち。洗い物などの水仕事のときは少し折り返すと家事も快適にできて、動き回っていると暑いくらいぽかぽかに。外に出るときは荷物の受け取りやゴミ捨てまでかなぁなんて思っていましたが、夫との会話の中で徒歩圏内のコンビニくらいまでなら行けるかも、夜の銭湯なら着ていきたい、なんて使い方は人それぞれ。お家以外で着るシーンをイメージしてみるのも楽しみなひとときです。少しレトロなはんてんを今年風なデザインでアップデートされた『ボアはんてん』。家族団欒をあったかく過ごせるよう、楽しんでいただけると嬉しいです。 【ご紹介したアイテム】伝統的な冬の防寒着「袢纏」を、ボア素材を使ってちょっとモダンなデザインに。生地のカラーは北欧テイストで、洋のインテリアに囲まれた暮らしにも馴染む雰囲気になっています。⇒ リバーシブル ボアはんてん FLUFF/パケ PAQUET【アンジェ別注】 ■暮らしのはなし スタッフのお気に入り シラカワアンジェデザイナー。音楽と映画とモノ作りが好きなインドア人間のわたしと、旅行好きの夫と二人暮らし。最近は夫婦でモルックにハマり中。
2001年12月05日