「ザ・カッコいいこと」として常々あこがれていたことがある。それは、バーテンさんが、シャカシャカシャカッと振り、あっという間に「コトン。」とカクテルを完成させる一連の流れ。スタイリッシュでカッコいいことこの上なしだ。バーテンさんの“シャカシャカ”は、一種のパフォーマンスなのではないだろうか。日比谷Barの系列店『BAR 三代目 小松春樹』店主・小松春樹さんはこう語る。小松春樹(以下、小松)「僕は確かに、お客さんに見てもらう、というのを意識してカクテルを作りますね。やっぱり、お客さんの中には興味を持って見てくださる方もいらっしゃいますから。年に数回、カクテルを作る大会にも出るのですが、ここでは【礼儀】【振る舞い】という項目も審査対象ですから、いつも堂々とスタイリッシュにやるようにしています」――なるほどー。かっこよさもサービスのうちのひとつ、ということですね。私もシェーカーでシャカシャカとお酒を造れるようになりたいのですが。小松「じゃあ、ちょっと1杯作ってみますね。カルバドスというりんごのブランデーと、ライムジュース、グレナデンシロップを混ぜた『ジャックローズ』というのを作ります」言うが早いか、サクサクと作り始める小松さん。シェーカーにお酒を入れ…カクテルグラスを氷で冷やす。シャカシャカシャカシャカ。早すぎて写真がブレブレに……。コトン。『ジャックローズ』が完成した。ブランデーがベースなので、アルコール度数は高めだが、不思議とまろやか。砕けた氷の粒が混ざってシャーベットのようになっているのも、デザート感覚でおいしく飲める。小松「シェーカーで振ることによって空気が入るので、口当たりが優しくなるんです。たとえるなら、スフレのような感じでしょうか。振り終わってすぐの状態のシェーカーは、中で気泡がプツプツ音を立てていますよ。また、僕が今やったのは『ハードシェイク』と言って、激しく振る作り方なのですが、ハードシェイクをすると空気がたくさん入ってアルコールを強く感じさせなくなったり、砕けた氷がシャーベットのようになったりするため、飲みやすくなるんです」――シェーカーでシャカシャカするといいことだらけですね!自宅でもやりたいのですが、コツはどういったことなのでしょう?小松「すごく簡単にレクチャーすると、まず持ち方は、利き手の親指でてっぺんを押さえて、手を大きく開いてシェーカーを覆うようにします。もう片方の手で、底の部分を薬指と中指で支え、ほかの指は開いて添えるだけにします(写真参照)」利き手(この場合は右手)で覆うように持つもう片方の手(この場合は左手)の薬指と中指で支える小松「じゃあ、『カシスオレンジ』を作ってみましょうか。居酒屋で飲むのと全然違いますよ。砕いた氷をシェーカーいっぱいに入れてから、お酒を入れます。氷も、家の冷凍庫で作ったものよりもお店で買った氷をオススメします。味が変わってしまいますので。カシスとオレンジの割合はだいたい1:4くらい。強めがよければ1:2でもいいですし、お好みで変えて大丈夫です」――振り方はどうすればいいでしょう?小松「手首を返して、前に押し出す感じです。前にしっかり出して、その反動で戻る、の繰り返し。横から見たときに、ひらがなの『く』の字を描くようにキレイに動かすと、見た目もそれっぽくてカッコよくなります。ちなみに、氷を入れたので、振れば振るほどシェーカーは冷たくなっていきますよ!」くの字、くの字、と思いつつ振り、途中、シェーカーのあまりの冷たさにめげそうになるのを耐えて、どうにか完成。いただきまーす。お、おいしい……!飲み屋で飲んでいた『カシスオレンジ』とは比べ物にならないうまさ。昼間っからこんなにおいしいカシスオレンジを飲んでいて、世界の皆さんごめんなさい。シェーカーは東急ハンズなどでも売っていて意外と簡単に始められるのだそう。この冬目指すはにわかバーテンかしら、と思いつつ、帰路についた。(朝井麻由美/プレスラボ)【関連リンク】BAR 三代目 小松春樹銀座のビルにあるお店は、茶色を基調とした作りでホッとする空間。お酒の「新ジャンル」にふさわしい名前は?「新ジャンル」、というか「珍ジャンル」なネーミング多数。お酒で失敗したことがある人ちょっと集まってください!私も幾度となく失敗しましたが、「記憶にござません」。
2009年11月18日